9月に日本学術会議は、刑法の性犯罪の規定を改正すべき、との提言を出しました。
本日もこの提言についてみていきます。
(参考。当ブログ)
・2020年11月10日
・2020年11月11日
・2020年11月12日
日本学術会議は、刑法の性犯罪の規定のなかにある「暴行・脅迫」要件の撤廃をもとめています。
なぜなのでしょうか。
提言の一部を参照します。
日本学術会議
~「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて―性暴力に対する国際人権基準の反映―
(2020年9月29日 日本学術会議「『同意の有無』を中核に置く刑法改正に向けて―性暴力に対する国際人権基準の反映―」より、引用。)
<11~12ページ>
●2020年9月29日 日本学術会議
「同意のない性行為」 は、なぜ処罰されなければならないのか。 |
それは、個人の性的自己決定権を侵害するだけではなく、被害者に与える影響が甚大だからである。 |
ジュディス・ハーマンは、レイプが「他の種類の犯罪被害者に比べても高率のPTSDの持続」があるとし、レイプの本質を「個人を身体的、心理的、社会的に犯すことである」とするとともに、「レイピストの目的は被害者を奇襲し、 支配し、屈辱させること 、彼女を全く孤立無援状態にしてしまうことである。 |
このようにレイプは本質的に心的外傷をつくるように意図的に仕組まれた行為である」としている[19]。
[19] J ・L・ ハーマン(中井久夫訳)『心的外傷と回復(増補版)』(みすず書房、1999) 85 頁。 |
また、精神科医の宮地尚子は、「性暴力被害の場合、加害者と接する時間が長く、距離が近く(というより密着され、侵入され、距離がゼロかマイナスになり)、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚その他の身体感覚すべて侵襲される」ために、「PTSD発症の可能性に影響する最も重要な因子」である「外傷的事件の暴露の強さ、期間、および接近度」を全部そろえていると指摘する[20]。
[20] 宮地尚子「性暴力と PTSD」『ジュリスト』 1237 号(2003) 165 頁。 |
さらに、「魂に悪いのは性暴力」で、「人間の中から生まれてくる生きるための力、泉のように自然にわき上がってくるエネルギー、内側からの光、自分はありのままで世界に受け入れられているという感覚、のようなもの」が「魂」で、それがなくなることで、「基本的人権」や「身体の統一性」が失われるとする[21]。
[21] 宮地・前掲注[20]2頁。 |
このように、生きる力を奪い、心的外傷を生じさせる「同意のない性行為」を、犯罪として「厳正に処罰」すること、それを可能とする刑罰法規に改正するとともに、当該行為が犯罪として評価される過程を、犯罪被害者のリアリティを反映した形で行うことが必要である。 |
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検察官や裁判官が被害者のリアリティについて理解を深めることは重要であるが、それだけでは十分と言えない。 |
「暴行又は脅迫」ならびに「抗拒不能」という要件の存在自体が、「性犯罪に直面した被害者の心理」を無視しているからである。 |
(参考。刑法の性犯罪に関する規定)
<現在>
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●2020年9月29日 日本学術会議
被害者の被害時の行動に関して「凍り付き現象」[24]がみられることは広く知られている。
[24] 凍り付き症候群については、田中嘉寿子「性犯罪の被害者の供述の信用性に関するあるべき経験則について――防災心理学の知見の応用:正常性バイアスと凍り付き症候群」『甲南法務研究』 11 号(2015) 65 頁以下。 |
「凍り付いた」被害者は、逃げることも、助けを求めることも、抵抗することもできない。 |
その被害者に対して、「暴行又は脅迫」への抵抗を求めることは、被害者の実感からは遠い[25]。
[25] 性犯罪被害者が求めているのは、被害者のリアリティや実感に適合する形の法改正である。「暴行・脅迫」要件を残すことによって、裁判官の判断に幅がでてくることで、性差別的な「経験則」が入り込む余地を増大させてしまう。 |
また、性暴力の影響は長期間に及ぶ。 |
