法制審議会における刑法の性犯罪規定改正の審議(その9)。2016年9月12日の総会で、「要綱」(※現在の刑法の性犯罪の規定)が承認されました①

刑法の性犯罪規定が改正されようとしています。
先月(2021年9月)の16日のことです。
上川陽子法務大臣は、法制審議会に対して、刑法改正に関する諮問をおこないました。

(2021年9月16日 日本経済新聞「性犯罪や侮辱罪も諮問 法制審、海外例を参考に議論」より、引用。)

<一部分を抜粋>
2021年9月16日 日本経済新聞

(2021年9月)16日の法制審議会(法相の諮問機関)では、性犯罪規定の見直しについても議論が始まった。

今後はどのようなかたちで進行するのでしょうか。
本日も、前回の改正時の流れをふりかえってみます。

(参考。当ブログ)
<前回(2017年)の刑法改正時における法制審議会の審議>
2021年9月30日(その1)
2021年10月1日(その2)
2021年10月2日(その3)※要綱策定①
2021年10月3日(その4)※要綱策定②
2021年10月4日(その5)※要綱策定③
2021年10月7日(その6)※要綱策定④
2021年10月8日(その7)※要綱策定⑤
2021年10月9日(その8)※要綱策定⑥

(参考。法務省 法制審議会)
刑事法(性犯罪関係)部会

第1回(2015年11月2日)
第2回(2015年11月27日)
第3回(2015年12月16日)
第4回(2016年1月20日)
第5回(2016年3月25日)
第6回(2016年5月25日)
第7回2016年6月16日)・・・要綱が取りまとめられる

上述のとおり、2016年6月16日に開催された第7回「刑事法(性犯罪関係)部会」で要綱が取りまとめられました。
そのときの議事録を参照します。

(2016年6月16日 法制審議会 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会「議事録」より、引用。)

<16ページ~>
2016年6月16日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

(法務大臣からの)諮問第101号は、
近年における性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための罰則の整備を早急に行う必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を賜りたい
というものであり、その別紙として、要綱(骨子)が付されておりましたが、この要綱(骨子)につきましては、本日、事務当局から修正案が提出されました。

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2016年6月16日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

要綱(骨子)第一から第七に賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。

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2016年6月16日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

ただいま報告がございましたとおり、要綱(骨子)につきましては、挙手されました委員の賛成多数で可決されたと認めます。
諮問第101号につきましては、配布資料34の事務当局による修正後の要綱(骨子)を、部会の意見として総会に報告することに決しました。

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法制審議会の総会は、3か月後に開催されました。
総会の議事録をみてみます。

2016年9月12日 法制審議会 第177回会議

(2016年9月12日 法制審議会 第177回会議 議事録より、引用。)

(前略。)
<10ページ>
2016年9月12日 高橋宏志 会長(中央大学法科大学院教授)

本日の審議に入ります。
先ほどの法務大臣挨拶にございましたように、本日の審議事項は二つでございます。

まず、第1の議題である、「性犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第101号」について御審議をお願いいたします。

では、刑事法(性犯罪関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました山口厚委員から御報告を頂きたいと存じます。
では、山口部会長、お願いいたします。

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<2~7ページ>
2016年9月12日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

刑事法(性犯罪関係)部会長の山口でございます。
私から、当部会における調査審議の経過及び結果を御報告申し上げます。

諮問第101号は、
近年における性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための罰則の整備を早急に行う必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を賜りたい。
というものでした。

本諮問につきましては、平成27年(2015年)10月9日開催の第175回会議で、まず部会において調査審議すべきである旨が決定され、刑事法(性犯罪関係)部会が設けられました。

