【刑法改正を審議する検討会の13回目の議事録】(10)。配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方。香西咲さんたちの戦いは、性犯罪に対する人々の認識を変えました

ここ最近は、法務省の第13回性犯罪に関する刑事法検討会で交わされた議論をみています。

(参考。当ブログ)
第13回性犯罪に関する刑事法検討会議事録について>
2021年4月29日(AV出演強要)
2021年4月30日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方①)
2021年5月1日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方②)
2021年5月2日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方③)
2021年5月3日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方④)
2021年5月5日(強制性交等の罪の対象となる行為の範囲)
2021年5月6日(法定刑の在り方)
2021年5月7日(性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方①)
2021年5月8日(性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方②)
2021年5月9日(性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方③)

(参考。法務省の性犯罪に関する刑事法検討会
<開催状況>

第1回(2020年6月4日)※議事録公開
第2回(2020年6月22日)※議事録公開
第3回(2020年7月9日)※議事録公開
第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第8回(2020年11月10日)※議事録公開
第9回(2020年12月8日)※議事録公開
第10回(2020年12月25日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第11回(2021年1月28日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第12回(2021年2月16日)※議事録公開
第13回(2021年3月8日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第14回(2021年3月30日)※議事録準備中

第15回(2021年4月12日)※議事録準備中

2021年4月12日
 性犯罪に関する刑事法検討会
取りまとめ報告書(案)

・第16回(2021年5月21日開催予定)

2021年3月8日 法務省 第13回性犯罪に関する刑事法検討会

本日は、第13回性犯罪に関する刑事法検討会議事録のなかから、
「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」
の議論を参照します。

配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方

(2021年3月8日 第13回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)

<18~19ページ>
2021年3月8日 井田 良 座長(中央大学教授)

次に、
「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」
についての検討に入ります。

二巡目までの議論を簡単に整理させていただきますと、意見要旨集20ページから23ページまでにありますように、解釈論として、配偶者間では性犯罪の成立自体が限定されると解する余地が全くないわけではないので、解釈上の疑義を解消するために明文規定を設けることも選択肢としてあり得るという御意見などが述べられた上で、考えられる規定の在り方としては、強制性交等罪の客体のところに
「(婚姻関係にある者を含む。)」
と規定する方法、又は、
「婚姻関係の有無にかかわらず、強制性交等罪の罪とし」
といった文言を加える方法など、具体的な御意見が述べられております。

本日は、これらの御意見、これまでの御議論を踏まえ、既に述べられた御意見に更に追加して述べることがあるかどうかという観点から御発言をお願いいたします。

10分程度の時間を予定しております。

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<19ページ>
2021年3月8日 小島妙子 委員(弁護士)

ほぼ議論が尽きているかと思うのですけれども、22ページの「④」の4つ目の「〇」に関連して申し上げたいと思います。

(参考。意見要旨集22ページの「④」の4つ目の「〇」)
〇 客体について「者(婚姻関係にある者を含む。)」と規定するものとすると、事実婚、パートナー、性的マイノリティー同士の関係が排除されるおそれがあるものの、婚姻関係に基づく性交要求権があると考えて犯罪が成立しないとされることが問題であることに焦点を当てるのであれば、そのような規定もあり得ると思われるし、176条(強制わいせつ罪)・177条(強制性交等罪)を当事者が婚姻関係にあるか否かを問わず犯罪が成立するというような条項にすることも考えられる。

被害者御自身も、また、DVの相談機関や警察なども、いまだに夫婦の間では性交の要求権があるとか、性交に応じる義務があると考えて、夫婦の間では強制性交等罪は成立しないという意識が根強く残っていて、検挙もほとんど行われていないという現在の社会的状況にフォーカスしますと、これを是正していくという観点から、端的に、
「(婚姻関係にある者を含む。)」
というような括弧書きを現行刑法典に書き込むという方が、現在の状況に合っていると思っております。

それ以外の関係を排除する趣旨ではないということを説明しつつということになりますが、刑法典に現時点で載せるとすると、今の社会状況にフォーカスして、先ほど述べたような規定がいいのではないかなと考えております。

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<19ページ>
2021年3月8日 齋藤梓 委員(臨床心理士)

