“改正刑法の叩き台をつくる2回目の会議の議事録”(19) 安藤久美子准教授④ 相手が嫌がっていると思わなかった、は、上下関係の間柄では、単なる都合のいい言い訳

2021年11月29日 第2回 刑事法(性犯罪関係)部会
専門家からのヒアリング
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】【3】)
(※Safe Campus【1】【2】【3】)
(※西田公昭教授【1】【2】)
(※桝屋二郎准教授【1】【2】【3】)
(※安藤久美子准教授【1】【2】【3】【4】)

本日もひきつづき、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における安藤久美子准教授の論説をみてみます。

刑事法(性犯罪関係)部会は、現在、改正刑法案の叩き台づくりをおこなっています。

(参考。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

刑事法(性犯罪関係)部会が作成した叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

(※安藤久美子准教授【1】【2】【3】【4】)

<24~25ページ>
2021年11月29日 井田良 部会長(中央大学教授)

安藤先生、ありがとうございました。
それでは、御質問はございますでしょうか。

——————————————————–

<25ページ>
2021年11月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

貴重な御講演をありがとうございます。

私からは、加害者の認知のゆがみに関して、加害者の誤信と判断される裁判のことについてお伺いしたいのですけれども、例えば、相手が嫌がっていると思わなかったということが認められて、故意がないとして無罪になるというような判決もあります。

相手が嫌がっていると思わなかったと加害者が言ったとしても、状態によってはそれは通らないということで有罪になることもあるのですけれども、今御説明いただいた中に、加害者の認知のゆがみによって、あるいは、加害者が発達障害の傾向を持っていることによって、相手方が拒否していることを実際に認識できなかったという場合があり、すごくグレーゾーンなところもあるのかなとも思いました。

ただ、裁判の結果などにおいて故意が認められないということは、その裁判の加害者だけではなく、他の加害者たちの認知にどのような影響を与えるのかということを、お話の中でジェンダーに対する認識というものもありましたので、感想か、何かお考えになっていることをお伺いできればと思いました。

——————————————————–

<25ページ>
2021年11月29日 安藤久美子(聖マリアンナ医科大学准教授)

どのような影響を与えるかという問題は、やはり個別性が高いように感じます。

これは、加害者の方の年齢や生活背景等の環境によってもジェンダーに関する考え方が異なっておりますし、冒頭にもお伝えした、比較的社会的な地位の高い人が加害者になる場合と、ニートのような人たちが加害者になる場合では、その認知のゆがみが生じる背景や、認知のゆがみ方も異なります。

ジェンダーの大きな問題を抱えているケースがあったとしても、それによって表出されてくるゆがみの種類としては、最小化、否認という二つの特徴があり、これらはどのケースにも共通しているように感じます。

ですから、故意が認められないことも含めて、どう受け取るかは非常に個別性があるということを御認識いただいた上で、ケースごとに御判断いただくことになるかと思います。

また、通常の加害者・被害者の関係性によっても、故意の程度が関連してきますので、いつも会っている親しい関係の方が、加害者からすると、かえって相手が拒否していることに実際に気が付かなかったということもあり得るかもしれませんし、近い距離の関係性であっても、そこに既に上下関係ができているような間柄であれば、気が付かなかったと言っても、それは加害者側の単なる都合のいい言い訳であると考えられることもありますので、ケース・バイ・ケースで考えていただくしかないのかなと思います。

——————————————————–

<25ページ>
2021年11月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

否認から入るということですから、やはり行為や、プロセスを丁寧に見ていく必要があるのかなと思いました。
ありがとうございます。

——————————————————–

<25ページ>
2021年11月29日 金杉美和 幹事(弁護士)

安藤先生、本日はありがとうございます。
御質問が2点あります。

まずは、依存性が強まれば強まるほど、捕まったらどうしようということは頭には浮かぶけれども、刑罰による抑制というのが効きにくいということなのでしょうか、という点です。

もう1点は、治療についてです。
社会復帰後に社会内で実行可能な治療プログラムがなければ、再犯を防止できないということでしたけれども、その理由として、もちろん刑務所の中ではそもそも問題行動を起こそうと思っても起こせないということがあると思うのですけれども、刑務所内で実施可能な処遇プログラム等の有効性という面で、受けなければならないという義務付けのような形で行われるプログラム・治療と、自発的にその方御自身が自分で、これは受けなければならないと思って受ける処遇プログラム・治療等を受けるときの主観的というか、動機の面で違いが出てくるのかという点について、お伺いしたいと思います。

