あいかわらず出演強要問題に関する話題が喧(かまびす)しい(騒がしい)です。
(2017年2月9日 毎日新聞「AV問題:搾取される“女優” 支援団体に聞く・下」より、引用。)
●金尻カズナ PAPS相談員
私たちも、相談が増えて“火の車”のような状況になってきていますが、当初は相談してくる人もいなかったわけで、ハードルが下がって相談できるような土壌ができたのはいいことだと思います。 |
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政府も相談体制を強化しています。
(※下図は内閣府のサイトより、引用。)
種々の機関が被害者の相談におうじています。
そのなかであまりよく知られていない存在があります。
婦人相談所です。
(再掲。婦人相談所)
「女性が抱える様々な問題(DV、ストーカー、人身取引等)に関する相談を受け付けます。必要に応じて一時保護や関係機関の紹介等を行います」
婦人相談所とはどのような機関なのでしょうか。
内閣府のホームページをみてみます。
(内閣府)
●婦人相談所とは
売春防止法第34条に基づき、各都道府県に必ず1つ設置されています。
(参考。売春防止法) □第34条 都道府県は、婦人相談所を設置しなければならない。 2 地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)は、婦人相談所を設置することができる。 3 婦人相談所は、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子(以下「要保護女子」という。)の保護更生に関する事項について、主として次に掲げる業務を行うものとする。 4 婦人相談所に、所長その他所要の職員を置く。 5 婦人相談所には、要保護女子を一時保護する施設を設けなければならない。 6 前各項に定めるもののほか、婦人相談所に関し必要な事項は、政令で定める。 |
(内閣府)
元々は売春を行うおそれのある女子の相談、指導、一時保護等を行う施設でしたが、婦人保護事業の中で女性に関する様々な相談に応じる中で配偶者間の暴力に関しても配偶者暴力防止法成立前から相談・保護に取り組んできました。
平成13年4月に成立した配偶者暴力防止法により、配偶者暴力相談支援センターの機能を担う施設の一つとして位置付けられました。
なお、配偶者暴力相談支援センターが行う業務のうち、一時保護については、婦人相談所が自ら行うか、婦人相談所から一定の基準を満たす者に委託して行うこととなります。
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現在はDVに対する対応もおこなっているようです。
この婦人相談所と出演強要被害がどのようにむすびつくのでしょう。
以前、PAPSの宮本節子さんと中村淳彦さんが出演強要問題について対談をおこないました。
□2017年2月10日 幻冬舎plus「『AV強要問題』はいかにして始まったのか」(前編)
□2017年2月15日 幻冬舎plus「AV女優のセックス映像は永久に残り続けていいのか」(後編)
このなかで宮本さんが、PAPSの実相を語っています。
(前編より、引用。改行を施しています。)
●宮本節子 PAPS世話人
(略)私たちの団体の中心は、婦人保護施設の職員さんたちです。 私はソーシャルワーカーですけれども、中心になって動いているのは女性支援の職員です。 |
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「婦人保護施設」
ふたたび内閣府のサイトを参照します。
(内閣府)
●婦人保護施設とは
売春防止法第36条により都道府県や社会福祉法人などが設置しています。
(参考。売春防止法) □第36条 都道府県は、要保護女子を収容保護するための施設(以下「婦人保護施設」という。)を設置することができる。 |
(内閣府)
もともとは売春を行うおそれのある女子を収容保護する施設でしたが、現在では、家庭環境の破綻や生活の困窮など、様々な事情により社会生活を営むうえで困難な問題を抱えている女性も保護の対象としています。
平成13年4月に成立した配偶者暴力防止法により、婦人保護施設が配偶者からの暴力の被害者の保護を行うことができることが明確化されました。
婦人相談所を通じて保護が行われます。
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●中村淳彦さん(ノンフィクション作家)
AV業界では、婦人保護施設職員を中心とした団体を総じて“女性団体”“フェミニスト団体”などと呼んでいます。 AVやポルノに対する反対や抗議は、これまでもたまに起こっていましたが、婦人保護施設の職員たちが中心になっていることはあまり知られていません。 |
●宮本節子 PAPS世話人
(前略。) 利用者さんたちの状況をみると、1956年に法律(売春防止法)ができたとき以上に、女性の性の商品化は進んでいます。 その現状を職員たちは目の当たりにしているわけです。 そこには売春だけではなく、ポルノグラフィなどに関連した問題がついてきます。 それに巻き込まれた女性たちが、ボロボロになって婦人保護施設にたどり着く現状があるわけです。 |
●幻冬舎 編集部
各都道府県には売春防止法に基づいた婦人相談所がある。 福祉事務所の相談員やソーシャルワーカーが困窮や生活難、DVなどに苦しむ女性を婦人相談所に紹介して、婦人相談所の措置決定で婦人保護施設に送致する。 |
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□2017年2月10日 幻冬舎plus「『AV強要問題』はいかにして始まったのか」(前編)
□2017年2月15日 幻冬舎plus「AV女優のセックス映像は永久に残り続けていいのか」(後編)
