暴行・脅迫要件は撤廃されるのか(その8)。「暴行・脅迫だけでは非常に問題がある」「抵抗したかどうかだけで、本人の意思を図ることはできない」

日本の刑法の性犯罪規定は、性犯罪を取り締まるどころか、性犯罪を助長するきまりとなっています。
日本は性犯罪者にとって、「天国」です。
性犯罪をおこなっても滅多なことでは捕まりません。
刑法が、性犯罪をしても良いよ、と言っているのですから。
いまこの稀代の悪法が改正されようとしています。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会

上川陽子法務大臣は先日(2021年9月16日)、法制審議会に対して、以下の10項目の改正を諮問しました。

(2021年9月16日 上川陽子法務大臣 諮問第117号より、引用。)

2021年9月16日 諮問第117号

近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると思われるので、左記の事項を始め、法整備の在り方について、御意見を承りたい。
     記
第1 相手方の意思に反する性交等及びわいせつな行為に係る被害の実態に応じた適切な処罰を確保するための刑事実体法の整備

刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

第178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
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刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
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相手方の脆弱性や地位・関係性を利用して行われる性交等及びわいせつな行為に係る罪を新設すること。

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刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いを見直すこと。

(参考。現行刑法)
第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
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配偶者間において刑法第177条の罪等が成立することを明確化すること。

(参考。現行刑法)
第177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
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性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること。

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第2 性犯罪の被害の実態に応じた適切な公訴権行使を可能とするための刑事手続法の整備

より長期間にわたって訴追の機会を確保するため公訴時効を見直すこと。

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被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること。

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第3 相手方の意思に反する性的姿態の撮影行為等に対する適切な処置を確保し、その画像等を確実に剥奪できるようにするための実体法及び手続法の整備

性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること。

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性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること。

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(再掲。諮問第117号
2021年9月16日 上川陽子 法務大臣
刑法第176条前段及び第177条前段に規定する暴行及び脅迫の要件並びに同法178条に規定する心神喪失及び抗拒不能の要件を改正すること

本日もひきつづき、前段の性犯罪に関する刑事法検討会で、暴行・脅迫要件、さらには抗拒不能要件についてどのような論議がなされたのかをみていきます。

暴行・脅迫要件の改正に関する論議(その8)
(※その1その2その3その4その5その6) | その7) |

その1その2その3その4その5 | ・・・2020年8月27日 第5回 性犯罪に関する刑事法検討会
その6その7 | その8 | ・・・2020年11月10日 第8回 性犯罪に関する刑事法検討会

(2020年11月10日 第8回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)

<7ページ>
2020年11月10日 小島妙子 委員(弁護士)

加害者の行為の側からではなく、被害者に生じている法益侵害の側から性犯罪を考えると、暴行・脅迫を手段とする行為に限定する理由はないという従来とは異なる考え方に立って不同意性交を処罰するということを、条文上明らかにする必要があると考えております。

(参考。刑法)
177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

暴行・脅迫要件は撤廃して、意に反する性交を構成要件とするような刑法改正が必要です。
一方で、不同意については、内心の要素にとどまらず、それを徴表する具体的な行為や状況との関連で判断するアプローチを取らなければなりません。

構成要件の中に客観的な要素を盛り込む必要があります。

禁止される行為を明確にするという趣旨です。

不同意となり得る客観的な要素、手段とか状況について、何を盛り込むかは議論があると思いますけれども、例えば、威迫、不意打ち、驚愕、欺罔、監禁等の手段や、飲酒、障害による影響などの状況など、具体的な、客観的な要素を構成要件に書き込むこと、典型例を構成要件に明示することが必要であると考えます。

故意の問題もあります。

行為者において、被害者の不同意について故意を有する必要があります。
構成要件的錯誤は理由の相当性を問うことなく故意を阻却してしまうので、不同意性交罪を設けても機能しないおそれがあります。
これを回避する法技術として、構成要件に客観的要素を盛り込むという手段が有効です。

本日、日弁連の犯罪被害者支援委員会が作成した被害者代理人のアンケート調査を資料(小島委員提出の「改正刑法(性犯罪関係)に関する被害者代理人アンケート調査」と題する資料)(※非公開)として提出しました。