小島委員の御意見も分かりますし、
「(婚姻関係にある者を含む。)」
と書き込むと、婚姻関係という強い関係以外のものが全て含まれるということが、法律家の皆様の認識としてあるということも分かるのですけれども、夫婦間だけではなく、社会の中では、事実婚の関係も、パートナーシップの関係性も、事実婚の定義を満たしていない関係もあります。

いろいろな状況もあるのかなというように思いますし、やはり司法関係者ではない人の中には、
「(婚姻関係にある者を含む。)」
と書かれると、婚姻関係に至れなかった自分たちというのは排除されているのかなという感覚を抱く場合もあると思います。

「婚姻関係の有無にかかわらず」
としていただければ、婚姻関係という強いものが示されて、しかし、その強いものでさえ、その有無にかかわらずということで、排除されている感覚が少なくなるように思います。

どちらにしても、今現在、様々な関係性が存在している社会の中で、いろいろな関係性が排除されないのだということについて、報告書の中にですとか、議論の経過を説明する中に、きちんと明示していただければと思っております。

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<19~20ページ>
2021年3月8日 井田 良 座長(中央大学教授)

ほかに御意見はございますか。
よろしいですか。
ほかには、これまでの議論に付け加えての御意見はないようですので、この点についての議論は、この辺りで一区切りとさせていただきたいと思います。

三巡目までの議論の簡単なまとめを申し上げると、現在、婚姻関係や内縁関係などの親しい間柄であるから、強制性交等罪は一切成立しないという考え方は実務上も学説上も採られていないこと、他方で、一部の学説では、婚姻関係があることによって強制性交等罪の成立が一部限定されると考えられているものもあること、こういう事実認識は委員の間で共有されたものと考えられます。

その上で、一般社会には根強い誤解があるのだという御意見、あるいは、司法関係者の間にも、親しい関係にあると同意があるはずだというバイアスが掛かるのだというような御意見もあり、このような状況を是正するため、また、国際社会からの批判が強いこともあるため、明文の規定を設けるべきだという積極的な御意見がありました。

また、解釈上の疑義を解消する必要があるのであれば規定を設けることも考えられるという、言わば消極的認容というのでしょうか、そのような御意見もありました。

具体的にどのような規定を設けるべきかについては、例えば、
「婚姻関係の有無にかかわらず」
と規定するのがいいのではないかという御意見、これに賛成する御意見が示され、特に明文の規定を入れることに反対だという御意見はなかったように思われました。

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(確認)
性犯罪に関する刑事法検討会
2021年3月8日 第13回性犯罪に関する刑事法検討会
  ↓
2021年4月12日 取りまとめ報告書(案) 公表

上述のとおり、性犯罪に関する刑事法検討会の事務局は、2021年4月12日に、取りまとめ報告書(案)を公表しました。
同報告書(案)のなかから、
「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」
に関する取りまとめをみてみます。

2021年4月12日 取りまとめ報告書(案)

配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方

(2021年4月12日 性犯罪に関する刑事法検討会 取りまとめ報告書(案)より、引用。)

エ 小括

以上の議論を踏まえると、今後の検討に当たっては、配偶者間では性犯罪の成立が限定され得るとの解釈もなお存することに鑑み、婚姻関係以外の関係性にも留意しつつ、解釈上の疑義を払拭するための確認的な規定を設ける方向で検討がなされるべきである。

ご覧のとおり、「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」につきましては、
確認的な規定を設ける方向で検討がなされるべきである
との集約案が作成されました。

いまから4年前(2017年)に刑法の性犯罪の規定が改正されました。
当時も法務省は、刑法改正を審議する検討会(性犯罪の罰則に関する検討会)を設置しました。
このときも「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」が論点となりました。
当該論点を提起したのは、弁護士の角田由紀子委員です。
検討会では、「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」に対して、ほとんどの委員が冷徹な反応をしめしました。

(再掲。2021年4月12日の取りまとめ報告書(案)
確認的な規定を設ける方向で検討がなされるべきである

この4年のあいだに、性犯罪に対する人々の認識は激変したようです。

(香西咲さんのツイートより、引用。)

香西咲さん
2020年9月29日

世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、
私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。

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香西咲さんたち被害者の戦いが世情を変えました。
明日は、2014年から2015年まで開催された性犯罪の罰則に関する検討会の議事録のなかから、
「配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」
に関する議論をみてみます。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
2017年12月1日
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。

2018年3月19日
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。

2018年11月14日
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
2018年11月1日
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
2018年11月1日
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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