昨日(2020年12月11日)、10月20日におこなわれた第7回性犯罪に関する刑事法検討会の議事録議事録が公開されました。
(参考。性犯罪に関する刑事法検討会)
<開催状況>
・第1回(2020年6月4日)※議事録公開
・第2回(2020年6月22日)※議事録公開
・第3回(2020年7月9日)※議事録公開
・第4回(2020年7月27日)※議事録公開
・第5回(2020年8月27日)※議事録公開
・第6回(2020年9月24日)※議事録公開
・第7回(2020年10月20日)※議事録公開
・第8回(2020年11月10日)※議事録準備中
・第9回(2020年12月8日)※議事録準備中
・第10回(2020年12月25日開催予定)
同検討会では、8月27日の第5回目の会議より、検討すべき論点にもとづいて話し合いがおこなわれています。
9月24日に開催された第6回の検討会では、後半、
「他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を処罰する規定を設けるべきか」
について話し合いがおこなわれました。
(検討すべき論点より。)
8 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方
〇 他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を処罰する規定を設けるべきか
〇 撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を設けるべきか
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8のひとつ目の〇の
「他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を処罰する規定を設けるべきか」
につきましては、AV業界人をなんらかのかたちで処罰すべき、との意見が大勢を占めました。
(参考。当ブログ)
・2020年11月18日(※AV業界人の処罰に関する第6回目の議事録)
・2020年11月19日(※AV業界人の処罰に関する第4回目、第5回目、第6回目の議事録)
第6回目の検討会では、時間の都合で、8のひとつ目の〇の「他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を処罰する規定を設けるべきか」だけで論議が終了しました。
(2020年9月24日 第6回性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<36ページ>
●2020年9月24日 井田 良 座長(中央大学教授)
もう時間がまいりましたし、この論点についてもかなりいろいろな御意見をお伺いできましたので、本日の議論につきましてはここまでとさせていただきたいと思います。
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この後検討することを予定しておりました第1の「8」の二つ目の「〇」、
「撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を設けるべきか」
については、次回、第7回の会合において議論することとし、次回の会合では、第1の「8」に加えて、第2の「1 公訴時効の在り方」、「3 いわゆるレイプシールドの在り方」、「4 司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方」についての検討を行いたいと思うのですけれども、そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。
(一同了承)
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「撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定」は設けられるのでしょうか。
昨日(2020年12月11日)公開された第7回目の議事録をみてみます。
撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を設けるべきか
2020年10月20日
第7回 性犯罪に関する刑事法検討会
(2020年10月20日 第7回 性犯罪に関する刑事法検討会「議事録」より、引用。)
<1ページ>
●2020年10月20日 井田 良 座長(中央大学教授)
それでは、議事に入りたいと思います。
前回会議でも申し上げたとおり、本日は、まず、資料12「検討すべき論点」のうち、第1の「8 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方」の二つ目の「〇」の
「撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を設けるべきか」
について議論をしたいと思います。
(中略。)
早速、第1の「8」の二つ目の「〇」の検討に入ります。
前回、事務当局から説明がありましたとおり、前回配布された資料のうち資料41から45までが主にこの論点に関連する資料ですので、それらを適宜御参照ください。
それでは、この論点について御意見のある方は、御発言をお願いします。
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<1ページ>
●2020年10月20日 山本潤 委員(一般社団法人Spring代表理事)
前回も議論されたように、撮影した性的姿態の画像・動画を用いて脅迫するような事件が起こっていますし、性的な画像・動画を見られるのではないかという恐怖からうつ病や対人恐怖症になったり、死にたいという思いにかられる方も多くいます。
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同意なく撮影され、あるいは、同意を撤回した後の性的姿態の画像や動画については、プライバシー権が侵害されているわけですから、没収してほしいと思います。
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犯罪によって撮影されたものだと知らないでそういう画像・動画を購入された人に対してどうするのかという意見もあるかと思いますけれども、その画像・動画が残っていること自体が被害者にとっては恐怖です。
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いつか誰かに見られて何か言われるのではないか、結婚した相手に知られたらどうしよう、付き合っている人に見られたらどうしよう、子供が生まれて、成長した子供に見られてしまったらどうしようなどと思い、不安や恐怖を抱え続け、人生に多大な影響を与えます。
