内閣府の専門調査会は以前、AV出演強要に関して、有識者から聞取りをおこなったことがあります。
□2016年9月12日 第83回女性に対する暴力に関する専門調査会
・議題「アダルトビデオへの出演強要に関する現状及び課題等について」
参考人のひとりとして招かれたのが、琉球大学の矢野恵美教授です。
(参考。当ブログ)
・2019年9月11日
・2019年9月12日
・2019年9月13日
2016年9月12日 第83回女性に対する暴力に関する専門調査会
矢野恵美 琉球大学 大学院法務研究科 教授 |
本日、ふと、矢野恵美教授のことばを思い出しました。
(2016年9月12日 第83回女性に対する暴力に関する専門調査会「議事録」より、引用。)
<26ページ>
●2016年9月12日 矢野恵美 琉球大学 大学院法務研究科 教授
ただ、現在は強姦罪と強制わいせつ罪が一応基本になっておりますので、実際に現場で暴力が振るわれて、これが使えるかということですが、強姦罪における暴行、脅迫というのは 「被害者の抵抗を著しく困難にする程度」 という、割と強い要件が設けられているために、強要されて嫌々出演していても、現場で強い暴行・脅迫これに当たらないかのように見えてしまうという問題が実際にあるのではないかと思います。 |
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(再掲。矢野恵美 教授)
「強要されて嫌々出演していても、現場で強い暴行・脅迫これに当たらないかのように見えてしまうという問題が実際にあるのではないかと思います」
<26ページ>
●2016年9月12日 矢野恵美 琉球大学 大学院法務研究科 教授
ただ、判例を見ますと、脅迫と姦淫行為強姦罪は男性器の女性器への挿入だけに現在は限定されておりますので、それを姦淫と呼びますが、脅迫と姦淫の間の期間が2週間あったというケースで、実際に性行為に及んだときには被害者は同意していたという形でも、強姦罪を認めた判例もございます。 |
(再掲。矢野恵美 教授)
「脅迫と姦淫の間の期間が2週間あった」
「実際に性行為に及んだときには被害者は同意していた」
「強姦罪を認めた判例もございます」
これはどのような裁判なのでしょうか。
矢野恵美教授が当日配布した資料のなかに出典が書かれていました。
「脅迫と姦淫の間の期間が長いケースもある(高松高判昭和47・9・29)」
とあります。
これだけです。
高松高裁が出した判決のようです。
判決文が気になりました。
裁判所のホームページのなかに、裁判例情報というコーナーがあります。
過去の判例を検索することができます。
残念ながらデータベース化されているのはほんの一部です。
有用ではありません。
とりあえず、裁判年月日のところに、
「昭和47年9月29日」
と入れて、検索してみました。
1件、ヒットしました。
<検索結果>
「高裁判例」「 昭和46(う)315 恐喝、傷害、強姦被告事件」「昭和47年9月29日 高松高等裁判所」「全文」
裁判所のデータベースのなかに当該裁判の判決が所蔵されていたようです。
判決文を開きました。
通読しました。
犯行をおこなった男(被告人)は、A、という人物です。
Aは第1審(地裁)で、懲役3年の実刑判決をうけています。
Aは、この判決の破棄をもとめて高松高裁に控訴しました。
ちなみにAは2つの事件の実行者として起訴されています。
本日は1つ目の事件をみてみます。
(昭和47年【1972年】9月29日 高松高等裁判所「判決文」より、引用。)
●昭和47年(1972年)9月29日 高松高等裁判所
「被告人Aは、日用雑貨・食料品などの販売を目的とする株式会社Dの代表取締役である」 |
「昭和40年(1965年)11月5日午後0時30分ごろ、同会社の支店である高知市cd丁目「E」において、同店保安係Fが、代金154円に相当する同店の商品を万引したB(昭和18年8月10日生)を現行犯人として逮捕」
「その幼児2人(3才と2才)とともに同店3階事務室に連行した」 |
「その取調に当り、ぶるぶる震えているBから万引した商品・預金通帳などの所持品を提出させ、氏名・年令・職業・住所などを質して始末書を書かせた」 |
「約2時間にわたつて身上・経歴などの調査をしているうち、劣情を催し、同女を姦淫しようと決意」 |
「『あなたは一ぺんじやない何回も盗みをしちよるろう』」 「『ただじやすませんきに一時金として5,000円出してくれ』」 「『5,000円の金が一ぺんにできざつたら5丁目の警察へ突き出すぞ』」 「『逃げたら警察へ言うぞ』」 「『かくて1週間、長くて1ケ月は入らねばならぬぞ』」 |
「次いで同女の耳元に口を寄せて小さな声で、『a町ぢやつたら水商売をしよるろうが、お金ができんことは判つたが警察へ行くか、身体を張つたら今日のがは許しちやる。1回で5,000円を精算してやる。あんたところはどの道を通つて行くか』」 |
「返事をしぶる同女に対し、さらに何回も『身体を張るか。警察を呼んでもええか』とか『警察を呼んでもええよ』と申し向けて回答を迫り、前記万引の事実を警察へ申告しないことの代償として情交関係を結ぶことを要求した」 |
「Bは、かつてGと婚姻し、前記の2児を儲けた」
「その後右2児を引取つて事実上離婚した後、身体をこわし、生活保護を受けながら2児の養育」 「昭和40年1月ごろからHと同棲を始めた」 「一時金5,000円を工面する資力はなく、幼児2人が階下で泣いており、もし警察に申告されれば処罰を受け幼児2人を残して刑務所に行かねばならないことになるかも判らないと畏怖し困惑」 「被告人Aと情交関係を結ぶのもやむを得ない」 「同被告人に対し、『都合の良い日にお電話をします』と承諾の返事」 「同被告人から同店の電話番号を教えてもらい、ようやく帰宅を許された」 |
Bは、帰宅後、同被告人の前記言動に思い悩み、同被告人との情交を拒絶するよい方法はなかろうかと案じ、これを顔見知りの警察官Iに相談しようと考え、その翌日高知警察署の受付を訪れた」
