昨日、仁比聡平参議院議員が、法務委員会で出演強要問題を質(ただ)しました。
成年年齢の引き下げによって出演強要に関しては未成年者取消権がつかえなくなると。
ますます被害が増大する、と。
(参考。当ブログ)
・2018年6月5日(※質疑、応答の全文を掲載)
政府は3月13日に、成年年齢を18歳に引き下げる民法改正法案を閣議決定しました。
その後、同案を国会へ提出しました。
(2018年3月13日 産経新聞「『成人』を18歳に 民法改正案などを閣議決定」より、引用。改行を施しています。)
●産経新聞
政府は(3月)13日、成人の年齢を20歳から18歳に引き下げることを柱とした民法改正案と、それに関連する22の法律の見直し案などを閣議決定した。
改正されれば民法が制定された明治29年以来、約120年ぶりに成人の年齢が変わる。
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法務省のホームページに民法改正法案が掲載されています。
仁比議員が指摘しているのは、以下のくだりです。
(民法改正案より、引用。)
第4条中「20歳」を「18歳」に改める。
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現行法の第4条をみてみます。
□第4条
・年齢20歳をもって、成年とする。
第5条も確認します。
□第5条
1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。(後略。)
2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
(2018年3月13日 産経新聞「『成人』を18歳に 民法改正案などを閣議決定」より、引用。改行を施しています。)
●産経新聞
また、成人年齢引き下げで、親の同意がない契約を取り消せる権利が認められる年齢も18歳に下がる。
このため、(3月)2日に閣議決定された消費者契約法改正案に「デート商法」や「不安商法」といった若者が被害に遭いやすい悪質商法は、無条件で契約を取り消せる取消権を盛り込んでいる。
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(民法改正案より、引用。)
附則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成34年4月1日から施行する。
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現在、18歳と19歳の女性は、民法第5条によってまもられています。
アルシェプロダクションのホームページをみてみます。
(※下図はアルシェのホームページより、引用。)
20歳未満の女性には手を出さないようです。
ちなみにアルシェは、適格消費者団体の消費者機構日本から是正勧告をうけています。
(2018年4月26日 適格消費者団体 消費者機構日本「申入れ・要請・問合わせ書」より引用。)
●消費者機構日本 申入れ事項(申入れの趣旨)
貴社が消費者に対して、アダルトビデオ出演(以下「AV出演」という。)のためにする契約の勧誘をする際、消費者が契約を断っているにもかかわらず、複数人で囲んで説得をして、物理的にも精神的にも退去を妨害することを直ちにやめること。 |
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(再掲。民法)
□第5条
1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。(後略。)
2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
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平成34年から、新しい民法が施行されます。
成年年齢は18歳からとなります。
以降、18歳と19歳の女性は、未成年者取消権を行使することができなくなります。
仁比議員はこのことを憂いています。
昨日の質疑と応答をふりかえってみます。
(※全文につきましては、昨日の当ブログをご覧ください。)
□2018年6月5日 参議院 法務委員会 (動画 参議院インターネット審議中継) |
(※音声の文字化は、筆者。)
●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「AVの出演強要という契約、これについてはすべて未成年者であれば取り消せると思いますが、いかがですか」
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●小野瀬 厚 法務省 民事局長
「AVの出演契約につきましても、いまのような要件が主張、立証できますれば、原則的に取り消せるということになろうかと思います」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「『わたしはサインをしたかもしれないけれども、そのときに20歳になっていませんでした』ということをしめしさえすれば、全部なかったことにできるというのが、未成年者取消権なわけですね。民事局長、それでいいですね?」
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●小野瀬 厚 法務省 民事局長
「ご指摘のとおりでございます」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「相手が未成年者だということであれば、それは未成年者取消権というのがあるんだから取り消せるよ、と言って励ますっていうのが相談の現場だと思いますが、いかがですか? 」
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●小田部耕治 警察庁 長官官房審議官
「女性が20歳未満であればアダルトビデへの出演を承諾した意思表示を取り消すことができることなどをふまえながら個別的具体的事案におうじまして所要の助言をおこなったり法テラス等の専門機関の紹介をおこなうなどしているところでございます」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「こうしたアダルトビデオへの出演の契約っていうのは、20歳になった直後におこなわれることがきわめて多いです」
「その彼女たちをですね、20歳になるまで囲い込むんですね」
「そういう実態、ありますね?」
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●渡邉清 内閣府 大臣官房審議官
「被害者の年齢は若年層に集中しておりまして、特に20歳を超えたばかりの女性の被害が多い、という実態があきらかになりました」
