法務省の性犯罪に関する刑事法検討会は現在、刑法改正の審議を重ねています。
昨年(2020年)の11月10日に、8回目の検討会が開催されました。
当日の議題のひとつは、
「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について(※二巡目)」
でした。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録公開
・第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日開催予定)
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<審議状況>
|
本日も、
「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方(※二巡目)」
に関する議論をみていきます。
その4です。
(参考。当ブログ)
<8回目の議事録について>
「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について(※二巡目)」
・2021年1月14日(※その1)
・2021年1月15日(※その2)
・2021年1月16日(※その3)
2020年11月10日 第8回性犯罪に関する刑事法検討会
暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方について
(二巡目の論議【その4】)
(2020年11月10日 第8回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能に加えて、又はこれらに代えて、その手段や状態を明確化して列挙すべきか」
<16ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
第1の2の「(2)」(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件について、判例上必要とされる「被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度」を緩和した要件とすべきか)についての議論はこの辺りで一区切りとさせていただき、次の項目、すなわち、 「(3) 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能に加えて、又はこれらに代えて、その手段や状態を明確化して列挙すべきか」 という項目についての議論に移らせていただければと思います。 一巡目の検討(2020年8月27日)では、 それを踏まえて御意見を頂きたいと思います。 |
——————————————————–
<16~17ページ>
●2020年11月10日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
|
——————————————————–
<17~18ページ>
●2020年11月10日 佐藤陽子 委員(北海道大学教授)
|
——————————————————–
<18ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
今、橋爪委員、佐藤委員から、手段については言わば例示列挙で構わない、つまり、暴行、脅迫、威力、不意打ち、その他の手段を用いてというような規定でよいとする御発言があったのですが、いかがですか。
罪刑法定主義が支配する刑法において、そういう例示列挙を含む規定を作ることに反対という御意見はあるでしょうか。委員の先生方の中に、いやいや、それは明確性の原則に反するのだと、例示列挙は駄目だと、こういう意見はございますか。 (一同、発言なし) |
——————————————————–
<18ページ>
●2020年11月10日 齋藤梓 委員(臨床心理士)
「② 列挙することが考えられる手段、状態」のところに関することなのですが、こちらに書いてあることに加えて、少し重なるかもしれないのですが、委員の皆様に検討していただきたいこととして、もちろん経済上とか学業上、人間関係そのほかの問題、秘密をばらされるかもしれない状況であるとか、あるいは、障害者が被害者であったときに、理解力や力関係の差や脆弱性を利用した場合であるとか、そういった状況を利用した場合というのを考えていただきたいです。
もう一つ、例えば、性交を連続して強要される場合には、以前の性交がその後の性交への抵抗を抑圧するということがきちんと拾われるような文言を検討いただきたいと思っております。 例えば、18歳以前から監護者に性交を強要されていた場合には、18歳を超えたとしても抵抗はできませんし、最初の性交が強制性交であったにもかかわらず、それが事件とはならなかった場合、その後、明確な脅しがなくとも連続して性交が行われるということがありますが、それは、最初の強制性交によって、後の脅しとかがなくても応じてしまうという状態があるので、法律上、そういったいろいろな状態を含む言葉としてどのようなものがあるのか分からないのですけれども、そういったものも手段、状態の中には含んでいただきたく思っておりました。 |
——————————————————–
<18~19ページ>
●2020年11月10日 宮田桂子 委員(弁護士)
座長が先ほどおっしゃった例示列挙についてなのですが、例示というのはどうしても漏れが起きますし、争点の拡散が起こりがちだということだと思うのです。
裁判の中で、検察官が、構成要件における例示の中のこれだといったときに、証拠を調べると、これには当たらないがこちらには当たりそうだ、ではどちらなのかという追い掛けっこのようなことが起こり得るのだろうと思っています。 ですから、統一した概念が一つあるというのは、裁判をする上で、その辺の追い掛けっこを起こりづらくする、あるいは、争点の拡散が非常に起きづらくするという役割があるのではないかと思っています。 やはり例示は、漏れがある場合があります。 漏れがある場合にどうしたらいいかというところは、橋爪委員や佐藤委員が様々な技術的な御提案をなさっていましたけれども、それでも、まだ漏れがある可能性もあると思います。 現在のがちがちの構成要件だと言われているものでさえ、相当幅広に適用されています。 そうすると、例示された事実について、更に解釈が広がっていく可能性はあると思います。 例示をすることによって、要件を緩める効果が出てくるのではないかということになれば、刑の下限についての考え方が今のままでいいのかと疑問に思います。 |
——————————————————–
<19ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
ありがとうございます。 例示という方法の是非については、三巡目以降の議論で、更に突っ込んで検討したいと思います。 |
——————————————————–
