刑法改正を審議する検討会。不同意性交罪の新設に反対していた委員が、同罪の新設を提言しました。香西咲さんたちのAV出演強要被害についても、光がみえてきました

3年前(2017年6月)に、刑法の性犯罪の規定が厳罰化されました。
110年ぶりの改正、と話題になりました。
現在、この刑法をさらに峻厳なものにするための論議がおこなわれます。
審議をおこなっているのは、法務省の性犯罪に関する刑事法検討会です。
同検討会は、今年(2020年)の3月31日に発足しました。
爾来(じらい)、話し合いを重ねています。

(参考。性犯罪に関する刑事法検討会
<開催状況>
第1回(2020年6月4日)※議事録公開
第2回(2020年6月22日)※議事録公開
第3回(2020年7月9日)※議事録公開
第4回(2020年7月27日)※議事録公開
第5回(2020年8月27日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第6回(2020年9月24日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第7回(2020年10月20日)※議事録公開(AV出演強要についても論議)
第8回(2020年11月10日)※議事録準備中
第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日開催予定)

同検討会は、5月に、
各委員から提出された自己紹介及び意見
という標題の資料を公開しました。
金杉美和委員(弁護士)の意見をみてみます。

(2020年5月 法務省 性犯罪に関する刑事法検討会「各委員から提出された自己紹介及び意見」より、引用。)

<2~8ページ>
<一部分を抜粋>
2020年5月 金杉美和 委員(弁護士)

性暴力を防止すべきという問題意識は共有できます。
また、性暴力の被害者に対し、現行より手厚い保護の施策がなされるべきとも思います。

ただし、その手段としての、暴行・脅迫要件の撤廃、ないしは不同意性交罪の創設には反対の立場です。

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私が暴行・脅迫要件の撤廃ないし不同意性交罪の創設に反対する理由は、大別すると以下の3点です。

すなわち、1.他に検討すべき施策があること、2.実効性に疑問があること、3.必要性に比して弊害が大きいこと、です。

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刑罰法規は、国家が市民の財産や自由、ときには生命をも奪う根拠であって、その新設や要件の緩和、法定刑の引き上げ等の改定は、謙抑的になされるべきことは言うまでもありません。

その観点から、性暴力の防止のためには現行の規定に加えて暴行・脅迫要件の撤廃ないしは不同意性交罪の創設が必要不可欠なのか、という点に疑問があります。

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また、仮に暴行・脅迫要件が撤廃され、又は不同意性交罪が創設されたとして、それによって真に救済されるべき性暴力被害者が救済される結果になるかどうかは疑問があります。

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この上さらに、強制性交等罪で暴行・脅迫の要件が不要とされれば、弁護人としてはより一層、同意の有無や、同意があったとの認識の有無について争うことになります。
争われることを見越して検察官が起訴を見送ったり、裁判所がより慎重な判断にならざるを得なくなった結果、実際に処罰される件数や割合が減少する可能性もあります。

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現行の暴行・脅迫を要件とする強制性交等罪はそのままとし、例えば法定刑の下限を2年や3年に引き下げた不同意性交罪を創設する場合も、同様の問題が生じます。
同意の有無又は同意があったとの認識の有無については、大半の事件で争点になると思われます。

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暴行・脅迫やそれによる反抗抑圧が、様々な要素を考慮し具体的な状況に即して判断され、暴行・脅迫がなくとも抵抗できなかった事案については準強制性交等罪で処罰されている現状において、この上さらに暴行・脅迫要件の撤廃や、不同意性交罪の創設が強く必要とされるのか、疑問があります。

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これに対し、暴行・脅迫要件の撤廃ないし不同意性交罪の創設には、いくつもの弊害があります。
まず、言うまでもありませんが、一定年齢以上の人が真に同意して性交すること自体は、何ら違法ではなく自由であるべきです。
しかし、同意とは内心の問題であるだけに、外形的な判断は容易ではありません。

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暴行・脅迫要件の撤廃ないし不同意性交罪の創設は、性交の自由に対する萎縮的効果が極めて大きいと思います。

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訴訟法的にみても問題があります。
これもまた、平成27年報告書で指摘されている点ですが(同18ないし20頁)、暴行・脅迫の要件を一般的に撤廃し、同意のない性交を犯罪とすることは、弁護側に同意があったという反証を求め、疑わしきは被告人の利益にという無罪推定の原則が、疑わしきは被告人の「不利益」にということになりかねません。

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事実上挙証責任を転換し、被告人に同意があったことの反証を求めるがごときは、いわば最大の人権侵害であり、法治国家において容認されるべきではありません。