「あいにく同人がいなかつたのでそのまま帰宅した」 |
「被告人Aに任所を知られており、また、同被告人から同被告人の要求に応じないで逃げれば警察に申告すると言われていたので、同被告人が自己の万引の事実を警察へ申告して今日にも警察官が家に来るのではなかろうか」 「そうなると内縁の夫Hにも万引の事実が知れ、また幼児2人を残して刑務所に入らなければならない」 「びくびくした毎日を送つているうち、一時金を都合するあてもなく困り果てた」 |
「遂に被告人Aに身体を許して精神的苦痛から抜け出し同被告人からのがれようと意を決し」
「同月19日ごろ、同被告人に対し電話で身体を許すという趣旨の連絡をした」 「同被告人から『これから行くが、どこがええか』と言われ、自己の居住していたa町内にある旅館『C荘』に来てもらいたい旨答えた」 「被告人Aは、同日午後1時30分ごろ、前記C荘前附近で待つていたBを伴つて同荘2階客室に入り、女中に部屋代を支払つた後、Bが同被告人の前記言動によつて意のままになるのに乗じ、同室ベツトにおいて、同女を姦淫した」 |
「Bは、右姦淫終了後、被告人Aから『9』のつく日には前記支店に出勤しているから電話をしてくれと言われたが、それに対して明確な回答をしないまま同被告人より先に同旅館から立ち去り、同被告人に身体を許したことによつてすべてが解決したものと考え、その後同被告人とは何らの交渉もなかつた」 |
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●昭和47年(1972年)9月29日 高松高等裁判所
「被告人Aは、前記支店3階事務室において、Bの取調に当たつていた際、同女を姦淫しようと決意し、同女に対して前記認定のような内容の害悪を告知したことが明らかである」 |
「弁護人らは、右の脅迫は強姦罪における被害者の反抗を抑圧するに足りないものである旨主張する」 |
「およそ、刑法177七条前段の強姦罪にいわゆる脅迫は、被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることをもつて足りる(最高裁判所昭和24年5月10日判決、刑集3巻6号711頁。)と解すべきである」 |
「前記事実によると、被告人Aは、Bがぶるぶる震えながら万引の事実を素直に認めて謝罪し、万引した商品代金154円もその場で支払つたので、同女を万引の初犯者と認め警察へ申告する意思がなかつた(この事実は被告人Aの当公判廷における供述によつても明らかである)」
「同女の弱身に付け込み、あたかも警察へ申告するような態度で、同女に対して、前記のとおり、『万引は1回でないだろう、一時金として5,000円出せ、一時金を出さなければ警察へ申告する、警察へ申告すれば、短かくて1週間、長ければ1ケ月入らなければならない、警察へ行くか、身体を許すか』と執拗に申し向け、同女に二者択一を迫り、もし自己に身体を許さなければ警察に申告することは必至であるような態度を示した」 「その結果、同女をして刑事処分を受け同女の身体の自由・名誉などが害されるかもしれないと畏怖させた」 「しかも、その申告をするかどうかは、いつに被告人Aの意思にかかつていることを示していることが認められる」 「これに加えて、前記害悪の告知された際の状況、Bの年令・経歴などをも合わせ考えると、前記脅迫は優にBの抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであつたと認めるのが相当である」 |
(再掲。矢野恵美 教授)
「脅迫と姦淫の間の期間が2週間あった」
「実際に性行為に及んだときには被害者は同意していた」
「強姦罪を認めた判例もございます」
Aが強姦に及ぶまでには、2週間の間があります。
この部分について裁判所はどのような判断をしたのでしょうか。
つづきは明日のブログでご紹介をさせていただきます。
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警察はAV業界人を野放しにしているわけではないようです。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2017年12月6日>
いつか笑って語れる日が来ますように… #AV強要 #人身売買 #severeproblemofjapan #humantrafficking #japan https://www.instagram.com/p/BcWzMXrFrhV/ |
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AV出演強要と強姦(強制性交)は同義です。
新法ができる前にAV業界人を強姦罪(強制性交罪)で引っ捕えること切望します。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのでではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
<2018年3月19日>
今こうして離れてみて、私個人的には異常な世界だと思いますし、そんな趣味も無ければ関わりたくない世界でした。
全ては #AV強要 から立て直す為に耐えてきた事です。#青木亮 の事務所では占い師やプルデンシャルにお金を使わされており、外界とも遮断され誰にも頼れずボロボロでしたので。
<2018年11月14日>
コレです!私が #キュンクリエイト ( #アットハニーズ )辞めた時に独立してまで続けた理由。あの頃は弁護士も世間も #AV強要 に無関心で誰も助けてくれなかった。だから我慢してAV業界に残って力をつけて…#AV強要 が認知されるのを待ってた。反撃に出るタイミングを見計らっていました。
(明日のブログへつづく)
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