“改正刑法の叩き台をつくる2回目の会議の議事録”(6) 矢野恵美教授が解説するスウェーデン刑法② 「暴行・脅迫要件をなくすだけではなお救えない女性の被害者がいる」

昨日にひきつづき、本日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における矢野恵美教授の論説にふれます。

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より、引用。)

2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要

(ヒアリング)について
以下の6組10名の方から、ヒアリングを実施した。

・桝屋二郎 氏(東京医科大学精神医学分野准教授)

・佐保田美和 氏(Safe Campus代表)、本田義明 氏(Safe Campus)、中村彩夏 氏(Safe Campus

・西田公昭 氏(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)

・安藤久美子 氏(聖マリアンナ医科大学神経精神科学准教授)

矢野恵美 氏(琉球大学法科大学院教授)

金尻カズナ 氏(NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)理事長)、岡恵 氏(理事)、後藤稚菜 氏(相談員)

現在、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会は、刑法の性犯罪規定を改正するための作業をおこなっています。
同部会は、最終的に、改正法案の叩き台を作成します。
この叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。

2021年11月29日 第2回 刑事法(性犯罪関係)部会
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】【2】)

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<29~30ページ>
2021年11月29日 矢野恵美(琉球大学教授)

スライド10枚目

2018年の改正の背景でございますけれども、1995年に女性の安全法が委員会に出されてから、2005年の法改正といった長い時間をかけて2018年の法改正に至ったという背景がありますが、2018年の改正の背景には、いまだに残るジェンダー不平等や若い女性の脆弱性を守る、また、実質的に暴行・脅迫要件をなくすだけではなお救えない女性の被害者がいるという問題意識がありました。

この法案は党派を越えて全会一致で通過しています。

スライド11枚目

法制審議会の報告書のタイトルである「性的完全性のより強固な保護」から分かりますように、より保護を強めるということが議論されました。

そして、2018年の改正では、任意に性行為に参加していない人と性行為がなされたが、強要はしていない、また、加害者が被害者の脆弱性や依存状態を利用してもいない、このような場合を犯罪として捕捉することが目指されました。

逆に言うと、これら任意性以外の要件に当たるものは、絶対に任意であると認められない要件の中に入るわけです。

スライド12枚目

それと同時に、刑法の改正のみならず、例えば、1988年に性犯罪の被害者のために被害者国選弁護人制度を作ったり、1994年に女性のためのワンストップ支援センターを作ったり、同じく1994年に犯罪被害者庁を作ったり、さらに、子どもたちに関する様々な法律や制度を作ったりした上で2018年の改正に至っています。

例えば、子どもに関しては、児童のための特別代理人制度という、被虐待児に監護権行使等も含めた国選弁護人が付くという制度も作っております。

スライド13枚目(ホームページ上は画像非掲載)】

そして、刑法の条文の改正だけではこのような大きい改正ができるとは思っていないという点がスウェーデンの大きな特徴の一つだと思います。

任意に参加」という新しい構成要件を導入するに当たっては、先ほどお話ししました1994年に作られた犯罪被害者庁、これは法務省から独立した犯罪被害者だけを扱う省庁ですけれども、こちらが犯罪被害者に関する様々な広報を行うということを任務としているため、2018年の改正に当たっては、10代向けの特設ページや冊子を作って周知に努めています。

このスライドに載せた写真は、冊子の写真なのですが、「自由意思によって」というタイトルであり、副題として「セックスは常に自発的なものであり、そうでなければ犯罪。ティーンエイジャーは限界がどこまでか知っていますか?あなたは知っていますか?」が付けられており、この冊子は、2019年に、15歳、すなわち性交同意年齢になる子どもたちとその保護者全員に送られました。

スライド14枚目(ホームページ上は画像非掲載)】

また、もう一つの広報としては、このスライドに載せた「同意に基づいて」と書かれたポスターをスウェーデンじゅうに貼るといったようなことを行いました。
このポスターの3人は俳優、eスポーツの有名な人、ミュージシャンといったインフルエンサーだそうです。
このポスターを町じゅうに貼ったことによって、18から25歳の若者の10人に7人にこの情報が届いたという統計が出ています。
要するに、ここでは、メッセージとして、セックスは常に自発的なものであり、そうでなければ犯罪であるということが全面的に打ち出され、子どもたちに対しての教育が行われました。
実際に向こうに住んでいる友人たちに子どもたちのことを聞いたところ、学校で何回もこの教育があったという話がありました。