そして、部会において、同年(2015年)11月2日から本年(2016年)6月16日までの間、合計7回にわたって調査審議を行いました。

(参考。法務省 法制審議会)
刑事法(性犯罪関係)部会
第1回(2015年11月2日)
第2回(2015年11月27日)
第3回(2015年12月16日)
第4回(2016年1月20日)
第5回(2016年3月25日)
第6回(2016年5月25日)
第7回2016年6月16日)・・・要綱が取りまとめられる

なお、諮問に先立って法務省で開催されていた「性犯罪の罰則に関する検討会」において実施されたヒアリングを補充する観点から、部会においても、性犯罪被害の当事者等のヒアリングを更に実施し、そこで示された御意見をも踏まえて審議を行いました。

(参考。法務省 性犯罪の罰則に関する検討会
第1回(2014年10月31日)
第2回(2014年11月21日)
第3回(2014年11月28日)
第4回(2014年12月24日)
第5回(2015年1月29日)
第6回(2015年2月12日)
第7回(2015年2月27日)
第8回(2015年3月17日)
第9回(2015年4月24日)
第10回(2015年5月28日)
第11回(2015年7月10日)
第12回(2015年8月6日)

それらの調査審議の結果、諮問に係る要綱(骨子)について一部修正の上、賛成多数により、本日配布資料刑1としてお手元に配布いたしました要綱(骨子)のとおり法整備をすることが相当であるとの結論に達したものです。

部会における審議の概要につき、資料刑1に沿って御説明いたします。

要綱(骨子)は、第一から第七までの構成としており、これは、おおむね刑法における条文の順序に対応する形で配列したものですが、ここでは、部会における審議の順序に従い、まず、要綱(骨子)第四について御説明し、さらに、相互に関係が深いと考えられる項目について、適宜まとめて御説明いたします。

まず、要綱(骨子)2ページ目に記載しております「第四 強姦の罪等の非親告罪化」を御覧ください。

要綱(骨子)第四の一及び二は、現行法で親告罪とされている強姦罪等について、非親告罪化することとするものです。

この点につきましては、第175回会議において、総会委員の皆様から、被害者の心情への配慮の必要性等についての御意見を頂いておりましたことから、部会では、これらの御意見をも踏まえて、調査審議を進めました。

部会においては、強姦罪等を非親告罪化することについて、被害者の利益を守るためにその意思を尊重することとしてきた制度を廃止することには疑問があるなどとして、非親告罪化に反対する意見もありましたが、ヒアリング等の結果により、被害者にとって告訴するか否かの判断を迫られることが心理的な負担になっているという実態があることがよく理解できたなどとして、性犯罪が親告罪であることがかえって被害者の負担となっている場合があるとの理解が多数を占めました。

加えて、現在では、刑事訴訟法の改正等により被害者のプライバシー保護が図られるなどしており、親告罪であることとプライバシー保護等との関連性は既に薄れているなどの意見があり、部会の議論においては、非親告罪化することに賛成する意見が多数となりました。

なお、先の総会でも御指摘がありました刑事手続における被害者の心情への配慮については、検察官である委員から、現行法で非親告罪とされている強姦致傷等の罪についても、起訴するか否かの判断に当たって被害者の意思を丁寧に確認しており、強姦罪等を非親告罪化した場合にも、被害者の意思を最大限尊重することになると考えているとの発言があり、部会としても、実務での運用によって適切に対応ができるとの意見が多数でした。

次に、要綱(骨子)第四の三は、第四の一及び二の時的な適用範囲に関するものであり、諮問に係る要綱(骨子)には示されていなかったものですが、部会においては、強姦罪等が非親告罪化された場合、改正法施行前に行われた行為について、施行後は非親告罪として取り扱うべきかどうかの点も議論を行い、要綱(骨子)第四の三に記載した結論に至りました。

