本日も、2月16日の第12回性犯罪に関する刑事法検討会の議題のひとつである
「障害者を被害者とする罰則の在り方」
の論議を参照します。
(参考。第12回性犯罪に関する刑事法検討会)
<議題>
□一定の年齢未満の者を被害者とする罰則の在り方(性交同意年齢の引き上げ)
□障害者を被害者とする罰則の在り方
□地位・関係性を利用する罰則の在り方
□暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方
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(参考。当ブログ)
<第12回性犯罪に関する刑事法検討会の議事録について>
・2021年3月23日
・2021年3月24日(性交同意年齢の引き上げ①)
・2021年3月25日(性交同意年齢の引き上げ②)
・2021年3月26日(性交同意年齢の引き上げ③)
・2021年3月27日(性交同意年齢の引き上げ④)
・2021年3月28日(性交同意年齢の引き上げ⑤、障害者を被害者とする罰則の在り方①)
・2021年3月29日(障害者を被害者とする罰則の在り方②)
2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会
障害者を被害者とする罰則の在り方(三巡目の論議)③(※二巡目は、2020年12月8日の第9回検討会)
(2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<20~21ページ>
●2021年2月16日 小西聖子 委員(武蔵野大学教授)
今の宮田委員の障害者の性的自己決定権の問題は、
(参考。宮田桂子委員【弁護士】)
「障害者の人の性的な自己決定は、かなり障害の程度が重くても、あるのではないのかという指摘も海外ではされているところです。例えば、障害がある人の欲求に応じた場合というのはみんな犯罪になってしまっていいのでしょうか」
もちろん尊重しなくてはいけない問題だと思いますが、佐藤委員、池田委員のお話にもあったように、
(参考。佐藤陽子委員【北海道大学教授】)
刑法177条(強制性交等罪)、178条(準強制性交等罪)で障害者が保護されるというのは当然だと思うのですけれども、その保護の対象に入らない人たちであっても、障害者も未成年者と同じように脆弱性を有していますから、やはり特別な保護が必要だと考えています。
では、どうして特別な保護が要るのかというと、(略)、流されやすいとか、迎合的であるとか、あるいは、生活の世話に依存している関係性にあるので逆らえないとか、そういう理由からだと思います。
(参考。池田公博委員【京都大学教授】)
これまでの御指摘にもありましたように、重い身体障害や知的障害があってそれに乗じたという場合には、既存の刑法178条(準強制性交等罪)で処罰することが可能であるということが前提となると思います。
その上で、今、問題となっておりますのは、そのような程度に至らない障害についても、やはり脆弱性の要因になり得ますし、地位・関係性が利用されて被害を受けることがあるので、それも処罰範囲に含めるべきだとの御指摘であり、その御指摘は理解できるところだと思っております。
問題となるのは、障害者手帳を持っている方や明らかに意思が表明できないというような方ではないと思います。
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臨床の現場で自分の経験したケースの中で、どういう人たちが、処罰されない中間層に入ってくるかというと、一つは発達障害がある方、それから、もう一つは軽度の知的障害の方、そのような方は、やはりなかなか外から分かりにくいし、障害者手帳をお持ちでない方もいるかと思います。
もう一つは、虐待などの過去の経験があって、実際に複雑性PTSDなどの状態にある人は、非常に被害に対して脆弱で、一種の精神障害だといえると思うのです。
こういう方も、自由に意思決定することができるというレベルではなく、非常に脆弱であり、後でとても後悔するのだけれどもうまく対抗していけないということが、実際上あると思います。
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そういうことを含めた上で考えますと、山本委員が言われたように、
(参考。山本潤 委員【一般社団法人Spring代表理事】)
例えば、生活の世話をしている人、トイレの介助をしている人、服薬をさせる側の人、そして、食事の世話をしている人、そのような人からの被害というのは、抵抗できない状況というのがより強いと思います。
相手の障害を知り得る立場にある人が、そのことに乗じて行うことについては、これは罰を与えてもいいのではないかと思いますし、福祉とか医療のサービスをする側が加害者になるケースは、実はかなり多いです。
その多くは警察へ行っても不起訴になってしまうし、その前で止まっているケースも多いですので、そういうところを対象にすることとして新たな規定の在り方を考えるというようにしていただけるといいかと思います。
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<21ページ>
●2021年2月16日 齋藤梓 委員(臨床心理士)
