【第1回「刑事法(性犯罪関係)部会」の議事録が公開(2)】 「より悪質な加害者ほど、逃げられない、抵抗できない、訴えられない人を狙います」

昨日のつづきです。
第1回刑事法(性犯罪関係)部会の議事録が公開されました。
いま法務省内で、刑法の性犯罪規定を改正する作業が進められています。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会

刑事法(性犯罪関係)部会の任務は、改正法案の叩き台の策定です。
この叩き台は実質、内閣が国会へ提出する法案となります。
本日もひきつづき、同部会の第1回目の会合でどのような意見が出たのかをみていきます。

2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録(2)
(1)

(2021年10月27日 第1回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<8ページ>
2021年10月27日 井田 良 部会長(中央大学教授)

(前略)
それでは、審議に当たっての総論的な事項に関する御意見と、次回以降の審議の進め方に関する御意見とに分けて、それぞれお伺いしたいと思います。

まずは、総論的な事項について、御意見のある方は、御発言をお願いしたいと思います。

何でも御自由に御発言いただいて結構です。
いかがでしょうか。

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<8~9ページ>
2021年10月27日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)

本日は貴重な場に参加させていただくことを感謝しています。
この歴史的な場で有益な議論がされることを、期待いたします。

簡単に意見を述べさせていただければと思います。

前回、「性犯罪に関する刑事法検討会」にも参加させていただきましたが、性暴力のリアリティとすごくずれたところで話が進み、かみ合わないなとずっと思ってきました。
特に、性暴力を受けている最中のことが理解されなかったと思います。

アメリカの調査では、レイプ被害者において、最も多く報告された反応は恐怖であり、その恐怖は一、二年続いていたことが報告されています。

日本でも、被害者の多くは、身体的暴力を受けず、逆らったらどうなるか分かっているのかなどと言葉で脅かされたり、相手の体が大きいので逆らえないと思ったと答えていて、加害者に圧倒されていることが分かっています。

それなのに、現在の法律の運用では、被害者が強く抵抗するか、完全に抵抗できない状態であることを求められ、さらに、被害を受けたこともない人間が、自分の限られた経験から自然か不自然かという判断をしています。

しかし、その判断自体が、人が外傷的事件に巻き込まれて恐怖にさらされた場合に起こる自然な反応を無視したものです。

考えるより先に体が勝手に反応してしまう、膝が震えて足に力が入らない、思考停止状態になって動けない、そのつもりはないのに相手に受動的に従ってしまうなどのように、危機的状態では生存に関わる脳の部分が急激に活性化され、生物学的な生存が優先される状態になることが、科学的に説明されています。

そのような神経生理学的な反応を理解せず、抵抗できたのでは逃げられたのではということは、被害者に不可能を強いているし、残酷です。

PTSDの発症率が半数となる性暴力は、犯罪の中でも最も凶悪なものの一つであると、精神医学的に認識されています。

被害者の回復を支えるためには、その人が性暴力をどう経験したかを理解することが、とても重要です。

議論をするに当たっては、そのような被害を受ける恐怖、悪寒、戦慄を感覚としてつかんでいただきたいと思います。

そのために、委員・幹事の方々には、お忙しいと思いますが、被害者の手記を読んでいただければと思います。
性暴力のリアリティを言語によって理解することには限界がありますが、性暴力を受けることがどういうことであるかを読むことにより、理解することの助けになると、精神科医、臨床心理士からも伝えられています。

より悪質な加害者ほど、逃げられない、抵抗できない、訴えられない人を狙います。
能力や力関係の差を利用して、自分がしたいことをしたいようにでき、後から訴えられそうもない人を選んでいるのです。
その中で、被害者は沈黙させられ、訴えられず、訴えても信用されず、被害を不自然だと判断され、なかったことにされてきました。
私の知り合いでも、食べることもできなくなり、学校にも行けず、悪夢にうなされ、心身に大きなダメージを受け、人生を狂わされた被害者の方の加害者の多くは、捕まることもなく笑って食事をして普通に生活しています。
被害者に不可能を強いる線引きをして、加害者を捕まえることも罰することもできない現状は、盗人を世に放っているのと同じです。
性暴力のリアリティを理解し、対等ではない立場で不十分な情報の中で、そしてノーを言えない状態に追い込んで、同意のない性行為をした場合の適切な法が定められることを期待します。

また、「第一」の「六」(性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)に係る罪を新設すること)のグルーミングについては、オンライングルーミングが今、大きな問題となっていますし、今後も被害が拡大していくことが予想されます。
グルーミングの過程では心理操作が行われるため、特に、社会心理学の視点から心理的操作について理解して、実態に即した議論がされることを望みます。

この法制審議会の場で、実りある議論がなされるように、非力ではありますが、力を尽くしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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<9ページ>
2021年10月27日 井田 良 部会長(中央大学教授)

ありがとうございました。
とても重要な視点をお教えいただいたと思います。

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<9~10ページ>
2021年10月27日 齋藤梓 委員(公認心理士)

