【4年前、刑法の性犯罪規定が大幅に改正されました】性犯罪の被害者の山本潤さんは、5年前の法制審議会の部会で、有意な意見をのべました

現在、刑法の性犯罪規定を改正するための作業が進められています。

(参考。現時点までの流れ)
<刑法の性犯罪規定の改正>

性犯罪に関する刑事法検討会
  ※2021年5月21日 取りまとめ報告書を提出
上川陽子法務大臣
  ※2021年9月16日 諮問
法制審議会
  ・第1回刑事法(性犯罪関係)部会

性犯罪の被害者である山本潤さんは、法務省の性犯罪に関する刑事法検討会の委員をされました。

性犯罪に関する刑事法検討会 委員名簿より。)

座長
・井田良 中央大学教授(刑法学者)

委員
<刑法学者>(6名)
・橋爪隆 東京大学教授
・川出敏裕 東京大学教授
・和田俊憲 東京大学教授
・池田公博 京都大学教授
・佐藤陽子 北海道大学教授
・木村光江 東京都立大学教授

<被害者寄りの委員>(5名)
山本 潤 一般社団法人Spring代表理事
・齋藤梓 公認心理士
・小島妙子 弁護士
・上谷さくら 弁護士
・小西聖子 武蔵野大学教授

<加害者寄りの委員>(2名)
・宮田桂子 弁護士
・金杉美和 弁護士

<警察、検察、裁判所を代表する委員>(3名)
・羽石千代 警察庁刑事局刑事企画課刑事指導室長
・渡邊ゆり 東京地方検察庁検事
・中川綾子 大阪地方裁判所部総括判事
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山本潤さんは、ひきつづき、刑事法(性犯罪関係)部会の委員に選出されました。

(参考。法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 名簿より。)

赤字は、性犯罪に関する刑事法検討会で委員をしていたかた

部会長
井田 良 中央大学教授

委員
・今井猛嘉 法政大学教授
川出敏裕 東京大学教授
・川原隆司 法務省刑事局長
・北川佳世子 早稲田大学教授
木村光江 日本大学教授
小島妙子 弁護士
小西聖子 武蔵野大学教授
齋藤 梓 公認心理師
・佐伯仁志 中央大学教授
・田中知子 東京地方検察庁公安部長
中川綾子 大阪地方裁判所部総括判事
橋爪 隆 東京大学教授
・藤本隆史 警察庁刑事局長
宮田桂子 弁護士
山本 潤 一般社団法人Spring幹事
・吉崎佳弥 最高裁判所事務総局刑事局長

幹事
・浅沼雄介 法務省刑事局企画官
池田公博 京都大学教授
・市原志都 最高裁判所事務総局刑事局第二課長
金杉美和 弁護士
・清 隆 内閣法制局参事官
・佐藤拓磨 慶應義塾大学教授
佐藤陽子 北海道大学教授
・嶋矢貴之 神戸大学教授
・中山 仁 警察庁刑事局捜査第一課長
・長谷川桂子 弁護士
・保坂和人 法務省大臣官房審議官
・吉田雅之 法務省刑事局刑事法制管理官

関係官
井上正仁 法務省特別顧問
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山本潤さんが刑法の性犯罪規定の改正にかかずらうのは、今回が初めてでありません。
現在の刑法の性犯罪規定は、4年前(2017年)に大幅な改正がおこなわれました。
110年ぶりの改正、と称されました。
このときも、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会)で最終的な検討がおこなわれました。

2015年11月2日~2016年6月16日
~法務省 法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会

(参考。当ブログ)
<前回(2017年)の刑法改正時における法制審議会の審議>
2021年9月30日(その1)
2021年10月1日(その2)
2021年10月2日(その3)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定①
2021年10月3日(その4)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定②
2021年10月4日(その5)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定③
2021年10月7日(その6)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定④
2021年10月8日(その7)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定⑤
2021年10月9日(その8)・・・要綱(※現在の刑法の性犯罪の規定)策定⑥
2021年10月10日(その9)【総会で決議①】
2021年10月11日(その10)【総会で決議②】
2021年10月12日(その11)【総会で決議③】

法務省 法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会

第1回(2015年11月2日)
第2回(2015年11月27日)
第3回(2015年12月16日)
第4回(2016年1月20日)
第5回(2016年3月25日)
第6回(2016年5月25日)
第7回(2016年6月16日)

2016年5月25日に、6回目の部会が開催されました。
このとき、同部会は、被害者の方々からヒアリングをおこないました。

(2016年5月25日 第6回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より引用。)

