6月27日に、アメリカの国務省が、「2017年人身取引報告書」を発表しました。
時事通信はつぎのようにつたえています。
(2017年6月28日 時事通信「日本のAV強要被害指摘=中国、最低ランクに-米『人身売買』報告」より引用。改行を施しています。)
米国務省は(6月)27日、世界各国の人身売買の実態をまとめた2017年版年次報告書を公表し、日本については、モデルを目指す若い女性らがアダルトビデオ(AV)出演を強要される性被害などを取り上げた。
「人身売買の根絶に向けた最低限の水準を完全には満たしていない」と指摘した。
(後略。)
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本日、在日米国大使館・領事館のサイトに、「2017年人身取引報告書(日本に関する部分)」の日本語訳がアップされました。
●2017年6月27日 在日米国大使館・領事館
「2017年人身取引報告書(日本に関する部分)」
出演強要については、どのような記述がされているのでしょうか。
●アメリカ国務省 2017年人身取引報告書(日本に関する部分)
モデルや芸能事務所の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人女性および男性に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、契約違反、あるいはその他の法的手段を取ると言って脅し、ポルノ素材の製造のために性行為を強制する事務所もある。 |
実相をよくとらえています。
アメリカは、今回、はじめて、出演強要は人身取引である、と明言しました。
日本も同様です。
年次報告のなかで、出演強要についてふれました。
(2017年5月31日 毎日新聞「人身取引 日本人の保護最多25人」より引用。改行を施しています。)
政府は(5月)30日、人身取引対策推進会議(議長・菅義偉官房長官)を首相官邸で開き、2016年中に国内で起きた売春強要や強制労働といった人身取引の年次報告を決定した。
(中略。)
菅氏は会議で
「声を上げにくい被害者の発見と保護に努める必要がある」
と対策強化を指示した。
(後略。)
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(再掲)
「2016年中に国内で起きた売春強要や強制労働といった人身取引の年次報告を決定した」
あらたに付け加わった出演強要に関する部分をみてみます。
(2017年5月30日 「人身取引対策に関する取組について(年次報告)」より、引用。)
(略)、同年(2017年)5月19日、(政府は)今後の対策を策定した。 同対策は、人身取引関連事犯であるアダルトビデオ出演強要問題について、その根絶に向け、「更なる実態把握」、「取締り等の強化」、「教育・啓発の強化」、「相談体制の充実」等の施策について取りまとめたものであるため、その推進は、人身取引の撲滅に寄与すると考えられる。 |
日本政府は、出演強要を
「人身取引関連事犯」
とみなしました。
(再掲)
「今後の対策(中略)の推進は、人身取引の撲滅に寄与する」
アメリカは、日本の人身取引対策をどのように評価しているのでしょうか。
既出の「2017年人身取引報告書(日本に関する部分)」を確認します。
(2017年6月27日 アメリカ国務省 「2017年人身取引報告書(日本に関する部分)」より、引用。)
●アメリカ国務省
日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。
政府は、前年の報告書対象期間中と比べ、取り組みを強化していることを示した。
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(再掲)
「著しく努力している」
意外と高評価です。
前段の
「日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていない」
の箇所は気になりますが。
●アメリカ国務省
日本が人身取引事案を訴追する上で依拠する法律には、重大な欠缺(けんけつ)があるとみられ、国際法で確認されている全ての人身取引犯罪を捜査、訴追および有罪にする政府の能力の妨げとなっている。
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(再掲)
「日本が人身取引事案を訴追する上で依拠する法律には、重大な欠缺(けんけつ)がある」
仰(おお)せのとおりです。
出演強要については、あきらかに、法の欠缺(けんけつ)がみられます。
「法の欠缺(けんけつ)」とは、適用すべき法の規定が欠けている、という意味です。
(2017年2月8日 公明新聞「『出演強要』に関する法規制早く」より引用。改行を施しています。)
(前略。)
同団体の伊藤和子事務局長は、
「出演強要の被害が相次いでいる」
と指摘し、勧誘や契約などに関する法規制を急ぐよう訴えた。
(後略。)