スライド15枚目】そして、セクシャリティに関しての配慮ですが、セクシャルマイノリティについても、自分たちごとだと思ってほしいので、ここでもレイプという罪名を変えようという提案もありましたが、罪名を変えることによって軽く捉えられてしまっては困るということで、2018年の改正の際に、罪名は変えませんでした。
スライド16枚目】スティルシングについても御質問を頂いたのですが、時間がないので飛ばさせていただきます。
一つ言えることは、スウェーデンの場合はコンドームという男性主体の避妊具ばかりではないということ、また、緊急避妊薬が購入できるなどのことがあるので、スティルシングは必ず犯罪になるとはなっていません。
逆に言うと、コンドームが避妊の主体で、緊急避妊薬が買えない日本ではスウェーデンよりスティルシングの立法の需要があるのかもしれないと考えております。
スライド18枚目

スウェーデンの全体の性犯罪規定の構成ですが、このスライドに書かせていただきましたので、こちらについては後で御覧いただければと思います。
かなり多岐にわたっていることが分かるかと思います。

そして、例えばレイプの中で、通常のレイプ、加重レイプ、深刻でないレイプといったように3段階に分かれています。

スライド19枚目】法定刑に関しましては、通常のレイプ罪の法定刑はかなり重いです。

強盗罪が1年以上6年以下の拘禁であるのに対し、レイプ罪は2年以上6年以下の拘禁となっています。
殺人罪が10年以上18年以下の拘禁又は終身拘禁とされており、とにかくスウェーデンは全体的にとても刑罰が軽くて、レイプはこの中においては非常に重いということを御理解いただければと思います。

スライド21枚目】時間がないので、もう一つの構成要件についてだけお話しさせていただいて、終わりたいと思います。

こちらが条文になります。
法務省の方で訳された仮訳が委員・幹事の皆様のお手元にあると思いますが、私の方の訳を使わせていただきます。
大筋同じで、スウェーデン語から訳すか英語から訳すかというところで少し違いがあるくらいかなと思っています。

スライド22枚目

構成要件を見ますと、まず、「被告人が、被害者と性交又は性交に相当するその他の性的行為を行ったかどうか」について判断されます。

これを行っていなければ、少なくとも1条には当たらず、無罪です。
もちろんほかの軽い犯罪になる可能性はありますが、少なくとも1条としては検討されません。

この行為があったとすると、このスライドに記載した三つの絶対に任意とはみなされない要件があったかどうかが検討されることになります。
こちらがあるとされた場合には、たとえ被害者が任意であったと言っても、レイプとなります。

もしこの三つの絶対に任意とみなされない要件がなかったとなった場合に初めて、被害者の参加が任意であったかどうかの判断に進みます。

スライド23枚目】そして、被害者の参加が任意であったと分かれば、無罪となります。

任意ではなかったとなったとき、次に、初めて加害者の方の話になります。

加害者が被害者が任意に参加していなかったことを理解していたか。
理解していればレイプになります。
理解していなければ、今度は任意に参加していないリスクを被告人・加害者が知っていたか、又は知っているべきであったかについて判断し、これが否定されると、無罪となります。

そして、これが認められると、もう一つ進みます。
今度は被害者が任意に参加したかどうかにかかわらず、被告人がそのリスクに無関心であったかどうかを最終的に判断し、無関心でなかったのであれば過失レイプ罪となります。

そして、無関心であったのであれば、故意が肯定される類型に当たりますので、レイプとなるといったような判断になります。

時間が過ぎておりますので、簡単ではございますが、ここまでで私の説明とさせていただきます。
ありがとうございました。

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スウェーデンの刑法につきましては、NHKの記事も参考になります。

(NHK)
□2020年5月1日
 クロ現+
 刑法を知っていますか① YES以外はすべてNO ~スウェーデン“希望の法”~

明日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における矢野恵美教授の論説をみてみます。
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(※参考)

(参考。当ブログ)
<2016年9月12日の第83回女性に対する暴力に関する専門調査会における矢野恵美教授の発言>
2021年12月10日(その1)
2021年12月12日(その2)
2021年12月13日(その3)

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2022年1月26日 第4回刑事法(性犯罪関係)部会・・・予定

(参考。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

(参考。2021年9月16日に上川陽子法務大臣がおこなった諮問)
諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。

第一、相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備
一、刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法第178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。
二、刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。
三、相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。
四、刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。
五、配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。
六、性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

第二、性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備
一、より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。
二、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

第三、相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処罰を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備
一、性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。
二、性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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