児童ポルノの単純所持に対する自民党&公明党と、民主党の対応(15)。民主党などの反対によって、児童ポルノの被害者の救済は、5年先延ばしになりました

いまから12年前(2009年)のことです。
児童ポルノの被害者は、期待と希望をもって国会論議の成り行きを見守っていました。
児童ポルノの単純所持が禁止されるかもしれない、と。
被害者を救済を目指す与党に対して、民主党などの野党は、ああだこうだと文句を並べて反対しました。

(確認。2009年当時の各党の方針)
<児童ポルノの単純所持について>
与党(自民党&公明党)「児童ポルノの単純所持は禁止」
民主党「児童ポルノの単純所持を禁止すべきでない」

(参考。児童ポルノ禁止法)
<経緯>

1999年 児童ポルノ禁止法成立
  
2004年 児童ポルノ禁止法改正
 ・児童ポルノの「製造・販売」、「提供目的での所持」を罰則の対象に。
  
2009年
 ・与党(自民党と公明党)は、児童ポルノの単純所持を禁止する改正案を国会に提出した。
 ・民主党などが反対した。
 ・衆議院が解散され、与党案は廃案となった。
  
2009年9月16日~2012年12月26日 民主党政権
  
2012年12月26日~ 自民党政権
  
2014年6月18日  児童ポルノ禁止法改正
 ・児童ポルノの単純所持を禁止する改正案が可決、成立した。

本日は、これまで参照してきた国会会議録のなかから、参考人の意見をみてみます。

(参照元)
2009年6月26日
 衆議院 法務委員会
 会議録

(参考。当ブログ)
2009年6月26日の衆議院法務委員会の論議>
2021年8月18日(序)
2021年8月19日(1)
2021年8月20日(2)
2021年8月21日(3)
2021年8月22日(4)
2021年8月23日(5)
2021年8月24日(6)
2021年8月25日(7)
2021年8月26日(8)
2021年8月27日(9)
2021年8月28日(10)
2021年8月29日(11)
2021年8月30日(12)
2021年8月31日(13)
2021年9月1日(14)

2009年6月26日 衆議院法務委員会

児童ポルノの単純所持に対する処罰(15)
 ※|(序)(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

(2009年6月26日 衆議院 法務委員会「会議録」より引用。)

2009年6月26日 山本幸三 衆議院 法務委員会 委員長(自民党)

ただいま、両案審査のため、参考人として、首都大学東京法科大学院教授前田雅英君、弁護士一場順子君、財団法人日本ユニセフ協会大使アグネス・チャン君、上智大学文学部新聞学科教授田島泰彦君、以上4名の方々に御出席を願っております。

この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。

次に、議事の順序について申し上げます。
まず、前田参考人、一場参考人、アグネス・チャン参考人、田島参考人の順に、それぞれ15分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

それでは、まず前田参考人にお願いいたします。

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2009年6月26日 前田雅英 首都大学東京法科大学院 教授

首都大学東京法科大学院の前田と申します。

児童ポルノに関しては、初めに、平成11年(1999年)の法律のころにも若干お手伝いさせていただいて、森山先生(自民党の森山眞弓 衆議院議員)以下に若干の御説明をさせていただいたことがあるんですが、法律ができたことによって、やはり児童ポルノ、少なくとも、活字媒体といいますか、本屋の店頭からはかなり様相が変わって減った。

非常によくなったと思うんですが、状況の変化に合わせて、やはり今回、両党の案、非常によくできていると思いますが、さらに進歩をさせていただきたい。

その意味で、法律の細かいことをちょっと申し上げるかもしれませんが、私は刑法の専門ですので、刑罰法令をつくるときの観点からいって、それから現行の処罰の状況を踏まえて、どう改正するのが最も児童のためになるかという観点から発言をさせていただきたいと思います。

