昨日、日本被害者学会の理事をされている諸澤英道さんの言説についてふれました。
6月26日の第93回女性に対する暴力に関する専門調査会でなされた発言です。
(参考。当ブログ)
・2018年8月15日
同専門調査会の当日の議題は、セクシャルハラスメント問題でした。
諸澤さんはこの件だけでなく、そのほかの諸問題についても論じました。
以下のくだりは瞠目(どうもく)させられました。
(2018年6月26日 第93回女性に対する暴力に関する専門調査会「議事録」より、引用。)
<21ページ>
●諸澤英道 日本被害者学会理事(元常盤大学学長)
2013年から2014年にかけて宮崎のマッサージ店における強姦事件があって、法律の専門家は大変注目したわけですし、私もたびたび記者の皆さんから意見を聞かれたのですけれども、こういうことです。 |
マッサージ店の施術室の中で、店長が客で来た女性に対してわいせつな行為をする。 そこまではよくあるのですけれども、ビデオに撮影しておさめておいたというのです。 |
この撮影物は今の日本だと法律にひっかからないのです。 |
押収したときには、それが発見されなかった。 裁判になった後、被告側の弁護士が、こういう映像があって、それをあなたに返すから訴えを取り下げろと要求したということから、そういうものが存在することがわかり、大きな法律論争になりました。 |
当時、強姦罪は、申告罪でした。
被害者がうったえなければ事件化されません。
犯人側は、ビデオとの交換を条件にして、うったえの取り下げをもとめたのです。
「それをあなたに返すから訴えを取り下げろ」
以前、遠藤智子さんがこの事件に言及されました。
遠藤さんは、一般社団法人社会的包摂サポートセンターの事務局長です。
(参考。当ブログ)
・2017年9月7日
・2017年9月12日
(2016年7月26日 渋谷のラジオ「AV強要被害の実態・手口と被害を防ぐ方法、私たちにできること」より、引用。※音声の文字化は、筆者。)
●遠藤智子 一般社団法人 社会的包摂サポートセンター 事務局長
うーん。 わたしたちもね、DVとかレイプとかの被害者のかたのね、裁判でも、加害の側で、宮崎の事件なんか有名ですけど、整体師のかたが整体のところでレイプをするんだけれども、そのレイプをビデオを撮っておく。 その撮っておいたビデオについて、(加害者の)弁護士が、被害者の弁護士と、 「それは弁護士倫理としてどうなんですか?」 |
●諸澤英道 日本被害者学会理事(元常盤大学学長)
宮崎県の弁護士会は、これは違法といいますか、押収できないということを堂々と宣言しています。 |
特定非営利活動法人しあわせなみだは、宮崎県の当該弁護士に対して懲戒を申し立てました。
(2015年3月19日 日経ウーマンオンライン「宮崎強姦ビデオ事件に1万5000の「ノー」~30代働く女性が求める『本当に味方になる法律』とは?」より、引用。改行を施しています。)
●特定非営利活動法人しあわせなみだ 中野宏美 代表
はい。 私は性暴力被害者の支援に関わってきました。 その経験から、加害者側弁護士が告訴を取り下げるように交渉することが「珍しくない」ことは知っていますが、今回のようにビデオを使って交渉するというのを聞いたのは初めてで、これはひどすぎる、と思いました。 加害者側弁護士の懲戒と、性犯罪被害者が本当に救われるための制度構築を要望するため、署名を集めようと考えたのも、そのためです。 |
(2016年3月24日 Happy Tear 中野宏美のブログ「宮崎強姦ビデオ事件弁護士は懲戒されないことになりました」より引用。)
●特定非営利活動法人しあわせなみだ 中野宏美 代表
昨年(2015年)1月、宮崎県で、性犯罪裁判加害者側弁護士が、被害時の盗撮ビデオの処分と引き換えに示談を求める事件が起こりました。 しあわせなみだが呼びかけ人となり、加害者側弁護士の懲戒請求と、被害者に対する不当な圧力をなくす仕組みの構築を求めた署名は、最終的には約20,000筆近い賛同を得ることができました。 本日(2016年3月24日)宮崎県弁護士会から「弁護士を懲戒しない」という結果通知を受け取りました。 |
●諸澤英道 日本被害者学会理事(元常盤大学学長)
私はおかしいと思っているのです。 日本では、プライバシー権もないし、肖像権もないに等しいのです。 ですから、撮影する行為は違法だけれども、そのデータ、映像は押収の対象にならない。 これは違法ではないのです。 |
「撮影する行為は違法」
