法務省の性犯罪に関する刑事法検討会は現在、刑法改正の審議おこなっています。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
・第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日)※議事録準備中
・第12回(2021年2月16日開催予定)
3日前と2日前のブログで、同検討会の委員をされている刑法学者の方々の意見をみてみました。
(参考。当ブログ)
・2021年1月27日(※3日前)
・2021年1月28日(※2日前)
刑法学者の委員の方々は皆、改革への気概に溢れています。
まずは、たびたび引いている和田俊憲委員の所懐を参照します。
(2020年11月10日 第8回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<4ページ>
●2020年11月10日 和田俊憲 委員(東京大学教授)
私も、性的自由が保護法益であるという考え方はもうやめて、人格的統合性とか性的尊厳というものが保護法益であると考える方が望ましいと思っています。
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理由は幾つかあるのですが、今日この先で扱う他の論点や、今日扱わない論点に関係するところもありますので、それぞれの部分で触れたいとは思いますけれども、一つは、やはり、性犯罪がどのような犯罪であるのかを考えるときに、性的自由ということだけ言うと、単に被害者の意思に反することを行った犯罪にすぎないというイメージになってしまい、それは避けるべきだということです。
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より重大なものを害する犯罪であることを、保護法益の表現の中に含めた方が望ましいだろうと考えています。
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なぜ、保護法益を性的自由と捉えるよりも、人格的統合性といったようなもので捉えた方が、より重大な犯罪として性犯罪を理解することにつながるのかを考えてみますと、性的自由として捉えるときには、性的行為それ自体はニュートラルなものであるけれども、それに対する被害者の同意がないときに、初めて違法性・侵害性が生じるという考え方になり、それが一般的な理解になってしまっているかもしれませんが、そうではないだろうと思います。
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この検討会が始まる前に出した意見書にも書いたことですが、本来、性的行為というのは、対等な人格的存在として相互に承認し合いながら人格的交流を行うべきものであるのに対して、一方が上に立ち、他方を下に見て、相手が自分に対して性的利益を提供して当然であるという考え方に基づいて、その上下関係を利用して性的利益を奪い取るというところに、性犯罪の本質があり、つまり、そのように性的利益の単なる入れ物として相手を扱うということに本質があり、そのように扱われて身体的侵襲を受けると、人格的統合性が害されるということなのではないかと理解しています。
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そうしますと、客観的に一定の上下関係に基づいて行う性的行為それ自体に、既に侵害性があり、それに対する同意の有無を考えるという構造で理解すべきではないかと思います。
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つまり、被害者の同意も、単に性的行為に対する同意ではなくて、上下関係に基づいて性的利益を奪われることについての同意がない限りは、同意は不存在であるとして扱うべきだと思います。
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その意味で、今回見ていこうとしている要件の改正の話は、どのような上下関係を、それ自体、客観的に侵害性あるものとして処罰対象にするのかという観点から、従来の要件を、ぎりぎりどこまで広げられるかを検討する議論だと理解しているところです。
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(再掲。和田俊憲委員)
「この検討会が始まる前に出した意見書にも書いた」
和田俊憲委員が提出した意見書を引用します。
(2020年5月 法務省 性犯罪に関する刑事法検討会「各委員から提出された自己紹介及び意見(五十音順)」より、引用。)
<31~33ページ>
●2020年5月 和田俊憲 委員(東京大学教授)
「性犯罪に関する刑事法検討会」が始まるにあたって、刑事実体法の研究者という立場から、性犯罪をどのように見ているのかについて述べたい。
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まず、強制性交等罪や強制わいせつ罪といった中核的な性犯罪を、純粋に性的自由に対する罪と見るのは、もはややめた方がよいと考えている。
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性的自由という法益概念が、伝統的にとられてきた古い考え方を否定するのに決定的に重要な役割を担ったことは、たしかである。
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すなわち、家長である夫の所有物であるかのように扱われた妻の貞操が保護対象であるとし、それゆえ、夫婦間強姦は不可罰であるとするような伝統的な考え方は、強姦罪の保護法益は性的自由であり、それは夫婦間でも侵害されうるとする考え方によって、今日では(おそらく)完全に駆逐されている。
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しかし、そこで性的自由という概念により否定されたのは、相手は自分からの要求に応じて自分に性的利益を提供するのが当然であるとする思想・感覚(かりに、家父長主義的ミソジニーと呼ぶことにする)それ自体というよりは、その法的な保護価値やそれが犯罪を否定する力であり、つまり、家父長主義的ミソジニーにはプラスの価値はないとする限度で、性的自由の概念は機能したものと解される。
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中核的な性犯罪は、典型的には家父長主義的ミソジニーに基づいて実行される――自分は相手から性的利益を提供されて当然だと考えて行為に出る――ものであって、そのような基本思想・感覚の社会的蔓延を防ぐことこそが、性犯罪を防止するために求められていると考えられる。
