No.21
#[AV出演被害防止・救済法]
6月14日の参議院の内閣委員会で、立憲民主党の塩村あやか参議院議員は、核心に触れる質問をしました。
(経緯。AV出演被害防止・救済法案)
<衆議院>
(1)2022年5月25日(内閣委員会) 全会一致で可決(※参考)
↓
(2)2022年5月27日(本会議) 全会一致で可決(※参考)
↓
<参議院>
(3)2022年6月14日(内閣委員会) 全会一致で可決(※参考)
①塩村あやか 議員(立憲民主党) ※当ブログを参照。
②佐々木さやか 議員(公明党) ※当ブログを参照。
③梅村聡 議員(日本維新の会) ※当ブログを参照。
④倉林明子 議員(日本共産党) ※当ブログを参照。
↓
(4)2022年6月15日(本会議) 可決(※参考)
(動画)
〇2022年6月14日 参議院インターネット審議中継 参議院内閣委員会
〇2022年6月14日 YouTube 参議院内閣委員会(※塩村あやか議員の質疑)
上述の動画のなかから、"核心に触れる質問"を抜粋します。
(※音声の文字化は、筆者。)
<一部分を抜粋>
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
つづきまして、海外配信のプラットホームについてお伺いいたします。
アダルトビデオのサイトには、カリビアンコムやFC2などの海外配信プラットフォームがですねー
「海外のサーバにアップロードしたAVについては対応は難しいのではないか」という意見がありますがいかがでしょうか。
また、契約締結や撮影、撮影をしたアダルトビデオのアップロードすべて海外で行ってる場合はどうか、お伺いいたします。
〇2022年6月14日 森山浩行 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
ご質問、ありがとうございます。
まず、「海外サーバーにアップロードされた場合の公表の差し止めに本法が適用されるか」という問題は、準拠法の選択の問題、でもあります。
最終的に個別事情による判断となり一概にはお答えできませんが、海外サーバーにアップロードされても、そのことのみをもってただちに本法の適用が排除されるものではなく、日本語が準拠法とされ本法が適用されれば、第15条による差止請求の対応が考えられます。
本法第15条では、制作公表者から出演者に、当該AVの公表をおこなっているものに関する情報提供をさせるなど、出演者の差止請求に必要な協力をすること、と定めており、差止請求権を行使しやすくする工夫をしております。
さらに海外サーバーから配信されているものである場合、出演者による契約解除の事実を了知したプロバイダー等が利用規約に基づき当該情報を削除する、等の対応も考えられます。
次に、契約締結、撮影、アップロードなど、全て海外で行なっている場合についても、最終的には個別事情による判断となり一概にはお答えできませんけれども、日本語で制作されるなどを主として日本向けに発信をされ閲覧者の多くが日本人であるなどの場合には、その差止請求の可否等について日本法が準拠法とされ、本法第15条が適用されることもあり得る、と考えられます。
一般に、当該制作公表行為と日本との関係が密接であればあるほど日本法が準拠法とされる可能性が高くなる、と考えております。
また、現在各国においても各プラットフォームが、「権利侵害情報であれば削除できる」とする規定を置いている例があり、また各プラットフォームの利用規約等において権利侵害情報の削除について定めていることが多いことから、日本国内での権利侵害になっていることが明確になったものについてはこのような規約等に基づいて一定程度対応される可能性もございます。
なお、海外のウェブサイト等の場合には対応に一定の困難もあり得ることから、本法は、本法案成立後に定められる予定の内閣府令において、契約前に出演者に説明をする事項としてAVを配信するウェブサイト等を運営する者の所属地の国名を明示して説明させることを期待することが想定されております。
これは、AVの公表方法について事前に出演者が知ることができるようにしておくことがも望ましい、との考え方によるところのものであり、AVの公表方法が出演者の意に沿わない場合にはもとより、そういった契約を締結する必要はない、というものであります。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
次です。
本法案は出演契約の解除等につき定めるものですが、「出演者は[契約を解除すると著作権がなくなり、その結果、海外を含めて著作権の侵害対応ができなくなるのはないか」との心配の声がありますが、著作権や著作隣接権がなくなるのか、お伺いいたします。
〇2022年6月14日 森山浩行 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
著作権や著作隣接権については、著作物を創作する行為や演じる行為等があれば自動的に付与される権利であり、契約に基づいて発生するものではないことから、出演に関する契約を締結する行為自体は著作権や著作隣接権の発生とは関係がございません。
