“改正刑法の叩き台をつくる2回目の会議の議事録”(17) 安藤久美子准教授② 「性犯罪者」「犯罪が見付かっても全力を尽くして言い逃れをしようとする」

本日も昨日にひきつづき、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における安藤久美子准教授の論説を参照します。

刑事法(性犯罪関係)部会は、現在、改正刑法案の叩き台づくりをおこなっています。
同部会が作成した叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。

2021年11月29日 第2回 刑事法(性犯罪関係)部会
専門家からのヒアリング
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】【3】)
(※Safe Campus【1】【2】【3】)
(※西田公昭教授【1】【2】)
(※桝屋二郎准教授【1】【2】【3】)
(※安藤久美子准教授【1】【2】)

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<21~23ページ>
2021年11月29日 安藤久美子(聖マリアンナ医科大学准教授)

スライド11枚目

そして、四つ目の「誤解されやすい事項4」ですけれども、

(参考)
※一つ目から三つ目については、昨日の当ブログを参照。

性犯罪というのは大抵すぐに発覚すると考えられがちで、もし被害に遭ったのであれば、被害者がそれを報告しないのはおかしいのではないかという意見さえあるのですけれども、私が行っている加害者臨床の中では、逮捕される前に約300件もの加害行為歴があったと告白するケースもあり、明るみに出ていない性犯罪の方が圧倒的に多いと考えられます。

また、さまざまな罪種の中でも特に性犯罪に特徴的だと思われるのは、性犯罪だけは、どの社会階層のどの知的レベルの人たちにも存在するということです。

社会的地位が高い人や、高学歴者の場合には、犯罪者としては疑われにくく、一見、見逃されやすいのかもしれませんが、そうした人たちであっても容易に加害者になり得るというのが、性犯罪の特徴的な部分ではないかと思います。

それから、性犯罪者は、どんなに犯罪を繰り返していても、事件が発覚しなければ自ら悔い改めることはないように思います。
逆に言えば、たとえ犯罪が見付かっても全力を尽くして言い逃れをしようとする、性犯罪の合理化という特徴が強く見られます。
ですから、すぐに発覚するというよりも、むしろ、ひた隠しにするというケースの方が非常に多いように思います。
スライド12枚目

そして、こうした四つの誤解されやすい事項の全てに共通しているのが、

(参考)
※一つ目から三つ目については、昨日の当ブログを参照。

「性犯罪加害者の認知のゆがみ」という点です。

スライド13枚目

この認知のゆがみについて少し細かく説明していきます。

まず認知のゆがみを大きく二つに分けますと「否認」と「最小化」に分類されます。

これらがよく知られている代表的な認知のゆがみで、この中に、さらに、自分の方が被害者だと言ってみたり、人を傷つけたことを認めなかったり、あるいは、非常に楽観的で、絶対見付からない、顔がばれなければ大丈夫などと本気で考えていたり、人の気持ちが分からないとか、自分にはそういうことをやってもいい資格があるというような、誤った所有権を振りかざすような認知のゆがみがあります。

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それぞれについて説明していきます。

例えば、「否認」というのは、「相手から誘ってきたのに、逮捕されることになってむしろ迷惑だ」というような誤った認識を持っていたり、「相手は全く嫌がっていなかった、むしろ積極的だった」というように事実を否定するような認識のことを指します。

実際の事件でも、被害者は極度の恐怖感から、嫌だとか怖いといった声を発することさえもできずに、涙を流して嗚咽していたにもかかわらず、その嗚咽する声を聞いて、むしろ被害者は積極的で性的な興奮を感じていると加害者は認識し、逮捕された後も「俺は全く悪くない」、「相手の同意があった」という主張を貫き通そうとしていたケースもありました。

そのほかにも、子供に対する犯罪に関しては、「優しくしてあげただけで悪いことはしていない」とか、「酔っ払っていたから思い出せない」、「誰か別の人がやったに違いない」、あるいは、「自分の性格だから、性的関心は変えることができないので仕方がない」などといった形で否認するケースもあります。

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「最小化」という認知のゆがみは、例えば、「嫌だと言っていても、本当はそれほど嫌だとは思っていないに違いない」といった認識や、「そのときはショックかもしれないけれども、被害者だってすぐに忘れる」とか、「少し触れるぐらいなら触られたことに気が付かないだろう」というような認識を指します。

あるいは、被害者は「事件に遭ったことを周囲には話さないだろう」と考えたり、被害者がナイトワークの方の場合には「何をしても傷つくことはない」と考えたり、「子供は意味が分かっていないから大丈夫」、「子供は約束を守るし、すぐに忘れる」といった、被害を最小化するような認識もこれに含まれます。