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加害者は、それによって利益を得たり、また、その画像を保持することによって利益を得たりしているわけですから、没収自体が法によって権利として保障されてほしいと望んでいます。
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<1~2ページ>
●2020年10月20日 上谷さくら 委員(弁護士)
現行法の問題点について指摘させていただきたいと思います。
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強制性交等罪や強制わいせつ罪などの機会に撮影が行われた場合、盗撮自体が犯罪とされていないため、没収が困難となっていることは皆さん御存じかと思います。
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資料にもあるように、いわゆる宮崎強姦ビデオ事件で、最高裁は犯罪供用物件と認定して没収を認めているのですけれども、そこでは、被害者が捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を逃れようとしたという限定が付いていて、それ以外の場合、例えば性的満足を得る場合とか、営利目的であった場合などにどうなるかということについては、まだ判断が示されておりません。
(参考。当ブログ)
・2018年8月16日
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このようなことが、やはり検察官の没収の求刑などにも影響しているのではないかと思っています。
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従前からこの検討会でも話題になっていますけれども、リアルナンパアカデミーというナンパグループの集団強姦事件でも、被告人らが犯行状況を撮影した画像データが保存されていたパソコンとハードディスクの没収が認められているのですが、それも最高裁判例と同じように、そのデータを和姦の証拠とし、刑事責任の追及を逃れようとしたという最高裁と同様の限定が付されているので、この判例があるから没収規定が現在のままでいいということにはならないと思っています。
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そして、撮影された画像の没収だけではなく、そのコピーを消去することや、画像を第三者に提供したり、譲り受けた人や、インターネット上に拡散した人、売却して利益を上げた人も処罰する必要があると考えています。
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前回配られた資料によりますと、韓国では撮影したものを編集したり合成、加工したりする場合に5年以下の懲役又は5、000万ウォン以下の罰金とし、情報通信網を利用した場合というのは、恐らくインターネットに載せた場合ということだと思いますが、その場合には7年以下の懲役と厳しく処罰することとしており、非常に参考になると思います。
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先ほど山本委員も御指摘されましたが、今、盗撮の中には、性犯罪の犯行状況を撮影するものがあり、性犯罪と犯行状況の撮影がセットになっているという側面がありますし、駅とかトイレでの盗撮や、前回も指摘させていただいたアダルトビデオ強要の場面のほか、航空業界、アスリートなども盗撮被害にさらされています。
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前回、女性アスリートの盗撮問題を取り上げさせていただいたのですけれども、その後、報道がいろいろあって御存じかと思いますが、JOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長や五輪相の橋本聖子大臣、スポーツ庁の室伏広治長官らが、アスリートの盗撮問題について重大な関心を持ち、選手を守っていかなければならないという趣旨の発言をされています。
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性被害は男性が被害に遭う場合も必ずあるので、男性アスリートも被害に遭っているだろうと個人的に思っていたところですが、この問題が報道されてから、やはり男性アスリートも盗撮被害に遭っているという報道もなされています。
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盗撮は、撮影される側が気付かないことが多いため、潜在化しやすく、また、インターネットで拡散されると完全に回収することが困難という特性があります。
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被害者が泣き寝入りしないよう幅広く規制し、その作られた画像を確実に消していけるような法規制が望まれると思っています。
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<2~3ページ>
●2020年10月20日 渡邊ゆり 委員(東京地方検察庁検事)
今、上谷委員から御紹介がありました平成30年の最高裁決定は、恐らく、当然、性犯罪の証拠を被告人の手元に置いておくことはおかしいというような価値判断に立たれて、現在の法制度の枠内で最大限の解釈をされたのだとは思うのですけれども、一方で、上谷委員の言われたように、刑事責任の追及を免れるためという要件を満たさない場合ですとか、あるいは、本件以外の余罪に関するものについては、恐らく、その射程は及ばないものと思われます。
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捜査実務において、検察では、警察の多大なる御協力も頂いているところですけれども、そういった没収規定に当たらないものにつきましては、私ども捜査官が、被告人・被疑者から所有権放棄の同意を得られるよう、非常に努力しているところです。
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ただ、捜査官がそういう働きかけをすれば応じてくれるのかという点について、実情を確認しましたところ、10年以上にわたって、刑が確定しているにもかかわらず同意をしてくれない方が珍しくないという現状にございます。
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そういう意味で、私どもは、10年以上にわたってずっと接触をし続けて、同意を求め続けるというようなことをやっておりまして、現場における事実上の努力では対応がしきれない状況にあるということがいえるかと思います。
