刑法改正
~性交同意年齢引き上げの審議
昨日のつづきです。
まずは刑法177条を確認します。
(参考。刑法)
●第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 |
ご覧のとおり、小学生以下のものに対して性交等をしたものは、暴行や脅迫がなくても、強姦罪が適用されます。
いま、法務省の刑法改正を審議する検討会(性犯罪に関する刑事法検討会)は、この、小学生以下、という要件の是非について話し合いをしています。
一巡目の検討では、多くの委員が引き上げに賛意をしめしました。
二巡目に入って、突如、慎重論が台頭してきました。
理由のひとつとしてあげられているのは、引き上げをしなくてもほかに救済策が考えられる、というものです。
その救済策につきましては、昨日の当ブログをご覧ください。
(参考。当ブログ)
・2021年2月6日(昨日)
引き上げに対して消極的なのは、もうひとつ、理由があります。
本日はこの理由についてみていきます。
(2020年12月8日 第9回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<22~23ページ>
●2020年12月8日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
また、この問題は、ある意味、児童の性的な行動の自由を制約するという側面もあることから、この点も意識しながら更に議論することが必要であるように思われます。 |
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すなわち、青少年の性行動に関する調査結果を見る限りでは、キスや性交を経験する年齢は全般的な傾向としては若年化する傾向があるようでして、これを見た限りでは、現時点において児童の性的保護を直ちに強化すべき喫緊の立法事実が認められないという理解もあり得るところです。 |
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性交同意年齢を引き上げる根拠としましては、児童は性的行為の社会的意味や妊娠や感染症のリスクを十分に理解して性的な意思決定を行うことが困難であることから、このような能力を十分に有する年齢まで性交同意年齢を引き上げるという議論があったものと承知しております。 |
もっとも、このように児童の性的な意思決定の困難性という観点から仮に性交同意年齢を16歳未満に引き上げた場合、15歳の児童は性的行為に関する意思決定を行う能力が乏しいと評価されるわけですので、相手が誰であっても、その意思決定には瑕疵があり、性的行為は犯罪を構成することになるはずです。 |
すなわち、15歳同士の性的行為であっても、お互いの意思決定に瑕疵があることには変わりがないため、両者を共に処罰する、あるいは、少年法上の保護処分を科すという結論に至らざるを得ないように思われます。 |
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<23~24ページ>
●2020年12月8日 池田公博 委員(京都大学教授)
先ほど御指摘があったように、性交同意年齢を引き上げますと、14歳、15歳の者の同世代の性交やキスが互いにとっての犯罪を成立させ、保護処分や処罰の対象となり得るという帰結を招くことについては、意見要旨集の「④」のところを見ても、
(参考。意見要旨集の「④」) おおむねそれは適切ではないという理解には異論はないのではないかと思われるところです。 |
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<27ページ>
●2020年12月8日 宮田桂子 委員(弁護士)
つまり、一律にこの年齢であれば性交してはいけない、あるいは性的な行為をしてはいけないということになりますと、先ほども申しましたけれども、18歳が成人で結婚できるのだったら、その前から付き合っていて、性的な行為があってもおかしくないし、成人女子との性的な行為によって、男子が強制性交等の被害者になる場合もあります。
性的な興味を持った同世代の男女の行為が処罰される、男子に対して行為をした成人が一律に処罰されてしまうというのは、やはりおかしいのではないかと思います。 ですから、性交同意年齢については、私は13歳でいいと思うのです。 |
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<27~28ページ>
●2020年12月8日 佐藤陽子 委員(北海道大学教授)
また、ここで参考になると思うのは、ドイツでは一定の年齢、つまり14歳を超えた場合には性的なお試し期間が必要だという考え、具体的に言えば、一定年齢になると同じくらいの年齢の者と性的に触れ合いながら性的側面でも成長していく過程が必要だという考え方があります。
つまり、無菌状態で一切性的接触は駄目ですと言われて、いきなり18歳になって、「はい、御自由にどうぞ。」と言われると、むしろそれ以降で失敗する可能性が高いので、その前に同じ年齢の人たちと性的にも触れ合って、そこで人格的にも切磋琢磨しつつ性的にも成長しましょうというような期間を用意していて、それが14歳以上18歳未満だというふうなことになっています。 |
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首を傾げざるを得ません。
はたしてそうなのでしょうか。
いっぽう、山本潤委員はつぎのようにのべています。
<25ページ>
●2020年12月8日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
保健的なことをお伝えしたいと思うのですけれども、14歳、15歳で性交してもいいと言っているようにも聞こえ、違和感を持ちます。 |
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(略)、性的な自由を制限するかどうかというわけではなく、自由に対する責任をちゃんと果たせる年代であるのかということを考えて、保護を掛けるということを議論していただければと思っています。 |
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山本潤委員の論説が醇正(じゅんせい)である、と考えます。
山本委員は後日、インターネットの番組でつぎのように語っています。
(2020年12月15日 「ポリタスTV『抗拒不能要件はなくなるのか?』|法務省で行われている性犯罪関連の刑法改正議論の現在地と、2017年改正で積み残された4つの課題について」より、引用。)
<01:09:00のあたりから>
●2020年12月15日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
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はたして性交同意年齢の引き上げは実現するのでしょうか。
三巡目の論議に注目が集まります。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
・第9回(2020年12月8日)※議事録公開
・第10回(2020年12月25日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第12回(2021年2月16日開催予定)
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本日は、9回目の検討会(※2020年12月8日)の議事録を参照しました。
上述のとおり、昨年(2020年)の12月には、もう1回、検討会が開催されています。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<審議状況>
□2020年12月25日 第10回 ※議事録(準備中)
● 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲について(※二巡目) ● 法定刑の在り方について(※二巡目) ● 配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方について(※二巡目) ● 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方について(※二巡目①) |
10回目の検討会では、ふたたびAV出演強要問題が論議されました。
こちらの議事録もまもなく公開されます。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。 全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。 |
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AV出演強要犯はどのような罪で処罰されるのでしょうか。
強制性交等罪か。
それともあらたに創設される罪か。
まもなく二巡目の審議状況があきらかになります。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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