法制審議会における刑法の性犯罪規定改正の審議(その4)。前回(2017年)の刑法改正のときは、7回目の会議で、要綱(法案の叩き台)が策定されました②

先日より、前回(2017年)の刑法改正時における法制審議会の審議を顧みています。

(参考。法務省 法制審議会)
刑事法(性犯罪関係)部会
第1回(2015年11月2日)
第2回(2015年11月27日)
第3回(2015年12月16日)
第4回(2016年1月20日)
第5回(2016年3月25日)
第6回(2016年5月25日)
第7回2016年6月16日

(参考。当ブログ)
<前回(2017年)の刑法改正時における法制審議会の審議>
2021年9月30日(その1)
2021年10月1日(その2)
2021年10月2日(その3)※要綱策定①

2016年6月16日に開催された7回目の「刑事法(性犯罪関係)部会」で、刑法の性犯罪規定改正の要綱が取りまとめられました。
昨日(2021年10月2日)は、同部会の議事録を途中まで参照しました。

2016年6月16日
 法制審議会
 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会
 議事録

要綱とは、法案の叩き台のことです。

性犯罪の罰則の改正に関する法制審議会の審議状況等より、引用。)

法制審議会(刑事法部会)
法務省 法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会

・平成28年(2016年)6月16日(第7回会議)において要綱(骨子)の取りまとめ

この要綱はその後、刑法改正法案となって国会へ提出され、全会一致で可決されました。

本日も、2016年6月16日におこなわれた第7回「刑事法(性犯罪関係)部会」の議事録を参照します。

2016年6月16日 法制審議会 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会
(※

(2016年6月16日 法制審議会 第7回 刑事法(性犯罪関係)部会「議事録」より、引用。)

<4ページ>
2016年6月16日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

事務当局から要綱(骨子)の修正につきまして御説明を頂きました。

修正についての御意見は後ほど承ることといたしまして、まずは修正に関する御質問がございましたらお願いしたいと思います。
いかがでございましょうか。

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(一同発言なし)

<4ページ>
2016年6月16日 山口 厚 部会長(早稲田大学教授)

特によろしゅうございますか。
それでは、続きまして、この修正部分に関する御意見がございましたら、お願いしたいと思います。

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<4~5ページ>
2016年6月16日 宮田桂子 委員(弁護士)

要綱(骨子)第四の三の適用範囲の部分でございます。

遡及をさせるべきではないという意見です。

明治41年法律第29号の刑法施行法4条には、
刑法施行前旧刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス
という規定がございます。

この解説書「刑法施行法評釋」(遠藤源六 明治大学)62ページには、

けだし、
(一)告訴を待って論ずることは、告訴の有無にかかわらず処断するよりも犯人に利益なること、
(二)告訴を待って論ずべき罪を犯したる者は告訴なき場合には法律上始めより罪とならざる行為をなしたるものと異ならず、故に新法においてこれを罪とするも、その施行以前の行為に遡及せしむるは不穏当なることの二理由による。

そもそも、法律は特別の明文あるにあらざれば、その施行以前の行為に及ばざるを原則とす。

したがって、刑法施行以前においては、告訴あるにあらざれば罰せざる行為を刑法において告訴の有無にかかわらず罪とし論ずる旨を規定するもこの規定をもって刑法施行以前の行為を論ずることあたわざるはもちろんなり。

故に、本条の規定は理論上当然のことにして、特にこれを設くる必要なきがごとし。

と記載があります。

確かに、刑法施行法は、現行法には関係ない法律で、今回、直接適用されるものではありませんが、この規定の趣旨は、今の解説にあるように、法の一般原則の確認でございます。

この要綱(骨子)修正案の非親告罪化の規定は、このような「遡及するべきではない」という考え方とは合致しないものと思います。

また、憲法の教科書などを見ますと、訴訟条件について憲法39条の適用はないけれども、その精神を尊重して、被告人の不利益を避けるべきだという意見は、かなり強いものと考えています。

例えば、ちょっと古くてすみませんが、橋本公亘先生の憲法の教科書では、事後法の禁止について、

犯罪の実行行為の後に訴訟法が変更された後であっても、その変更が一般的に言って被告人に格別の不利益をもたらすものでないときは、もちろん立法前の犯罪の裁判に適用できる。