この点については、過去に刑法上の犯罪につき非親告罪化された際と同様に、その効果は改正後の行為にのみ及ぶこととすべきであるとして、施行前に行われた行為を非親告罪化することに反対する意見もありましたが、親告罪の規定は訴訟手続に関するものであり、手続の改正については進行中の手続にも新法を適用するのが原則である、被害者の負担を軽減するという非親告罪化の趣旨に鑑みると、改正法施行前の行為も非親告罪として取り扱うのが適当である、改正法施行の時点において、将来的に告訴がされる可能性がある事件については、これを非親告罪化したとしても、その被疑者の法律上の地位を著しく不安定にするものとは言えないなどとして、改正法施行前の行為についても新法を適用し、非親告罪として取り扱うこととするのが適切であるとの意見が多数を占めました。

もっとも、改正法施行前に、既に法律上告訴がされる可能性がなくなっている場合については、一旦起訴される可能性がなくなった被疑者の地位の安定を考慮する必要があることから、そのようなものについては新法を適用しないこととして、要綱(骨子)第四の三のとおりとすることとしたものです。

そして、この点は、いわゆる経過措置に関するものではありますが、その内容が関係者の権利利益にとって重要なものであると考えられたことから、要綱(骨子)に明記することとしたものです。

次に、要綱(骨子)第一、第二及び第六についてです。

このうち、要綱(骨子)第一は刑法第177条の強姦罪の改正に関するものであり、「女子」に対する「姦淫」のみを対象として、強制わいせつ罪よりも重く処罰するものとしている現行法の強姦罪について、その構成要件を見直し、重い処罰の対象となる行為の範囲を拡張するとともに、法定刑の下限を懲役3年から懲役5年に引き上げることとするものです。

要綱(骨子)第二は、刑法第178条第2項の準強姦罪の改正に関するものであり、要綱(骨子)第一と併せて、処罰対象となる行為の範囲を拡張するとともに、法定刑の下限を引き上げることとするものです。

3ページ目の要綱(骨子)第六は、強姦等致死傷の罪の改正に関するものであり、基本犯である強姦罪等の法定刑の下限を引き上げることに伴い、その結果的加重犯とされる強姦等致死傷の罪の法定刑の下限も懲役5年から懲役6年に引き上げることとするものです。

まず、諮問に係る要綱(骨子)を修正した点について申し上げますと、その第一においては、処罰対象となる行為について、「性交等」と表現した上で、括弧書を用いてその内容を詳細に定義しておりましたが、構成要件の明確性の要請を踏まえつつ、同じ内容をより適切な用語で表現するという観点から検討した結果、お手元の要綱(骨子)第一のとおり、「性交、肛門性交又は口腔性交」という表現を用いることとしたものです。

したがいまして、この修正は、諮問に係る要綱(骨子)の意味内容を変更する趣旨ではありません。

次に、要綱(骨子)の内容について審議の経過を御説明いたしますと、重い処罰の対象となる行為として、口腔性交をも含めることに反対する意見もありましたが、被害の重大さという点では、口腔性交も、膣性交や肛門性交と異なるところはなく、区別することに合理性は乏しい、体内への陰茎の挿入を伴う行為は、濃厚な性的経験の共有を強いられるという意味で、重く処罰されるべきものであるなどとして、性交、肛門性交のほか、口腔性交をも含めることに賛成する意見が多数を占めました。

また、法定刑の下限を引き上げる点については、その理由が乏しいとしてこれに反対する意見もありましたが、強姦罪の量刑傾向を見ても法定刑の下限が懲役5年である現住建造物等放火罪や強盗罪と比して軽い処罰がなされているとは言えず、そのような評価を法定刑にも反映すべきである、法定刑は、実際に科すことのできる刑の幅を決めているだけでなく、それぞれの犯罪あるいは被害法益に対する評価を示すという意義があり、強姦罪等の法定刑の下限を引き上げることには理由があるなどとして、法定刑の下限を要綱(骨子)のとおり引き上げることに賛成する意見が多数でした。