<19ページ>
●2020年11月10日 木村光江 委員(東京都立大学教授)
今、三巡目以降というお話でしたので、簡単にします。
「(3)」の「②」の一つ目の「○」(手段として、暴行・脅迫のほか、威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁を加えるべき) ですので、暴行・脅迫の範囲は今でも十分広いのですけれども、 (参考。昭和33年6月6日の最高裁判決) 暴行・脅迫だけでは狭いとすると、 (参考。刑法) 先ほども少し申し上げましたけれども、「暴行・脅迫その他」であるとか、あるいは「正当な理由なく」と付けるであるとか、そういう形で広げていくのがいいのかなというふうに思います。 威迫や不意打ちは、今まで刑法で使っていない文言ですから、それがどのように使われるかというのは、十分に検討する必要があるというふうには思います。 欺罔に関しては、先ほど一部入れるべきだというふうに佐藤委員がおっしゃっており、なるほどというふうに思ったのですけれども、欺罔一般が入ってしまうと、やはり少し広いので、入れ方に十分注意する必要があると思います。 要は、先ほどから橋爪委員や佐藤委員がおっしゃっているように、同意がないことがはっきりすればいいので、あまり細かく書き過ぎると、それはそれで逆効果があるのかなというふうには思います。 それで、先ほど宮田委員からイギリスの法律の件で私の名前が出ましたので、少し補足しておきますけれども、確かに、不同意ということを表に出してしまうと、無罪率がかなり高くなるというのは、実態としてあるというふうには思います。 ですから、やはり裸で不同意というのを出すというのは、かなり危険な状態が生ずるのではないかなと思います。 それと、もう一点だけ。 (参考。刑法) (参考。刑法) しかし、それはそれで構わないのかなというふうに思います。 |
——————————————————–
<19ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
とても示唆に富む御意見だったと思います。
一つお聞きしたいのですけれども、 (参考。昭和33年6月6日の最高裁判決) 私も長年刑法に携わっており、従来の解釈論が身に染み込んでいるせいか、すっとそれで落ちる感じがするのですが、この文言では、どうも被害者側に抵抗を求めているようで良くないということになるのでしょうか。 その点、御意見頂ければと思います。 |
——————————————————–
<20ページ>
●2020年11月10日 上谷さくら 委員(弁護士)
例えば、性暴力で無罪判決が出た場合に、今は誰でも判例の内容をネット等で調べられるので、「抗拒を著しく困難にする程度」というのは、法律家でない人でもある程度目にするようになった文言だと思います。
その人たちのネットでの反応等を見ていると、法律用語としてではなく、日本語そのものとしてやはりこれは抵抗を前提としていると普通に解釈しているのだろうなというのがすごく感じられていて、それが性暴力に対する意識の低さとか、被害者に対する偏見、嫌だったら一生懸命抵抗すべきだろうというような、いわゆる強姦神話みたいなものが、なかなかなくならないことにつながっているように感じています。 |
——————————————————–
<20ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
先ほど、山本委員と橋爪委員が、自由な意思決定の能力を失わせるという表現を用いていらっしゃいましたけれども、そちらの方はよろしいですか。 |
——————————————————–
<20ページ>
●2020年11月10日 上谷さくら 委員(弁護士)
なかなかそこは、その人を基準にして、その人自身はそう思ったけれども、客観的に見るとどうなのかということとか、やはり、いろいろな全体的な条件によると思うので、その言葉があるからそれでいいというのは、今、即断はできないのですけれども、検討はすべきことだと思っています。 |
——————————————————–
<20ページ>
●2020年11月10日 齋藤梓 委員(臨床心理士)
すごく素朴な言葉のニュアンスの感想なのですけれども、抗拒が困難な状態に陥れと言われると、被害者は陥れられたのだなというような感じがするのですけれども、抗拒不能のように、「不能」と言われてしまうと、抵抗できることが前提になっているという感覚がします。
つまり、何が言いたいかといいますと、法律の用語が分からない一般の人と法律の用語を分かっている専門家との間の言葉の受ける印象や認識や理解には、大分乖離があるのだなということを、この議論を通じて私も感じました。 |
——————————————————–
<20ページ>
●2020年11月10日 井田 良 座長(中央大学教授)
それでは、時間の関係もございますので、「(3)」(暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能に加えて、又はこれらに代えて、その手段や状態を明確化して列挙すべきか)についての議論は、この辺りで一区切りとさせていただきたいと思います。
開会からかなり時間が経過しましたので、ここで5分ほど休憩したいと思います。 |
——————————————————–
(再掲。橋爪隆 委員)
「暴行、脅迫、威力等の一定の手段によって、被害者の自由な意思決定を困難にし、その状態で性交等を行うという形で、行為態様に加えて被害者側の心理状態を要件として要求することも、検討に値すると考えております」
「被害者の自由な意思決定を困難にし」
AV出演強要はこの悪行の典型です。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2016年7月25日>
富士山の樹海近くのスタジオに連れていかれてどうやって逃げろと? 周り何も無いですし。 怖い人20人近くいて声も出ないですよ。 男性にはこの怖さは分かりません。 |
(2016年9月18日 AbemaTIMES「【AV出演強要問題】元カリスマ女優・川奈まり子氏が業界健全化のために奮闘」より、引用。改行を施しています。)
●香西咲さん
香西は、当初はモデルとしてスカウトされたはずだったのに蓋を開けたらAV出演ということになっていた。
(略)、AV撮影のために富士山の麓に連れていかれて、3時間泣いたこともあるという。 |
——————————————————–
現在の日本には、法網(ほうもう)を潜(くぐ)り抜けるているやつらが存在します。
性犯罪に関する刑事法検討会は、この広い網の目を狭めようとしています。
近々、結論が出ます。
刮目(かつもく)して待っています。
——————————————————–
■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
香西咲さんを勝手に応援するサイトへ