今年(2020年)の3月31日、法務省内に性犯罪に関する刑事法検討会が設置されました。
同検討会の目的は、刑法改正の審議です。
開催状況は以下のとおりです。
性犯罪に関する刑事法検討会
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開
・第8回(2020年11月10日)※議事録準備中
・第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日開催予定)
同検討会では、AV出演強要に対する処罰の在り方も検討されています。
(参考。当ブログ)
AV出演強要について
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本日は、
「地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方」
に関する論議をみてみます。
地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方
第5回目の議事録を参照します。
(2020年8月27日 第5回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<23ページ>
●2020年8月27日 井田 良 座長(中央大学教授)
(前略。) それでは、一つ目の「〇」、被害者が一定の年齢未満である場合に、被害者の同意の有無を問わずに処罰する罪を創設することと、二つ目の「〇」、被害者の年齢にかかわらず、当罰性が認められる場合を類型化することについて、御意見のある方は御発言をお願いします。
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<23ページ>
●2020年8月27日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
先ほど、抗拒不能は幅広に解釈されているという議論もあったというふうに思います。
しかし、そうはいっても、暴行・脅迫も認められず、抗拒不能も認められず、不起訴になったり、裁判で無罪判決も出ているということも指摘されたとおりです。 こちらの資料にも、やはり、認定されているものもあり、認定されていないものもあるというふうに思います。 そうであるならば、やはり地位・関係性、抗拒不能について、どこが認められ、どこが認められないのかということを列挙し、そして、一定の地位・関係性があり、被害者に対して一定の有形力、影響力を有する者が性行為をした場合という類型を設けることも大切かと思います。 |
<23~24ページ>
●2020年8月27日 小西聖子 委員(武蔵野大学教授)
(前略。) 少なくとも、現行法の対象である監護者だけでは非常に狭過ぎるというのが、実際に臨床をやっている者としての意見です。
例えば、教員からのケースというのは、常にありますし、かなり年齢が高い層まで、教員からの被害というのはあります。 スポーツのコーチからの被害も、一つ、強制起訴になったケースで有名なものがございますけれども、被害がコントロール下で起こったということが、やはり大きな意味を持っていると思います。 その中で何を取るかということなのですけれども、例えば、スポーツのコーチといっても、関わる度合いがすごく違いますよね。難しいところだとは思いますが、最低限、教員と、それから監護者と、それに代わる、例えば、養護施設や監護施設のケアする人たち、さらに、里親をやっている人たち、そういうところの人については、監護者性交等罪と同じような形で処罰してもいいのではないかというふうに思っています。 |
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<24ページ>
●2020年8月27日 齋藤梓 委員(臨床心理士)
(前略。) 関係性につきましては、関係性で定義するのがいいのか、抗拒不能などの文言の中で考えるのかというのは、私には考えが及ばないのですけれども、私が調査を行った結果からは、加害者が被害者に対して言動を用いて力関係を作り出すことで、被害者が抵抗できない状態、拒否できない状態に追い詰められていくということが、性暴力が発生するプロセスで見られました。 その上で、もしも従前に上下関係があった場合は、性暴力の発生プロセスを容易にするということも分かっております。 臨床経験においても、上司からの強制的な性交は、不起訴や不受理になることが多いという感覚があります。 上司以外にも教師や習い事の先生、就職活動先のOB、OG、フリーランスの人たちの取引相手、医療機関の医療職や心理職、福祉施設職員、利害関係、依存関係、脆弱性がある関係性など、いろいろな関係性が挙げられると思います。 それをどこまでどのような形で明確にするのかというのは、難しいところではあると思うのですけれども、少なくとも、その人の人生や将来、経済状態等を決定する権限のある人たち、医療や心理、福祉施設職員のように、その人たちに力を行使したり、その人たちの生活、生命、精神状態を左右できるような立場にいる人たちからの被害は、きちんと罰する必要があるのではないかと考えております。 |
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<24~25ページ>
●2020年8月27日 上谷さくら 委員(弁護士)