暴行・脅迫要件がネックとなって無罪となった事案ないし事件化できなかった事案が40件ほどあり、弁護士が支援しても、なお約3割あったということで、12ページから14ページに具体的な事例が掲載されております。
改正への意見としても、不同意性交罪を制定すべきだという意見が多数寄せられておりますので、御覧になっていただければと存じます。

また、日本学術会議の提案も、同意の有無を中核とする犯罪を規定するべきだと、同意なき性交は犯罪になるということを明示してもらいたいと提言しています。

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<7~8ページ>
2020年11月10日 齋藤梓 委員(臨床心理士)

同意の有無について言及していただきたいのはなぜかといえば、セックスとレイプを分けるものが同意の有無であり、性行為それ自体は犯罪行為ではないことはもちろんなのですけれども、同意のない性行為は、性行為ではなく暴力だということが理解されていないからです。

理解されていないために、被害者も自分が深刻な傷を負っているにもかかわらず暴力だと認識できず、加害者も自分の行為が相手を死に至らしめる可能性さえあるかもしれないということを認識できていないということは、問題ではないかと思います。

もちろん、どこまでを処罰すべきかという点について踏み込んだ議論が必要だということには賛同いたします。

諸外国でも、対等な関係性で暴力を伴わない言語的な強制といったときには、同意についてどう考えるかというのは、いまだ議論されているところです。

しかし、それは、だから同意の有無を構成要件とすべきではないということではなくて、同意の有無が重要であるということを明記した上で、加害者の用いる手段であるとか、被害者の状態や加害者と被害者との関係性といったことによって、どのようにそれが示されるかということを検討するということの方が、重要なのではないかと思っております。

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<8ページ>
2020年11月10日 木村光江 委員(東京都立大学教授)

確かに、現状では、暴行・脅迫要件だけでは狭過ぎるというのは、そのとおりだと思います。

では、どう広げるかということなのですけれども、先ほどから御議論があるように、同意がない場合の全てを入れてしまうと、実は、かなり大変なことになるのではないかというふうに思います。

先ほど、渡邊委員から御発言があったように、安定的な法適用が難しくなるというふうに思います。

ですので、不同意というのを正面から書くのは結構難しいのかなというふうに思っています。

ただ、暴行・脅迫だけでは狭いのはそのとおりなので、例えば、抵抗が困難な状態のようなことは入れてもいいのかと思います。

そうしますと、事実上、178条(準強制性交等罪)の一部も取り込むことになるのかもしれないのですけれども、

(参考。刑法)
178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。

薬物の使用なども入れてもいいのかもしれません。

ですから、暴行・脅迫、あるいは薬物等を用いてなどというふうにある程度具体化する必要があるのかなというふうに思います。

欺罔まで入れるのはどうかというような議論が先ほどありましたけれども、一般に178条(準強制性交等罪)で欺罔が問題になるような場合というのは、霊感治療みたいなものがあると思うのですけれども、それは、事実上脅迫に近いようなものなので、脅迫をすごく狭いものとして捉えない限りは、ある程度拾えるのではないかというふうに思います。

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<8ページ>
2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)

現行法でも、そうした欺罔の類型というのは、ほかの事情とあいまって、抗拒不能という要件に当たるという解釈がなされていると思われますので、そこでカバーするということは可能だと思われます。

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<8~9ページ>
2020年11月10日 小西聖子 委員(武蔵野大学教授)

暴行・脅迫要件が狭過ぎるということは、間違いなくそうだと思っています。

その要件をどういうふうに具体化するかというところは、かなり議論していただく必要があり、今までの法的なモデルで被害のことを考えると、現状からかなり離れてしまいます。

今、実際に被害者の実情を知る者の発言が相次いでいるのは、こういうモデルを使って話していただくと、すごく現実から離れていく印象があって、とても危惧を覚えるのですね。

だから、どうしてもこういうことを言いたくなるのだということは、御理解ください。

例えば、暴行・脅迫だけでは非常に問題があるということの典型的な例は、前に少しお話ししましたが、バイオロジカルの反応で人は抵抗しないということが、実際に、本当に珍しくなくよく起こっているということですね。

