“改正刑法の叩き台をつくる2回目の会議の議事録”(12) 西田公昭教授が語るマインド・コントロール② 「依存し服従するという選択が合理的な意思決定になる」

昨日のつづきです。
本日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における西田公昭教授の論説を参照します。
刑事法(性犯罪関係)部会は、現在、改正刑法案の叩き台づくりをおこなっています。
同部会が作成した叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。

2021年11月29日 第2回 刑事法(性犯罪関係)部会
専門家からのヒアリング
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】【3】)
(※Safe Campus【1】【2】【3】)
(※西田公昭教授【1】【2】)

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<17~18ページ>
2021年11月29日 西田公昭(立正大学教授)

スライド7枚目

さて、このスライドからは皆さんからの事前質問に対するお答えなので、詳しくは後で読んでいただければ結構かと思いますし、今までの説明の中にも少しは加えてきたつもりですので、簡単にだけ紹介しておきたいのですけれども、最初の質問について、主体性の問題ですね。

(質問)
心理操作を受けている時に、相手によく思われたい、冷たい仕打ちをされたくないなどの気持ちで、被害者が主体的に性交に参加しているが、実質的には性交するかしないかを相手(加害者)が決定している場合の被害者の情報処理・知識や信念はどのような状態であるのでしょうか。本人の自由な意思決定の結果であると言えるのでしょうか

主体的に被害者が参加してしまっているというところの問題なのですが、これは心理学ではどう考えるかというと、人間に完全な自由というものはないと考えています。

一般に自分の意思力というのを過大評価するバイアス(偏向、偏り)というのがあります。
自分がコントロールしているのだと思ってしまっているということなのですけれども、

他者の影響力なんて振り払えるのだと思っていたりすることが、本人的には割とそういうバイアスを持っていることが多いようですが、実際はそのような甘いものではなくて、加害者の影響が強いと、被害者には依存し服従するという選択が合理的な意思決定になる、とみなされるべきだと思います。

つまり、この辺が法律でいう合理性と心理学でいう合理性の違いが表れるところだろうと思います。

スライド8枚目

次の質問ですけれども、

(質問)
一般に、マインドコントロールは、心理操作をする者の権威性と、被害者の集団からの切り離しが行われると言われますが、この権威性や、切り離しに用いられやすい地位・関係性としては、どのようなものがありますか。日本社会における特徴的な事象があれば教えてください。

日本社会における特徴的な問題ですけれども、やはり日本社会というのは年長者、親、先生などとの関係で、権威に従順というのを美徳とする伝統的価値観があります。

この点を考えると、西洋的な法律の体系で説明しても無理があるのではないかと思うのです。

憲法や刑法では「こうだ」ということは誰もが知っていたとしても、例えば宗教を信じていると、神様や神のしもべである牧師やお坊さんといった聖職者たちの権威というのは、法律よりももっと強い権威であると感じているわけなのです。

だから、そこに従うのは当たり前で、法律は人間が作ったものだから大したものではないのだというように規範が変わっていたりしますので、そういった意味でも、日本人は特に、というふうに簡単に言ってはいけないのですけれども、そういう西洋的な、あるいは個人主義的な価値観とは少し異なっており、普遍的にみなしてよいものか、と検討した方がよろしいのではないかというのは個人的には思います。

それから、ターゲットをどのように選んでいるのかというところなのですが、

(質問)
マインドコントロール・心理操作をする人は、どのようにターゲットを選んでいるのでしょうか

基本的に脆弱性のある方が被害に遭いやすいわけであり、今の社会では、SNSとか友人からの紹介等でそのような方を簡単に見付けることはできますので、被害は後を絶たないという事態が起きているのだろうと思います。

スライド10枚目

さらには、マインドコントロールされた結果、加害者になるということが起こり得るのかという御質問ですけれども、

(質問)
加害者がマインドコントロールにかかって加害をするパターンはあり得るか。性意識等については社会的・文化的要素が非常に大きく、加害者が加害行為を正当化するような精神構造についてマインドコントロールで説明をすることが可能かどうかについて伺いたい

これも説明したとおりなのですけれども、
やはり正しいことだと思い込んでしまっているので、積極的に、あるいはそん度して、支配者の望むとおりに行動する、大切な友人や家族であっても陥れてしまうというようなことが起きています。

そして、最後に、グルーミングが先導する性被害等を防ぐためには、類型的に加害者のどのような行為を禁止するべきかという質問が書かれていますが、

(質問)
グルーミングが先行する性被害を防ぐためには、類型的に加害者のどのような行為を禁止する必要があると思いますか。マインドコントロールによる意思に反した性的行為を防止するためには、類型的に加害者のどのような行為を禁止する必要があると思いますか

共通のこととしては、権力とか地位の格差がある場合、それから知識や判断力のない者、身体や心理の脆弱な状態にある者に対して、恋愛交際の目的での接近を禁止するとか、あるいは、指導や相談などの目的がある場合でも、保護的な第三者に事前に告知しておくといったような義務や、監督するような環境作りなどのようなシステムが必要なのかなと私は思っております。