さらにその結果、被告人が同意の存在を反証できなかったために、本来処罰されるべきでない同意の上での性交が処罰されるという冤罪が多発すれば、目も当てられません。

暴行・脅迫要件の撤廃ないし不同意性交罪の創設は、必要性に比して、あまりにも弊害が大きいのではないでしょうか。

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これはあくまで、現時点での意見であり、委員の皆様方の多様なお考えを伺い、また新たな資料の提供などを受け、自分自身の考えも変化していくかもしれません

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5月に、金杉美和委員は、
暴行・脅迫要件の撤廃、ないしは不同意性交罪の創設には反対の立場です
これはあくまで、現時点での意見であり、委員の皆様方の多様なお考えを伺い、また新たな資料の提供などを受け、自分自身の考えも変化していくかもしれません
とのべました。
8月27日に開催された第5回目の検討会の議事録をみてみます。

(2020年8月27日 第5回 性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)

<19ページ>
2020年8月27日 金杉美和 委員(弁護士)

刑事弁護の観点から申し上げますと、177条(強制性交等罪)の要件あるいは178条(準強制性交等罪)の要件が、被害者と被告人の置かれた状況等によってある程度柔軟に解釈されているので新たな立法の必要性はないのだという論理は分かるのですけれども、それはそれで、要件が曖昧だという点は問題だという認識は持っています。
例えばですけれども、現在の暴行・脅迫要件を撤廃するということには、やはり同意はできません。
177条(強制性交等罪)の法定刑の下限が上げられたということとあいまって、先ほどからも御指摘のありましたように、逆に、重大な犯罪であるがゆえに、起訴あるいは有罪の認定に消極的になるということもあり得るとは思います。
ですので、もし考えられるとしたら、これはもちろん賛成ということではないのですけれども、不同意性交等罪に類するより軽い類型のものを、現在の177条(強制性交等罪)、178条(準強制性交等罪)別に規定をするという方向で、それが可能かどうかという方向で検討するのが適当なのではないかと考えています。
さらに、177条(強制性交等罪)については、判例上必要とされている要件、

(参考。昭和33年6月6日の最高裁判決

その暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度には達しないと認められるようなものであつても、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲(しい)の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである

被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度という要件を条文上に例えば書き込んでしまう、そして、不同意性交等罪、もっと軽い類型の中に、被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度には至らない程度の暴行・脅迫といったものも含むと。

そして、さらに、不同意が外形的に認識できる状況について、客観的な要件を設けるという方向の検討の方が、刑事弁護の観点からはまだ賛成できるというふうに思います。

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(再掲。金杉美和委員。5月
暴行・脅迫要件の撤廃、ないしは不同意性交罪の創設には反対の立場です」)

頑迷固陋(がんめいころう)な金杉美和委員が、8月27日の検討会で、
これはもちろん賛成ということではないのですけれども、不同意性交等罪に類する、より軽い類型のものを、現在の177条(強制性交等罪)、178条(準強制性交等罪)別に規定をするという方向で、それが可能かどうかという方向で検討するのが適当なのではないかと考えています
さらに、177条(強制性交等罪)については、判例上必要とされている要件、被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度という要件を条文上に例えば書き込んでしまう
そして、不同意性交等罪、もっと軽い類型の中に、被害者の抗拒を著しく困難にさせる程度には至らない程度の暴行・脅迫といったものも含むと
そして、さらに、不同意が外形的に認識できる状況について、客観的な要件を設ける
とのべました。
金杉美和委員のほうから、不同意性交等罪の新設を提案するとは。
思ってもみなかった展開です。

(香西咲さんのツイートより、引用。)

香西咲さん
2018年3月19日

今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。

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性犯罪に関する刑事法検討会では、当然、金杉美和委員以外の委員も不同意性交等罪の新設について意見をのべています。
詳細につきましては、過日の当ブログをご覧ください。

(参考。当ブログ)
<不同意性交等罪の新設について>
2020年12月7日(※その1)
2020年12月8日(※その2)
2020年12月9日(※その3)
2020年12月10日(※その4)
2020年12月11日(※その5)

今回の改正が被害者の方々にとって快哉(かいさい)を叫ぶものとなることを期待しています。
もちろん、AV出演強要の被害者の方々にとっても。

(参考。当ブログ)
<AV出演強要について>

2020年11月18日(※第6回目の議事録を参照。)
2020年11月19日(※第4回目と第5回目と第6回目の議事録を参照。)
2020年12月2日(※処罰規定に関する2つの考え)
2020年12月5日(※強制性交等罪と準強制性交等罪の適用について)
2020年12月12日(※第7回目の議事録を参照。)

世の中は着々と進展しています。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
2017年12月1日
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。

2018年3月19日
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。

2018年11月14日
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
2018年11月1日
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
2018年11月1日
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」

(明日のブログへつづく)



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