——————————————————–

<26ページ>
2021年11月29日 安藤久美子(聖マリアンナ医科大学准教授)

依存の問題があると、捕まったらどうしようという気持ちはありながらも、刑罰による抑制力の意味が弱まってしまうのではないかというお話かと思いますが、これは違法薬物の依存性の問題とほぼ同じような形で、どの方も捕まりたくはないですし、捕まったらどうしようという気持ちはもちろん強いと思います。
しかし、それ以上に、行為を繰り返すことで、その成功体験が積まれていくわけですから、犯行が発覚せずに、「あっ、またうまくいった」となると、いつか捕まるかもしれないという気持ちがどんどん薄れていって、「今回も捕まらないだろう」とか、「この1回でやめておけば大丈夫だ」というように、むしろ自己過信が強まってしまうところも、ひとつの依存の心性なのではないかと思います。
そうしますと、刑罰は嫌ですし、捕まりたくないと思っているという点では、もちろん効果は十分あるとは思いますが、その一方で、自分の考えや、やっている行動を、現実に照らして、当てはめて考えるという正しい認識がどんどん麻痺していくような感覚なのではないかと思います。

二つ目の刑務所内でのプログラムに関しては、もちろん有効だと思います。
その有効性については法務省の調査でも、再犯率が下がっていることが報告されております。
しかし、その有効性というのは、出所後の比較的短期間を見ているわけです。
出所後何年間というのは治療効果があるわけですけれども、人生百年時代となっており、その人の残りの人生を再犯しないでいられるかということを考えますと、出所後何年間ではなくて、その後も社会の中で継続的に治療していくことができる、あるいは支援や相談ができる場所や制度といったものが一定程度確保されている必要があると思います。
金杉幹事がおっしゃられていたように、刑務所内の治療においても治療動機は非常に重要で、これはどの治療も同じですけれども、本人に治りたい、あるいは、もうやめたいという気持ちがなければ、アルコール等の依存症と同様に、うまくいかない、あるいは治療を中断してしまうと思います。
ですから、多くのプログラムは、私が作っているプログラムもそうですが、初めの治療動機というところにたくさんの時間を掛けるように構成されています。
その点では、刑務所の中で行われている治療をみると、初めは義務付けられて治療を始めることになるのかもしれませんが、治療の後半になって、やはりプログラムを受けてよかったという実感が持てるのであれば、それは治療の面でも有効であったと思いますので、治療の開始だけでなく、治療が終わるとき、あるいは出所間際のときにも、彼らの治療動機を再認識させていただくようなプログラムなど短いセッションを入れていただくと、再犯防止には非常に有効なのではないかと思っています。

——————————————————–

<26ページ>
2021年11月29日 金杉美和 幹事(弁護士)

ありがとうございました。

——————————————————–

<26~27ページ>
2021年11月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

加害者の認知のゆがみについてお伺いしますが、これは仮定の話になりますが、もし社会において、性的行為には自発的な参加が必要であるとか、参加してもいつでも途中で撤回できるというような社会認識が規範として当然のことになれば、加害者が勝手な自己理解をしなくなるのでしょうか。

また、ポルノグラフィにはかなり暴力的な場面、女性を従属的に描く場面が多く、ポルノグラフィを利用した後の大学生は、男女ともレイプ神話を信じる傾向にあるというようなアメリカの報告もあります。
また、アメリカの司法省だったと思うのですけれども、性犯罪は学習された行動であり、ポルノグラフィに繰り返しさらされることが影響を与えている可能性があるということも書かれていたのですけれども、社会規範やポルノグラフィの影響がある中で、性暴力加害者の認知がゆがまないようになるためには、おっしゃられたような教育だけでいいのか、それとも、社会の規範そのものも変化させていく必要があるのかということについて、お伺いできればと思いました。

——————————————————–

<27ページ>
2021年11月29日 安藤久美子(聖マリアンナ医科大学准教授)