全く動けなくなるとか、感情や感覚がなくなるとか、こういうことの基盤に生物学的・進化学的な反応があるということは、もう広く専門家に受け入れられている事実です。

そういうときの行動として、人は意思と行動が一致するだろうと考えるのは、非常に実態と反したモデルであり、実態に沿って考えるというのであれば、危機、特に性暴力の被害のときには、そういうふうに動くものであるということを取り入れていただかないといけないと思います。

今までの議論は、非常に常識的ではないことをただ言っているだけなのかもしれませんけれども、だからこそ、うまく拾えていないのだということを、やはり少しお話ししておきたいと思います。
抵抗したかどうかだけで、本人の意思を図ることはできないということは、繰り返しお話ししておきたいと思いました。

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<9~11ページ>
2020年11月10日 宮田桂子 委員(弁護士)

要件の検討の前提となる部分についての意見です。

解釈の不統一が起きている、これは、条文の使い勝手が悪い、あるいは、裁判所や検察官の偏見があるからだという見方は確かにあるかと思います。

しかしながら、この暴行・脅迫要件や心神喪失・抗拒不能の要件、あるいは地位・関係性の要件について考える議論の前提として、性犯罪についての裁判所の考え方が共有できていないという非常に大きな問題を共通認識にしていただかなければならないと思っています。

性犯罪の裁判例は、裁判所のデータベースには掲載されません。
最高裁のホームページに掲載される裁判例については、平成13年の最高裁の広報課長の事務連絡では、プライバシーに高度の注意を要するとともに、掲載によって被害者感情を著しく害するものなどについて考慮するようにとされました。
この頃から、性犯罪の裁判例の掲載例が非常に減ったように思われますけれども、平成29年の「下級裁判所判例集に掲載する裁判例の選別基準等について」という事務連絡では、明確に性犯罪について、掲載は原則としてしないと記載されています。
すなわち、性犯罪、起訴した罪名は性犯罪でなくても実質的に性犯罪と同視できる事件を含む事件については、被害者などに大きな精神的な被害を与えるおそれがあるから、判決書を公開しないことになっています。

一方で、民間のデータベースである判例秘書とかレックス(LEX)などがありますけれども、これは、関係者からの情報提供で判決が掲載されます。

そうすると、弁護人は、無罪事件について、これは成果だから載せてくれと言い、被害者側からは、これは不当だから知らしめてくれと言う。
そうすると、性犯罪については、事実が認められた事件、特に被告人が自白して、淡々と事件が進んで事実関係が認められてしまった事件については、データベース上に裁判例が載りません。

今回の検討会で、非公開資料とはなりましたけれども、裁判例を幾つか挙げていただきました。
検察官が公訴事実の構成や立証に工夫を凝らし、また、裁判所も積極的に認定をしたような事例は、少なからずあった。
しかしながら、このようなデータベースの扱いによって、こういう前例があるから適用するべきだと具体例を挙げられない、あるいは、裁判所が、過去のそういう例を見つけて積極的に認定をすることができなかった、そういう事態があったことは、共通認識にしていただきたいと思います。

また、解釈の統一という意味では、裁判所の研究機関である司法研修所の司法研究という論文とか、あるいは、判例タイムズなどの雑誌に、裁判官がこのように事実認定が行われてきたという形で論文を発表することが解釈の統一に非常に大きな役割を果たしています。
そして、そういうものが発表されることによって、学界からフィードバックがされることがあるわけですけれども、性犯罪に関しては、裁判所側からの研究成果が出されていなかったという問題があります。

つまり、性犯罪について、裁判例の紹介がされずに、そして、裁判官などの法律実務家が研究して発表することが、言わばタブーになってきた。
それが、解釈の不統一を招く一つの原因になってきたのではないか。
これは、共通認識にされるべきことではないかと考えています。

その上で、この暴行・脅迫要件の撤廃の部分についてですが、保護法益をどう捉えるかは別として、性的な行為というのは、人間のコミュニケーションの一つの手段です。
そして、実際に性行為をするまでのコミュニケーションの在り方というのも様々です。
そういう中で、するべきではない行為としてもいい行為の間には、様々なグラデーションがあり、例えば、民事の損害賠償の対象となる事件、あるいはセクハラなどで懲戒解雇をすべき事件があり、刑罰をもって対処するというのは、言わば最終手段であることを忘れてはならないと思います。