以上です。

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<18ページ>
2021年11月29日 井田良 部会長(中央大学教授)

ありがとうございます。
こちらの方からあらかじめお伝えさせていただいた意見・質問に対してもまとめてお答えくださいましたので、こちらの理解も相当に進んだと感じます。

それでは、御質問のある方はいらっしゃいますか。

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<18ページ>
2021年11月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

本日はありがとうございます。

私からは、例えば、グルーミングやマインドコントロールが行われている過程において、被害者が普通に学校に行っていて日常生活を送っている、けれどもマインドコントロールされている状態で、加害者の呼出しに応じて連れていかれて、本意ではない性的行為をさせられているという状態についてお伺いしたいと思います。

後からマインドコントロールが解けて被害に気付いたときに、周囲から、どうして分からなかったのだとか、なぜ助けを求めなかったのだと言われることも非常に多いと思います。

質問は二つあるのですけれども、一つは、被害の最中に自分で気付いて助けを求めるということができるのかということと、あと、どのような場合にそのマインドコントロールが解けるのかということをお伺いできればと思います。

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<18ページ>
2021年11月29日 西田公昭(立正大学教授)

一つ目の質問(「被害の最中に自分で気付いて助けを求めるということができるのか?」)は、スライドでいうと6枚目になるのでしょうか、図に示したところを御覧いただくといいかもしれないと思います。

つまり、特に感情コントロールの部分ですけれども、関係ができてしまうことによって、相手に対して愛情を感じている、そして、離れること、あるいは突き放される恐怖、そういった気持ちがあるので他人に言えない。

そして、別の説明でいくと、マインドコントロールの手順の中では自己封鎖が起きていて、とにかく人に言ってはいけないというところが規範としても働いているというような操作が行われてしまっているということです。

もう一点(「どのような場合にそのマインドコントロールが解けるのか?」)は、気付く過程ですね。
非常に難しいですけれども、基本的にはやはりこの環境から離れることが一番大きいわけです。
第三者との温かい人間関係が再構築されて、そういう人たちからいろいろ言われる中で気付いていくと。
だから、基本的にそういう過程では受皿になる場所の準備が大事で、相手から離れた場合に、この人がいなくても自分は大丈夫なのだと、幸せに生きていけるのだという新しい保護的な環境をきちんと認識させることが大事だと思います。

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<18ページ>
2021年11月29日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

とてもよく分かりました。
ありがとうございます。

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<18ページ>
2021年11月29日 齋藤梓 委員(公認心理士)

貴重なお話をありがとうございました。

スライド4枚目のマインドコントロールの手順で、既に山本委員のお話でも御回答いただいたような気がするのですけれども、協力的関係まで完成されることは少なく、その手前までのプロセスの方たちってすごく多いかなと思うのですけれども、この完成されていない状態でも、拒否するとか、あるいは自分の状態に気付くというのは難しいことなのでしょうか。

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<18~19ページ>
2021年11月29日 西田公昭(立正大学教授)

そうですね、この手順で行くと、だんだんと難しくなるというところで、どこでという線引きは難しいと思いますけれども、自己封鎖まで行ってしまいますと、規範というものは外部からも簡単には誤りを諭せないし、言わば別世界にいるというような状態になっていると思いますので、これでいう正当化から自己封鎖といったところまで行ってしまうと難しいと思います。

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<19ページ>
2021年11月29日 齋藤梓 委員(公認心理士)

ありがとうございます。

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<19ページ>
2021年11月29日 井田良 部会長(中央大学教授)

よろしいですか。ほかに御質問はございませんか。

それでは、これで終了とさせていただきたいと思います。
西田先生、本日は、非常に分かりやすく、かつ有益なお話をありがとうございました。
お話しいただいた内容につきましては、今後のこの部会の審議に役立たせていただきたいと思います。
委員・幹事を代表して、心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
(後略。)

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明日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における参考人の論説をみていきます。

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より、引用。)

2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要

(ヒアリング)について
以下の6組10名の方から、ヒアリングを実施した。

・桝屋二郎 氏(東京医科大学精神医学分野准教授)

・佐保田美和 氏(Safe Campus代表)、本田義明 氏(Safe Campus)、中村彩夏 氏(Safe Campus

・西田公昭 氏(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)

・安藤久美子 氏(聖マリアンナ医科大学神経精神科学准教授)

矢野恵美 氏(琉球大学法科大学院教授)

金尻カズナ 氏(NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)理事長)、岡恵 氏(理事)、後藤稚菜 氏(相談員)

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(※参考)

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 ※ヒアリング
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2022年1月26日 第4回刑事法(性犯罪関係)部会・・・予定

(参考。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

(参考。2021年9月16日に上川陽子法務大臣がおこなった諮問)
諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。

第一、相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備
一、刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。
二、刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。
三、相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。
四、刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。
五、配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。
六、性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

第二、性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備
一、より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。
二、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

第三、相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処罰を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備
一、性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。
二、性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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