昨年(2020年)の10月20日の第7回性犯罪に関する刑事法検討会で、論題のひとつである
「司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体について、特別に証拠能力を認める規定を設けるべきか」
が論議されました。
司法面接は、児童に対しておこなわれるものです。
昨日は第7回目の検討会の議事録を途中まで参照しました。
本日は残りの意見をみてみます。
(2020年10月20日 第7回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<32ページ>
●2020年10月20日 小西聖子 委員(武蔵野大学教授)
ここまで、司法面接の意義については各委員がお話しされたと思いますけれども、現実にやる場合において、やはりこれは相対的な手段なのであるということは忘れない方がいいと思います。
司法面接さえすれば全部事実が分かるとか、子供は全く傷つかないというわけではないです。 実際に聞き及ぶケースでも、例えば、司法面接のときには、もう既に回避的になっていて、子供がしゃべれないとか、あるいは、もう被害の最中から記憶の変容が起こっているというようなケースもありますし、一方で、被害直後にすごく適切に支援が入れられて、いろいろなことが分かっているケースもあり、その司法面接に至る経過も供述の在り方も様々です。 こういう問題は司法面接を行うようにしても常にあり得るのだと思います。 ただ、そういうことを考えても、そうではないやり方を取るよりは司法面接を行ったほうがずっとましだというのが、私が思うことです。 こういうやり方をしなくては子供にどういう負担がかかるか、あるいは、記憶がどういうふうになっていくのか、暗示がどうなっていくのかということについては、ほかの方がお話ししたとおりだと思っています。 本当にまた素朴な言い方になってしまいますが、人は、事実だったら、ノーはノーといつでも言えるはずだとか、それは子供でも同じなのだとか、あるいは、機会さえ保障されれば必ずそういうことが言えるのだというような前提は、やはり被害を受けた子供には無理だということもいろいろあります。 ただ、今言いましたように、相対的であるということを考えたり、あるいは、司法面接に現実に技術の問題の差異があるというようなことを考慮しても、司法面接というのは当然あるべきだし、そこで質の高い、証拠能力のある証言が取れるということはいいと思いますけれども、一方で、その司法面接について、また評価していく、その面接の手法がどうであるかということを評価していくということも現段階では必要なのではないか、司法面接の位置付けについて、そういうふうに考えた方がいいのではないかというふうに思っています。 |
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<32~33ページ>
●2020年10月20日 小島妙子 委員(弁護士)
この問題は、結局、子供とか、知的障害がある方とか、そういう供述弱者の証言をいかにして刑事裁判に取り込んでいくのかということではないかと思います。
被害者の供述をどうやって証拠としてすくい上げて、採用できるものにするか。 今まで暗示にかかっていた証言だったから無罪ですとか、そういう残念な事態が生じていたことについて、何らかの手当てをしていかなければいけない。 監護者性交等罪の処罰範囲を広げたり、性交同意年齢を上げて、刑事裁判に乗ってくるようになっても、証人尋問の負担が非常に大きい。 特に、供述弱者について何らかの手当てが必要だと思います。 そして、今日の御報告を聞きまして、児童相談所なり警察なり検察庁の方で相談をして、事件性があるかもしれないということで代表者面接をやっても、最終的に証拠として使えないというのは、証拠法上の問題があるのではないかと思います。 こういう形で広がっている制度について、刑訴法上の規定を設けて、DVD等を証拠として採用できるようにしていくべきではないかと思います。 一方で、刑事手続における反対尋問権というのは非常に重要であり、反対尋問なしに証拠になるということになると、結局、被告人は納得できないでしょう。 イギリスの法律の紹介というのをしていただいたのですけれども、イギリスは主尋問に代えて用いることができるというスキームになっているとのことで、参考になるのではないかと思っています。 委員の方々がおっしゃっているように、司法面接では、面接する人の能力とか、どのように行うのか、手法とかやり方や面接技術のレベルアップ等が今後の課題だと思っています。 |
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<33~34ページ>
●2020年10月20日 金杉美和 委員(弁護士)
3点申し上げたいと思います。
まず1点目は、現在の代表者聴取のやり方についての問題点です。 2点目は、そうして得られた供述であっても、当然に信用性が認められるというものではないということです。 3点目、その観点から、司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画媒体に、当然に主尋問に代替するものとして証拠能力を認めるということには、賛成ができません。 (参考。刑事訴訟法) 二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。 |
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<34~35ページ>
●2020年10月20日 宮田桂子 委員(弁護士)