刑法177条(強制性交等罪)、178条(準強制性交等罪)で捉えられているという意見が多いですが、捉えられていない事例が極めて多いので、ちゃんと捉えていっていただきたいと思っております。
(参考。刑法)
□177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
□178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。
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また、障害において、脆弱性という言い方はすごく難しいと思っています。
子供は、まだ発達途上なので、脆弱性があると表現することが可能かと思いますが、障害を有している方の脆弱性というのは、それを脆弱と表現して良いのか、社会的に脆弱な立場に追いやられているということであって、能力については特性が異なるだけではないか、ということです。
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脆弱性という言葉を使うと、宮田委員が危惧していたようなパターナリスティックな印象というのが出てしまうようにも思います。
(参考。宮田桂子委員【弁護士】)
「障害者の類型という規定を作ることによって、障害者に対するパターナリズムが強化されて、施設内で性的な行為をすることがおよそ問題行動だという形で位置付けられてしまわないように、何か注意的な文言があるといいと思っています」
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小西委員のおっしゃっていたように、
(再掲。小西聖子委員【武蔵野大学教授】)
「相手の障害を知り得る立場にある人が、そのことに乗じて行うことについては、これは罰を与えてもいいのではないかと思います」
相手の障害を知り得る立場にある人が、そのことに乗じて行うということは刑罰の対象となってしかるべきではないかと思いますし、それに加えて、例えば、脆弱ということではなくて、知的障害や発達障害のような、特性を利用するというような文言の方が適切なのではないかと考えました。
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また、刑事司法手続の中で被害者に障害が疑われた場合には、きちんと鑑定とか、心理検査の実施とか、主治医の意見書とかによって、被害者の特性を適切に評価して、そして、その上で特性を利用したかどうかの検討をしていくということを考えていただけると有り難いなと思っています。
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<21~22ページ>
●2021年2月16日 金杉美和 委員(弁護士)
非常に難しい問題だと思います。
佐藤委員と共通する問題意識を持っていまして、理解はできるのですが、依存するような関係、例えば、入所している施設の職員と利用者であるとか、あるいは訪問介護・訪問看護に来ていただいているヘルパーさんと被介護者・被看護者であるとか、そのような依存する関係で、利用して、あるいは乗じてという形での犯罪を個別に規定した場合、やはり別の問題が生じ得ると思います。
というのは、そういった密接な関係にある方というのは、確かにそういう利用したり悪用したりということが支援する側から起こりやすい場面でもあるとは思うのですが、逆に、障害をお持ちの方からしても、通常の恋心というか、性的欲求を抱きやすい関係でもあると思います。
私が担当しているケースでも、障害をお持ちの方が施設の職員さんを好きになって積極的にアプローチをし、性的なことをしたという訴えがあったので、性的な被害を疑って調査をしてみたところ、全くの妄想であった、事実無根であったというようなことが実際にございました。
そういった場合、悪用してとか利用してということを検察側が立証しようとしたときに、例えば、ラブホテルに入っていくところを無理やり引っ張って連れていくような状況が撮影された防犯カメラの映像といったような客観的な証拠が仮にあったとしても、それが本当に無理やりなのかということには疑問が残りますし、そういった証拠がない場合には、例えば、障害をお持ちの方からの求めに応じて性的な行為に及んだものの、やはり恋愛関係としては維持していけないと考え、通常のカップルでいうところの別れたというような状態になり、その後に、障害をお持ちの方から無理やりされたのだという被害の訴えがなされたような場合、利用してというところが本当にあったのかどうかということは難しい問題になってくると思うのです。
つまり、そういった関係性に着目して規定をするということは、障害をお持ちの方からの性的なアプローチというものを受ける側が、将来的にトラブルになるからやめておこうと強く抑制的になってしまうこととなり、その結果、障害をお持ちの方の性的な自由の抑制にもつながるという問題をはらんでいると思います。
処罰すべきものを処罰すべきだという問題意識は共通なのですけれども、一定の関係性に着目すると、結局そのような関係性にあるということが立証されれば、それを利用したということが立証されたということにつながりかねない危険があると思います。