したがって、制作された性行為映像制作物が著作物に該当する場合や、出演者の実演に著作隣接権が発生する場合は、出演契約の解除後も著作権や著作隣接権は消滅せず侵害行為に対しては著作権に基づく法的措置を取ることは可能、と考えられます。
このように、本法案は、著作権や著作隣接権の発生や消滅について、なんら影響を与えるものではございません。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
それでは、違法にアップロードされた、いわゆる海賊版のアダルトビデオについては、どのような対応が考えられるのかをお伺いいたします。
〇2022年6月14日 森山浩行 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
違法にアップロードされ、いわゆる海賊版のAVというものは、本法案第15条の差止請求権の対象となるため、出演者は同条に基づきその公表の停止を請求することができます。
この際、制作公表者は必要な協力を行うことと、なっており、海賊版に対しても対応できる範囲で協力をすることが期待をされます。
また、本法案とは別に、たとえばAVメーカーなどの著作権者は、著作権法第112条に基づく差止請求や、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報開示請求をおこないアップロードしたものを特定した上で損害賠償請求をおこなうこともできます。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
はい、ありがとうございます。
それでは、第三者が(出演者が、解除後にですね)契約の解除後にアダルトビデオにアップロードした場合はどうなるのかをお伺いいたします。
契約解除、取り消しをしたとして、作品をいったんアップしていればですね、流通してしまうんですね、と。
出演者が契約解除、取消しを行使した場合に、その後第三者が映像をアップロードしてしまった場合、どのようになるのかお伺いいたします。
〇2022年6月14日 山井和則 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
お尋ねは、「AVの購入者が無断でAVをインターネット上にアップロードするという著作権侵害の事案」となるが、出演契約の解消を前提とした本法の適用関係について申し上げれば、出演者は第15条に基づく差止請求ができます。
また、当該AVは、第16条の性行為映像制作物侵害情報に該当すると考えられるため、出演者はプロバイダ責任制限法の特例を定めた同条の規定により削除を申し出ることができます。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
ありがとうございます。
「出演者が、制作公表者や関係者の氏名、名前、住所などを知らない場合は、差止請求権を行使することができず、アダルトビデオの公表拡散を止められないのではないか」このような意見もされていますがどのような対応がとれるでしょうか。
〇2022年6月14日 山井和則 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
本法案は、制作公表者以外の者がAVの公表を行う場合には、その者を特定するために必要な事項を出演契約書等に記載する義務を規定しており、第4条第3項第6号、この義務に違反した場合には罰則も設けております。
また、制作公表者は、差止請求をしようとする出演者への情報提供などの協力を義務づけております。
第15条第3項。
これらの規定を通じ、出演者が、AVの公表をおこなっている者を特定しその上に差止請求することが容易になると考えられます。
また、AVがインターネットで公表されている場合、制作公表者の氏名、住所を知らなくとも、公表されているサイトの管理者や運営者に対し本法案の差止請求権を行使することが考えられます。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
ありがとうございます。
悪質メーカーと判明した場合の対応ですね。メーカーが。
これをお伺いしたい、と思っています。
たとえば、契約を適切に締結、出演者としていない場合など、特定のメーカーの不適切な事案が複数顕在化した場合ですね、差止請求がなされていない作品はそのままサイトで販売が継続される、ということになろうかと思います。
わかりやすく言えばですね、こう手を挙げて「差止請求をやってくれ」と言ったものは削除されるんですが、それ以外のものは残ってしまう、ということになってしまうと思います。
それを改善させる必要があるのではないか、と思いますが、いかがでしょうか。
〇2022年6月14日 山井和則 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
自己の性行為に係る姿態を撮影した性行為映像制作物が、出演者の意思に反して公衆の目に触れることになる場合には、その者の性をめぐる個人としての尊厳が著しく侵害されることになります。
このような被害の拡大を防ぐため本法案では、説明書面や出演契約書の不交付や必要事項の不記載に対しては罰則を設けており、違反事案があれば摘発されることとなります。
