法制審議会における刑法の性犯罪規定改正の審議(その7)。前回(2017年)の刑法改正のときは、7回目の会議で、要綱(法案の叩き台)が策定されました⑤

4年前(2017年)、刑法の性犯罪規定が改正されました。
改正前の流れを簡単に確認します。

性犯罪の罰則の改正に関する法制審議会の審議状況等より、引用。)

〇 平成26年(2014年)10月~平成27年(2015年)8月

「性犯罪の罰則に関する検討会」
・刑事法研究者、法曹三者、被害者支援団体関係者等による検討

(参考。法務省 性犯罪の罰則に関する検討会 開催状況
第1回(2014年10月31日)
第2回(2014年11月21日)
第3回(2014年11月28日)
第4回(2014年12月24日)
第5回(2015年1月29日)
第6回(2015年2月12日)
第7回(2015年2月27日)
第8回(2015年3月17日)
第9回(2015年4月24日)
第10回(2015年5月28日)
第11回(2015年7月10日)
第12回(2015年8月6日)

  

〇 平成27年(2015年)10月9日

法制審議会に諮問

法制審議会(総会)において審議

  

〇 平成27年(2015年)11月~平成28年(2016年)6月

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会において審議
・合計7回の審議(被害者等からのヒアリングを含む)

(参考。法務省 法制審議会)
刑事法(性犯罪関係)部会
第1回(2015年11月2日)
第2回(2015年11月27日)
第3回(2015年12月16日)
第4回(2016年1月20日)
第5回(2016年3月25日)
第6回(2016年5月25日)
第7回2016年6月16日

・平成28年(2016年)6月16日(第7回会議)において要綱(骨子)の取りまとめ

  

〇 平成28年(2016年)9月12日

法制審議会(総会)において審議の上、法務大臣に答申

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(再掲)
平成28年(2016年)6月16日(第7回会議)において要綱(骨子)の取りまとめ

7回目の会議で要綱(骨子)が取りまとめられました。

(再掲)
法制審議会(総会)において審議

この要綱(骨子)は、法制審議会の総会において、満場一致で採択されました。

(再掲)
法務大臣に答申

政府はこの要綱(骨子)を法案として国会へ提出しました。

本日も、要綱(骨子)が取りまとめられた第7回刑事法(性犯罪関係)部会議事録を参照します。

(参考。当ブログ)
<前回(2017年)の刑法改正時における法制審議会の審議>
2021年9月30日(その1)
2021年10月1日(その2)
2021年10月2日(その3)※要綱策定①
2021年10月3日(その4)※要綱策定②
2021年10月4日(その5)※要綱策定③
2021年10月7日(その6)※要綱策定④

2016年6月16日
 法制審議会
 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会
 議事録

2016年6月16日 法制審議会 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会
(※ |)

(2016年6月16日 法制審議会 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会「議事録」より、引用。)

<12~13ページ>
2016年6月16日 角田由紀子 委員(弁護士)

今回の主要なテーマに関しては、私は一定の進歩があったということですから、大変喜ばしいことだと思っております。

長いこと、実はこの問題は当事者を中心にして、社会の周辺部に追いやられて、なかなか日の目を見ることがなかったテーマだったと思うのです。
それが今回ようやくにしてというか、無形文化遺産になる寸前のところで、百何年経っているのですか。

私は1907年に建った建物とかを見る度に、例えば奈良ホテルがそうなのですね。
刑法と同じなのだとか、つい思ってしまったりするくらい、この1907年の今と全く体制の違う時代にできた、特に性に関する刑法というのが放置されていたということは、私は関係者にも大いに責任があると思うのですね。

そこに非常に問題があるということを誰が一番初めに言い始めたかといいますと、その犯罪の被害に遭って、不当な扱いを受けてきた主として女性たちだったのです。

非常に長い間小さな声だったのですが、いろいろな犯罪被害者の運動一般とも連携することができて、ようやくここのテーマになったことは大変私はうれしいと思っております。

ただ、小西委員の意見にもありましたように、これは問題解決の一歩にしかすぎないということで、積み残された課題がたくさんありますので、そのことについてどういう形か分からないですけれども、引き続き関心を持っていただいて、検討の対象にしていただきたいと思っております。