自分がいろいろな被害者の相談を受けた経験も踏まえて意見を述べますと、地位・関係性を利用した犯罪類型が最も救われていないゾーンだと思っています。
やはり、地位・関係性がある場合は、力関係がそもそもあったり、顔見知りであるということで、従来求められている暴行・脅迫に満たないですね。 そのために、ほとんどが不起訴というケースがあります。 先ほど、齋藤委員が言われたように、やはり、教師や塾の先生と生徒、また、部活の先輩・後輩、会社の先輩・後輩、上司と部下の関係、取引先、医師と患者など、こういうのは非常に多いにもかかわらず、一番救われていないゾーンだと思っています。 (中略。) 特に会社内とか取引先など、仕事が絡んでいると、なかなか言いづらいし、なぜか日本の場合は、被害者が責められて会社にいられなくなるということになっていますので、生活が成り立たないということに直結しているのですよね。 そのようなことも、現実としてたくさん起きていますので、この辺のところを、単に「地位・関係を利用し」というふうに言えばいいのか、関係性を細かく列挙するのかというのは、私の中でも、まだまだ検討は足りていないのですけれども、その辺りのことも議論していただければと思っています。 |
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<25ページ>
●2020年8月27日 木村光江 委員(東京都立大学教授)
監護者に関連した話なのですけれども、先ほど、177条(強制性交等罪)と178条(準強制性交等罪)の関係がどうかという議論があったのですが、抗拒不能は、どうしても177条(強制性交等罪)の暴行・脅迫と同程度というふうに従来考えられているので、少なくとも形式的には結構程度の強いものが必要になってしまって、その結果、本来、親子関係であれば、178条(準強制性交等罪)で拾えていたと思うのですけれども、それができなかったために、監護者が立法されたのだという経緯があったかと思います。
同じように考えると、やはり、ある程度類型化してくくり出すという作業をしないと、なかなか178条(準強制性交等罪)では拾えないというふうに思います。 また、地位・関係性の範囲ですけれども、確かにどういうふうに限定するかというか、どこまで入れるかというのはすごく難しくて、地位とか、力関係という抽象的な表現では、条文としては曖昧になってしまうのかなという気がするので、取りあえずは、この前は監護者を入れましたけれども、それに近いような、例えば、教師であるとか、学校に雇われているコーチであるとか、そういうような形でくくり出すというのは、一つの方法かなというふうに考えております。 |
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<25~26ページ>
●2020年8月27日 井田 良 座長(中央大学教授)
先ほど佐藤委員がおっしゃったように、不同意といわれるものの中にもグラデーションがあって、言わば、黒が強いところから、だんだん薄くなって白に近い灰色までグラデーションがあるとすると、そのどこに177条(強制性交等罪)、178条(準強制性交等罪)の処罰を可能にする境目があるのかが問題です。
我々は、これから議論していく中で、そのあるところに線を引かなければならないわけです。 その上で、さらに、そこに至らない、今度はもうちょっとグラデーションの薄いところまで捕まえていくとなると、それは大変難しい問題になると思います。 |
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<26ページ>
●2020年8月27日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
私も今、御議論を伺っておりまして、若年者につきましては、精神的に未成熟であり、親族や教師、スポーツのコーチなどの関係性を有しており、精神的に影響を及ぼし得る者から性行為の要求があった場合に、これに適切に対応できない場合があり得ることから、青少年の脆弱性に着目して何らかの対応を取ること、すなわち、新たな刑罰法規を設ける、あるいは、抗拒不能要件に関する具体的な判断基準を設けることなどが、選択肢としては十分に考えられるように思います。
ただ、その場合には、単純に監護者性交等罪と同様の規定を設けるのではなく、その要件や処罰範囲については、更に限定的に考える必要があると思います。
すなわち、監護者性交等罪につきましては、監護者と被監護者が依存・被依存、保護・被保護の関係にあることから、監護者による被監護者に対する性的行為は、被監護者の自由な任意の意思決定によるものとは評価できず、また、監護者が被監護者の利益を保護すべき立場にあることもあいまって、強制性交等罪と同等の悪質性・当罰性を有するという観点から新設されたものです。 すなわち、現に監護する者の影響力と関連性を有して行われた性行為については、たとえ被害者が同意していた、あるいは、当事者間に恋愛感情があったとしても、これを一切問題にせずに処罰対象とするものと解されます。 これに対して、学校の教師やスポーツのコーチなどの場合、もちろん監護者と同等の影響力を持つ場合もあると思うのですが、その影響の程度は一様ではありません。 また、例えば高校生が、学校の教師やスポーツのコーチと真剣な恋愛関係に至り、性的行為に及ぶことは、全くないわけではなく、当・不当はおくとしましても、これを全て性犯罪としての処罰対象にすべきかについては議論があり得るように思います。 すなわち、仮に、一定の地位・関係性に基づく性行為を罰するとしましても、監護者性交等罪よりは厳格な要件が必要であり、例えば、相手に対する影響力の程度や当事者間の関係性を個別に認定したり、あるいは、地位・関係性を悪用・濫用する具体的な行為を要求するなど、何らかの限定的な規定を検討する必要があるように考えております。 |
