暴行・脅迫要件は撤廃されるのか(その17)。「被害者の意思に反する性行為は犯罪であり、これを罰する必要がある」「検討会でも全く異論がなかった」

刑法の性犯罪規定のなかには、性犯罪者(犯人)にとって有利な文言が明記されています。
具体的には、
「暴行・脅迫」、
「抗拒不能」
などの要件です。
現在、法務省は、この要件を改正する作業を進めています。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会(※予定)

性犯罪に関する刑事法検討会

本日もひきつづき、性犯罪に関する刑事法検討会で、暴行・脅迫要件、さらには抗拒不能要件についてどのような論議がなされたのかをみていきます。

暴行・脅迫要件の改正に関する論議(その17)
(※その1その2その3その4その5その6その7その8その9その10その11その12その13|その14|その15その16

その1その2その3その4その5|・・・2020年8月27日 第5回 性犯罪に関する刑事法検討会(※巡目の論議)
その6その7その8その9その10その11その12その13その14その15|・・・2020年11月10日 第8回 性犯罪に関する刑事法検討会(※巡目の論議)
その16|その17|・・・2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会(※巡目の論議)

(2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)

<31~32ページ>
2021年2月16日 橋爪隆 委員(東京大学教授)

以前の会議でも申し上げた点ですが、被害者の意思に反する性行為は犯罪であり、これを罰する必要があることは当然であると思いますし、検討会においてもこの点については全く異論がなかったと考えております。
飽くまでも検討会における課題は、意思に反する性行為を処罰するためにどのような規定形式が最も適切かという立法技術の問題であるということを、まず改めて確認しておきたいと存じます。
そして、いかなる処罰規定を設けることが適当かを考える上では、次の3点が重要であると考えております。

(1)

第一に、被害者の意思に明確に反する性行為を取りこぼすことなく処罰対象にすること、

(2)

第二に、先ほどから御指摘がありましたように、処罰すべきでないものが処罰対象に含まれないような規定ぶりを考えること、

(3)

第三に、法的安定性を十分に担保できるような規定とすることです。

第三の法的安定性に関して付言しますと、これは、裁判体の構成によって判断がぶれることを可及的に回避し、判断者が異なっても同一の結論が導かれるような規定が好ましいという趣旨で申し上げました。

以上三つの観点から考えますと、やはり私は、不同意自体を構成要件の要素とするのではなく、
行為態様や被害者の心理状態を具体的に規定することによって、被害者に不当な影響を及ぼし、その意思決定をゆがめたと評価できる場合を捕捉する構成要件を規定することがより適切であると考えています。
このように考える理由を申し上げます。

仮に不同意のみを要件とした場合、不同意の内実を具体的に明らかにする作業が必要になりますが、これを言語化することは必ずしも容易ではないと考えています。

二つ具体的な例を挙げたいと存じます。

第一に、これは前回から議論がございましたけれども、錯誤による同意の問題です。

例えば、成人同士の関係において結婚すると相手をだまして性行為を行った場合であり、仮に結婚する気がないと知っていれば性行為に応じなかった、その意味では性交に関する同意がなかったといえる場合ですが、このようなケースまでを罰することが適当ではないことについては、基本的に見解の一致があると承知しています。

もっとも、裁判例の事案でありますけれども、性病に感染していると被害者をだまし、治療と偽って性行為を行う必要があると信じ込ませて性行為を行った場合については、錯誤を利用する場合ではありますが、当然に性犯罪の成立を肯定すべきです。

つまり、錯誤によって同意を得た場合についても、その手段や被害者側の心理状態によって結論が異なってくるわけです。

もう1点、具体的な例を挙げたいと存じます。

先ほど山本委員からも御指摘がありましたが、被害者がいろいろ悩みながら最終的に性行為を受け入れたケースというのも、恐らく多様なケースがあると思うのです。

先ほど、地位・関係性に関する議論でも指摘がありましたけれども、例えば、上司から性交に応じなければ解雇するなどと言われて、生活を守るためにやむを得ず性行為に応ずるような場合については、性行為は真意に反するものであり、犯罪の成立を肯定すべきです。

しかし、余りいい例ではありませんけれども、ここで上司の誘いに応じておけば昇進等の見返りが期待できるかもしれないと思い、本心では上司との性行為は心底嫌だけれども、いろいろ考えた挙げ句に最終的には自分の判断として性行為を受け入れたような場合については、その意思形成過程によっては、処罰を否定すべき場合もあり得るように思われます。