1つは、初めの立法のころに比べて特に留意しなければいけないのは、ネットの問題ですね。
法益侵害性が非常に高まってきている。
児童ポルノが一たんネットの中で流れ出してしまうと、もう消えることはあり得ない。
永遠に残ってしまう。
もちろんなるべく残さないように消していくことが重要だと思いますけれども、本人にとって非常におぞましい画像が一生消えない形で残り続けるということ、これを何とかしなきゃいけないということなんだと思います。

立法の状況としてもう1つ変わってきているのは、刑事法の側からいいますと、刑罰というのはなるべく狭い方がいいというのは今でも変わらないんですが、例えば、家庭内の子供のしつけなんかについて刑罰が入るのはとんでもない、男女間のトラブルに法律を使うのはとんでもない、夫婦げんかは犬も食わないと言っていたのが、児童虐待の法律ができた、ストーカーの法律ができた、そしてDV法ができた。
その間ずっと見ていまして、やはり適切に、国民の意識の変化に合わせて立法状況、進めていっていただいていると思っております。

その中でやはり、児童ポルノ法を初めにつくったところで、後で申し上げますが、日本の文化の特殊性という意味で、非常に慎重目につくっていった。だんだん機が熟してきて、さらに国際的なレベルに合わせて動いていけるようになってきているという感じがいたしております。

やはり、ネット社会が中心になってくると余計そうなんですけれども、グローバルな視座というのは非常に重要だと思います。
ほかの研究会なんかでアメリカ大使館の方なんかに来ていただいてお話を伺っていても、やはり、その国の評価をするときに、子供に対してのスタンス、しかも、こういう画像に対してのスタンスがどうであるか、これが非常に大きなものであるというのが実感としてわかります。
今回、いや、外国の言うなりになってどうこうということだけではないんですが、やはり恥ずかしくない立法ということで、どういう理由でこうしたかということを世界に向かって常識的に説明のできる立法ということが重要だと思っております。

先ほど、ちらっと申し上げかけたんですけれども、日本の特殊性といいますか、東洋の特殊性といいますか、性に関しての問題というのは国ごとに大分事情が違うわけで、何をどこまで処罰するか、例えば、同性愛処罰というのは西欧では非常に問題になるんですが、我が国では同性愛そのものを処罰するということはないわけですね。近親相姦の処罰ということもない。

そういう状況の中で、児童ポルノの平成11年(1999年)の法律ができる前は、刑法175条のわいせつ罪の対象として児童ポルノをどうやってマネージしていくか、抑圧していくかという観点だったんですね。
ところが、その当時は、わいせつ物というのは、これはこういう場ですから申し上げざるを得ないんですが、例えば、陰部の陰毛の部分がどれだけ写っているかがわいせつ罪にとって重要である、わいせつのチェックはそれでやっていたわけですね。
そうすると、児童はそれがないからわいせつではないから、児童ポルノは問題が少ないものとして、大人の性的な好奇心の対象のものに代替するものとして、より広く使いやすいものとして出版されたというような経緯も少しあるんです。

それが、児童ポルノの法律、世界の流れの中で、単なる性的な法益侵害、風俗としての法益侵害を超えて、子供の人格権、人権、そういうものに移っていく中で、児童ポルノというのは従来のポルノ犯罪とは違うという形に変わってきた。
名前を児童ポルノとしておくこと自体、私はそれ自体は全然問題ないと思うんですが、その揺れ動きはきっちり見ておく必要があって、レジュメにも書いたんですが、性的自由といいますか、性犯罪に関しては、強姦、強制わいせつというのが片一方であって、もう片一方にはわいせつ物陳列みたいなものがあって、児童ポルノはわいせつ物陳列的なものの延長線上としてとらえてきたのが、いや、もっと人間の人格の根本を害すると。
その意味で、強姦、強制わいせつに近いような、被害者は社会じゃなくて少女そのものだという方向に大きく振れていくんですね。

ただ、児童ポルノの問題というのは、それだけに特化してしまいますと、限定してしまいますと、問題を見誤るのであって、やはり児童ポルノ自体が社会全体に対して風俗的な侵害も与えているということも考えていかなきゃいけない、これが今回の改正案を見るときの一つの視座になると思います。

