刑法の性犯罪の規定について(その5)。業界は香西咲さんたち被害者に対して謝罪をしていません。以前、香西咲さんを門前払いした弁護士も同様です。両者は同根です

本日もひきつづき、刑法の性暴力の規定についてふれます。

(参考。当ブログ)
<準強姦罪と強姦罪について>
2018年1月25日
2018年1月26日
2018年1月27日
2018年1月28日

昨日のブログでも参照しました。
昨年の通常国会で、法務副大臣が、強姦罪について言及しました。

(2017年6月2日 衆議院 厚生労働委員会「会議録」より、引用。)

盛山正仁 法務副大臣        

「強姦罪が成立するためには、被害者が抵抗したことが必要であるかのような御指摘というか、誤解もあるわけでございますが、被害者が抵抗するということは強姦罪の成立の要件ではありません」

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(再掲。法務副大臣)
被害者が抵抗するということは強姦罪の成立の要件ではありません

被害者が抵抗していなくても強姦罪が成立する場合がある。
そのように答えています。
もちろん、個人的見解ではありません。
国会での質疑は基本的に、通告制です。
例外もありますが。
ふつうは、事前に、どのような質問をするのかを知らせます。
各府省庁はこれをもとにして答弁書を作成します。
大臣や副大臣は当日、この用紙を読み上げます。

被害者が抵抗するということは強姦罪の成立の要件ではありません

これが法務省としての公式な見解です。
巷間(こうかん)、強姦罪が成立するためには被害者の抵抗が必須である、と喧伝(けんでん)されています。

(2017年6月17日 弁護士ドットコム「性犯罪、刑法改正でも抜け穴「強い暴行・脅迫がない性被害は野放し状態」(下)」より引用。改行を施しています。)

<一部分を引用>
記者
女性は思いきり抵抗していないと、性交渉に「合意」ととられてしまうのですか

上谷さくら 弁護士
乱暴に言えば、今の法律だとそれに近い感じはあります。
殺されるかもしれないと思いつつも、それでも決死の覚悟で暴れろという事なのか?と感じることもあります。
服がビリビリに破れながらも大暴れして…ってそんな事はできるわけがない。
でもそれをしないと無罪になってしまうんですか?と。

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女性がはげしく抵抗しないと、合意をしたとみなされる。
時折、この種の論説を目にすることがあります。
もちろん悪意はありません。
発言者が意図しているのは、強姦罪の規定の見直しです。

(参考。刑法)
第177条

(旧)
(強姦)
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
(新)
(強制性交等)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

上谷さくら弁護士の場合も、条文の改正を切望しています。
「脅迫、暴行」要件の削除をもとめて問題の提起をされています。

(再掲)
記者
女性は思いきり抵抗していないと、性交渉に「合意」ととられてしまうのですか

上谷さくら 弁護士
乱暴に言えば、今の法律だとそれに近い感じはあります。
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乱暴に言えば、今の法律だとそれに近い感じはあります
首を傾げざるをえません。
この種の言説が定着しますと、被害者のかたは警察に行かなくなるでしょう。
はげしく抵抗していなければ合意したとみなされるのですから。

(再掲。法務副大臣)
被害者が抵抗するということは強姦罪の成立の要件ではありません

これが実相です。

(2017年6月17日 弁護士ドットコム「性犯罪、刑法改正でも抜け穴「強い暴行・脅迫がない性被害は野放し状態」(下)」より引用。改行を施しています。)

<一部分を引用>
記者
警察がなかなか性被害の立件に向けて動かないとのことですが、法律上はどのようなハードルがありますか

上谷さくら 弁護士
性暴力被害の団体等も問題にしていますが、

強姦罪の構成要件にある「暴行又は脅迫」は、「反抗を著しく困難ならしめる程度」という非常に強い程度が必要とされています。

これは昭和24年の最高裁判所の判例で、裁判所が設けたハードルです。
だから判例が変わらないと難しい。

裁判官の個々人の感覚によって事実の評価に振れ幅があるようにも感じています。

この「反抗を著しく困難ならしめる」というのは、女の子からすれば著しく困難になっているんだけれども、客観的に見ると「そこまで抑圧されてないでしょう?」というケースが多い。

例えば男性から強く関係を迫られ、肩を掴まれたりいきなり抱きしめたりされると、その時点で女の子は固まったり、声が出なくなったりしてしまう。

さらに「どうしよう」と思っている間に事が進み、「やばい」と思った時点ではもう服を脱がされていたりして。
恥ずかしくて声を上げられないですね。

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既出の厚生労働委員会で、法務副大臣はつぎのようにのべています。

(2017年6月2日 衆議院 厚生労働委員会「会議録」より、引用。)

盛山正仁 法務副大臣        

殴るということではなく、手首をつかんで引っ張るといった暴行であっても、具体的な事案に応じて、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間などのさまざまな事情を考慮して、暴行、脅迫要件が認められているところでございます。

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これが真実です。

(再掲。上谷さくら 弁護士)
強姦罪の構成要件にある『暴行又は脅迫』は、『反抗を著しく困難ならしめる程度』という非常に強い程度が必要とされています。これは昭和24年の最高裁判所の判例で、裁判所が設けたハードルです

法務省の「第6回性犯罪の罰則に関する検討会」の議事録をみてみます。

(2015年2月12日 第6回性犯罪の罰則に関する検討会「議事録」より、引用。)