4点あります。
1点目は今、金杉委員が述べられたこととほぼ重なるのですけれども、捜査官がこういう司法面接的な手法を身につける、あるいは、そういう手法を使うことはベターではありますが、ベストではない。 二つ目です。 また、3点目として、被害者の方の証言能力ということを考えなければならないと思います。 最後の点は、私はそれほど詳しいわけではないのですけれども、スウェーデンでは15歳未満の方、あるいは証言能力のない方について、録音・録画媒体を出してもいいという規定があるらしいのですが、その場合に必ず補強証拠を要する、客観的な証拠がなければならないという形で、その真実性を担保していると聞いています。 ついでに申しますと、被疑者として取り調べられている人についても供述弱者はおりますので、我々は司法面接を入れてくれということをずっと主張してきたところでございます。 |
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<35ページ>
●2020年10月20日 渡邊ゆり 委員(東京地方検察庁検事)
証拠採用された録音・録画媒体が少ないという御指摘がございました。 これは、やはり小島委員の言われたとおり、証拠法上の構造というか、証拠能力に関する規律が原因かと思います。 検察官としては、否認事件で争われて、その証拠を不同意にされたときに、まずしなければならないことは、被害者の証人尋問請求だということです。 その証拠が検察官の面前調書であった場合には、いわゆる2号書面ということになるわけですけれども、2号書面に証拠能力が認められる要件としては相反供述か、あるいは供述不能のどちらかということになります。 相反供述の要件を満たすためには、まずは証人尋問を実施しなければなりません。 また、供述不能の方は、よりその運用が厳しいのが現状です。 例えば、検察官が証人の状態から判断して供述不能と認められると考え、その証人の供述調書を2号書面として証拠請求しようとしたけれども、裁判所から、実際に証人として出てこられないという事実を厳しく求められた例もあると承知しています。 (具体的事例を紹介) |
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<35~36ページ>
●2020年10月20日 川出敏裕 委員(東京大学教授)
ここで検討すべき論点は、司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体について、特別に証拠能力を認めるべきかどうかですが、仮にそれを認めるとした場合の具体的な立法の方法としては、大きくは、現行の刑訴法321条1項3号のように、
(参考。刑事訴訟法) 三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。 一定の厳格な要件を満たすときには、性犯罪の被害者等が公判期日において一切供述することなく、つまり反対尋問の機会なく、当該記録媒体に証拠能力を認める規定を創設するというやり方と、刑事訴訟法321条の2に規定されていますように、 (参考。刑事訴訟法) 反対尋問の機会を保障した上で、当該記録媒体を主尋問に代えて証拠とすることを認める規定を創設するという二つの方法が考えられるだろうと思います。 |
いずれの場合も、当該記録媒体をそこに記録された被害状況等を立証するために用いる場合には伝聞証拠ということになりますので、現行法の伝聞例外規定の考え方に照らしたときに、そもそもそれが例外的に証拠能力を認められるものなのかどうか、あるいは、認められるとして、どのような要件が必要になるのかを検討する必要があります。
一般に、伝聞証拠に原則として証拠能力が認められない理由は、伝聞証拠が公判での証言であれば備わっている三つの要素、すなわち、 他方で、全ての伝聞証拠が排除されるということになりますと、事案によっては事実の証明が極めて困難になりますので、刑訴法では、それを証拠とする必要性と、公判での反対尋問等を経なくてもその供述を信用できるような客観的情況の存在を条件として、例外的に証拠能力を認められるとされています。 一般論として言いますと、この必要性と信用性の情況的保障の強弱の兼ね合いによって、様々な伝聞証拠の例外が認められていると整理することができます。 |
そこで、本件で問題となっている司法面接的手法による聴取結果を記録した記録媒体についても、こういった現行法の規定を踏まえて、必要性と信用性の情況的保障の兼ね合いによって伝聞例外の要件を設定することができないかどうかということを検討していく必要があります。 |
まず、先に挙げた二つの方法のうちの最初の方法ですけれども、この場合は被告人側に反対尋問の機会がないままに記録媒体を証拠とすることになりますので、それを認めるだけの高度の必要性がある場合に限られるということになると思います。
この点については、これまでに御指摘がありましたように、年少者については繰り返し被害の状況を供述することによって心的外傷の症状が加算的に悪化したり、あるいは、継続して聴取されることでPTSD等の症状が表れたりすることがあって、その症状は極めて重篤であるとされております。 そうだとしますと、性犯罪の被害者等の中でも、特に年少の者については、公判期日において証言をすれば、将来において心身の故障に至るおそれが現実的なものとして想定されますので、それを避けるため、公判期日外でなされた司法面接の際の供述を利用する高度の必要性が認められるといえると思います。 他方で、もう一方の要素である信用性の情況的保障ということにつきましては、現在、刑事訴訟法321条1項3号で要求されているのと同等の特信情況が存在することが必要となると考えられます。 この点については、先ほど御紹介がありましたように、司法面接においては、子供の供述の特性を踏まえて、事件から近い時期に誘導や暗示を排除した聴取手法が用いられるとされていますので、これに加えて、供述に至る経緯ですとか、先ほど御指摘があった聴取者の立場等を含めて、これらの要素を特信性の要件ないし考慮要素として明文化することが考えられるかと思います。 |