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日本には、出演強要を厳然と罰する明瞭な法律がありません。
今回、アメリカは、日本に対して勧告をおこないました。
●アメリカ国務省
国際法の定義に従い、強制労働あるいは性的搾取の人身取引を目的に個人を募集、輸送、引き渡し、収受する者を犯罪者とすることを含め、あらゆる形態の人身取引を全て犯罪とするため、法的枠組みを改定する。 |
日本も手をこまねいているわけではありません。
政府は、5月19日に、出演強要に関する「今後の対策」を決定しました。
このなかで、法律の制定について言及しています。
(2017年5月19日 第3回関係府省対策会議「今後の対策」より、引用。)
(1) 被害の防止及び救済等のための新たな対応策の検討
アダルトビデオ出演強要問題や「JKビジネス」問題等が深刻な性的な暴力で、重大な人権侵害であるとの考え方に立ち、関係者による自主的な取組の進捗状況や実態把握の状況も踏まえ、性的な暴力の被害につながる行為の規制、被害の回復、被害者の保護及び支援等について、有識者等の意見も参考に、法的対応を含め、必要な対応策を検討する。 |
アメリカの後押しもあります。
峻厳な内容の法律がつくられるのではないでしょうか。
アメリカは、刑の重さについても、言い及んでいます。
●アメリカ国務省
性的搾取目的の人身取引犯罪に対しては、刑罰が、強姦などその他の重罪に科されている刑罰と同等となるようにする。 |
たとえば、現在、強要罪は、3年以下の懲役です。(刑法第223条)
脅迫罪は、2年以下の懲役、となっています。(刑法第222条)
アメリカは、出演強要に対して、強姦罪(強制性交等罪)と同等の刑罰をもとめています。
(参考。改正刑法)
●第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。 13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 |
強制性交等罪は、5年以上20年以下の懲役です。
罰金刑はありません。
執行猶予もです。
はたして、どのような法定刑となるのでしょうか。
●アメリカ国務省
日本は、国連で2000年に採択され た人身取引議定書を締結していない唯一のG7参加国であるが、内閣は2017年3月に国会に法案を提出した。
同法案が可決すれば、日本は人身取引議定書の締約国となることができる。
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過日のブログでも記しました。
8月10日から、人身取引議定書の効力が発生します。
日本はこれまで以上に、人身取引の根絶にとりくまなければなりません。
当面の課題は、出演強要を処罰する法律の制定です。
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昨日のブログで、内閣府が定義する出演強要についてふれました。
●内閣府男女共同参画局「01 こんな被害が起きています」
「主な被害事例(その他)」のなかに、つぎの一文があります。
●内閣府 主な被害事例(その他)
知らない撮影現場に連れて行かれ、「無理です」と言っても、誰も聞いてくれず、自分が首を縦に振らない限り何も変わらない状況で、出演せざるを得なかった。 |
香西咲さんの場合は、この類型に属します。
(2016年9月18日 AbemaTIMES「【AV出演強要問題】元カリスマ女優・川奈まり子氏が業界健全化のために奮闘」より、引用。改行を施しています。)
香西は、当初はモデルとしてスカウトされたはずだったのに蓋を開けたらAV出演ということになっていた。 (略)、AV撮影のために富士山の麓に連れていかれて、3時間泣いたこともあるという。 その時、自分をスタッフ全員が待っている状況にあった。 ●香西咲さん |
●アメリカ国務省
性的搾取目的の人身取引犯罪に対しては、刑罰が、強姦などその他の重罪に科されている刑罰と同等となるようにする。 |
●刑法第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。 13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 |
(2017年5月20日 テレ朝NEWS「AV出演強要問題 全国警察本部に専門官を設置」より、引用。改行を施しています。)
政府は(5月)19日、関係省庁の対策会議を開き、違法なスカウトの摘発を推進する専門官を、今月中にも全国の警察に設置することを決定しました。 警察庁は 「場合によっては業者のスタッフを、強姦罪や強要罪で摘発する」 としています。 |
□青木亮
□大西敬
□高畠典子
□坂田恵理子
□坂上孝志
□A-TEAM 飯田正和
□メーカー関係者
□T総研のY
悪党の末路がみえてきました。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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