この中で、よく小児性愛の問題なんかを考えるときに、児童ポルノを禁圧すると、特にこの場合は漫画のことなんかを考えている人が多いんですけれども、これを禁圧すると犯罪がふえると。
要するに、幼児に対していたずらをしないで済んでいるのは漫画や画像を見て満足しているからであるというようなめちゃくちゃな議論もあります。
これはもちろん立証されていない
逆に、こういうものがなくなれば、幼児に対してのそういう侵害が減るかといったら、そう単純ではないと思います。
だから、これをなくしてもそういうものが減らないから禁圧すべきでないというようなめちゃくちゃな議論をする人もいます。

これも、犯罪を減らすためだけの手段でやるのではなくて、その画像が出ること自体で少女自体が大変な侵害を受けて、おぞましいものを見せられているというものもあるし、それから、社会全体から見て、小学生等を強姦しているものを写して、それが、いや、強姦罪に当たるけれども画像としては問題ないんだみたいな議論、これはやはりおかしいんだと思いますね。

その辺のバランスをどうつかまえながら現在の国際的な常識に合わせて法案をつくっていくかということなんですが、その意味で、両案を見せていただいて一番気になったのは、やはり児童ポルノの定義ですね。

現実に、きのうも東京都の関係で、こういう画像とか出版物の問題点をチェックしていて、一番たくさんあふれているのはやはり幼児の裸なんですが、裸になるかならないかぎりぎりのところで、小さな切れ端をつけて水着様に見せて、これで今全裸ではないからオーケーだみたいなものをたくさん出しているわけですね。
それでも十分広まる可能性があるし、重要な部分である。

今回のものを見ますと、殊さらに露出させとかなんとかという絞りをすると、要するに、ただ全裸のものの写真だけで性器が余り写っていないみたいなものが落ちる可能性がある。
これは非常に危険なことだと思います。
現実に広がっている画像とかそういうものの観点からいって、この点は、児童ポルノの問題を考えるとき、それからPTAの方々や何かの御意見を伺っていても、これは非常に困るということですね。

「殊更に」というのがどういうふうに解釈されるか、我々法律家の常識からいったら、これはやはり専ら性器を写したもの以外取り締まれないというふうに変わると読みます。
その意味で、この案は気にはなる。

ただ、民主党案にも非常にすぐれた点があって、後でも述べます、盗撮の防止とか、それは非常にすぐれていると思いますけれども、性器に余りこだわるのはよくないといいますか、それに特化してというのは、先ほど申し上げたような意味での広い法益侵害をカバーするという意味で十分ではないという気がします。

私は、わいせつ物の審査みたいなものを警察の関係でも若干お手伝いしている中で、結局、わいせつの方に引きつけ過ぎると、性器が何%写っているかだけでいってしまうんですね。
だったら、性器がぼんやりしか写っていないから、女の子から見たら耐えがたい裸の写真でもこれはオーケーということになる。
これは非常にまずい。
その可能性があるようなものであるとすれば、むしろ後退になるのではないかという危惧感を持っているということでございます。

ただ、それに関連して、盗撮防止なんかで民主党案が提案されているのは、私、盗撮の問題を何とかしなきゃいけないと考えている者としては、非常に重要な御提案だと思うんですが、それが児童ポルノの定義の変更と組み合わさってしまうと、問題の解決が不十分になるというふうに考えております。

あと、時間の関係で、ちょっと単純所持罪の方に移っていきたいと思うんですが、先ほどの世界の趨勢に合わせてということ、それ以上に、現実の取り締まりとか実効性のあるチェックという意味では、やはり単純所持の禁止をうたうことは非常に重要だというふうに思います。
もちろん民主党案も単純所持に対しての対応を試みておられる。
ただ、単純所持自体の禁止規定、罰則のない禁止規定は、特にネット社会でブロッキングの問題や何かが出てくる、それから削除要請をするというようなときに、法的にこれは違法な画像であると言えるか言えないかというのは非常に重要なんですね。