それから、私と宮田委員で、同じ日弁連から派遣されていて、いつもほとんど違う意見を述べているのだということで、そういう認識をされていると思うのですけれども、先ほど宮田委員がおっしゃった刑法全体について見直さなければいけない時期に来ているのではないかということについて、私も全くそのように思っております。

このように1907年に作った刑法、あちこち時代の要請に合わないということ、継ぎ接ぎだらけのことをやっていくと、きっと全体として統一的な考えに貫かれた刑法というのにはほど遠くなっていくのではないかと思いますので、私も、今がその時期かはともかく、少なくとも全体的に、近い将来に見直すということも考えていただいていいのではないかと思います。

それから、最後になって宮田委員といろいろと意見が一致するのですけれども、重罰化だけでよいのかという点については、私はやはり犯罪の原因がどこにあるのかということを、刑法以外の他の社会科学等、あるいは医療等でも研究されておりますので、そういう知見も含めて、社会全体としてどうしたらいいのかということを考える必要があると思います。

加害者への対応について、検討会でのヒアリングでもそうでしたし、医療的な対応等々が非常に日本では小さいのですけれども行われておりますし、諸外国ではそういう知見もあるようですので、そういうことを含めて犯罪をなくすにはどうしたらいいのかということ、つまり社会的な対応策ということも、今はここでの議論の対象にならないのでしょうけれども、今後私どもが考えるときには視野に入れる必要があると思っております。

例えば貧困の結果、教育の機会がなくなったということと、犯罪との関係というのはかなり明らかではないかと思いますし、それから性暴力犯罪についても、適切な育ちが保障されなかった、つまり自分自身が被害を受けたということで保障されなかったということで、大人になって、今度は加害者に転化するという事例は別に珍しいことでもないようですので、そういうことを含めて、もっと広い社会的な視野を持って考える必要があるのではないかと思っております。

それから、これは最後なのですけれども、確かにこの会議は刑法の改正を議論しているわけなのですけれども、私は検討会(性犯罪の罰則に関する検討会)のときも、それから今度の法制審のこの委員会も非常に違和感を持っていることがあります。

それは、委員や幹事の構成がこのように刑法の専門家に偏ったものでいいのだろうかということなのです。

(参考)
法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会委員等名簿

ジェンダー・バランスの問題もありますけれども、刑法の問題といっても、要するにこれは社会の問題の一部なので、刑法の人が中心になるとは思うのですけれども、刑法・刑訴法の学者以外にも、もっと他の関連する分野の人が委員・幹事として入る必要があるのではないかと思っております。

私はこういう委員会に出たのは初めてなので、私の偏見から言えば、このように偏った委員構成の会議をやってどうするのだろうかというのは非常に率直に思ったところですので、今後このような形で研究会なり行われるときは、もう少し広い視野で委員を選任された方がよいのではないか、その方が社会の要請に、より良く応えることができるのではないかということを思いまして、このことは最後にどうしても一言言わせていただきたいと思って待っておりました。

ありがとうございました。

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<13ページ>
2016年6月16日 武内大徳 幹事(弁護士)

私も修正された要綱(骨子)全体について、賛成の立場です。

ただ1点、性犯罪の非親告罪化について若干の心配もあることから、一言申し述べさせていただきます。

強姦罪等が非親告罪化することによって、告訴をするかしないか、あるいは一旦なした告訴を維持し続けるかどうかということについて、被害者の方が思い悩む負担というのは確かに軽減されると考えます。

とはいえ、非親告罪化以降は、告訴を取り消すという選択肢が性犯罪の被害者の方からなくなるという点も事実です。

もとより被害者の積極的、かつ明確な拒絶に反して捜査あるいは公判が継続されるということは、実務上考え難いのでしょうが、それでも告訴の取消しができなくなったことによって被害者の方が捜査の過程、あるいは公判の過程で、これまでとは違った側面での様々な精神的な負担を受ける場面も、これから想定されるかと思います。