2016年5月25日 議事概要

以下の3名の方から、ヒアリングを実施した。

山本潤 氏(性暴力と刑法を考える当事者の会代表、SANE(性暴力被害者支援看護師))
・浅野恭子 氏(大阪府立子どもライフサポートセンター所長)
・中村正 氏(立命館大学大学院応用人間科学研究科教授)

本日は、山本潤さんが、2016年5月25日の第6回刑事法(性犯罪関係)部会でのべたことばをみてみます。

2016年5月25日 第6回刑事法(性犯罪関係)部会
~山本潤さん

(2016年5月25日 第6回刑事法(性犯罪関係)部会 議事録より、引用。)

<2~4ページ>
山本潤 性暴力と刑法を考える当事者の会代表 SANE(性暴力被害者支援看護師)

初めまして。
性暴力と刑法を考える当事者の会の山本潤です。
よろしくお願いします。

9か月前にこの会を立ち上げ、被害者たちの声を伝えてきました。
私がこの活動をしているのは、性暴力がどれほど大きい被害をもたらすのかということが伝われば、今の理不尽な状況を変えられると信じているからです。

私の経験は1人の経験ですが、近親姦虐待被害者としての経験を、与えられた20分のうち、10分は私から、10分をSIAb.の進藤啓子さんと共にお伝えしたいと思っています。

私が初めて刑法177条強姦罪を読んだとき、絶望しました。
ああ、この法律は私を救ってくれないのだなと思ったからです。

構成要件として、暴行脅迫が必要だと言われます。
今の諮問にも入っています。

想像してみてください。
あなたは13歳です。
家の玄関には鍵がかかっていて、あなたは安全な自分の部屋で健やかに寝ています。
ある晩、誰かがあなたの寝床に入ってきます。
私の場合、それは父親でした。
暗闇でしたが、父親だということは分かりました。
子供のときから一緒に過ごしてきた人です。
頭をなでられたり、ふざけたり、笑い合ったりしてきた人です。
その人が布団に入ってきて、体を触るようになります。
初めはお腹や背中だったものが、次第に胸やお尻に移っていきます。
なでられ、もまれ、性的な行為を強要されます。
あなたに容易に接触し、侵入することができる力を相手は持っています。
そこに暴行脅迫は必要でしょうか。
話したらひどい目に遭うよ、家族がばらばらになるよと脅す加害者もいますが、私の加害者はそうではありませんでした。
私に起こったことは、黙って入ってきて、黙って触られ、これから何が始まるのかも、何が起こっているのかも理解できない、混乱する経験でした。
怖い気持ちが強すぎて、私は抵抗することもできませんでした。
そういう経験をしたときに、傍目からはどう見えるでしょう。
ああ、この子はノーと言っていない、受け入れているんだなと思われる。
でも、心が耐えられず、例えて言うならば、ブレーカーが落ちてしまっただけで、私は絶対受け入れてはいなかったのです。
しかし、法律では、暴行脅迫がないし、抵抗していないし、罪にはならないと言われてしまう。
なので、自分で引き受けざるを得ませんでした。
20歳で、母が父と別れたので、私の被害は終わりました。

その後は、次々とトラウマ症状が起こりました。
18年間は、ほぼ抑鬱状態で過ごし、強迫症状やアルコール依存などがありました。
今でもセラピーを受け続けています。

だから、諮問の要綱(骨子)第三で 「監護者であることによる影響力を利用したわいせつな行為又は性交等に係る罪の新設」が入ったことは、これまでに考えられない前進だと思いました。
議論も前向きなもので、変化への希望を感じます。

ただ、正直、監護者だけでは狭すぎると思っています。
監護者ではなくても、子供を教育、指導する立場、親戚で目上の人であるなど、本来子供を守ってくれる立場の人だと逃げようがないからです。
暴行脅迫がなくても性行為を強要できる力を相手は持っています。
そのような地位、関係性という力関係を見てほしいと思います。

それは、子供に対してだけではなく、大人に対してもです。
私の体は私のものです。
その私の体が侵害されているのに、どうして私たち性被害者は、暴行脅迫を受けて、抗拒不能なまでに抵抗したかを問われるのでしょうか。

理由の一つは、外から見ているからだと思います。
例えば、仮に女性だとしますが、女性が強姦されている場面を思い浮かべてみてください。
どんな映像が浮かびますか。
もし、剥ぎ取られた衣服、おびえた女性の姿が見えたとしたら、それは加害者の視線です。
私たちから見えるのは、ひょう変して襲いかかってきた相手の顔つき、顔にかかる生臭い息、押さえ付けられて動けない体、自分の運命が突然予測不可能な状態に陥ってしまった恐怖です。
それは、人間としてではない 「モノ」として扱われる恐怖です。
私は子供であっても、夢や希望、意思がある人間だった。
なのに、性的な「モノ」として扱われました。
そういった、人間を性的な「モノ」として扱うことを、相手の意思に反した性交として構成要件に入れる必要があるのではないでしょうか。