(後編より、引用。改行を施しています。)
●中村淳彦さん(ノンフィクション作家)
現状のアダルトビデオは、どうしても出演女性は使い捨てという構造になっている。 AV女優は情報を遮断されているし、本人が希望しても長く続けることができない。 技術やキャリアを需要が認めない部分もあります。 |
●宮本節子 PAPS世話人
その使い捨てられた一部の女性たちが婦人保護施設に流れてくる。 だから職員たちが怒る。 本当に社会の男女の非対称性が象徴的にでている。 本来はもっと早く社会問題化していかなければなららなかったと思います。 なのに、それを知る人たちが誰も今まで発言しなかった。 あなたも、そうですよね? だから私みたいななにも知らない人間が、怖いもの知らずで発言をしたわけです。 |
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PSPSと、公的機関の婦人相談所は、密接に関係しているということがわかります。
(2017年2月9日 毎日新聞「AV問題:搾取される“女優” 支援団体に聞く・下」より、引用。改行を施しています。)
●宮本節子 PAPS世話人
金尻さんは「明日撮影させられそうで、逃げたいんです」という時にも駆け付けて救出するし、真夜中のメールや電話への対応も一人で引き受けています。 シフトを組めるほどの人数がいないからです。 「いつも同じ人が受ける」というのは相談者にとっていいことですが、支援者の彼女にとってはすごく過酷な生活なので、つぶれないうちに対策を考えなくてはいけません。 |
●宮本節子 PAPS世話人
全国の婦人相談所などにも(相談員の)人材はいるのですが、AVの被害に対応するノウハウの蓄積が足りません。 金尻さんも一朝一夕に今の力をつけたわけではなく、相談者に学ばせてもらって成長できたわけですから、そういった公的機関の人をどう育成していくかを行政には真剣に考えてもらいたいです。 |
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上述の発言は、昨年の2月9日の毎日新聞に掲載されました。
同年の3月21日のことです。
第1回関係府省対策会議が開催されました。
この席で厚生労働省の局長が、婦人相談所についてふれました。
(2017年3月21日 第1回関係府省対策会議「議事録」より、引用。)
●厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
(前略。) 1点目は、関係機関、民間支援団体等と連携した適切な相談・ 支援体制を整備するということでございまして、資料4にございますように、都道府県単位の婦人相談所あるいは地域の児童相談所などございますけれども、この相談機関などが他機関とも連携を図りながら、必要な方策として、例えば関係の ガイドラインなどの 改訂を考えていきたいと思っております。 また、研修の機会などを通じまして、この相談の任に当たる 方々の スキルアップも図ってまいりたいと思っております。 (後略。) |
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第2回関係府省対策会議でも、婦人相談所に関する言及がありました。
(2017年3月31日 第2回関係府省対策会議「議事録」より、引用。)
●厚生労働省大臣官房審議官
厚生労働省でございます。 まず、相談窓口の周知といたしまして、各婦人相談所におきましても、こうした問題による性暴力被害に関する御相談を受けているということについて、厚生労働省及び各都道府県のホームページ、また、若い方がアクセスしやすいということでフェイスブックなども利用しながら 周知をしていきたいと考えております。 また、相談に当たりましては、関係機関、 民間団体と連携を図りながら、適切に対応していきますように、その対応方法につきまして、婦人相談所に対するガイドラインを直ちに改訂いたしまして徹底していきたいと考えております。 |
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同日、厚生労働省は、全国の婦人保護事業主管部(局)長へ通達を発しました。
(「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JK ビジネス」問題等に関する緊急対策について」より、引用。)
●厚生労働省
注意喚起を図るための広報サイト(別紙3参照)を内閣府が新設することとしており、主な相談窓口の一つとして、各都道府県の婦人相談所も含まれている。 |
(略)、各都道府県等のホームページ等を活用して、婦人相談所においていわゆるアダルトビデオ出演強要や「JK ビジネス」による性暴力被害に関する相談を受け付けている旨の周知をお願いする。 |
(略)、関係機関や民間支援団体と連携を図りながら適切に対応していただくよう、改めて徹底をお願いする。 |
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このあと、各婦人相談所のホームページに、出演強要問題をとりあつかっている旨の文章が掲載されました。
いくつかをみてみます。
(例)
●岡山県
女性相談所は、心身を傷つけられ、人権を侵害されるなど、複雑で深刻化する現代の女性の様々な問題に対して、相談・保護・自立支援など専門的支援を行うことを目的とした県の行政機関です。 女性相談所は、「売春防止法」に基づき設置され、その後、複雑多様化する社会環境の変化に伴い徐々に支援の対象を拡大し、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に基づく「配偶者暴力相談支援センター」としてDV被害者支援も行っています。 また、「人身取引対策行動計画」に基づく人身取引被害者の保護業務、「ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律」に対応したストーカー被害者の支援も行っています。 さらに、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する支援も行っています。 |
