昨日のつづきです。
本日も、性犯罪に関する刑事法検討会の8回目の議事録をみていきます。
(参考。当ブログ)
<8回目の検討会の議事録について>
・2021年1月14日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について①)
・2021年1月15日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について②)
・2021年1月16日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について③)
・2021年1月17日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について④)
・2021年2月1日(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について⑤。※昨日)
まずは、昨日引用した井田良座長のことばをもう一度、確認します。
(再掲)
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
まずは、配布資料12の「検討すべき論点」第1の「2」(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方)の四つ目の「〇」、すなわち、 「被害者が性交等に同意していないことについて、一定の行為や状態が認められる場合に被告人側に立証責任を転換し、又はその要件の充足を推定する規定を設けるべきか」 という項目について、議論したいと思います。 |
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「被害者が性交等に同意していないことについて、一定の行為や状態が認められる場合に被告人側に立証責任を転換し、又はその要件の充足を推定する規定を設けるべきか」(※昨日のつづき)
(2020年11月10日 第8回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<23ページ>
●2020年11月10日 佐藤陽子 委員(北海道大学教授)
橋爪委員がおっしゃったように「Yes means Yes」については、非常に色々な形があると思います。
この点については、「性犯罪規定の比較法研究」の610ページ以下や215ページなどを参照していただければいいのですが、例えば、「睡眠中の人に対する行為は同意のない行為である」という前提に立ったとしても、スウェーデン法だと、「(睡眠状態の)不適切な利用」という要件がありますから、眠っている恋人に対して急にその体に触れたという場合において、事前の同意があったのだというふうに主張する可能性は残されていて、故意も問題になり得ます。 その代わりに、過失犯があるとも思うのですが。これに対して、この点については和田委員の方がお詳しいと思うのですが、カナダ法のように、同意は性行為が行われる時点で現に存在しなければならないと考えれば、寝ている恋人の体に触ったというときにも、「事前の同意がありました」と言う人に対しては、「いや、そういうときは起こして意思を確認しなさい」という形で、形式的な行為規範違反というか、およそ反証を許さない規定の方式で構成することもあり得ます。 ですから、「Yes means Yes」だったら、すぐに一定の決まった形での推定規定が作れるというふうにはならないと思います。 推定規定を作った場合も、例えば、イギリスのように、簡単にひっくり返せる推定規定というのもありまして、これは、実務上ほとんど意味のない推定規定だと言われているぐらい、簡単にひっくり返せるような構造になっているのですが、そういうことも考えますと、推定規定を作ったからといって、すぐに何でも解決だというわけにはいかないのではないかと考えているところでございます。 |
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<23~24ページ>
●2020年11月10日 小西聖子 委員(武蔵野大学教授)
今、社会通念の問題が出てきていましたので、併せて2番目の「〇」(行為者が、被害者が性交等に同意していないことの認識を有しない場合にどのように対処すべきか)の点、すなわち、行為者が、被害者が性交等に同意していないことの認識を有しない場合について、私自身どうしたらいいか分からないのですけれども、是非検討していただきたいと思って発言します。
(具体的事例を紹介) 私、以前、直接このケースに関わることがあったのですけれども、最終的には、抗拒不能であったことは認めると言いながら、加害者の方が、被害者が同意していないという認識を有していないということで、無罪となったと思います。 これは、すごくおかしいと私は思っていまして、例えば、幻覚妄想状態があるとか、知的に認識ができないということは当然あり得ると思いますけれども、そういうことも何もなく、加害者が、例えば、すごく自分中心であるとか、性的な偏見を強く持っているということが、無罪の理由になってしまうのかというふうに、素人には思えました。 認識がないというときの加害者の考えていることに関して、そういうふうに解釈されるのは非常におかしいというか、不当だと思うのですね。 例えば、ラブホテルに教え子を連れ込んでも相手が黙っていれば同意していると思っている、そういう認識というのは、社会の通念、あるいは平均的なものだとはとても思えませんし、そういうことについて、もう少し検討していただいて、こういう判決が出ないようにしてほしいなというのが、私の希望です。 きちんとした法律的な議論でなくて申し訳ないのですけれども、そういうふうに思っています。 |
