“改正刑法の叩き台をつくる2回目の会議の議事録”(5) 矢野恵美教授が解説するスウェーデン刑法① 「13年の月日を経て、2018年にようやくそこにたどり着いた」

先月(2021年11月)の29日に、刑事法(性犯罪関係)部会の2回目の会議がおこなわれました。

(確認。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

議題は、専門家からのヒアリングでした。

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より、引用。)

2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要

(ヒアリング)について
以下の6組10名の方から、ヒアリングを実施した。

・桝屋二郎 氏(東京医科大学精神医学分野准教授)

・佐保田美和 氏(Safe Campus代表)、本田義明 氏(Safe Campus)、中村彩夏 氏(Safe Campus

・西田公昭 氏(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)

・安藤久美子 氏(聖マリアンナ医科大学神経精神科学准教授)

矢野恵美 氏(琉球大学法科大学院教授)

金尻カズナ 氏(NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)理事長)、岡恵 氏(理事)、後藤稚菜 氏(相談員)

現在、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会は、刑法の性犯罪規定を改正するための作業をおこなっています。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2022年1月26日 第4回刑事法(性犯罪関係)部会・・・予定

刑事法(性犯罪関係)部会は、最終的に、改正法案の叩き台を作成します。
この叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。

本日は、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における矢野恵美教授の論説を参照します。
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ちなみに、矢野恵美教授は、以前(2016年9月12日)、AV出演強要問題に関する内閣府のヒアリングで、所論をのべたことがあります。

(参考。当ブログ)
<第83回女性に対する暴力に関する専門調査会における矢野恵美教授の発言>
2021年12月10日(その1)
2021年12月12日(その2)
2021年12月13日(その3)
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2021年11月29日 第2回 刑事法(性犯罪関係)部会
(※ぱっぷす【1】【2】【3】【4】)
(※矢野恵美教授【1】)

(2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<27ページ>
2021年11月29日 井田良 部会長(中央大学教授)

(前略。)
5番目の方は、矢野恵美先生です。
スウェーデン刑法における性犯罪規定についてお話を頂きます。
本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。
まず15分程度お話を伺い、その後、委員・幹事の方から質問があれば10分程度質問させていただくという形で進めてまいりたいと思います。
よろしくお願いいたします。

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<27~28ページ>
2021年11月29日 矢野恵美(琉球大学教授)

よろしくお願いいたします。
琉球大学の矢野と申します。
ただ今、井田部会長から御紹介いただきましたとおり、本日は、スウェーデンにおける性犯罪規定、取り分け2018年に「任意に参加」という新しい構成要件を設けた改正を中心に、時間の許す限り説明させていただきたいと思います。
【矢野恵美氏提出資料:スライド2枚目】(以下、矢野氏発言部分中の【 】内は、同資料のスライドの位置を示す。)

御質問をかなりたくさん頂きまして、ありがとうございます。
全て細かくお答えしたいところなのですが、そうしますと恐らく15分では終わらないであろうと思います。

スライド3枚目

そのため、大変申し訳ありませんが、御質問を内容ごとに大きく三つに分けさせていただき、御紹介させていただきます。

一番多く御質問いただいたのは、2018年に「任意に参加」という形に条文を改正したことについて、なぜそういうことができたのかという背景や、そのことによって何が起こったか、また、どのような反対意見があったのかといったようなことに関するものです。
こちらに関する御質問が一番多かったので、この話を最初にさせていただきたいと思います。

続きまして、その新しい条文です。
スウェーデンの場合は章ごとに1条から始まります。
性犯罪は刑法の6章に規定されておりますので、6章の1条から始まります。
そして、6章の1条が、御紹介させていただきました、「任意に参加」という新しい構成要件になりますので、そちらの内容と、最後はそれに伴いまして、1条aに過失レイプ罪という新しい犯罪類型が加わっておりますので、こちらについて、もう一つの資料を使って御説明できればと思っております。

スライド4枚目

今回の改正をなし得た背景でございますけれども、現行のスウェーデンの刑法は、1962年に作られ、1965年に施行されました。
そこから現在までの間、6章の性犯罪規定は大きなものだけで1984年、1998年、2005年、2013年、そして2018年と度重なる改正を重ねております。
これはスウェーデンの刑法全てに共通するということではございません。