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また、刑法19条の没収の対象となるのは、犯行時に撮影した画像など、いわゆる原本そのものということでございますけれども、今、非常に簡単に複写ができ、スマートフォンからパソコンへ、パソコンからスマートフォンへいろいろ転送できる状況にあります。没収規定が設けられた当時でしたら原本だけでよかったのかもしれませんけれども、社会情勢が変わっている中で、少し規定が狭いのかなという印象を持っております。
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<3~4ページ>
●2020年10月20日 橋爪隆 委員(東京大学教授)
私も同感でして、性的姿態が撮影された記録媒体を没収することは、データの拡散による被害の拡大を防止するという観点からも重要であると考えます。
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もっとも、現在の判例の理解を前提としますと、例えば、強制わいせつ罪や強制性交等罪の犯罪の過程で撮影行為が行われた場合でも、撮影行為それ自体が実行行為の遂行を促進する効果を有しており、実行行為と密接に関連する場合に限って、19条1項2号の犯罪供用物件として没収可能であると解されます。
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したがって、このような事実が認定できない場合には、先ほど御指摘がございましたように、現行法では記録媒体の没収ができないという問題が生ずることになります。
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このように没収が困難となり得る事例については、今後、立法的な対応が必要であると考えます。
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その上で、2点、私なりの問題意識を簡単に申し上げたいと存じます。
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第1に、没収可能な客体の範囲につきましては、いかなる行為を処罰対象にするかによって変わってまいります。
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すなわち、前回の検討会で議論がありましたように、同意なく性的姿態を撮影する行為自体を処罰対象にするのであれば、撮影されたデータが記録された記録媒体は19条1項3号の犯罪生成物件と評価されますので、当然にこれは没収が可能です。
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このように、何が没収できるかという問題については、当然のことではありますが、いかなる行為を処罰対象にするのかという問題と関連付けて議論する必要があると思います。
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第2に、現行の刑法19条によって没収できる物件は、有体物であることが必要であり、また、犯罪行為と直接的な関連性を有するもの、すなわち、原本であることが要求されております。
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そのため、現行法の下では、記録媒体を没収することはできますが、データの消去を命ずるような措置を刑罰として直接的に科すことは困難です。
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また、撮影された記録媒体の原本は没収できますが、これをダビングした複製物については、原則として没収ができないと思われます。
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もっとも、これも先ほど御指摘がありましたように、撮影データの複製は極めて容易に行われますので、今後は複製物も没収の対象に含める可能性について検討する必要があると考えます。
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もっとも、電子データが容易に複製し得るということは、性的姿態の撮影の場合に限った話ではありませんので、これを性犯罪に限った特別なルールとして議論すべきなのか、それとも、刑法典の没収規定全般に関する問題として検討すべきなのかについては、更に議論があり得るところかと存じます。
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さらに、データの複製と申し上げましたけれども、場合によってはデータ全部のコピーではなく、その一部のみをコピーしたり、あるいは、撮影データを修正・加工するような場合もあると思われます。
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このように原本との同一性の認定が困難になるケースについて、いかなる限度で複製物を没収・消去の対象にするかという問題についても、やはり刑法19条の没収規定の趣旨に遡った理論的な検討が必要になるかと存じます。
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<4ページ>
●2020年10月20日 齋藤梓 委員(臨床心理士)
既に山本委員もおっしゃっていることではあるのですけれども、少なくとも、自分の同意のない性的姿態の画像や映像をどこかで誰かが持っているかもしれず、それを没収することができないという状況は、被害者を著しく傷つける状況であると思います。
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自分の体というのは大変プライベートな領域で、いつ、どこで、誰に見られるかというのは、もちろん自分が決めてよいことのはずであり、それを誰かが持ち続けるということ自体が、被害者が性暴力に遭い続けるということだと思います。
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被害者が傷を負い続けるということになりますので、同意のない性的姿態の画像とか映像は、誰が持っていようとも、そして、たとえ所持者にそれが同意のない性的姿態の画像だという認識がない場合、単純に所持していた場合であっても、せめて没収はできるように検討していただきたいと思っております。
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<4ページ>
●2020年10月20日 池田公博 委員(京都大学教授)
これまでの御指摘にも出ておりますように、処罰を前提に没収をするという場合であっても、刑罰が確定しても没収できない場合もありますし、そもそも処罰できないという場合もあるわけです。