認知をゆがまないようにする方法は本当にお答えが難しいところなのですけれども、同意を撤回できるというような社会での認識が進めばよいのかという点で申し上げますと、これは本当に重要な問題で、まだまだ日本の社会では、女性が声を上げられないような状況になっていると思います。

中でも性の問題は特に意思表示がしにくいですので、まずは、性以外の状況において、同意を撤回できるような社会になるとか、日常の生活の中で女性が、嫌ですと言えるようになるとか、そういった簡単なところから変わっていかなければならないと思います。

そういった一般的なところできちんと声を上げられるようになった後に、性的な場面においてもきちんと声を上げられるようになっていくのではないかと思いますので、順番的には少し時間が掛かってしまうのかなとは思います。

まずは、女性がきちんと意見を述べてもいいのだということについて啓発的な活動がなされることも重要なのではないかと思います。

もう一つの、ポルノグラフィ等からの誤った学習によって認識がゆがんでしまうという点については、山本委員もおっしゃられたように、正しい性教育はとても重要だと思います。
どうして若者たちがポルノグラフィを見るのかといえば、それは性的な興味関心ももちろんありますが、より思春期前期では、性的関心が高まる中で、誰に聞いていいか分からないとか、どういうことが普通の性行為なのか分からない、だからこっそり知りたいというわけです。
そういったこっそり知りたいという部分を、こっそり調べるのではなく、きちんと教育として伝えていく中で、相手の同意を得ることや、相手の意思表示を正しく認識するなど、そうしたことも全て含めて教育していくべきだと思います。
避妊の方法なども誤って理解していることが多く、現在のような思春期の第二次性徴を中心とした教育だけでは少し足りないのかなと思います。
その点では、義務教育の中でしっかり伝えていくべきですし、そうした教育が浸透していくことによって、社会的な規範やジェンダーに関する認識も少しずつ変わっていくのではないかと思います。

——————————————————–

<27ページ>
2021年11月29日 井田良 部会長(中央大学教授)

議論は尽きないのですけれども、これで終了とさせていただきたいと思います。
安藤先生には専門的な知見について非常に分かりやすく御説明・御教示くださり、誠にありがとうございました。
お話しいただいた内容は、今後の審議に役立ててまいりたいと思います。
当部会を代表してお礼を申し上げます。ありがとうございました。
(後略。)

——————————————————–

(参考。2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より。)

2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要

(ヒアリング)について
以下の6組10名の方から、ヒアリングを実施した。

・桝屋二郎 氏(東京医科大学精神医学分野准教授)

・佐保田美和 氏(Safe Campus代表)、本田義明 氏(Safe Campus)、中村彩夏 氏(Safe Campus

・西田公昭 氏(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)

・安藤久美子 氏(聖マリアンナ医科大学神経精神科学准教授)

矢野恵美 氏(琉球大学法科大学院教授)

金尻カズナ 氏(NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)理事長)、岡恵 氏(理事)、後藤稚菜 氏(相談員)

専門家からのヒアリング
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】【3】)
(※Safe Campus【1】【2】【3】)
(※西田公昭教授【1】【2】)
(※桝屋二郎准教授【1】【2】【3】)
(※安藤久美子准教授【1】【2】【3】【4】)
——————————————————–

以上をもちまして、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における参考人の方々の論説をすべて参照しました。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 ※ヒアリング
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2022年1月26日 第4回刑事法(性犯罪関係)部会・・・予定

今月(2022年1月)の26日に、「第4回刑事法(性犯罪関係)部会」が開催されます。
その日(2022年1月26日)までには、昨年末におこなわれた「3回刑事法(性犯罪関係)部会」の議事録が公開されるような予感がします。
3回刑事法(性犯罪関係)部会」では、「諮問事項第一の一、第一の二及び第一の三について審議が行われた」ようです。
議事録の公開が待たれます。

(※参考)

(参考。2021年9月16日に上川陽子法務大臣がおこなった諮問)
諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。

、相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備
、刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。
、刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。
、相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。
四、刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。
五、配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。
六、性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

第二、性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備
一、より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。
二、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

第三、相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処罰を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備
一、性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。
二、性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

——————————————————–
2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



香西咲さんを勝手に応援するサイトへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。