これに対し、二つ目の方法の場合には、被告人による反対尋問の機会は保障されますので、理論上は最初の方法の場合ほどの厳格な要件を設ける必要はないと思います。
ただ、現行法の321条の2というのは、裁判官の面前における供述を録取した記録媒体を対象とするものであるのに対して、司法面接的手法による聴取結果を記録した記録媒体は、そうではありませんので、その点では信用性の情況的保障が類型的に高いとはいえません。 そこで、先ほどと同様に、司法面接の手法に着目した特信性の要件を設けることによってそれを補う形にして、321条の2と同様の規定を設けることが考えられるのではないかと思います。 |
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<36ページ>
●2020年10月20日 井田良 座長(中央大学教授)
ありがとうございました。川出委員には、規定を設けるとすると、二つの案が考えられるということまでお話しくださいました。 議論は尽きないところでございますけれども、第2の「4」(司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体について、特別に証拠能力を認める規定を設けるべきか)につきましては一通り御意見を伺えたようでありますので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。 この論点につきましては、本日述べられた御意見を踏まえて、二巡目の検討で更に議論を深めてまいりたいと思います。 |
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刑法の改正を審議する性犯罪に関する刑事法検討会は、昨年(2020年)の3月31日に発足しました。
以来、論議が重ねられています。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
・第8回(2020年11月10日)※議事録準備中
・第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日)※議事録準備中(AV出演強要についても論議)
・第11回(2021年1月28日開催予定)
刑法の改正に関する具体的な議論は、5回目の会議からはじまりました。
議事録は現在のところ、7回目の会議のぶんまで公開されています。
議事録を読むたびに感じることがあります。
性犯罪の罰則に関する検討会のときとは様相がちがう、と。
□性犯罪の罰則に関する検討会(2014年~2015年)
前回の性犯罪の罰則に関する検討会の目的は、今回の性犯罪に関する刑事法検討会と同様に、刑法改正の審議です。
前回の性犯罪の罰則に関する検討会の議事録を読むと、陰鬱な気分になります。
刑法の改正に対する反対意見が目立ちます。
全体的に前向きなものは感じられません。
今回の性犯罪に関する刑事法検討会はちがいます。
改革への意欲がつたわってきます。
(例。刑法177条【強制性交等罪】について)
(2020年8月27日 第5回 性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<19~20ページ>
●2020年8月27日 和田俊憲 委員(東京大学教授)
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(再掲。和田俊憲 委員)
「条文上明確に、これまでの考え方とはかなり違う処罰を本来すべきなのだと、そういうメッセージが伝わるような条文に、少なくともする必要があるのではないかというふうに思います」
「少なくとも、これまでとは違うところに踏み込もうとしているのだというメッセージ性を強く持ったような改正というのが、条文上、求められるのではないかというふうに考えているところです」
AV出演強要につきましても、なんらかの処罰をすべき、との流れです。
(参考。当ブログ)
□性犯罪に関する刑事法検討会に関するの当ブログの記事
<AV出演強要に関する議論>
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性犯罪に関する刑事法検討会を統括する上川陽子法務大臣は、同検討会の在り方について、
「検討会の取りまとめを年度内に行うという形で設定しているわけではありませんが、なるべく迅速に対応していただきたいということでお願いしております。スピード感を持って進められるように私どももバックアップしていきます」(Forbes JAPAN)
とのべています。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、 私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。 |
犯罪者の捕獲が待たれます。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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