資料にあるように、欧米では、同意の有無、対等性の有無、強要性の有無を性暴力の判断基準として用いることが多いです。
強要されているということは、選択の権利がないというとです。
私は彼を押しのけて、叩きのめして、家から追い出してやりたかった。
でも、それはできませんでした。
できないのです。
被害を受けるということは、弱い立場に置かれることです。
ささいな強要でも、抵抗できなくさせることが加害者には可能です。
加害者の影響はすごく大きいということを理解していただきたいのです。
自分の行為がどれほどの被害を与えているのかを理解することは、加害者にとっても重要なことだと私は考えています。

私の父は児童虐待の被害者でした。
だからといって、彼が私に性加害をしていいという理由にはなりません。
捕まえて罪を問う必要があったと思います。
その中で、彼も自分の傷つきや自分の行動が何をもたらしたのか、気付くチャンスがあったかもしれません。
真っ当な人間として生きられていたかもしれません。
そういうチャンスもなく、私は父を死ねと呪い続け、私たちは親子のつながりを失いました。

私が被害に向き合えるようになったのは、36歳のときです。
始まったときから、23年が経過しています。
どうしてこんなに時間がかかってしまったのかと考えます。

我が子が被害に遭ったお母さんがこう言っていました。
性暴力ってここまで人間を壊すのかと。

壊します。
私たちが壊されたのは、私たちの人間としての存在そのものです。
だから、声を上げられるようになるためにそれだけの長い時間を必要とするのです。

以上のような経験から、諮問の要綱(骨子)についての意見を、ここで述べさせていただきます。

1点目は、要綱(骨子)第一の法定刑についてです。加害者は刑務所に入るけれども、被害者は自由だと言われることがあります。
でも、自由ではありません。
人におびえ、物音におびえ、学校にも行けず、働くこともできず、食事も食べられず、眠れなくなる。
そういう被害者がたくさんいます。
こういう甚大な被害を受けているのだから、法定刑は5年以上に引き上げてくださることを望みます。

2点目、被害者の対象年齢は、最低限義務教育終了後と考えています。16歳未満に引き上げてください。

3点目、性交類似行為についてです。
性別の記載をなくし、肛門性交、口腔性交を含んだことは大きな前進であると思います。
そして、口腔性交は当然含まれる必要があると考えています。
強要の結果、物が食べられなくなる、口が開けられなくなるということが起こっています。
被害者の立場からは、身体的境界線を踏み越えられたということに変わりはありません。
そして、それは物であっても、例えば、人工のペニスを挿入された場合でも、身体的境界線の侵害であり、性交類似行為になると私は考えています。

4点目は、要綱(骨子)第四の非親告罪化についてです。
重大な犯罪なのだから、国が責任を持って立件、訴追をしてほしいと思います。
また、法改正の前に行われた行為についても、非親告罪として取り扱ってほしいと思います。
その日を境に、あなたは自分で決めてください、あなたの場合は私たちが立件しますというのは、被害者にとって平等ではないと思います。
被害者は、被害に遭う日を選べません。

5点目は、要綱(骨子)第五の集団強姦の罪の廃止についてです。
私の知人にも、集団強姦を受けた人たちがいますが、全く警察に届けられていません。
輪姦されるということは強いショックをもたらします。
その上、明るみなれば、何人もの男にやられた女という目で見られることもあります。
それなのに、相手が1人の場合と同じ刑罰では到底納得できないと思います。
別の類型として残して、法定刑は6年に引き上げてくださることを望みます。

最後にお伝えしたいのは、私たち被害者の立場から性加害を見てほしいということです。
そうでないと、性暴力によって何が侵害されているのかということが分かりません。
性犯罪被害者として認められず、この社会から見放された私たちの存在を、どうか認めてください。
そして、それが社会的に、法的に許される行為なのかどうかということを判断してほしいと思います。
私にこう伝えてくれた人がいます 。
「社会が引き受けられないことを、個人が一人引き受けて苦しんでいる、そんな社会はおかしいでしょう」
と。

どうかこの審議会の議論が被害者や加害者だけでなく、この国に暮らす全ての人のための変化への希望につながることを願っています。
ありがとうございました。

(※2016年5月25日 第6回刑事法(性犯罪関係)部会 議事概要より。)

(再掲。2016年5月25日 山本潤さん)
与えられた20分のうち、10分は私から、10分をSIAb.の進藤啓子さんと共にお伝えしたいと思っています

明日は、進藤啓子さんの論説をみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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