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ただ、処罰対象とならない人が所持しているデータについて、処罰対象とならないからといって残しておいてよいというわけにはいかないとするならば、有罪判決を前提とすることなく、その所有権を剥奪し、あるいは、データを消去するという仕組みを設けることができないかということについても検討する必要があるように思います。
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具体的には、例えば、撮影罪があるとして、撮影者ではあるけれども、時間がたって時効が完成してしまって処罰できないとか、撮影された人が処罰に向けた手続の実施を望まないがゆえに撮影者が起訴されないとか、あるいは、これまで何度も指摘されているように、意思に反する撮影であったということを認識せずに画像を取得したというような場合は、処罰を前提とせずに、しかし、保持しておくことが適切ではないデータが残っている場合だと考えることができます。
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こういう場合には、有罪判決を前提とせずに財産権を制約することが必要となります。
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こうしたことを考えますと、今後の議論においては、その可否や法的根拠を検討すること、その上で、そのことと関連付けて、剥奪・消去の要件や範囲を検討することが必要となります。
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また、データを記録した記録媒体の所有者とか、画像データの保有者に対する手続保障の在り方も考えておく必要があるように思います。
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<4~5ページ>
●2020年10月20日 小島妙子 委員(弁護士)
この問題につきましては、データの流出におびえる被害者を保護するという観点で、規制をかけていっていただきたいと思います。
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児童ポルノやわいせつ電磁的記録記録媒体頒布罪等についてどの程度没収が行われているのか、実際のところ刑事事件で没収を行えないで本当に困っている状況があれば、どういう状況になっているのかが明らかになるような資料を出していただければと思います。
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委員の方々は、ネットに氾濫している画像を余りお目にされたことがないのではないかと思いますが、印刷したものの配布は難しいとのことですので、是非、氾濫している画像を一度御覧になっていただいて、被害の実態を踏まえた上で、制度を構築していっていただきたいと思います。
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<5ページ>
●2020年10月20日 宮田桂子 委員(弁護士)
性的画像の問題については、同意のない撮影だけではなく、同意があった場合でも、その拡散を望んでいないのに拡散されてしまう問題もあります。
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また、被害者の方が被害申告は望んでいないけれども、画像は消してほしい場合もあると思います。
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そういう意味において、これは、本当に刑事法の問題としてやるのがよいのか、それとも、個人の自分のデータの管理、プライバシーの権利の実現という意味で、画像に対してアクセスする権利、そして、アクセスして消してくれと言う権利を拡大した上で、その権利を実現するためにどのような形での解決をしたらよいのかに関する制度を検討し、作ること、むしろ私はそちらの方が大事であるような気がしています。
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デジタルデータについては、今まで委員の方が御発言になったとおり、刑法の中ではデジタルの扱いが非常に不十分なので、正に橋爪委員がおっしゃったとおり、有体物ではないデータは、記録媒体に入っていなければ没収できませんので、データ自体の消去を命じるということが難しいという問題がございます。
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そもそも、捜査の段階で、例えば、クラウド上に保管してあるような性的な画像データなどにアクセスしようと思うと、本人からパスワードを聞くなどしてそこにアクセスしなければ、今の状態ではアクセスができないのですね。
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そういう意味で、デジタルデータを捜査機関が収集するための武器すら今はないという、デジタルに関して全く無力な今の刑事訴訟法、刑法の在り方自体も考えていかなければならない。
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この性的な問題に限ってだけではなく、その辺を根本的に考えていかなければならない。
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その遅れで問題が大きくなっているような気がいたします。
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<5~6ページ>
●2020年10月20日 川出敏裕 委員(東京大学教授)
先ほど池田委員から御指摘があった点と重なりますが、画像等の没収ないし消去の法的な仕組みについて意見を申し上げたいと思います。
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他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為を処罰する規定を設ければ、同意なく撮影された性的な画像等が記録された記録媒体というのは犯罪生成物件として没収をすることができるようになります。
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ただ、その場合、現行法の没収は付加刑とされていますので、撮影行為について有罪判決を得るということが前提となります。
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しかし、池田委員から御指摘があったように、事案によっては、捜査機関が性的な画像等を発見した時点では、既に他人の性的な姿態を同意なく撮影する罪の公訴時効期間が経過している場合ですとか、そうでなくとも、被害者の方が撮影行為の処罰に向けた手続を実施することを望まないために、有罪判決を得ることができないという場合も考えられます。
