昨日のつづきです。
昨年(2020年)の12月8日の第9回性犯罪に関する刑事法検討会で、グルーミングの件が議題となりました。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
●第9回(2020年12月8日)※議事録公開
・第10回(2020年12月25日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第12回(2021年2月16日開催予定)
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(参考。当ブログ)
・2021年2月11日(※昨日。グルーミングに関する論議【途中まで】)
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本日もひきつづきグルーミングの議論を参照します。
グルーミング(※昨日のつづき)
(2020年12月8日 第9回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<18ページ>
●2020年12月8日 井田 良 座長(中央大学教授)
現行法上、強制性交等罪は、予備は処罰されていませんけれども、刑の同じ強盗罪についても予備があるわけだから、当然、強制性交等罪にも予備を作るべきだ、こういう御意見などもあるかもしれませんが、特に法律関係の委員の方の中で何か御意見はございますでしょうか。 |
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<18~20ページ>
●2020年12月8日 佐藤陽子 委員(北海道大学教授)
予備の話ではないのですけれども、まず1点、配布資料59(いわゆるグルーミングに関する諸外国の規定【仮訳】)についてなのですが、イギリス法の15A条は、
(参考。岡田参事官) 恐らくグルーミングに分類されるものではなくて、児童と性的なコミュニケーションをする罪ということで、また別罪のものだと思われます。 ドイツ法だと176条4項4号に児童と性的なコミュニケーションをする罪がありまして、これはグルーミングとは別罪で、こういう罪が要るかどうかについては、また別個考える必要があると思います。 |
その上で、グルーミング自体につきましてはドイツ法は176条4項3号、
(参考。岡田参事官) イギリス法では15条が参考になるかと思います。 (参考。岡田参事官) グルーミングは私の研究テーマの一つですので、ここで必要だと言ってしまうと、研究テーマだからだろうと言われそうですし、要らないと言ってしまうと、研究テーマの否定になってしまうので、結論は留保したいのですけれども、仮に作るとした場合に、イギリス法とドイツ法がちょうど配布資料59(いわゆるグルーミングに関する諸外国の規定【仮訳】)にありますので、作り方によってかなり処罰の方向性が違ってくるという意見を言わせていただければと思います。 |
詳細につきましては、先日、成文堂から公刊された「性犯罪規定の比較法研究」の54ページ、あるいは306ページにあるのですけれども、それぞれの条文の特徴がありまして、イギリスは、グルーミングをした後に、なおこのグルーミングというのは性的な語りかけである必要はなくて、単にお友達みたいに仲良くなることで子供と偽りの信頼関係を築くことでいいのですが、そのグルーミングの後に性的な行為をする目的で子供と実際に会う行為、会う準備をする行為などが処罰の対象になっています。
これは、グルーミングそのものではなく、目的とされている性的な虐待にかなり近いところまできて初めて処罰ができる条文になっています。 |
これに対しまして、ドイツではグルーミングそのものが処罰対象になっていまして、端的に言うと、児童に性的な虐待行為を行う目的でネット等でその児童とコンタクトを取れば、それでもう処罰されるというふうな規定になっています。
ドイツはかなり早めに処罰時期を設定していますので、こちらの方が犯罪予防効果が期待できるのではないかと思われるかもしれませんが、実は実効性がない規定だと言われていました。 それは、ただチャットで連絡をしている段階で性的虐待目的を証明するのがかなり厳しいことが理由でして、いわゆるシンボル立法、こういう行為はやめてくれというふうに社会にアピールする立法だと言われています。 このシンボル立法の問題点は、これで実際には処罰できないことが分かると、もはやシンボルにもならないということにありまして、どんどんこの規定の意味は失われていったかと思われます。 |
これに対してイギリスは、比較的処罰時期を後ろの方にずらしていますので、会うときに、例えばポケットにコンドームが入っていたとか、あるいは、かばんの中に潤滑油が入っていたとか、そういうことで性的な虐待目的を立証することができることになります。
この条文形態だとそれなりに実効性があるので、ある程度処罰ができる規定になっています。 |
これが基本的なドイツ法とイギリス法の作りの違いです。 |
ただ、更に一点補足したいのは、先ほど、ドイツはシンボル立法だと言ったのですけれども、実は、つい最近の改正で、1か所改正することで非常に使い勝手のいい条文になりました。
つまり、グルーミング規定の一部の未遂を処罰するという条文がプラスされまして、簡単に言うと、行為者が子供にグルーミングをしているつもりだったのだけれども、実は相手が大人だったという場合でも、未遂犯として処罰しますという規定が新たに挿入されました。 これによって何ができるようになったかというと、おとり捜査で警察官が行為者とかに働きかけて、それに返事が返ってきて、会おうとしているというときに、やり取りの中で上手に性的な目的も引き出せますから、そのまま潜在的な犯罪者を逮捕するという使い方ができるようになりました。 これによって、昔は全然使えなかったものが、かなり有用な一般予防のできる条文になると言われています。 |