処罰するかどうかに関しては、構成要件の明確性は非常に重要です。
それに対して、民主党案、自民党案、それぞれ苦労されていて、それについて一言申し上げたいと思うんですが、その前提として、処罰規定の外に禁止規定を設けることが非常に重要な意味を持っているということを強調しておきたいと思います。

「みだりに、」という概念、もちろんこれはあいまいだと思いますけれども、この程度の規定というのは、ほかの法文からいって、不明確であるというようなそしりは決して受けないんだと思うんですね。

あと、具体的な所持罪の中身ですけれども、自民党の方は、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」ということで、目的規定、これは考え方によっては不明確になる。
ただ、1つの考え方は、こういう縛りをつけないで、単純所持をもっと広く処罰すべきだというのが世界の流れからいって筋だと私は思います。
平成11年(1999年)のころから、単純所持を処罰する議論の方がむしろ強かった。
ただ、処罰範囲が広過ぎるとか、日本ではまだ児童ポルノがそんなになじんでいないということで、もうちょっと熟すのを待ちましょうといって今まで来ているんですね。

その中で、自民党の案もやはりなお慎重に、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」と。
客観的に、ただ1枚持っているとかじゃだめで、法律家の感覚からいくと、ある程度の枚数を持っているとか、持っている形状からいって、やはりそれはある程度判断できる、ある程度じゃなくて、今までの刑事の世界はそうやって立証するわけですね。
絞り過ぎるという感じはあるけれども、やはりこの程度の縛りをするというのは、ある程度やむを得ないかなということなんですね。

法律家から見て、あと、(民主党案の)みだりに、有償または反復してというのも非常によく使う合理的な根拠というか構成要件の絞り方なんですけれども、これは実際上の運用を考えたときに非常に厳しいことになる
ポイントは、取得したときに児童ポルノの認識がなきゃいけないので、取得行為の立証、どこで、どうやって、いつ、だれから買ったかの認定をどうしていくか。

もう時間がないので、ちょっと急いじゃいますけれども、今でも児童ポルノ捜査というのはハードルが高いです。
特に、18歳未満の認識がなきゃいけないんですね。
それから、児童をちゃんと特定していなければ、特に年齢を立証しなきゃ構成要件該当性は認められませんから、大変なことになるし、あと、ネットにもう移ってきていますから、それをどうさせるか非常に難しい。

その中で、所持罪をどうつくっていくかというときに、有償、これまた有償も立証が非常に難しいんですね。
ですから、肝心の人が逃げてしまう余地がかなり高くなる。
あと、反復といっても、これだけ満ちあふれているいろいろなサイトから1個ずつ持ってくると、反復じゃないみたいな議論をされちゃいますと、潜脱することがかなり容易に見えるような構成要件にも見えるんです。

ちょっと、重箱の隅をつつくとか、揚げ足をとるような議論をしているように見えて申しわけないんですが。
私、パーフェクトということはないと思いますが、基本的に、今回の改正で、両案、非常に御努力されたというのは認めるんですが、どちらかといえば、政府・与党(自民党&公明党)については、唯一、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」というのが若干絞り過ぎかなという感じはしますけれども、現実に動かすには、やはり現実に考えられる案としては、結局はベストに近いというふうに考えております。

以上で終わります。

(拍手)

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2009年6月26日 山本幸三 衆議院 法務委員会 委員長(自民党)

どうもありがとうございました。

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 ※|(序)(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

同委員会における議論のつづきは明日のブログでみてみます。

(再掲。前田雅英 教授)
(民主党案の)みだりに、有償または反復してというのも非常によく使う合理的な根拠というか構成要件の絞り方なんですけれども、これは実際上の運用を考えたときに非常に厳しいことになる

政府・与党(自民党&公明党)案については、(略)、現実に動かすには、やはり現実に考えられる案としては、結局はベストに近いというふうに考えております

民主党などの野党の反対によって、「ベストに近い」与党(自民党&公明党)案は廃案となりました。
被害者は野晒しにされました。
このことを忘れてはなりません。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。

(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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