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「否認」と「最小化」の両方が関連しているような認知のゆがみの例としては、「インターネットに痴漢サイトがあったり、そういうDVDが売っているんだから、みんなも痴漢をしたりして楽しんでいるけれども、ただ見付からずにいるだけだ」という認識から自分の行動には問題はないと考えたり、「露出度の高い服を着ている女性は触られたいと思っているからだ」、「短いスカートをはいているのはスカートの中を見られてもよいと思っているのだ」などと考えていることもありますし、「相手が自分に親切にするのは性的な関係を期待しているに違いない」とか、「自分がやったことがばれなければ問題ない、やっていないのと同じだ」、あるいは、「女性はみんな、アダルトビデオのようなことをやりたいと思っているのだ」というような認知のゆがみもよく認められる例です。

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こうした認知のゆがみが起こる背景にはいろいろな原因があります。

例えば、発達障害や知的障害を持っている方に生じることもありますし、あるいは、障害とは関係のないパーソナリティの特性が関連していることもあります。

ですので、一口に認知のゆがみといっても、そのバックグラウンドは異なるのですけれども、相手との関係性によっても、認知のゆがみの大きさは変化していくので、個々の性犯罪者の環境や状況に応じて、どういう点において認知のゆがみが生じているのかという原点をしっかり探り、アセスメントしておかなければ、適切な治療に結び付かないと考えております。

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次に、性犯罪の場合には再犯の多さもよく知られているところですので、そこで、「再犯につながりやすい3要素」を挙げてみました。

一つ目は、先ほども少し触れました「障害特性」です。
そして、二つ目が「支配性・攻撃性」、
三つ目が「依存性」になります。

これら三つの要素が再犯につながるメカニズムについて一つずつ説明していきます。

なお、これらの要素は単独で影響していることもありますし、障害特性と依存性、障害特性と支配性のように、幾つかが併存して関与していることもあるということを申し添えておきます。

スライド19枚目

一つ目の「障害特性」です。

ここでは、発達障害や知的障害がある場合を想定してお話ししますと、こうした障害がある方の場合には、独自の理論に基づいた行動をとることがあります。

それはもともとの障害特性として、こだわりの強さとか、変化が苦手といった特徴がありますので、そうした特性が性犯罪を繰り返すきっかけになっている可能性があるのです。

あるいは、彼らの中には独自のやり方やルールを決めていることも少なくないのですが、そうした独自のやり方やルールを、一般常識や、社会共通のルールと照合するということをしないため、自分ではルーチン作業の感覚で実行してしまったり、また、そもそも自分の思考や行動が社会的には受け入れられないものであることに気づかないまま行動し、犯罪に至ってしまったようなケースもあります。

また、よく知られている発達障害の特性として、相手の気持ちや表情を正しく理解できないという特徴がありますが、そのために相手の反応を誤解して解釈し、トラブルになることもあります。

また、知的障害の場合には、基本的な性関連の知識の不足、例えば安全なセックスだとか、避妊方法、性感染症のリスクなどについてもよく知らないケースがほとんどで、マスターベーションの方法さえ知らないという方も少なくないということが分かっています。

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明日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における安藤久美子准教授の論説をみていきます。
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(※参考)

(参考。2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より。)

2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要

(ヒアリング)について
以下の6組10名の方から、ヒアリングを実施した。

・桝屋二郎 氏(東京医科大学精神医学分野准教授)

・佐保田美和 氏(Safe Campus代表)、本田義明 氏(Safe Campus)、中村彩夏 氏(Safe Campus

・西田公昭 氏(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)

・安藤久美子 氏(聖マリアンナ医科大学神経精神科学准教授)

矢野恵美 氏(琉球大学法科大学院教授)

金尻カズナ 氏(NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)理事長)、岡恵 氏(理事)、後藤稚菜 氏(相談員)

専門家からのヒアリング
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】【3】)
(※Safe Campus【1】【2】【3】)
(※西田公昭教授【1】【2】)
(※桝屋二郎准教授【1】【2】【3】)
(※安藤久美子准教授【1】【2】)
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(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 ※ヒアリング
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2022年1月26日 第4回刑事法(性犯罪関係)部会・・・予定

(参考。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

(参考。2021年9月16日に上川陽子法務大臣がおこなった諮問)
諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。

第一、相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備
一、刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。
二、刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。
三、相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。
四、刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。
五、配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。
六、性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

第二、性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備
一、より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。
二、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

第三、相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処罰を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備
一、性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。
二、性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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