「そのデータ、映像は押収の対象にならない」
これはあきらかに、法の欠缺(けんけつ)です。
適用すべき法の規定が欠けています。
●諸澤英道 日本被害者学会理事(元常盤大学学長)
しかも、日本の解釈だと、これは撮影した人のものなのです。 盗撮もそうです。 |
あまりにも不条理です。
●諸澤英道 日本被害者学会理事(元常盤大学学長)
犯罪に寄与したものということで、いろいろ警察は苦労して、あるいは説明をして押収しようとするのですけれども、弁護士がつくと厄介な問題になってくる。 基本的には、これは違法に撮影しても撮影した人のものというのが今の日本の基本的な考え方です。 |
ですから、法律家はここを変えなければいけない。 |
違法に撮影したものは全て撮影者ではなくて、それは違法なのだから、没収、押収等ができるというような条文があればいいのですけれども、そこは現場の運用によって両方のケースが出てきてしまっているということです。 |
——————————————————–
ちなみに上述の宮崎の事件では、まず、ビデオの提出命令の是非が争われました。
(2015年11月25日 産経新聞 「強姦事件ビデオ提出命令が確定 被告の特別抗告棄却 宮崎」より、引用。改行を施しています。)
●産経新聞
強姦罪などに問われた宮崎市のマッサージ店経営者の弁護人が、告訴を取り下げれば当時の様子を盗撮したビデオを処分すると被害女性側に持ち掛けていた問題で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は24日までに、ビデオの原本4本の提出命令を不服とした経営者側の特別抗告を棄却する決定をした。 (2015年11月)19日付。 宮崎地裁の提出命令が確定した。 (中略。) 経営者は、マッサージ店の女性客ら5人に暴行したとして起訴された。 公判は現在も続いており、経営者は合意があったとして無罪を主張している。 |
ビデオを提出させた件につきましては、勝訴しました。
強姦の有無とビデオの没収に関しては、このあとも裁判がつづきます。
(2018年6月28日 サンスポ「盗撮ビデオ没収確定へ 宮崎のマッサージ店、女性客暴行」より、引用。改行を施しています。)
●サンスポ
最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は、経営していたオイルマッサージ店の女性客ら5人に対する強姦や強制わいせつなどの罪に問われた宮崎市の土屋和朗被告(48)の上告を棄却する決定をした。 (2018年6月)26日付。 懲役11年と、被告が暴行の様子を盗撮したビデオ原本の没収を言い渡した一、二審判決が確定する。 (後略。) |
(再掲。諸澤英道さん)
「撮影する行為は違法だけれども、そのデータ、映像は押収の対象にならない」
「違法に撮影しても撮影した人のものというのが今の日本の基本的な考え方」
最高裁まで争って、ようやくビデオの没収が確定しました。
途中、被害者の女性は、手記を公表しています。
一部を抜粋します。
(2015年1月21日 毎日新聞「宮崎強姦ビデオ 被害女性が公表した手記全文」より、引用。)
●被害者の女性
警察の方からは、マッサージ店から私のビデオは押収されなかったので、撮影していなかったのだろうと説明され、安心していましたので、被告人がビデオを撮影していて、それが今弁護人の手元にあるということを知らされた時は、自分の人生が終わったような恐怖を覚えました。 |
私に返して当然の盗撮したビデオを処分することが私のメリットであるかのような説明も納得できるものではありませんでしたし、お金で解決するものではありませんが、0円という提案も私を被害者としてすら認めないというように感じられました。 |
起訴された後、法廷で証言をしなければならなくなり、そのビデオに写されているのが自分なのかを確認しなければなりませんでしたが、自分がレイプされている映像を見て、家に帰りつくと猛烈な頭痛に襲われました。 |
法廷を出た後、肩の荷がおりたようなスッキリとした気持ちになり、少しだけ前の自分を取り戻せたような感覚になりましたが、寝る前に凄く嫌な映像の数々がフラッシュバックしてきて苦しみました。 |
被告人には、当然厳罰を求めますが、早く罪を認めて反省をしてほしいと思いますし、一刻も早く盗撮したビデオと全てのデータを私や他の被害者の方に返してほしいです。 |
——————————————————–
「一刻も早く盗撮したビデオと全てのデータを私や他の被害者の方に返してほしいです」