ここではシンプルな例を挙げましたが、恐らく現実の事例はもっと複雑かつ多様であるように思われ、そこでは一律に判断することは困難であり、やはり個別の事案ごとに行為態様や関係性、さらに被害者の心理状態に基づく限界設定が不可欠になってきます。

私が申し上げたいのは、このように同意・不同意の限界設定は極めて微妙かつ不安定である以上、不同意それ自体を問題にするのではなく、

個別の行為態様、関係性、被害者の心理状態等を具体的に規定した方が適切に限界を画し得るのではなかろうかという点に尽きます。
もし仮に不同意のみを要件として刑罰法規を規定した場合、人間の意思決定や心理状態が微妙なものである点に鑑みると、裁判所による同意・不同意の認定が現行法以上にぶれてしまい、結果的に被害者に負担が生ずることも懸念されます。
繰り返し申し上げますが、意思に反する性行為を処罰の根拠にするということと、これをどのような規定形式によって実現するかということは、分けて検討する必要があるという点につきまして、御理解をお願いできればと存じます。

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<32~33ページ>
2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)

時間が来ておりますので、今日のところはひとまずここまでとさせていただいて、この論点(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方)については次回の第13回の会合において引き続き議論を行った上で、次の論点の検討に移りたいと考えております。

次回の会合では、本日のテーマ4(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方)についての議論を継続して行った上で、さらに、強制性交等の罪の対象となる行為の範囲、法定刑の在り方、配偶者間等の性的行為に関する処罰規定の在り方、性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方などについて、三巡目の検討を行いたいと考えておりますが、そのような進め方をさせていただくということでよろしいでしょうか。

(一同了承)

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<33ページ>
2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)

ありがとうございます。

それでは、そのように進めさせていただきます。

次回の会合で取り上げる論点につきましても、本日同様、二巡目までの議論における委員の皆様の御意見を整理したものを次回会合に先立って委員の皆様にお送りして、前もって御検討いただくことにしたいと思います。

本日の議事は、これで終了いたしました。

委員の御発言の中で、山本委員提出資料のうち、「アンケート別表」については、内容が被害の具体的状況にわたるため非公開としてほしいという要望を事前に承っておりますので、プライバシー保護の観点から非公表としたいと考えております。
それ以外には特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので、発言者を明らかにした議事録を作成して公表したいと思います。
そのような扱いでよろしいでしょうか。

(一同了承)

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<33ページ>
2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)

ありがとうございます。
それでは、そのような取扱いをさせていただきます。

では、次回の予定について事務当局から説明をお願いします。

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<33ページ>
2021年2月16日 浅沼 刑事法制企画官

第13回会合は、3月8日月曜日、午後1時30分から開催を予定しております。
次回会合の方式につきましては、追って事務当局から御連絡申し上げます。

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<33ページ>
2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)

本日はこれにて閉会といたします。

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(再掲。橋爪隆 委員【東京大学教授】)
被害者の意思に反する性行為は犯罪であり、これを罰する必要があることは当然であると思いますし、検討会においてもこの点については全く異論がなかった

(再掲。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会(※予定)

上川陽子法務大臣が諮問

上川陽子法務大臣は先日(2021年9月16日)、法制審議会に対して、以下の10項目の改正を諮問しました。

(確認。組織図)
法務省
 |(設置)
法制審議会
 |(設置)
刑事法(性犯罪関係)部会

(2021年9月16日 上川陽子法務大臣 諮問第117号より、引用。)

2021年9月16日 諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。
     記
第1 相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備

刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

第178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
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刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
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相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。

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刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
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配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。

(参考。現行刑法)
第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
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性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

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第2 性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備

より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。

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被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

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第3 相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処置を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備

性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。

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性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

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(再掲。諮問第117号
2021年9月16日 上川陽子 法務大臣
刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること

(再掲。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 刑法の性犯罪規定の改正に関する取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年11月29日 第2回刑事法(性犯罪関係)部会
  ・2021年12月27日 第3回刑事法(性犯罪関係)部会(※予定)

法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会

上川陽子法務大臣の諮問をうけて、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会は、改正法案の叩き台づくりをおこなっています。
この叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。
同部会は、どのような叩き台をつくるのでしょうか。
刮目(かつもく)して待っています。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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