このようにグルーミング規定を作る場合には、どういう規定にするのかが重要になるかと思います。 |
ほとんど処罰できないのだけれども、やめてねというふうなメッセージを送るためにグルーミングそのものを規制するか、あるいは、処罰の時期を実際の加害行為の直前まで我慢して、ある程度実効性のある規定にするか、あるいは、現行のドイツ法のように、基本的におとり捜査で捕まえるための条文に、これが日本で許されるかどうかは分かりませんが、するかとか、いろいろな選択肢があって、そこは決定しなければいけない問題なのではないか思っております。 |
<20ページ>
●2020年12月8日 井田 良 座長(中央大学教授)
御専門の見地から大変詳細な興味深い情報を頂きました。 |
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<20ページ>
●2020年12月8日 宮田桂子 委員(弁護士)
今の佐藤委員のお話には、考えていなかったこともありました。
グルーミング行為を考えるについて、例えば、チャットなどで呼び出して子供が監禁される事件等も起きております。 監禁とか未成年者誘拐、あるいはわいせつの目的の誘拐の未遂となる場合もあるかもしれませんが、事案によってはそれよりも更に前の行為になる。 そうすると、先ほど井田座長が正におっしゃった予備行為ということになるわけです。 殺人罪や強盗罪には予備罪があり、確かに殺人罪や強盗罪と強制性交等罪の刑が下限5年という点では同じだといえるかもしれませんけれども、グルーミング行為の目的は性的行為であっても、強制性交等に向けられたものとは限らない、強制わいせつ目的である可能性もある。 強制わいせつの予備なのか強制性交等の予備なのかというのは外形的には見分けがつきません。 そもそも声を掛けるだけ、連絡をしただけということであると、子供に対して違法な行為をしようとしているのか、単に声を掛け、連絡しようとしているのかとの区別がつかず、やはりその定型性には問題があるように思われます。 正に最初に山本委員が御紹介になった事案は、本当に子供に勉強を教えてあげたいと思っている若い先生の行為と、このような悪い心を持っている人の行為というのが、外形的には区別がつかない。 性的な行為が起こって初めて分かる。 グルーミング行為が見つかるのは、性的な犯罪をした人が、そういえばあの人はほかの子供たちにも声を掛けていたねというように、あるいは、自分が被害に遭ってしまったというときに事後的に、そういえばそういう行為があったということなのではないかと思われます。 |
それならば、そのような行為がある、ほかの人にもたくさん声を掛けていた、この子にも手なずけを行っていたということが、例えば178条(準強制性交等罪)の抗拒不能の状況を作り出すことについて非常に悪質だというように、情状として取り扱われることは十分に可能となりますし、性的な犯罪をすることに計画性があったという裏付けにも間接事実として使えるようにも思います。 |
さらに、性的な満足を得るための連絡のようなものについては、今、いわゆる自撮りに関しての条例であるとか、児童ポルノ法で児童ポルノの製造、送信をさせた場合の処罰、あるいは、児童売春のあっせん、すなわち、子供に性的な行為をさせることをあっせんするために子供に連絡を取ることが処罰されている、このように様々な条文などもあります。
このような法令をどの程度活用できるのかなどについても十分な検討が必要なのではないかと思います。 |
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<20~21ページ>
●2020年12月8日 和田俊憲 委員(東京大学教授)
今、佐藤委員、宮田委員にそれぞれ御指摘いただいた点はごもっともだと思います。
予備罪を作るという可能性は理論的にあり得ると思いますけれども、実際どれほど適用可能なのかという点については、かなり限界があるのではないかと思いますし、作るとすれば、やはり強制性交等の罪を犯す目的の場合に限定することになると思います。 予備罪を作る意味を考えてみますと、実際に適用する必要がある場面があるというよりは、強制性交等の罪が殺人や強盗よりも格段に軽い犯罪として扱われているわけではないということを象徴的に示すという意味がメインになるのではないかと思います。 その意味で、シンボル的な立法にならざるを得ないのではないかというふうに感じる次第です。 |
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<21ページ>
●2020年12月8日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
私からも、宮田委員の御意見に即して1点申し上げますけれども、現実に適用し得るかどうかはおくとしましても、罰則を設ける以上は刑法理論の観点から正当化できるかという観点からの検討が不可欠です。
刑法の一般的な理解を申し上げるならば、法益侵害又はその危険性を惹起したことが処罰の根拠とされることから、法益侵害の危険性が認められない行為を処罰することは正当化できません。 そして、法益侵害の危険性というのは本人の主観的意思、目的だけによって根拠付けられるものではなく、客観的な行為態様それ自体が一定の危険性を有することが必要であると解されます。 イギリスやドイツのグルーミングの処罰規定は、基本的に目的犯の構造を採用しており、一定の目的の下、客観的な実行行為を行うことを要求しています。 このような目的犯におきましても、法益侵害の危険性が必要であることについては変わりがありません。 現行法で申し上げますと、例えば通貨偽造罪は行使の目的をもって通貨を偽造する行為を処罰しております。 