香西咲さんの思いも同じであると思惟(しい)します。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2017年11月29日>
今迄の契約書、洗脳ノート(ビジョンブック)、メモ、手帖、音声、全てファイリングして作品やゲームに使われている素材が全て削除される迄保管します。 DMMがSIAに加わった事でネット上の写真削除等して貰えないのでしょうか? #AV強要 |
●香西咲さん
<2017年12月13日>
契約書も無く撮影された素材を何故これから私が全てを掘り下げて削除申請しないといけないのでしょうか? メーカーは自発的に削除するのが道理ではないのですか? #MeToo #helpme #アットハニーズAV出演強要 #青木亮にAV強要を受けて苦しむ被害者 #大樹総研 #人身売買 #HumanTrafficking |
●香西咲さん
<2017年12月26日>
存じ上げております。 その姿勢を貫く限り強要問題は国に頼る以外に術はないと思うんです。 削除も然り。現状、削除と言っても面画面から作品を下ろしただけで、撮影素材そのものの削除はしてはくれません。 |
●香西咲さん
<2018年2月1日>
やはり販売チャネルだけではなく大元の撮影された素材自体を削除して頂かないと信用出来ませんね。 素材がある限りは、 しれっと総集編にも盛り込まれる事は容易に想像がつきます。 |
●香西咲さん
<2018年2月8日>
『適正』ってなんですか?
契約書も全て破棄して一方的に素材を使い回すメーカーは『適正』ですか? メイクルームとシャワー以外は監視カメラを回しているメーカーは『適正』ですか? 『適正』ってなんですか? |
●香西咲さん
<2018年2月19日>
WILLが処分した契約書類の様に 該当作品も素材ごと消して頂けますよう、 #AV強要 加害者の #青木亮 さんご協力をお願い致します。 |
●香西咲さん
<2018年2月21日>
#DMM #WILL は私を #AV強要 した際の契約書類は全て破棄したそうです。 なのに素材は勝手に使われています。体裁上、削除したのはDMM画面上だけで素材の削除には応じません。 #WILL #DMM 加害者 #青木亮 #MUTEKI プロデューサー #杉浦右近 #丸山道央 |
●香西咲さん
<2018年4月17日>
更には撮影素材を使い回し、タイトルを変えて複数作品発売している模様です。 主演は私の様ですが、当の本人はこの作品が発売されている事を今日初めて目にした次第です。 |
——————————————————–
政府はいま、出演強要に関する法律をつくっています。
(2018年6月12日 参議院 法務委員会より。)
(※参考。当ブログ)
●2018年6月12日 上川陽子 法務大臣
(出演強要は)犯罪である、というふうにも思っているところでもございます。 |
●2018年6月12日 上川陽子 法務大臣
このことにつきまして、法的対策もふくめてしっかりと検討し、そして実現してまいりたいというふうに思っております。 |
(再掲。香西咲さん)
「現状、削除と言っても面画面から作品を下ろしただけで、撮影素材そのものの削除はしてはくれません」
新法では、「素材」の削除についても明文化がなされるものと考えます。
(2018年3月23日 参議院 法務委員会より。)
(※参考。当ブログ)
●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「すみやかに削除する、これを組織化するということがわたし、どうしても必要だと思うんですね」
●2018年3月23日 上川陽子 法務大臣
野田大臣、また関係省庁ともしっかりと連携をし、一丸となった対策に努めてまいりたいというふうに思っております。 |
(再掲。諸澤英道さん)
「撮影する行為は違法だけれども、そのデータ、映像は押収の対象にならない」
「違法に撮影しても撮影した人のものというのが今の日本の基本的な考え方」
新法の制定がまたれます。
香西咲さんを煩わせている「素材」は、かならず没収となります。
——————————————————–
■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのでではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
(明日のブログへつづく)
香西咲さんを勝手に応援するサイトへ