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その際に、性犯罪は単に性的自由を侵害する罪であるとしたままでは、否定的評価を下すべき性犯罪の本質が捉えきれない。
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ただ被害者の意思に反する行為、被害者の自由を侵害する行為、を禁圧するのではなく、性的自由の侵害行為の基礎にある家父長主義的ミソジニーの思想・感覚をも含めて、社会における否定的評価の対象にする必要があると思われる。
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性犯罪を自由に対する罪ではなく人格に対する罪として位置づける見解が近年増えているのは、そのような意味で理解することができる。
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性的行為による人格侵害というのは、本質的には、意思に反する身体の接触等により行為者と被害者の人格的領域が交錯して、自らの人格的領域を他人の人格的要素に侵された被害者が、その人格的統合性を揺るがされるということだと思うが、本来、対等な人格として扱われるべき被害者が、求めれば自動的に性的利益を提供する存在として、換言すれば単なる性的利益の容れ物として扱われるという点にも、人格侵害の一端を認めることができよう。
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そして、行為者が被害者を、対等な人格ではなく、単なる客体として扱うとき、そこにはある種の上下関係が認められる。
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つまり、家父長主義的ミソジニーは、何らかの上下関係の利用として表れるということができる。
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性犯罪の2つの本質的要素である性的自由の侵害と家父長主義的ミソジニーとを、それぞれ犯罪の成立要件と対応させれば、前者と結びつくのが同意の不存在である。
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また、後者の思想に基づく上下関係を表している要件は、犯罪類型ごとに、暴行・脅迫(176条前段・177条前段)、心神喪失・抗拒不能(178条)、監護関係(179条)、そして13歳未満であること(176条後段・177条後段)である。
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このうち暴行・脅迫は短期的な武力により上下関係をつくるものであり、心神喪失・抗拒不能は抵抗する能力や抵抗できる状態が被害者に認められないことに基づく上下関係であり、監護関係は継続的な人的関係に基づく上下関係であり、そして、13歳未満に対する性犯罪では行為者と被害者との間に性的成熟度の非対称性に基づく上下関係があることが想定されている。
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以上の理解に基づくと、現行法における性犯罪の処罰に不足があるとすれば、その一因は、家父長主義的ミソジニーの表れである上下関係の作出・利用を断片的に類型化する際に、間隙が生じていることにあると考えられる。
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それを是正する方法として考えられるのは、第1に、隙間を埋めるような新たな上下関係の類型を追加することであり、第2に、既存の上下関係の類型について、その守備範囲を拡張することであり、第3に、上下関係の類型として漏れが生じることは諦めて、上下関係は要求せず同意の不存在だけを要件とする純粋な性的自由侵害罪(不同意性交罪・不同意わいせつ罪)を軽い犯罪類型として新設することである。
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それぞれのありうる具体的な案については、暴行・脅迫や抗拒不能の程度に関する判断のばらつきを抑える方法等も含めて、追って整理したい。
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なお、被害者の同意については、判断の安定性を目指して、中核的な性犯罪に特化した同意不存在事由を列挙する規定を設けることも考えられてよいと思われる。
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差しあたり初めの段階では、以上のような地図をもって本検討会に臨み、必要であれば修正や差替えを厭わずに、(刑事法ジャーナル45号〔2015年〕所収の「特集 性犯罪規定の比較法的研究」をアップデート・拡充する共同研究が行われているので、その内容にも注目しながら)本検討会の議論に参加していきたい。
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(再掲。和田俊憲委員)
「第1に、隙間を埋めるような新たな上下関係の類型を追加」
「第2に、既存の上下関係の類型について、その守備範囲を拡張」
「第3に、上下関係の類型として漏れが生じることは諦めて、上下関係は要求せず同意の不存在だけを要件とする純粋な性的自由侵害罪(不同意性交罪・不同意わいせつ罪)を軽い犯罪類型として新設」
AV出演強要や精神科医によるセクハラは、上下関係を利用した犯罪です。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。 |
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セクハラ精神科医を処罰できるような規定は新設されるのでしょうか。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<審議状況>
□2020年12月8日 第9回 ※議事録(準備中)
● 地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方について(※二巡目②)
● いわゆる性交同意年齢の在り方について(※二巡目)
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まもなく9回目の検討会の議事録が公開されます。
地位利用に関してどのような意見が出たのでしょうか。
楽しみです。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)



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