法務省の性犯罪に関する刑事法検討会は、刑法改正の審議を精力的に進めています。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
・第9回(2020年12月8日)※議事録公開
・第10回(2020年12月25日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
●第12回(2021年2月16日)※議事録公開
・第13回(2021年3月8日)※議事録準備中
・第14回(2021年3月30日開催予定)
先週より、2月16日に開催された12回目の検討会の議事録を参照しています。
同検討会の当日の議題は以下のとおりです。
(参考。第12回性犯罪に関する刑事法検討会)
<議題>
□一定の年齢未満の者を被害者とする罰則の在り方(性交同意年齢の引き上げ)
□障害者を被害者とする罰則の在り方
□地位・関係性を利用する罰則の在り方
□暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方
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(参考。当ブログ)
<第12回性犯罪に関する刑事法検討会の議事録について>
・2021年3月23日
・2021年3月24日(性交同意年齢の引き上げ①)
・2021年3月25日(性交同意年齢の引き上げ②)
・2021年3月26日(性交同意年齢の引き上げ③)
・2021年3月27日(性交同意年齢の引き上げ④)
本日は、井田良座長による
「一定の年齢未満の者を被害者とする罰則の在り方」(性交同意年齢の引き上げ)
の中間のまとめと、
「障害者を被害者とする罰則の在り方」
の論議をみてみます。
2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会
(2021年2月16日 第12回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
一定の年齢未満の者を被害者とする罰則の在り方(三巡目の論議)~中間のまとめ
<16~17ページ>
●2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)
ありがとうございます。
時間も超過していますので、この論点についてはここで一区切りとさせていただいて、過不足なくまとめることができるか分かりませんけれども、若干のまとめを試みてみたいと思います。
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被害者が若年であるために脆弱であるという事情があって、判断能力が十分でない、こういう被害者に対する性的行為を処罰する必要があるという点については、委員の皆様において異論はないとお見受けしました。
どのような場合について、どのような方法で捕捉するかということが議論の中心であったと思われます。
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最もシンプルな方法としては、被害者が一定の年齢未満であることのみを要件として処罰することとする、いわゆる性交同意年齢を現行の13歳から引き上げるということが考えられるわけですが、この点をめぐっては、そもそも引上げに懐疑的な委員もいらっしゃいました。
また、大きく引き上げるのは難しいのではないかという御意見もあり、他方で、16歳までは引き上げるべきではないか、あるいは14歳までであれば引き上げてもよいという御意見、こういった様々な御意見がございました。
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そして、その少し上の、言わば中間年齢層につきましては、地位・関係性の利用類型として構成すべきという御意見が多かったように思います。
行為者が教師など一定の立場にある場合には、その立場にあることのみをもって処罰してよいという御意見も前回までにあったと思いますし、また、今回、被害者の意思決定をゆがめるような誘惑的な手段を要件として処罰の対象にすべきだという御意見があり、さらに、中間年齢層も、高い年齢層と低い年齢層の2つの類型に分けることができ、低い年齢層については比較的緩やかな要件、例えば、教師であるというような要件で処罰してよいのではないかというような考え方があり、いずれにしても、何らかの実質的要件を含めて規定した方がよろしいのではないかといった御意見が多くの委員から表明されたと思いました。
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また、刑事責任年齢が14歳であることとの関係で、性的行為の当事者双方に犯罪が成立することになる結論を回避しなければいけないという点についても、おおむね異論はなかったものと思います。
回避するための方法としては、いわゆる性交同意年齢未満の者については免責すべきだという御意見、あるいは、行為者が一定の年齢以上である場合にのみ処罰することとすべき、あるいは、当事者間の年齢差を要件とすべきというような御意見がありました。
年齢差の要件に対しては懐疑的な御意見もあったように思われました。
いずれにしても、そういった言わば例外的な規定を設けるとして、どのような場合を例外とするか、また、それが正当化される理由がどこにあるのかということは更に検討される必要があるように思いました。
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また、そもそも性交同意年齢の趣旨自体、あるいは児童福祉法との関係といったものも、まだ課題として残されているのではないかと思った次第であります。
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(つづき)
障害者を被害者とする罰則の在り方(三巡目の論議)①(※二巡目は、2020年12月8日の第9回検討会)
●2021年2月16日 井田良 座長(中央大学教授)
それでは、次の
「テーマ2 障害者を被害者とする罰則の在り方」
についての検討に入りたいと思います。
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このテーマについて、二巡目までの議論を簡単に整理させていただきますと、補助資料7ページ、8ページ、11ページから16ページまでにありますように、例えば、刑法178条(準強制性交等罪)の抗拒不能の要件を明確化するために、
(参考。刑法)
□178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。
「障害」を例示列挙すべきであるという御意見や、障害者と施設職員の関係性に着目した類型を設けるべきであるという御意見がありました。
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他方で、障害があること自体を犯罪成立要件とすることについては、障害の内容や程度等は様々であって、障害の有無やその具体的内容を要件として処罰の必要性のあるものとないものを切り分けることは非常に難しいといった趣旨の問題点も指摘されております。