次に、要綱(骨子)第五は、要綱(骨子)第一、第二及び第六による法定刑の引上げに伴い、集団強姦等の罪を廃止することとするものです。

部会においては、集団強姦等の罪を廃止することに慎重な意見もありましたが、強姦罪、準強姦罪及び強姦等致死傷罪の法定刑を引き上げれば、これらの罪とは別に集団強姦等の罪を存置しておかなくても、適切な量刑ができるとして、要綱(骨子)第五に賛成する意見が多数を占めました。

続いて、要綱(骨子)第三は、監護者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為又は性交等に関する罪を新設するものです。

まず、諮問に係る要綱(骨子)から表現を修正した点について申し上げます。

諮問に係る要綱(骨子)では、処罰の対象となる行為について、監護者がその「影響力を利用して」性交等をしたという表現を用いていましたが、審議の結果、お手元の要綱(骨子)第三のとおり、「影響力があることに乗じて」という表現を用いることとしたものです。

この「影響力を利用して」という文言は、「18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在し、かつ、その影響力が遮断されていない状況で」性交等を行ったという意味で用いられていたものですが、「影響力を利用して」という表現では、被害者に向けられた具体的な利用行為が必要とされているようにも解され得ることから、より適切な表現に改めたものです。

したがいまして、この修正につきましても、諮問に係る要綱(骨子)の意味内容を変更するものではありません。

次に、要綱(骨子)第三の内容に関する審議経過を御説明します。被害者に対する行為者の影響力があることに乗じて性交等をした場合の処罰規定を新設する必要性について最初に議論を行い、現行法の準強姦罪等で対処することができると考えられることなどを理由に新設に反対する意見もありましたが、行為者との日常生活の中で性的関係が常態化している事案などは、行為者による明確な暴行や脅迫はなく、かつ、個別の性交等について抗拒不能にも該当しない場合が多く、刑法の性犯罪として処罰されていないが、強姦罪、準強姦罪等と同様に性的自由を侵害していることから、このような行為を性犯罪として刑法に規定し、重く処罰する必要があるなどといった意見があり、このような処罰規定を設けることに賛成する意見が多数を占めました。

また、要綱(骨子)第三の罪の主体の範囲について検討が行われ、行為主体をより広げるべきであるとの立場から、監護者のほかにも、監護者以外の親族や教師、スポーツの指導者もこの罪の主体に含めるべきであるとの意見がありましたが、新設の罰則は暴行・脅迫や抗拒不能がなくとも、強姦罪、準強姦罪等と同様に性的自由を侵害する行為について、それらの罪と同等に処罰するものであり、この観点からは、被害者が精神的・経済的に全面的に依存しており、その影響力が類型的に強いと評価できる監護者に限定するのが適切であるなどとする意見等があり、本罪の主体を「18歳未満の者を現に監護する者」に限定することに賛成する意見が多数を占めました。

最後に、要綱(骨子)第七は、強姦と強盗とを同一機会に行った場合の罰則の整備に関するものです。

部会においては、主として、このような罰則の整備の必要性について議論が行われ、法定刑の引上げ等に消極的な観点から、新たな罰則の整備に慎重な意見もありましたが、現行法の強盗強姦罪が重く処罰されているのは、強盗犯人が同じ機会に更に強姦に及んだという悪質性に基づくものであるところ、強姦犯人が強盗に及んだ場合でも、その悪質性は同様であることから、強盗強姦罪と同等に重く処罰すべきであるなどとして、要綱(骨子)第七のとおりとすることに賛成の意見が多数を占めました。

修正後の要綱(骨子)について、一括して採決に付したところ、部会長である私を除く出席委員15名のうち、賛成14名、反対1名の賛成多数により、修正後の要綱(骨子)のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。

以上のような調査審議に基づき、諮問第101号については、配布資料刑1のように法整備を行うことが相当である旨が決定されました。

以上で、当部会における調査審議の経過及び結果の御報告を終わります。

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当該総会におけるこのあとの論議につきましては、明日のブログでみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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