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<26ページ>
●2020年8月27日 宮田桂子 委員(弁護士)
今、橋爪委員がおっしゃったことで、私の意見は、ほぼ尽きている感じはいたします。
地位・関係性利用の問題については、日弁連が反対意見を出しました。 ですから、それを更に広げるべきだという議論になってしまいますと、今、橋爪委員が御指摘になったように、保護者である親等と子供との関係というのは、ある程度、定型性がありますが、学校の先生の関係その他については、非常に不定型な部分がある。そういうものを、そういう関係があるというだけで処罰してしまうという規定を作ってしまうことは、あってはならないことであるというふうに考えます。 |
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<26~27ページ>
●2020年8月27日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
先ほど、教師と生徒で真摯な恋愛関係があり得る可能性があるというお話が出ましたけれども、こちらの資料にもあったと思うのですけれども、諸外国では、そのような関係性において、性的自己決定権に明らかに差があるということを認識して、地位・関係性を置いているという国もあります。
日本の場合、性犯罪、性暴力を議論すると、いつも真摯な恋愛関係がある場合というふうな話をしますけれども、その真摯な恋愛というのは、一体何を想定しているのだろうかと思います。 対等でない関係で、強制性があった場合、そして同意がない場合、これが性暴力を構成する定義です。 教師と生徒という上下関係がある場合において、真摯な恋愛関係が形成されると真剣に考えることについては、私は憤りを持って批判させていただきたいと思います。 児童福祉法でも、18歳未満への性行為は罪です。 |
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<27ページ>
●2020年8月27日 小島妙子 委員(弁護士)
監護者性交等罪というのは有意義な改正だったと思います。
これで救われる子供たちがたくさん出てきているということで、やはり、このスキームをもう少し広げていく必要があると思います。 子供の性被害は、非常に深刻だということを前提に、この監護者性交等罪については、適用範囲を広げていくということが要請されていると思っております。 少なくとも教師、それから、例えば、先ほど木村委員がおっしゃっていましたように、学校に雇われているスポーツの指導者等につきましては、監護者性交等罪の中に入れて拡大していくことが、必要ではないかという意見を持っております。 それ以外の関係性について、どこまでこのスキームでやっていくのかということについては、検討の余地があるかと思いますけれども、私としては、アルバイト先で被害に遭うことが多いので、職場も含めて、検討していただきたいと思っております。 また、被害者が18歳以上の場合の地位・関係性を利用した性行為、性交等についても、新たな犯罪類型を創設していただきたいと思っております。 親族、教師、雇用主、施設の職員等について、力関係を利用・濫用して行う性的行為を犯罪化する方向を考えたいと思います。 処罰範囲については、諸外国の法令を参考にして、国際基準にのっとった形で、ここの部分の改正も是非お願いしたいと考えております。 |
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(再掲。齋藤梓 委員)
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(再掲。上谷さくら 委員)
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(再掲。小島妙子 委員)
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(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、 私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。 |
性犯罪に関する刑事法検討会の各委員は、「検討すべき論点」に書かれている事柄を論議しています。
現在は、一巡目です。
各項目の検討は、三巡目までおこなわれるようです。
AV業界人と同様に、セクハラ精神科医も野放しの状態となっています。
このものたちが刑務所に打(ぶ)ち込まれる法改正となることを期待しています。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
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