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そうしますと、このテーマについての本日の議論に当たっては、障害について、刑法178条(準強制性交等罪)の抗拒不能の要件の問題として考えるか、それとも、障害者の脆弱性や障害者との地位の優劣、関係性などを利用した行為を問題とする特別の類型として考えるか、あるいは、その両方の問題として理解することになるのかということについての検討が必要になりますし、また、障害には多種多様なものがあるという御指摘がありましたので、それを踏まえて、処罰範囲を適切に定めるためには具体的にどのような要件とするのがよいかということについても検討が必要になるように思われます。
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さらに、先ほど木村委員の御指摘もございましたが、
(参考。木村光江委員【東京都立大学教授】)
「欺罔行為を用いたような場合で、刑法178条で拾っている判例もあるのですけれども、それはかなり限定的であるように思います」
現行法においても、刑法178条の準強制性交等罪が成立する場合があるということを考えますと、仮に、現行の準強制性交等罪とは異なる新しい規定を作るときには、刑の重さ、法定刑をどうするのかということについても検討が必要かと思われます。
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20分程度時間はありますので、遠慮なく御意見を御表明いただきたいと思います。
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<17~18ページ>
●2021年2月16日 和田俊憲委員(東京大学教授)
これまでの議論で述べられた意見と、ただ今、座長がこれまでの議論のまとめとしておっしゃった内容と、かなり重なることとなりますが、障害者に関しましては、第一に、重度の身体障害あるいは知的障害に乗じて性交等を行う行為が刑法178条(準強制性交等罪)で処罰可能であるということは、解釈上、明らかでありますし、また、裁判例調査の結果でも、その点について実務の混乱はないと思われます。
しかし、他方で刑法178条(準強制性交等罪)の要件については、
(参考。刑法)
□178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条(強制わいせつ罪)の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(177条)の例による。
先ほど来、話が出ていますように、実務上、不十分な点がある、あるいは適用にばらつきがあるという指摘もあるところです。
(参考。木村光江委員【東京都立大学教授】)
「実際にはなかなか刑法178条(準強制性交等罪)がうまく機能していないという現実があるように思います」
「欺罔行為を用いたような場合で、刑法178条で拾っている判例もあるのですけれども、それはかなり限定的であるように思います」
「実際に実務で使われていないというか、使い勝手が悪い条文だということになれば、やはり別類型を立てる必要があるのではないかと思います」
そういたしますと、例えば、抗拒不能を根拠付ける事情の一つとして、重大な障害というのを条文上に例示して、重大な障害によって心神喪失あるいは抗拒不能であることに乗じるというような条文にすることが、一つの方法として考えられるかと思います。
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第二に、それに加えて、障害者の脆弱性を利用する場合についての新たな処罰類型を作るということをどのように考えるかということです。
この方向性も検討に値するものであるとは思いますけれども、その際に十分考慮する必要があると思われるのは、やはり障害の内容や程度というのが様々であり得るということです。
そうすると、その新たに創設する規定において、障害という言葉を記載するだけでは処罰すべき行為を過不足なく示したことにはならないだろうと思われます。
先ほど議論されていた若年者については、年齢と性的行為に対する判断能力とがある程度比例する、あるいは、そのようにみなせると考えられるのに対して、障害者については、障害の内容・程度と性的行為に対する判断能力等との関係がどうなのかというところは、かなり多様なものがあると考えられますので、障害の程度だけに着目した規定というのもできないだろうと考えられます。
そのように考えますと、最終的には、性的行為への対応能力がどうだったのかということも含めて、具体的事案ごとに実質判断ができるような規定にする必要があるということになって、結局、障害者の状態であるとか、あるいは障害者の意思決定をどれぐらいゆがめる働きかけを行ったのかということが判断できるような、そういう手段を条文上、明確に定める必要があろうと思います。
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ちなみに橋爪隆委員は、2020年12月8日の第9回検討会でつぎのようにのべています。
(2020年12月8日 第9回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<3ページ>
●2020年12月8日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
「恐らく、障害を根拠とする処罰規定を設けるべきという御主張の背景には、(準強制性交等罪の)心神喪失や抗拒不能の要件が具体的ではなく、障害を有することがこれに該当するか否かが明確にされていないという御懸念があるものと思われます」
「このような疑問を解消するためには、心神喪失、抗拒不能の要件解釈を明確化することによって、その適用の可否を安定化させることが重要であると考えます」
「例えば、抗拒不能性を根拠付ける具体的な事情を例示列挙することも可能であり、その一類型として、被害者の重大な障害に付け込む行為などを規定することもあり得るように思われます」
従来の規定の拡充か、それとも新規定の創設か。
どちらに落ち着くのでしょうか。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、
私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。
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AV出演強要につきましても、強制性交等罪(強姦罪)を適用するのか、それとも新規定を創設するのか。
どちらに落ち着くのでしょう。
そう遠くない将来、結論がでます。
(参考。当ブログ)
<性犯罪に関する刑事法検討会におけるAV出演強要処罰の論議>
・2021年3月5日
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)



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