「20歳を超えますと契約を取り消すことができなくなるため、まさに囲い込みといいますか、20歳になるまでは露出の多いイメージビデオといったものに出演をさせておいて、20歳になるとアダルトビデオのほうに転向させる、移行させると。そういったケースがみられるというような実態をわたしどもも聴取してございます」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「これを未成年者取消権がですね、20歳から18歳に引き下げられてしまうということになると、高校3年生もふくめたそうした若い若年の女性たちがそのターゲットになり、JKビジネスもふくめてですね、もっと若い女性たちにターゲットが移行するのではないか」
「今国会に提案をしておられる消費者契約法改正での取消権の新設で、いま申し上げているようなこうした被害は防げますか?」
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●井内正敏 消費者庁 政策立案総括審議官
「声をかけられた女性が単発でアダルトビデオに出演する契約を締結するようなケースでは消費者契約法の適用がありうると考えられます」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「つまり、取り消せる場合がごく一部ある、というふうにかわってしまうんですよ。しかも声をかけられて単発で、最初にひっかかってしまったときのことしか、そもそも消費者契約法の対象にならないと」
「あの、消費者庁、そういうことですね?」
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●井内正敏 消費者庁 政策立案総括審議官
「反復継続ではなくて単発のときに適用がある、ということでございます」
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●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「それで良いのか、ということをわたしは問うているんです」
「未成年者取消権がその取り消しの対象としている範囲、これは20歳であればぜったいなんですね。だから鉄壁の防波堤だし、だから悪質な業者はここに近寄れないわけですよ」
「それを大臣は、なくそう、と提案しておられる」
「そうやっても消費者被害の防止にはじゅうぶんだ、と大臣、くりかえし答弁されるけれども、消費者契約法で新設される取消権では、いま申し上げているように、現実に保護されなくなってしまうんです」
「これ、なんとかしなくてはいけないじゃないですか。大臣、どうお考えですか?」
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仁比議員は表向き、18歳と19歳の女性の保護に限定して質問を繰り広げました。
上川陽子法務大臣はつぎのように答弁しました。
●上川陽子 法務大臣
当事者のこの性的自由、これを不当に拘束する契約。 先ほど委員会からさまざまな場面をおしめしをいただきましたけれども、当事者がすみやかに解放する必要性、これが高いということにつきましては、委員がご指摘のとおりというふうに思っております。 これは成年年齢を引き下げるかどうかにかかわらずとりくむべきたいへん重大な問題である、と認識をしております。 |
上川大臣は、18歳と19歳の女性だけの問題でないとのべています。
問われていること以上の答を返しました。
●上川陽子 法務大臣
また、成年年齢の引き下げによりまして、18歳、19歳の若者に対しましてこうした不当な契約が拡大するということについておおきなご懸念がある、とこうしたご意見があるということも承知をしているところでございます。 |
未成年者取消権以外につきましても、公序良俗違反や錯誤による無効、詐欺または脅迫を理由とする取り消しなど、契約の効力を否定をする手段、これが存在するところでございます。 |
また、消費者契約法にもとづく取り消しができる場面もある、ということで、先ほどの答弁のとおりでございます。 |
このように現行制度におきましても不当な契約から当事者を解放する手段、存在するわけでございますが、ご指摘の問題に対する対応として、これらの既存の手段でじゅうぶんか否かにつきましては政府としても検討をつづけなければならない喫緊の(さしせまって大切な)課題であると認識をしております。 |
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いま政府の有識者検討会において法的対応の検討がなされています。
(2018年3月26日 第4回関係府省対策会議 「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する今後の対策」フォローアップ(全体版)より、引用。)
●内閣府
(前年度)
いわゆるAV出演強要問題について、法的対応を含めた必要な対策の在り方に係る有識者へのヒアリングを実施。 |
↓
(今年度)
現在実施中の有識者へのヒアリング状況を踏まえ、有識者検討会による更なる検討を進める予定。 |
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(再掲。上川陽子 法務大臣)
「政府としても検討をつづけなければならない喫緊の(さしせまって大切な)課題であると認識をしております」
いま、有識者委員会が検討を進めています。
法務大臣といえども、頭越しに見解を口にすることはできません。
●仁比聡平 参議院議員(日本共産党)
「次回また質問をさせていただきます」
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仁比議員の問によって、上川法務大臣は、
「たいへん重大な問題」
「喫緊の(さしせまって大切な)課題」
と発言しました。
今後の行く末を示唆する(それとなくしめす)言辞であると考えます。
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(香西咲さんのツイートより、引用。)
●香西咲さん
<2018年2月21日>
私は泣き寝入りしません。 闘い続けます。 |
●香西咲さん
<2018年4月17日>
もうこれ以上泣き寝入りしない。 #MeToo #ツイッターでウィメンズマーチ #AV強要 #青木亮 #humantrafficking #HoneyPopcorn #刑事告訴 |
●香西咲さん
<2018年6月5日>
仁比聡平参院議員 前回に引き続き #AV強要 を問題視し追及して下さるその姿勢に、 自分も含めて多数の被害者はとても感動し救われる思いです。 泣き寝入りしなくていい、と背中を押して頂いているような気持ちになれます。 ありがとうございます。 心より御礼申し上げます。
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仁比議員の次回の質問が楽しみです。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
(香西咲さんのツイートより、引用。)
<2017年12月1日>
引退して改めて気付きました。
私はAV業界に固執していたのでではなく、#AV強要 を解決するだけの為に続けてきました。
引退した今何の未練もありませんし、もう削除の約束、裁判、後処理だけですね。
(明日のブログへつづく)
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