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<24ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
ありがとうございます。今の御発言は、資料12の次の「〇」(行為者が,被害者が性交等に同意していないことの認識を有しない場合にどのように対処すべきか)に関わる御発言ですので、その検討のときに、また言及していただくということにしたいと思います。 |
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<24ページ>
●2020年11月10日 金杉美和 委員(弁護士)
立証責任の転換についてなのですが、被告人側に立証責任を転換された場合、この「一定の行為や状態が認められる場合」というのは、既に客観的な状況等から同意がなかったであろうという状況が立証されているということだと思うのです。
その段階で、被告人側に立証責任を転換された場合、具体的にどういう証明方法で同意があったことの立証ができるかと考えたとき、本当に性行為そのものの一連の経過を録音録画しておくことぐらいしか、ちょっと考えにくいのですね。 被告人側が幾ら相手が同意をしていたと思っていたと供述したとしても、それを許さない客観的な状況があるのであれば、被告人の供述だけで同意が立証できるとは到底思えません。 そうすると、同意のない撮影等を、そもそも別に処罰するべきかということを検討している段階で、例えば、それが本当に処罰されるということになった場合には、同意なく撮影したという証拠を出して、別の犯罪で訴追されるという危険を冒しながら反証をしなければならないというようなことになります。 また、録音録画をしなければ、こちら側の同意が立証できないというような制度、あらかじめ証拠を担保しておかないといけないというような制度になっては、そもそも性的自由に対する逆の側の抑制が過ぎるのではないかと考えますので、立証責任転換については難しいというふうに考えます。 |
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<24ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
ほかに、この挙証責任の転換、あるいは推定規定について、是非これは導入すべきだという強い御意見の委員はいらっしゃいますでしょうか。 |
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<24~25ページ>
●2020年11月10日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
同意をどのように立証するかについては、私はイギリスに視察に行った際、裁判官の方のお話を聞いたのですけれども、イギリスは不同意が性犯罪の要件であるので、例えば、お店に入っていたら、お店の人たちから、彼女と彼はどのように会話をしていたのかとか、その後移動する様子はどうであったのかとか、言語的なことや行動等というのを総体的に見て、不同意か否かを判断し、その判断ができるように3年に1回、2、3日トレーニングを受けると言われていたということをお伝えしておきたいと思います。
そのような判断というのは、すごく大事なものだと思いますけれども、そのような形での判断もできるのではないかと思います。 あと、故意については、小西委員も言われていたのですけれども、とても重要なことだと思います。 先ほど被害者が葛藤しながら受け入れた場合という話も出ましたが、被害者は葛藤しても、加害者は葛藤しないわけですね。 加害者は相手を物として見て、自分の欲求や利益を押し付けていく。 そのときに、通常は、人間であるから、相互交流をして、共同調整をして、コミュニケーションを取って、その合意に至るという反応が起こるわけです。 それが全くできないときに、被害者側の神経系が阻害されて、シャットダウンとか解離とかフリーズというのを起こしてしまうことがあります。 加害者が相手を認識しない、相手の意思、希望等を尊重しないというところにおいて、相手が同意していないことの認識を有しない場合に、性犯罪として認めていくのかというのは、今後また議論されることと思うのですけれども、推定が難しいとしても、無神経で、そういう人の能力、人の希望とかを尊重できない人が無罪になるというのは、是非やめていただきたいと思っています。 久留米の事件も逆転有罪判決が出ましたけれども、そのように、裁判官の判断によって分かれてしまう、同じ状況であるのに判断が変わってしまうというのも、すごく問題だと思っています。 |
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<25ページ>
●2020年11月10日 和田俊憲 委員(東京大学教授)