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現状の刑法178条(準強制性交等罪)によって、当罰性の高いものはもう処罰されているというように理解をしていますので、それではばらつきがあるということであれば、その中に例示的な規定を置くというような形で対応すべきかと思います。
(参考。刑法)
□178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。
(参考。和田俊憲委員【東京大学教授】)
「例えば、抗拒不能を根拠付ける事情の一つとして、重大な障害というのを条文上に例示して、重大な障害によって心神喪失あるいは抗拒不能であることに乗じるというような条文にすることが、一つの方法として考えられるかと思います」
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<22ページ>
●2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)
予定の時間を過ぎましたので、これでよろしいでしょうか。
簡単にまとめさせていただきますと、一定の場合には、障害を有する方に対する性的行為を処罰する必要があることについては、異論はなかったと思われました。
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また、被害者が障害を有する場合については、現行の刑法178条(準強制性交等罪)の心神喪失・抗拒不能に乗じたとして処罰することが可能な場合があるという認識も共有されているものと思われました。
(参考。刑法)
□178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。
ただ、この刑法178条(準強制性交等罪)がなかなか使いづらく、運用にばらつきがあり、また、それによって必ずしも障害者の保護が実現されていない、あるいは、保護が十分ではないという御意見もあり、そこで、被害者が障害を有する場合には刑法178条(準強制性交等罪)が適用され得ることを明示するために、「障害」という事由を例示として規定すべきという御意見があり、これについても特に反対の御意見はなかったように思います。
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さらに、刑法178条(準強制性交等罪)ではなかなかうまく処罰できないということで、別途、障害を有する者に対する行為を切り出して特別の類型を作るべきだという御意見も多く出されたと思われますが、障害の内容や程度が様々であることから、類型化にはなかなか骨が折れるのではないかということについても、問題意識が共有されたものと思われました。
その上で、どのように類型化を行っていくかということが、正に検討課題ということになり、施設職員や介護者による行為など一定の場合を切り取って類型化すべきだという御意見、あるいは、そのような方法ではどうしても一律の判断になってしまうので、もう少し具体的な依存関係や脆弱性の利用関係のようなものを個別的に判断すべきだという御意見が出されたと思います。
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それでは、開会からかなり時間が経過いたしましたので、ここで、5分休憩をしたいと思います。
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「障害者を被害者とする罰則の在り方」に関する論議につきましても、順調に推移しています。
当該被害に対してなんらかの規定が設けられることはまちがいありません。
現在の日本の刑法は、笊(ざる)です。
法の隙間から犯罪者が易易(やすやす)と擦り抜けていきます。
そう遠くない将来おこなわれる刑法改正によって、日本はまともな国に近づく予感がします。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、
私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。
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性犯罪に関する刑事法検討会では、AV出演強要に対する処罰の在り方も論議されています。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
・第9回(2020年12月8日)※議事録公開
・第10回(2020年12月25日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
●第12回(2021年2月16日)※議事録公開
・第13回(2021年3月8日)※議事録準備中
・第14回(2021年3月30日開催予定)
AV出演強要に関する審議状況につきましては、過日の当ブログをご覧ください。
(参考。当ブログ)
<性犯罪に関する刑事法検討会におけるAV出演強要処罰の論議>
・2021年3月5日
AV出演強要犯はこの世の極悪です。
強姦罪(強制性交等罪)で処罰することを切望します。
併せて時効の延長も。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)



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