この度は、貴重な議論に参加させていただきますことを、心よりお礼申し上げます。

私は、法律については門外漢ですけれども、被害について研究と臨床を行ってきた者として、議論で大事にしたいと思うことがございます。

平成29年(2017年)の改正の結構以前ですけれども、監護者性交等罪がなかった頃に、

(参考。監護者性交等罪)
<刑法>
第179条
②18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条(強制性交等罪)の例による。

性虐待の被害者の心理支援を担当していたとき、警察の方に、長年勤めていて、義理の親からのこのような被害を初めて聞いた、許してはいけないと言われました。

私は何を言っているのだろうと思いました。
被害者支援に携わる身として、その事例は決して珍しい事例ではなく、残念なことに大変よく遭遇する事例だったためです。

そして、平成29年(2017年)改正の前後ですけれども、肛門や口腔への性器挿入が強姦と同等になるということについて、司法関係者から、男性がレイプ被害に遭うというのはどういうことですかと聞かれました。
当時、司法関係者が大変混乱していらしたことを覚えています。
でも、私には混乱する理由が分かりませんでした。

さきの検討会(性犯罪に関する刑事法検討会)でも、限界事例として例に出されたかもしれないことが、心理職としては、特段、限界事例ではないと感じられる、つまり、ごく普通に人間にとって性暴力であり、苦痛で後遺症の甚大な出来事だと感じられることもありました。

法律が人の思考の枠組みを決めるとまでは申しませんが、人は、自分の知らないことや見えていないことは、思考の枠組みに入れることはできないのだと、自戒を込めて、本当に思います。

心理学や精神医学の知見をそのまま法律の文言にできないということは、よく承知しているのですけれども、知らなければ考えることさえ難しいのではないかと思います。

さきの検討会(性犯罪に関する刑事法検討会)でもお願いしたのですけれども、存在している実態を知って、被害者心理とか精神医学の知見を知っていただいて、より適切な法律について御検討いただきたいと思っています。

例えば、現在の法律では、性暴力のときに抵抗することが前提となっています。

検討会(性犯罪に関する刑事法検討会)では、様々、例示列挙される案も出ましたが、包括的な文言としては、やはり抵抗することが前提の意見が多く出されました。

しかし、実際は抵抗できない、抵抗することすら頭に浮かばないことの方が普通です。

抵抗することを前提とすることで、不同意を分かりやすくしているのかもしれませんけれども、それは普通の人間を前提としたものではないと、心理学からは考えられます。

また、性的同意年齢を考えるときには、現実の子供たちの発達というものを念頭に置いていただきたいですし、関係性のある中での性暴力・性犯罪について考えるときには、そこに、抵抗することが頭に浮かばない、関係性によって意思が抑圧される心理的なダイナミクスがあるというのを知っていただいて、検討いただきたいと思います。

議論の俎上にも、前提として、皆様の意識にさえ上がらないというような被害がないようにとも思っています。

最初にも申しましたとおり、私は法律については門外漢ですけれども、法律家の皆様が人の心理のどこに疑問を持って、どこを理解しにくいと感じるのかということについては、気が付く限りお話しできればと思っております。

違う分野の人間ですけれども、歩み寄って、より現実の人間に即した議論を行えれば、有り難いと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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<10ページ>
2021年10月27日 井田 良 部会長(中央大学教授)

ありがとうございました。
大変貴重な意見を頂きました。

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(参考。法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 名簿より。)

赤字は、性犯罪に関する刑事法検討会で委員をしていたかた

部会長
井田 良 中央大学教授

委員
・今井猛嘉 法政大学教授
川出敏裕 東京大学教授
・川原隆司 法務省刑事局長
・北川佳世子 早稲田大学教授
木村光江 日本大学教授
小島妙子 弁護士
小西聖子 武蔵野大学教授
齋藤 梓 公認心理師
・佐伯仁志 中央大学教授
・田中知子 東京地方検察庁公安部長
中川綾子 大阪地方裁判所部総括判事
橋爪 隆 東京大学教授
・藤本隆史 警察庁刑事局長
宮田桂子 弁護士
山本 潤 一般社団法人Spring幹事
・吉崎佳弥 最高裁判所事務総局刑事局長

幹事
・浅沼雄介 法務省刑事局企画官
池田公博 京都大学教授
・市原志都 最高裁判所事務総局刑事局第二課長
金杉美和 弁護士
・清 隆 内閣法制局参事官
・佐藤拓磨 慶應義塾大学教授
佐藤陽子 北海道大学教授
・嶋矢貴之 神戸大学教授
・中山 仁 警察庁刑事局捜査第一課長
・長谷川桂子 弁護士
・保坂和人 法務省大臣官房審議官
・吉田雅之 法務省刑事局刑事法制管理官

関係官
井上正仁 法務省特別顧問

赤字は、性犯罪に関する刑事法検討会で委員をしていたかた
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明日も、第1回刑事法(性犯罪関係)部会の議事録をみていきます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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