訴訟法の変更が被告人に不利益をもたらすものであっても、その不利益が限定されており、被告人の有罪判決を容易にするような性質のものではないときは、また右と同様である。

憲法39条前段後半の規定は、本来実行行為の後に制定された刑罰実体法規で処罰されないことを主とするものであるから、右のように考えることができる。

しかし、訴訟法の変更が重要なものであって、被告人に対して容易に有罪判決をもたらすような内容であるときは、前記条項の精神から見て立法前の犯罪の裁判には適用できないと解すべきである。

との記載があります。

昭和25年(1950年)4月26日の最高裁判決の上告理由を制限した刑訴応急措置法の規定については、憲法39条の類推はないとしていますが、この判決文の中には、「憲法39条の趣旨を類推すべき場合と認むべきではない」としているだけで、「類推すべき場合がある」ということは決して排除されていません。

公訴時効の変更について、刑法6条の適用を認めていない裁判例もありますが、認めた裁判例もあります。

最高裁の昭和42年(1967年)判決は、これを認めているもので、訴訟条件についてはおよそ遡及しないという考えはとるべきではありません。

過去の刑法改正において、非親告罪化については不遡及とされている例があることは、事務当局から御紹介いただいております。

これは法律の制定によって大きな価値判断の変更があった、例えば憲法改正などのような大きな価値判断の変化に伴ったような場合には、非親告罪化を遡及させていないという御説明を頂戴しましたが、今般の改正は性犯罪についての枠組みを大きく変えて国民の価値観の変更を求める、そのような大きな改正ではないのでしょうか。

このような改正の趣旨全体を考えれば、不遡及と考えることが妥当なのではないかと私は考えます。

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<5~6ページ>
2016年6月16日 小木曽 綾 委員(中央大学教授)

告訴が処罰条件であるから、この改正法案も実体法の変更と同様、遡及は許されない、分かりやすく言えば、今回の法改正によって、それまで告訴がなければ裁判にならなかったものが裁判になるわけですから、これは新たに処罰根拠を定めた法改正、すなわち実定法の改正と同様である、したがって遡及は許されないという解釈は、もちろんあると思います。

他方で、犯罪行為自体は既に処罰されることになっていて、ただ、被害者の意思を尊重するという政策的な目的から、告訴がなければ裁判が開始されないことになっている。

このようにしたのが親告罪制度であると解することもできると思います。

仮に、今、御紹介がありましたように、前者のように解したとしても、この法案を遡及適用すると憲法39条に違反するとまでは言えないということについては異論がないとすれば、あとは立法政策の問題ということになるのだろうと思います。

では、その立法政策に合理性があるかということになるわけですけれども、今回の改正の趣旨、すなわち立法政策の目的が被害者の負担の軽減にあるとすれば、その負担はできるだけ早く軽減するのがよい、したがって、この改正を遡及的に適用するという政策判断にも合理性があるという解釈も成り立つと思われます。

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<6ページ>
2016年6月16日 池田公博 委員(神戸大学教授)

宮田委員御指摘の点については、そのような考え方も成り立つだろうとも思われます。

ただ、小木曽委員からも御指摘がありましたように、親告罪の規定は告訴がなければ公訴を提起することができないという文言になっておりまして、公訴権行使を制限する手続規定であるとも理解することができます。

手続規定については、法改正があった場合は新法適用が原則であると考えますと、先ほど御紹介いただいた刑法施行法の規定につきましても、そのような特別の規定を置かなければ原則どおり新法が適用されるが、それは事柄の性質に反し適切でないという立法政策上の判断に基づいて、敢えて設けられた特則であると理解することも、可能ではないかと思われます。

そうだとすれば、本件についても、新法を適用すべきかどうかというのは、法改正の趣旨に即して考えることが許される問題だろうと思います。

そして、被害者の負担を軽減するというのが、今回の非親告罪化の趣旨であるとするならば、その必要性は施行の前後を問わず存在するものであり、新法適用を妨げる理由はないのではないかと思われます。

もちろん、そのことにより被疑者の地位が著しく損なわれる、悪化するという事情があれば話は別だと思われます。

ただ、これも、処罰され得る地位にあるということについては法改正の前後を通じて変更がないのでありまして、新法を適用することによって、その地位を著しく悪化させるということにもならないと思います。

したがいまして、新法の適用が許されないとまでは言えないと考えます。

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この論議のつづきは、明日のブログでみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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