国家が人に対して刑罰権を行使するという強烈な制裁を行う以上は、正当化できるだけの当罰性がある行為を考える必要があるわけですが、この処罰すべき範囲、「③」の一番上の「○」の「Yes means Yes」型が妥当ではないかという考え方ですけれども、

参考
③ 暴行・脅迫等の要件の撤廃や「不同意」を要件とすることの要否・当否

○ 性交は双方が合意を形成しながら互いに参加して行うものであるから、同意のない性交は処罰されるべきであって、被害者に抵抗や拒絶の意思表示を求めるのではなく、「Yes means Yes」型、すなわち、自発的に参加していない人に対してした性交を処罰の対象とすべき。

性行為について、やります、どうぞというやり取りはほぼない。
ノンバーバルなコミュニケーションの中で、相手はやってもいいと思っているのだと思って性行為をするということは、よく起こることで、そういうときに、一方は嫌だった、しかしながら、一方はそうとは思わなかったという、ボタンの掛け違いはどうしても起きてしまう。
それを全て処罰の対象と見るべきかといえば、そうではないのではないかと思います。

そして、同意なき性交について、同意がなかったという供述では足りないということについては、渡邊委員から客観的要件がなければ無理だというお話が、小島委員から客観的要件を考えていくべきだというお話がありましたけれども、要は、被害者の言っていることについて、客観的な証拠があるかどうかというのが、非常に重要な問題になってくるわけです。

被害者からは被害者の抵抗を求めたとして批判の多い平成21年4月14日、平成23年7月25日の最高裁判決ですけれども、この判決は、客観的な事実や他の客観的な証拠とのそごがあるかどうかによって、被告人の言い分が正しいのか、被害者の供述が正しいのかを判断すべきだとした判決です。
この判決がいうように、同意なき性交罪ができたとしても、証拠法上、被害者の言い分を裏付けるような証拠があるかどうかということは、極めて重要であって、そうすると、その点について、証拠がなかった事件については、同意なき性交罪を作ったとしても、救済はされない可能性があるということです。

そして、同意なき性交罪について、各国の法制を見てみると、こういう場合に同意がないだろうという間接事実を例示列挙しているという形になりますが、例示には必ず漏れが出てくると思います。

その漏れがあったときには、例えば、こういう行為があった場合には被害者が畏怖していたものとして処罰するというような形で、何かその例示の外枠を画するためのものが必要であり、そういう意味で、暴行・脅迫とか抗拒不能といった抽象概念が必要になるのだと思っています。

そして、間接事実の例示による立法の場合には、間接事実の有無が争点になるので、この事実があったか、この事実がなかったか、この事実に対応する別のこんな事実もあるぞという形で、争点が拡散していく危険もあるのではないかと考えています。

また、この議論の前提として、刑をどのように考えるのかということを考えなければならないと思っています。
同意なき性交罪という構成要件を置いている各国の罰則は、非常に軽いということです。
ドイツの場合は2年以上の自由刑、スウェーデンでは過失だと4年以下の拘禁刑、故意であっても2年以上6年以下の拘禁刑とされています。
たとえ軽い処罰であっても、広く罰して、このような行為はいけないのだということを示すことが重要なのか、あるいは、狭くてもいいから重く処罰することが重要なのかというような考え方の整理も、必要なのではないかと思います。

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<11ページ>
2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)

今の御発言の中には、むしろ、次の論点のところでお話しいただくべき御指摘もあったかと思いました。

さて、第1の2の「(1)」についてはいろいろと御意見を頂きましたけれども、あえてまとめるとすると、暴行・脅迫要件、あるいは心神喪失・抗拒不能の要件を撤廃するかどうかは別にして、いずれにしても処罰すべき不同意性交を過不足なく捉えられるような、より良い文言を考えるべきなのではないかという点では、多くの委員の御意見は一致しているのではないかというふうにお聞きしました。