そういった形で、せっかく改正された刑法によって、性犯罪被害者に対する新たな二次被害が万が一にも惹起されることのないよう、弁護士あるいは専門家によるサポートが、これまで以上に重要になってくるのではないかと思います。

私ども弁護士会の人間としても、それだけの体制を整えられるよう努力していく所存ですけれども、今後は国あるいは社会によって、性犯罪被害者に対する支援の潮流がより強まっていき、適切な施策が講じられることを強く希望します。

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<13~14ページ>
2016年6月16日 小木曽 綾 委員(中央大学教授)

私も全体として賛成の立場ですけれども、長年の懸案であった問題について、保護法益自体を捉え直すということを確認しつつ、その認識の変化に応じた実体法の改正を提案しているという点に意義があると思います。

被害者を女性に限らないということですとか、行為態様の多様化、それから要綱(骨子)第三類型の創出、非親告罪化など、一定の前進であると考えますが、他方で、暴行・脅迫要件を始めとして、いろいろとまだ不満があるという向きもおられると思います。

しかし、性犯罪への社会の対応を考える際には、法令、その法令も刑法や児童福祉法があるわけですが、そのような法令が負うべき役割、実務に携わる方々が負うべき役割、更には社会の構成員がその意識を変えるという意味で負うべき役割といったものがあるのではないかと思います。

それぞれが手を携えて初めて、不幸な犯罪を防ぎ、罪を犯した者にはその責任を問い、被害に遭った人々には、そのダメージを可能な限り回復するという方向に進むことができるのではないかと思いますし、当然誤判のおそれは可能な限り低くするべきです。

併せて、先ほどから御指摘ありますように、再犯予防に何が効果的であるのかということについても継続的に検討されていくべきであろうと思います。

今回の法改正が、そのような継続的な議論の契機となることも期待したいと思います。

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<14ページ>
2016年6月16日 木村光江 委員(首都大学東京教授)

以前にも申し上げましたので重ねてで恐縮なのですけれども、要綱(骨子)第三の罪についてです。

これまで十分対応できなかったものについて、このような類型を作ったというのは非常に強力な武器になると思いますので、意義は非常に大きいと思います。

ただ、監護権者以外、例えば教師であるとか、コーチのような立場の人であるとか、そういうような方の影響力に乗じた行為という事例も決して少なくないですし、やはり被害も非常に重大なものがあると認識しておりますので、現行法ですと恐らく準強姦とか準強制わいせつを中心に議論することになるのかもしれないですけれども、今後はそういう点も少し視野に入れて、立法も含めてお考えいただき、検討する機会があれば非常に有り難いと思います。

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<14ページ>
2016年6月16日 齋藤 梓 幹事(臨床心理士)

被害者支援の立場から少しだけお伝えさせていただければと思うのですが、私は、被害者支援に携わる中で、同じ加害者から同じように性的に侵襲されて、しかし、挿入された場所が膣だったか肛門だったかの違いで罪が違うということを、大変疑問に思っておりました。

そうしたことなどが今回、話し合われて、そしてこのように改正の提案が出されたということに対して、良かったと思っております。

他方、要綱(骨子)自体には賛成なのですけれども、これまで被害者の被った被害が正しく検討されていたのか、正しく把握されていたのかというと、被害者支援や心理の専門家としては、多々、疑問が残ります。

今回、暴行・脅迫の要件ですとか、性交同意年齢ですとか、18歳未満の時効の問題ですとか、法制審議会の部会での議論になることのなかった点は幾つかございますが、今後今回の改正をきっかけに、そういった点も含めて、被害者の受けた被害がどういったものだったのかということが正しく認識される社会になっていくということを願っております。

また、他方、宮田委員も角田委員もおっしゃっておりましたが、性犯罪の加害者であるとか、その他薬物等、アディクションの加害者であるとかに関しましては、再犯を防ぐという意味で医療や社会とは連携を欠かすことができないものだと思いますので、そういった再犯を防ぐという意味での加害者へのシステムの構築ですとか、被害者支援のより一層の充実といったことが、これを機に、これまで以上に社会で考えられていくことを願っております。

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この論議のつづきは、明日のブログでみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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