性暴力それ自体が与えるトラウマに加えて、被害者は「だれにも言えない」「相談できない」ために、その被害はだれとも共有化されず、被害者は癒されることがない。 |
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時事通信の記事を参照します。
(2020年1月27日 時事通信「性犯罪被害者が講演 刑事裁判官の研究会で―心理知る目的・最高裁」より、引用。)
<一部分を引用>
●2020年1月27日 時事通信
最高裁の司法研修所で昨年(2019年)10月に行われた刑事裁判官の研究会で、性犯罪の被害者を講師に招き講演を開いていたことが(2020年1月)25日、分かった。 |
性犯罪被害者の心理について知見を深める目的で実施され、被害者本人を招いたのは初めてとみられるという。 |
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性犯罪被害を受けた女性と、裁判で代理人を務めた上谷さくら弁護士が講演した。 |
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上谷弁護士は「性犯罪では、山のように不起訴事案があり、警察に行けない人さえいる。裁判所にたどり着くのはごくわずかだということを裁判官に分かってほしい」と話した。 |
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2009年から、裁判員裁判がはじまりました。
当該裁判の対象は、裁判員法が定めている重大な犯罪です。
裁判員裁判は第1審でのみおこなわれます。
20歳以上の国民から選ばれた6名の裁判員と3名の裁判官が、事件の審理をおこないます。
なぜ素人がプロの裁判官とともに事件を裁くのでしょうか。
理由のひとつとして、裁判官には常識がない、ということがあげられています。
外界との交わりがすくない裁判官は時折、国民の常識と乖離する判決を出します。
そこで取り入れられたのが裁判員裁判です。
国民の常識が判決に反映されることを期待されています。
(再掲。時事通信)
「刑事裁判官の研究会で、性犯罪の被害者を講師に招き講演」
こうした試みも有益であるとは思います。
日本学術会議は、これだけでは不十分、と考えています。
(再掲。日本学術会議)
「検察官や裁判官が被害者のリアリティについて理解を深めることは重要であるが、それだけでは十分と言えない」
「『暴行・脅迫』要件を残すことによって、裁判官の判断に幅がでてくることで、性差別的な『経験則』が入り込む余地を増大させてしまう」
「性犯罪被害者が求めているのは、被害者のリアリティや実感に適合する形の法改正である」
性被害者を救うためには、「暴行・脅迫」要件の撤廃、しか術(すべ)がないようです。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2020年9月29日>
世間に顔だしてないから忘れられがちだけど、 私AV強要の件以来、週刊文春の件以来まだまだずっと戦ってるから。 |
日本学術会議は、「暴行・脅迫」要件の撤廃を提言しています。
この提言はかなりの追い風になると思われます。
性犯罪の被害者の方々は呻吟されています。
一日も早い刑法の改正が望まれます。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
<2018年11月1日>
昨日から久しぶりの体調不良 あの頃の感覚をハッキリ思い出した。よくこんなストレスに何年も耐えてたなぁ。一般人に戻った私にはあの頃の気力も体力も残ってない。
<2018年11月1日>
まぁあの頃は常に死と比較して生きてきたから尋常ではなかったのだろうな。『死ぬくらいならAV出よう』『行先無くなったら人生止めればいいや』何をするにもこれが念頭にありました。そりゃAV出来た訳だわ。
(哲学者のウィトゲンシュタイン)
「絶望に終わりはない。自殺もそれを終わらせることはない。人が奮起して絶望を終わらせない限りは」
(明日のブログへつづく)
香西咲さんを勝手に応援するサイトへ
>>「暴行・脅迫」要件の撤廃を提言しています。
私も大賛成ですね、ただ左翼系弁護士は反対するでしょうね。
彼等は偽善者で、基本的に犯罪者の肩を持ちます。
あと、裁判員制度は私も賛成の立場ですが、既得権益の法曹人からは
評判が悪い!司法試験を合格していない者に法曹の世界に来るのに否定的です。
あと、一審で裁判員制度でいい判決が出たとしても二審でひっくり返される場合が
多いですよね。