●佐賀県
こんなときはご相談ください
・家庭内の不和やいざこざがあるとき |
●山梨県
ひとりで悩まないで、まず相談を! 例えばこんなとき ・家庭内の問題で悩んでいるとき |
●岩手県
このような時ご相談ください。
1.配偶者や恋人などからの様々な暴力(身体的・精神的・性的暴力)に悩んでいるとき。 |
●大阪府
主な業務内容
・配偶者からの暴力被害者からの相談。・恋人からの暴力・ストーカー被害の相談、夫婦や家庭内のトラブル・人間関係、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題.『JKビジネス』問題などの女性からのあらゆる相談。 |
●福島県
女性のための相談支援センターでは、女性が抱えるさまざまな問題の解決をお手伝いします。 たとえばこんなとき・・・ ・夫や恋人からの暴力(DV)で悩んでいるとき 秘密は固く守られます。ひとりで悩まないで、安心してご相談ください。 |
●茨城県
配偶者や交際相手などからの暴力 ストーカー被害・売春・デリヘル・出会い系サイト・援助交際 離婚・男女問題・デートDV 家庭の不和やいざこざ・人間関係 AV出演強要・JKビジネス など誰かに悩みをきいてほしいとき 専門の女性相談員が相談を受けています。 |
これらは、ほんの一例です。
昨年の5月19日に策定された「今後の対策」でも、婦人相談所のことが明記されています。
(2017年5月19日 第3回関係府省対策会議「今後の対策」より、引用。)
●厚生労働省
婦人相談員相談・支援指針において、アダルトビデオ出演強要や「JKビジネス」による性的な暴力の被害者からの相談について、関係機関や民間支援団体と連携を図りながら適切に対応するよう明記し、婦人相談所等に対し周知を図る。
また、全国婦人相談所長及び婦人保護主管係長研究協議会等において、性暴力被害者の支援を行っている民間支援団体の関係者を講師等に招き、相談・支援に関する研修等を実施する。 |
社会の変化に見合った婦人保護事業の在り方についての検討を行うため、婦人相談所等における支援の内容等を中心として実態把握を行うとともに、特に若年女性に対する民間団体による支援の実態についても把握する。 (厚生労働省)〔平成29年度~〕 |
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先述しましたとおり、性的搾取に遭った女性は以下の流れで保護されます。
●婦人相談所 ↓ ●婦人保護施設 |
(再掲。厚生労働省の通達) 「主な相談窓口の一つとして、各都道府県の婦人相談所も含まれている」 (再掲。厚生労働省大臣官房審議官) (再掲。宮本節子PAPS世話人) |
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PAPSの方々は間近で被害者と接しています。
(再掲。宮本節子PAPS世話人)
(前略。) 利用者さんたちの状況をみると、1956年に法律(売春防止法)ができたとき以上に、女性の性の商品化は進んでいます。 その現状を職員たちは目の当たりにしているわけです。 そこには売春だけではなく、ポルノグラフィなどに関連した問題がついてきます。 それに巻き込まれた女性たちが、ボロボロになって婦人保護施設にたどり着く現状があるわけです。 |
透徹した視座で被害と向かい合っています。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2018年4月26日>
結局「 #AV強要問題 」っていうある意味旬の問題に対し 良心的な機関も、ハイエナみたいな団体も、メディアも、寄ってたかって取り上げて喰い散らかし、被害者の心は置いてけぼり。 核心まで寄り添ってくれたのはPAPSさん位でした。だから私はこの国が嫌い。 ※私の場合です。他の女性は知りません。 |
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(再掲。香西咲さん)
「被害者の心は置いてけぼり」
PAPSはちがいました。
(再掲。香西咲さん)
「核心まで寄り添ってくれたのはPAPSさん位でした」
最大の賛辞です。
(再掲。宮本節子PAPS世話人)
「女性たちが、ボロボロになって婦人保護施設にたどり着く現状があるわけです」
儒家の孟子(B.C.372年~B.C.289年)によりますと、ひとには惻隠の心がそなわっているといいます。
惻隠の心とは、ひとの不幸を見過ごすことができない気持ちのことです。
もちろん常にあるわけではありません。
ふとあらわれる、とされます。
たとえば、相手が事故等により死の危機に瀕したとき、惻隠の情が湧き出ると言われています。
だれかが地下鉄のホームから落ちた、踏切で身動きがとれない、川でおぼれかかっているなどがそうです。
惻隠の情がつねにある状態のことを「仁」といいます。
PAPSの皆さんは、「仁」を兼ね備えています。
ちなみに香西咲さんも「仁」の持主です。
香西咲さんもまた、多くの女性を救いました。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのでではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
(明日のブログへつづく)
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