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さらに、そういった画像等が第三者に渡った場合を考えますと、犯人に対する有罪判決がない以上は、現行法の下では第三者からの没収はできません。
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もちろん、その場合も、同意なく撮影された画像等を取得する行為を独立に処罰する規定を設けるのであれば、取得物件あるいは組成物件としてその没収が可能になりますけれども、そうした処罰規定を設けない場合ですとか、あるいは、処罰規定を設けたとしても、取得者が同意なく撮影された画像等であることの認識を有しないために処罰できない場合には、その没収はできず、その者の手元に当該画像等が残り得るということになります。
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他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為を処罰する規定の保護法益を、性的な自己決定権と捉える見解であれ、プライバシーと捉える見解であれ、そういった画像が犯人又は第三者の手元に残されている限りは、その法益侵害は事実上続くことになります。
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そして、そのような状態は、他人の性的な姿態を同意なく撮影する犯罪が現に行われ、画像等が残っていれば生じるわけですから、その状態を解消する没収という処分が付加刑でなければならない理由はないはずで、有罪判決を前提としない画像等の没収ないし消去の仕組みを設けることが必要であると思います。
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そのような仕組みを設ける場合には、有罪判決を前提とせずに画像等の所有者の財産権を制約することになりますので、これも池田委員から御指摘があったように、それを認める範囲や要件をどうするのかということと併せて、どういう手続の下で対象者にどのような手続保障をすることが必要なのかということを丁寧に検討していく必要があると思います。
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<6ページ>
●2020年10月20日 井田 良 座長(中央大学教授)
貴重な御意見を多々頂きました。まず、どのような規定を設けるかによりますけれども、正面から性的姿態の撮影行為を捕捉できる実体法上の規定を設けたとすれば、現行の没収規定にいう生成物件として、撮影したものは没収可能になるだろう。
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ただ、そのときでも、現行の没収が有体物たる原本を対象にしているというところがネックとなっており、その複写物をどうするか、あるいは、電磁的記録としてどこかに残っているときにどうするかという問題が出てくる。
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さらに、現行法上の没収は付加刑ですので、有罪判決の存在に縛られているけれども、そうなると、どうしても残り続ける画像が出てきてしまう。
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場合によっては、刑事法上のシステムを越えるようなものを考える必要があるのか。
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一通りお考えをお聞きできたと思いますので、時間の関係上、第1の「8」の二つ目の「〇」についての議論は、このあたりで一区切りとさせていただきます。
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微に入り細(さい)をうがつ(非常にこまかい点にまで気を配る)論議がされています。
「他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為を処罰する」だけでは解決につながらないようです。
(再掲。川出敏裕 委員【東京大学教授】)
「他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為を処罰する規定を設ければ、同意なく撮影された性的な画像等が記録された記録媒体というのは犯罪生成物件として没収をすることができるようになります」
「ただ、その場合、(略)、撮影行為について有罪判決を得るということが前提となります」
「有罪判決を前提としない画像等の没収ないし消去の仕組みを設けることが必要であると思います」
(再掲。池田公博 委員【京都大学教授】)
「有罪判決を前提とすることなく、その所有権を剥奪し、あるいは、データを消去するという仕組みを設けることができないかということについても検討する必要があるように思います」
「有罪判決を前提とせずに財産権を制約することが必要となります」
コピーの問題もあります。
(再掲。井田良 座長【中央大学教授】)
「現行の没収が有体物たる原本を対象にしているというところがネックとなっており、その複写物をどうするか、あるいは、電磁的記録としてどこかに残っているときにどうするかという問題が出てくる」
委員の方々は、皆さん、前向きです。
現状のままでよい、という意見はありませんでした。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、
私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。
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太宰治の「斜陽」のなかに出てくるせりふを思い出しました。
AV業界人もつぎのような心境なのかもしれません。
(太宰治著「斜陽」(青空文庫)より、引用。)
「こんな具合いで、生きて行けるのかしら、と思ったら、全身に寒気を感じました」
「私には、常識という事が、わからないんです」
「僕には、希望の地盤が無いんです。さようなら」
「しかし、どうせほろびるものなら、思い切って華麗にほろびたい」
最後のせりふはちょっとちがいます。
AV業界人は華麗でなく、醜くほろびるのでしょう。
そのぶざまな姿をながめさせていただきます。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)



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