スウェーデン刑法の中でも取り分け性犯罪規定は多くの改正を経たといわれております。
それはすなわち、性犯罪規定がやはりその社会の性犯罪に関する考え方といったようなものに影響を受ける、あるいは、その社会の考え方と関係があると考えられているからです。

スライド5枚目

具体的に少しだけ御紹介させていただきます。まず、現行刑法ができたときですが、6章は「性犯罪」というタイトルではなく、「道徳に対する犯罪」というタイトルでした。
この当時の6章の1条は、今と同じ罪名でした。
今はレイプと訳しておりますけれども、当時は強姦罪と訳させていただいていました。
これはつまり、日本の2017年の改正前の強姦罪、男性から女性に対する姦淫にかなり近い内容になっていました。
この現行刑法ができる前、性犯罪は婚姻制度の維持といったものが保護法益と考えられていました。
それが、現行刑法になったときに、性犯罪の保護法益は、性的自己決定権なのであり、婚姻制度の維持といったものではないのだというように改正されたのですが、それでもなお道徳色が残っています。
現在も、両親が同じ兄弟姉妹との性交は犯罪です。
あとは、既に廃止されていますが、同性間の性交が犯罪であったこともありました。
ただし、夫婦間強姦、いわゆるパートナー間の性犯罪については、軽くするけれども犯罪であるという規定が作られ、性犯罪の保護法益は婚姻制度の維持ではないということが表明されていました。
当時は親告罪です。

スライド6枚目

それが、1984年の大改正では、今回の日本の強制性交等罪のように、性別を問わない、ただし日本の強制性交等罪は被害者か加害者のいずれかに男性器がなければいけないという制限はございますけれども、それもなく、要するに、いわゆるジェンダー・ニュートラル化がなされ、被害者、加害者の性別は問わないし、もちろんセクシャリティも問わないというものになりました。

この1984年の改正では、夫婦間強姦は、現行刑法制定時には軽いけれども罰するとありましたが、それもなくなりまして、被害者と加害者の関係性は問わないという形になりました。

さらに、非親告罪化が行われました。
道徳色の払拭については相変わらずで、例えば両親が同じ兄弟姉妹との性交は現在も残っておりますので、完全に払拭できたとはいえないとされております。

スライド7枚目

続きまして、1998年改正です。
これについては、時間がございませんので、詳しくは御紹介できませんが、1998年の改正時には刑法の改正だけではなくて、女性に対する暴力として、具体的に、例えば刑法の中にDV罪を作っております。
1995年の北京女性会議等もあり、女性の安全に関する様々な立法がなされ、その中で性犯罪についても、よりレイプの概念を広げる、女性の被害者の保護ということを強く打ち出すということが行われた改正になります。

スライド8枚目

そして、2005年改正では、更に広いレイプ概念が導入され、この際にも女性の被害者保護や児童の保護といったことが改正の目的として掲げられました。

そして、この改正によって、暴行・脅迫要件は条文には残っているのだけれども、それは限りなく軽いものになったという解説がなされています。
2018年の改正の下地は2005年が一つの端緒になっておりますので、スウェーデンにおいても「任意に参加」という形に条文を変更するのは容易ではなかったことが分かります。

実に13年の月日を経て、2018年にようやくそこにたどり着いたという経緯がございます。

もう少し具体的に申しますと、2005年の改正の後、2008年ぐらいに暴行・脅迫要件をなくした条文の形というものが具体的に提案されていましたが、やはり実際に法制化するには更に10年の月日を要しました。

スライド9枚目

いよいよ2018年改正です。

この改正の際に、6章1条のレイプ概念の見直しが行われました。

後で説明しますが、ここで、絶対に任意参加とみなされない類型というものが例示されました。

この絶対に任意参加とみなされない類型というのは、これまでのレイプ、若しくは少しレイプより軽い犯罪、性的侵害罪の中に含まれていた要件を全部ここに持ってきたというもので、新しく作ったものではありません。

今までに犯罪になっていたものを1条に持ってきて、任意参加とみなされない類型の例示とし、そのほかに、「任意参加」という構成要件を加えたという形です。

さらに、1条aでは過失レイプ罪、厳密にいいますと(重)過失レイプが創設されました。
ここでは罪名の変更も提案されたのですが、元々の罪名に性別を問うようなものや姦淫を連想させるようなものがなかったので、変更によって、かえって軽くなったと勘違いされてはいけないということで、結局用語の変更は行われませんでした。

明日も、第2回刑事法(性犯罪関係)部会における矢野恵美教授の論説をみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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