挙証責任の転換規定を置くべきだと強く考えているわけでは全くありませんが、先ほどカナダの話が若干出たので、その点に関して1点だけ指摘しておきたいと思います。
カナダでは、意識がない人に対する性的接触を、同意がない性的接触だということで、広く性的暴行罪で捉えています。 先ほど宮田委員から御指摘がありましたけれども、今回の改正では、重く処罰する要請と広く処罰する要請とが、両方出てきていると理解しています。 挙証責任の転換、あるいは、故意がない場合にどうするかという話は、広く処罰することとの関係で問題になっているのだと思います。 カナダのように、意識がない状態だと、自動的に法的に同意がないものとみなすという形で処理していく方法は、結局、今ここの議論で前提にしている、実態として同意があるかどうかというところに着目するのではなくて、形式的にそういう状態で性的接触をすること自体を、行為規範に違反するものとして処罰するという扱いにするものです。 日本でも、挙証責任の転換だとか、あるいは、故意がない場合も広く処罰するという改正をするのだとすると、それは、実態として重い犯罪としての追及をするというよりは、形式的に性的行為を行うときの行為規範に違反しているということだけを捉えて、軽くても広く処罰するということを別途追求することになるのだと思います。 そのような路線を追求することもあり得るかなとは思いますが、やはり、それは、社会における性的秩序を害する犯罪、つまり社会的法益に対する罪としての位置付けとなっていく話だと思いますので、かなり劇的な話になると思います。 |
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<26ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
いろいろ御意見を頂きましたけれども、この被害者の同意の有無について、挙証責任の転換規定、あるいは、推定規定を設けるというのは、相当にハードルが高いということで、積極的に是非という強い御意見はなかったとお伺いしました。
他方で、実体法の規定の要件を変えて、より明確化する、あるいは、緩和するということによって、認定もより容易になるということもあるかもしれませんので、その点も考慮した上で、この論点については、取りあえず委員の皆様の御意見を承れたということで、次の項目についての議論に移らせていただければと思います。 |
既に御意見が出ていますけれども、行為者が、被害者が性交等に同意していないことの認識を有しない場合にどのように対処すべきかという項目について、検討いたしたいと思います。
この場合も、罰則をどういうふうに作るかという問題を念頭に置いて議論する必要があると思いますので、それについても、併せておっしゃっていただければと思います。 |
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(再掲。金杉美和委員)
「既に客観的な状況等から同意がなかったであろうという状況が立証されている」
↓
「その段階で、被告人(犯人)側に立証責任を転換された場合、具体的にどういう証明方法で同意があったことの立証ができるか」
↓
「性行為そのものの一連の経過を録音録画しておくことぐらいしか、ちょっと考えにくい」
↓
「そうすると、同意のない撮影等を、そもそも別に処罰するべきかということを検討している段階で、例えば、それが本当に処罰されるということになった場合には、同意なく撮影したという証拠を出して、別の犯罪で訴追されるという危険を冒しながら反証をしなければならない」
立証責任の転換の件はさておき、AV出演強要のような
「同意のない撮影の処罰」
は、委員のあいだでも意識されているようです。
(2016年9月18日 AbemaTIMES「【AV出演強要問題】元カリスマ女優・川奈まり子氏が業界健全化のために奮闘」より、引用。改行を施しています。)
●香西咲さん
香西は、当初はモデルとしてスカウトされたはずだったのに蓋を開けたらAV出演ということになっていた。
(略)、AV撮影のために富士山の麓に連れていかれて、3時間泣いたこともあるという。 |
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2016年7月25日>
富士山の樹海近くのスタジオに連れていかれてどうやって逃げろと? 周り何も無いですし。 怖い人20人近くいて声も出ないですよ。 男性にはこの怖さは分かりません。 |
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性犯罪に関する刑事法検討会では、現在、AV出演強要犯の処罰も論議されています。
(参考。当ブログ)
□性犯罪に関する刑事法検討会に関する当ブログの記事
<AV出演強要に関する議論>
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現在の日本は、AV出演強要犯が跋扈している異常な国です。
蛮国です。
日本はこの先、まともな国になることができるのでしょうか。
刑法の改正が待たれます。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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