ここでは、行使の目的の下、通貨を偽造する行為が、偽造通貨が社会に流通し通貨に対する信頼を損なう危険性を有することに着目して偽造行為を処罰対象にしておりますが、この場合でも行使の目的という主観面だけが危険性を根拠付けているわけではなく、通貨を偽造するという客観的な行為それ自体が危険な行為であることから、これが処罰の前提となっていると解されます。 このような一般的な理解からグルーミング行為の処罰の可否を検討した場合、子供と仲良くしたり面会を求める行為については、もちろん、それが一定の危険性を徴表する場合もあると思いますが、それ自体が常に客観的に性的な危険性をはらむわけではないようにも思われます。 そして、このように客観的には十分な危険性を示しておらず、価値中立的な行為を、行為者の主観的な目的を根拠として処罰対象にするということは、結局のところ行為者の主観面だけを根拠に処罰することになりかねず、理論的には正当化が困難であるようにも思われます。 |
仮にグルーミング行為を処罰する場合でも、その場合には行為態様それ自体が客観的・外形的にも性犯罪の危険性を示していると評価できる場合に限定する必要があるように思われます。
また、グルーミング行為の処罰におきましては、行為者が一定の働きかけを行ったが子供がこれを無視した、あるいは、そもそも行為者の働きかけを認識していないような場合をどのように評価すべきかが問題となります。 性犯罪に対する危険性を重視する観点からは、子供が一定の反応や応答をするなどして性犯罪に対する危険性が高まったことを要求するべきであるようにも思われます。 この点、ドイツ刑法176条4項3号が (参考。岡田参事官) 子供に影響を及ぼすことを要求している点も参考になるように思います。 |
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<21ページ>
●2020年12月8日 井田 良 座長(中央大学教授)
かなり踏み込んだ御意見を頂いたと思います。 |
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<21~22ページ>
●2020年12月8日 金杉美和 委員(弁護士)
先ほど宮田委員、橋爪委員がおっしゃったことと同様なのですけれども、本来正当な行為が違法な目的を有しているということによって処罰されるという規定の在り方には、やはり反対です。
これは、ともすれば内心を処罰するということになりかねません。 先ほどの佐藤委員の御指摘のように、例えば、実際に子供に会ったときにポケットの中にコンドームであるとかジェルが入っていたというような場合であれば分かるのですけれども、この目的というのが、規定が設けられた以上、後から分かったということではなくて、例えば性犯罪の前科前歴を有する方に対して、このグルーミングの処罰規定だけで逮捕されるということがあり得ると思います。 その場合に、内心あるいは過去そういう性犯罪の前科前歴のある方について保安処分的に働くという危険性も十分考えられますので、慎重に御判断いただきたいと思います。 |
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<22ページ>
●2020年12月8日 木村光江 委員(東京都立大学教授)
確かに今の御指摘のように、正当な行為が目的だけで処罰されるというのは非常に慎重な検討が必要だと思うのですけれども、以前にも弁護士の委員の方からお話があったかと思いますが、SNSなどを見ると非常に危険な書き込みなどが氾濫しているという状況があるかと思います。
ですから、それをグルーミングと呼ぶかどうかは別の問題があるかもしれませんが、そういった書き込みの中にはもう児童買春に直結するような危険性を持っているというものもあるように思います。 ですから、そのようなものはある程度類型化して取り出せる余地はあるのではないかと思っております。 |
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<22ページ>
●2020年12月8日 井田 良 座長(中央大学教授)
もし規定を設けるとすると、目的ももちろん勘案しなければいけないのでしょうけれども、それ自体として当罰的なものをうまく類型化する必要があるのだと、こういうふうに多くの委員の御意見はまとめることができるのではないかと思いました。
それでは、議論の尽きないところではありますけれども、次のテーマに移りたいと思います。 |
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グルーミングの処罰に関しては、見込みがあるようです。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2017年12月9日>
Wikipediaご覧頂けると分かるかと思いますが、青木は「タレント目指す。レギュラー番組持たせる。映画の主演をさせる。」等言っておきながらレースクイーンやグラビアアイドルやっていた時の方が地上波の仕事は殆ど貰えなくなりました。あの時何であんな人を信じたのか?昨日UPした洗脳ノートです |
AV出演強要も、グルーミングの手法が使われます。
AV業界人は女性を騙すさいに、手管(てくだ)のひとつとして、洗脳という陥穽(かんせい)を用います。
(再掲。宮田桂子 委員)
「例えば178条(準強制性交等罪)の抗拒不能の状況を作り出すことについて非常に悪質だというように、情状として取り扱われることは十分に可能となりますし、性的な犯罪をすることに計画性があったという裏付けにも間接事実として使えるようにも思います」
AV業界人がおこなっている洗脳も、可罰や裏付けの対象としてほしいものです。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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