また、第15条の差止請求権や第16条のプロバイダー責任制限法の特例も設けております。
これらの仕組みが的確かつ円滑に活用されることによって、性行為映像制作物の制作公表を停止、予防することが大変重要だと考えております。
本法案の運用にあたり、政府においては、罰則違反の取り締まりや差し止め請求などが的確かつ円滑に行われるよう支援をおこなうとともに、既存のインターネット上の違法有害情報への対策も参考にしつつ、意思に反する性行為映像制作物の公表に対してしっかり対応していただきたい、と考えております。
●2022年6月14日 塩村あやか 参議院議員(立憲民主党)
重要なご答弁、ありがとうございました。
これ、非常に重要だというふうに思っておりますので、ぜひお願いをしたい、というふうに思っております。
次です。
闇に潜るんじゃないか、とか、会員サイトは対象になるのか、とか、さまざまなお問い合わせがわたしの下に届いているところです。
何層にも出演者保護を現行法最大で図っているのが本法案だ、とわたしは理解をしております。
厳格な規制を設けているため、かえって事業者が闇に潜る、アンダーグラウンド化するのではないか、と。
こうした意見がけっこうネットにも流れておりますし、わたしのところにも来ているんですね。
本法案は、個人として制作発表をするアダルトビデオについてもこれを適用されるのか。
また、会員のみが入れるウェブサイトのような限られた範囲でアダルトビデオ配信する場合も、公表となって本品の対象となるのか、をお伺いいたします。
〇2022年6月14日 山井和則 衆議院内閣委員長代理(立憲民主党)
本法案の対象となる制作公表者は、出演者との間で出演契約、すなわち性行為映像物制作物において性行為に係る姿態の撮影の対象となりその性行為映像制作物の制作公表をおこなうことを承諾することを内容とする契約を締結し、または締結しようとする者であり、第2条第7項、事業者であるか個人であるかは問いません。
このため事業者に限らず、個人として性行為映像制作物を制作、公表している場合にも、本法案が適用されます。
なお出演契約書等や説明書面等の不交付等があった場合には、罰則の対象、第21条となるなど、アンダーグラウンド化に対しては厳正に対処される、と考えております。
本法案において、公表とは、頒布、公衆送信、または上映のことを言い、ここで言う公衆送信とは、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信または有線電気通信の送信をおこなうことを言います。
この公衆には不特定または多数の者のみならず特定かつ多数のものも含むとしております。
第2条第5項。
したがって、ご指摘の会員のみ入れるウェブサイトのような限られた範囲のAVを配信する行為についても、多数の者に対しておこなわれたものであれば、本法案の「公表」にあたります。
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6月15日(水曜日)に、AV出演被害防止・救済法案が可決、成立しました。
“AV出演被害防止・救済法”は、今週の木曜日(6月23日)から施行される予定です。(※参考)
同法が成立した翌日、架神恭介さんというライターが興味深い記事を配信しました。
(ツイート埋め込み処理中...)Twitterで見る
〇2022年6月16日 架神恭介 【同人AV製作者向け】AV新法対応契約書の雛形
同記事のなかから一部を参照します。
(引用)
<一部分を抜粋>
同人AV製作者向けに、AV新法に対応した契約書の雛形を作成しました。本雛形の著作権は放棄しますので、修正・変更・拡散など自由にやっていただいて構いません。
同人AV契約書雛形
(確認。同人AV契約書雛形)
・お読みください
・出演契約書雛形220616
・出演契約書雛形220617(作業中)
●2022年6月16日 架神恭介さん(ライター)
法案の成立過程において、適正AV(大手メーカー)はきちんとコンプライアンスを守っていることがアピールされました。一方で、出演者を騙したりする「悪徳AV」は個人がやっている同人AVであるという風潮も広まりましたが、私はこれにも危惧を覚えています。同人AVを「遵法意識に欠ける悪い世界」と一概に見なすべきではありません。
●2022年6月16日 架神恭介さん(ライター)
AV新法の成立により、「契約をきちんとする」ことが義務付けられ、どういった内容を契約書に盛り込むべきか(それによってどう出演者を保護すべきか)が明確になった事自体は一定の評価ができると思います。これをきちんと守れば、同人AVであっても適正AV同様に「われわれはクリーンにやっている」と胸を張って言えるようになるわけです。
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(再掲。架神恭介さん)
「AV新法に対応した契約書の雛形を作成しました」
「これをきちんと守れば、同人AVであっても適正AV同様に「われわれはクリーンにやっている」と胸を張って言えるようになるわけです」
AV業界において適法な契約書を作成するうごきが加速することを期待しております。
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