<7ページ>
木村光江 首都大学東京教授
もう一つですが、著しく困難にするという、これは日本の研究者の責任でもあると思いますが、必ず著しく困難にする程度だということを書いてしまうのですが、その元になっているのは昭和24年の最高裁判例です。

その昭和24年の事案を見ると、15歳ぐらいの女の子だったと思いますが、殴って強姦されたという事案です。

(被告人の)弁護人が、
完全に抵抗ができなかったわけではないはずだ
という主張をしたのに対して、裁判所は、
いや著しく困難にすれば十分なのだから、これはそういう場合に当たるでしょう
と言ったのです。
そうだとすると、著しく困難にする程度である必要は必ずしもないのです。

ですので、その読み方を、私などが言う話ではないかもしれませんが、もう少しきちんと読まなければいけなかったのではないかということです。

先生方がおっしゃるとおりで、

実際の裁判例では結局同意があったかどうかを見るために暴行・脅迫を使っているのではないか。
「暴行・脅迫があったのだから同意がなかったのですよね」

とどうも使っているのではないかと思っています。

ですので、著しく困難という、この昭和24年の判決は読み直す必要があるのかなとは個人的に思っています。
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昭和24年5月10日の最高裁判決をみてみます。

(昭和24年5月10日 最高裁判所「判決文」より、引用。)

<一部分を引用>
最高裁判所

論旨は、被告人が被害者に暴行脅迫を加えた事実はなく、仮りにそのような事実があつたとしても、被害者が抗拒不能に陥つたという事実は全記録の何処にも発見することができないと主張しているけれども、刑法第177条にいわゆる暴行又は脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。

そうして被告人が被害者にその程度の暴行脅迫を加えたという事実は、原判決挙示の証拠によつて十分立証されている。

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(再掲。木村光江 首都大学東京教授)
弁護人が、『完全に抵抗ができなかったわけではないはずだ』という主張をしたのに対して、裁判所は、『いや著しく困難にすれば十分なのだから、これはそういう場合に当たるでしょう』と言ったのです
著しく困難にする程度である必要は必ずしもないのです

法務大臣も国会で同旨の答弁をしています。

(2017年6月2日 衆議院 本会議「会議録」より、引用。)

金田勝年 法務大臣

強姦罪における暴行または脅迫は、その保護法益である性的自由または性的自己決定権を侵害する行為であることを示す客観的な要件であり、その程度は、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると解されております。

具体的には、被害者の年齢、精神状態のほか、行為の場所の状況、時間等諸般の事情を考慮し、御指摘のように被害者が恐怖感から抵抗できない場合においても、事案に即した適切な判断がなされているものと考えております。

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(再掲。上谷さくら 弁護士)
強姦罪の構成要件にある『暴行又は脅迫』は、『反抗を著しく困難ならしめる程度』という非常に強い程度が必要とされています。これは昭和24年の最高裁判所の判例で、裁判所が設けたハードルです

以前に弁護士ドットコムで上谷さくら弁護士の発言を知ったとき、ぼくは、厭世(えんせい)的な気分になりました。
実際に被害にあわれた方々の絶望感はそれ以上のものがあると思惟(しい)します。

(2015年2月12日 第6回性犯罪の罰則に関する検討会「議事録」より、引用。)

<15ページ>
井田良 慶應義塾大学教授

裁判例もある意味ではかなり無理して広げて適用しているという感じが否めません。

弁護士は、被害者の方々を勇気づけて判例を広げるように精励する存在、であってほしいものです。
出演強要問題についても同様です。

(香西咲さんのツイートより、引用。)

香西咲さん
<2016年6月12日>

私が前に事務所問題でトラブった事があるのは皆様ご存知かと思います。
実はその時に弁護士10人弱訪問してるんです。霞ヶ関含めて。
でも殆どの弁護士の先生に『立証しにくい』と言われ、あからさまに嫌な顔されて門前払いされました。
現実ってこんなものなんだな~って悟って腹を括った訳です。

香西咲さん
<2016年7月17日>

何故今更告発?
皆様の1番の疑問はそこでしょう。
私は辞める時に弁護士会もセックスワーカー御用達の弁護士もその他5件以上の弁護士を当たっています。
が、当時は今の時代と違い『立証しにくい』と門前払いされました。
このタイミングで週刊文春様はいい意味で私を起用してくださりました。

香西咲さん
<2016年10月3日>

アットハニーズを辞めて即座に
第二弁護士会にも行って相談してます。
セックスワーカー団体SWASHのご紹介の、打越さくら弁護士にも相談。
どちらも即答で『立証が取りにくい』とほぼ門前払いでしたよ。
だから世間(弁護士)の風当たりの厳しさを実感し、
腹括って独立の道を選びました。

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(伊藤和子HRN事務局長のツイートより、引用。)

伊藤和子 HRN事務局長(弁護士)
2016年7月18日>


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業界は香西咲さんたち被害者の方々に対して何ら謝罪をおこなっていません。

(再掲。伊藤和子HRN事務局長)
5年前、この問題を門前払いしていたことを、法曹界は深刻に受け止めるべきですね

出演強要被害を忌避した弁護士についても、同様です。
被害者の相談に乗らなかったことを詫びるべきであると思うのですが。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
 私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
 だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)

(明日のブログへつづく)



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