そこで、もう次の論点に入っているわけですけれども、第1の2の「(1)」(「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件を撤廃し、被害者が性交等に同意していないことを構成要件とすべきか」)についての議論はこのぐらいにして、第1の2の「(2)」、すなわち、
「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件について、判例上必要とされる「被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度」を緩和した要件とすべきか」
という点についての議論に移らせていただきたいと思います。

一巡目(2020年8月27日)では、
「① 「抗拒を著しく困難にさせる程度」を緩和することの要否・当否」、
さらには、
「② 法定刑のより軽い類型を創設することの要否・当否」
という観点から御意見を頂いております。

先ほどと同様に、どのような観点からの御意見であるかを明示して、御意見を頂きたいと思います。

それでは、御意見のある方は、御発言をお願いします。

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<11~12ページ>
2020年11月10日 上谷さくら 委員(弁護士)

先ほどの「(1)」の「③」暴行・脅迫等の要件の撤廃や「不同意」を要件とすることの要否・当否とも関連した形になるかと思うのですけれども、私は、今の暴行・脅迫要件とか心神喪失・抗拒不能要件だけというのは、非常に狭過ぎると思っています。

現状ですと、暴行・脅迫要件や心神喪失・抗拒不能要件に当たれば懲役5年以上、当たらなければ不起訴ということになっていて、極端過ぎるのですよね。

被害者の方によく言われて、もっともだなと思うのは、不起訴になった場合、「あれだけひどいことをしたのに、私がされたことは痴漢以下なのでしょうか」ということです。

「痴漢でも公判は行われているのに、私の被害は裁判さえ行われていない」というのはそのとおりで、性犯罪は明らかに類型が少な過ぎると思うのですね。

やはり、その原因としては、今の暴行・脅迫要件の文言と判例解釈にあると思っています。

ただ、私は、今の177条(強制性交等罪)の基本的な枠組みは維持した方がいいのではないかと思っていて、

(参考。刑法)
177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

3年前に刑法を改正したばかりで、その改正点は、それなりの評価を受けて、今定着しつつあると思っています。

その部分については、実態に即したものとして機能しているのではないかと思います。

ただ、判例が示した抗拒を著しく困難にさせる程度という文言の解釈について、

(参考。昭和33年6月6日の最高裁判決
その暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度には達しないと認められるようなものであつても、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲(しい)の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである

検察官によって当てはめの差が大き過ぎると思います。

今、起訴独占主義が採られている中で、検察官の一存でそこまで当てはめが異なると、こちらとしてはもうどうにもならないという事態に、私はいつも直面しているわけです。

そのときに、177条(強制性交等罪)暴行・脅迫要件より広い何かを書き込んでほしいなと思っています。

(参考。刑法)
177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

ただ、今判例で使われている抗拒を著しく困難にさせるというような言葉だと、やはり抵抗を前提としているようなイメージがあるので、別の言葉を考えるべきではないかと。

やはり、被害者の抵抗ありきというのは、もうあり得ないという発想からスタートしていただけたらと思っています。

ですので、177条(強制性交等罪)の基本的枠組みを維持しつつ、暴行・脅迫要件に何か今の実情に合うような文言を書き入れると。

その177条(強制性交等罪)以外に、例えば、不意打ちですとか威迫とか、そういった文言を列挙したり、法定刑の下限が3年以上というような少し軽めの類型を新しく作ったり、別途地位・関係性の類型を作っていくというような柱で考えていくのが、実態に即しているのではないかと思っています。

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<12ページ>
2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)

私からお尋ねしたいのですけれども、例えば、暴行、脅迫、威迫、不意打ち等々の手段、それから、それによって起こされた被害者側の状態というのが、今までは抗拒を著しく困難にさせる程度という言葉で表現されてきたが、

(参考。昭和33年6月6日の最高裁判決
その暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度には達しないと認められるようなものであつても、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲(しい)の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである

それでは適切でないとなったときに、何か代わりになる言葉として、こういう言葉がいいのだという対案のようなものをお持ちですか。

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<12ページ>
2020年11月10日 上谷さくら 委員(弁護士)

今、一生懸命考えています。

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<12ページ>
2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)

是非よろしくお願いいたします。

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明日も、性犯罪に関する刑事法検討会における177条(強制性交等罪)と178条(準強制性交等罪)の論議をみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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