先月(3月)の2日のことです。
参議院議員会館で、出演強要被害を考える院内シンポジウムが開催されました。
参加を請(こ)われていた業界団体(IPPA)は、不可解な欠席メールを免罪符にして、遁走(とんそう)しました(逃げました)。
(2017年3月2日 IPPA「20170302HRN院内シンポジウム欠席についてのご連絡」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
●IPPA(業界団体)
お誘いに関しましては出席が適切とは考えておりませんので、欠席とさせていただきたく存じますが、ご理解賜われればと存じます。
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「ご理解」したひとは、どれくらいいるのでしょうか。
以下の記述が気になりました。
(2017年3月2日 IPPA「20170302HRN院内シンポジウム欠席についてのご連絡」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
●IPPA(業界団体)
貴法人(HRN)では
「全ての出演女優は性的搾取の対象であり被害者である」
という問題意識に立脚しておられるのではないかと思われます(略)。
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しかしながら、当業界においては、偏見に基づくものも含め多数の社会的非難もある中、女優を中心とする製作者全員の自己実現の一つの態様として映像作品が作られているものと真に考えており、当協会及び各メーカーは、それら社会的非難等から彼ら・彼女らを守っていくべき責務があるものと考えております。
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(再掲)
「性的搾取の対象」
この文言をみて、世界恐慌を連想しました。
嚆矢(ものごとのはじまり)となったアメリカは、1920年代、栄華を極めていました。
人々の関心は、株式です。
こぞって、投資に心血を注ぎました。
(F.L.アレン著 藤久ミネ訳「オンリー・イエスタディ」ちくま文庫刊より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
「コロンブスもワシントンもフランクリンもエジソンもみな投機家だった」
ということばで人びとは投機の危険性を忘れ、
「誰もが金持ちになるべきだ」
という題名の文章でジョン=ラスコブ(GM自動車の副社長)は、人が一ヶ月にほんの15ドルを節約してこれを優良株に投資しすれば、配当金などを別としても、20年後には少なくとも8万ドルの金を手にすることができ、この投資から受ける収入は少なくとも月額四百ドルになる、と説いた。
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1929年の10月24日(木曜日)のことでした。
突如、株価が大暴落します。
のちに、この出来事は、暗黒の木曜日(ブラックサーズデー)とよばれました。
(林敏彦著「大恐慌のアメリカ」岩波新書刊より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
すべてを失った人びとが都市の公園や空き地に木切れや段ボールでつくったバラック小屋の集落は「フーヴァー村」、新聞紙は「フーヴァー毛布」、引っぱり出された空っぽのズボンのポケットは「フーヴァーの旗」と呼ばれるようになった。
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フーヴァーは、大統領の名前です。
遺恨が感じられます。
恐慌は、アメリカ国内だけにとどまりませんでした。
当時、世界経済は、アメリカに依存していました。
各国の企業は、アメリカに商品を輸出して潤っていました。
これが潰(つい)えます。
恐慌が世界中にひろがりました。
日本の場合はさらに深刻です。
1931年に、東北、北海道が、冷害にみまわれます。
大凶作となりました。
下村千秋さん(1893年~1955年)という作家がいます。
戦前から戦後にかけて活躍しました。
1932年に発表されたルポタージュが有名です。
東北地方の悲惨な状況を克明に描写しています。
現在は著作権が消滅していますので、青空文庫で読むことができます。
まずは、めし屋で酒をのんでいる客と、おかみさんの会話をみてみます。
(下村千秋著「飢餓地帯を歩く ――東北農村惨状報告書――」より引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
(青森県の七戸町で)
(略)今年は飢饉の飢饉、これでは来年は、百姓奴等は、干ぼしになって飢え死んで野たれ死んで、それで足りなくて、首をくくって死ぬ、ということになるだア。
べら棒め……なア!
おかみさん、わしも一人の息子を満洲の兵隊へ出しているだが、こないだも手紙で言ってやっただ。
国のために勇敢に戦って、いさぎよく戦死をしろ、とな。
そうすりゃ。
なアおかみさん、なんぼか一時金が下って、わしらの一家もこの冬ぐらいは生き伸びるだからな。
娘を持ってるものは娘を売ることが出来るだが、わしは、息子しか持たねえから、そうして息子を売ろうと考えてるだよ……
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(再掲)
「娘を持ってるものは娘を売ることが出来る」
東北、北海道は、恐慌に加えて、未曾有の大飢饉です。
女性の身売りがあいつぎました。
(※写真は、近藤康男著「昭和ひとけたの時代」農山漁村文化協会刊より、引用。)
●伊佐澤村
伊佐澤村はかつて、山形県に存在した村です。
役場の掲示板には、
「娘身賣(売)の場合は
當(当)相談所へ御出下さい
伊佐澤村相談所」
と書かれたポスターが貼られています。
ちなみに、以下のかたが書かれたブログも参考になります。
写真も鮮明です。
下村千秋さんの著作にもどります。
今度は、ある主婦の証言です。
(下村千秋著「飢餓地帯を歩く ――東北農村惨状報告書――」より引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
(青森県の七戸町で)
「こちらでは、お子さんは一人ですか?」
すると、主婦が、
「なアに、もう一人、今年十七になるのがあるのです」と答えた。
その娘は、今、どこにいるか、私はそれを訊いて見たかったが、ここではもうそれを訊くのが余りに残酷に思われて来た。
で、黙っていると主人が、溜息をつくようにして言った。
「その娘は、今、東京の方へ行ってます。この村からは、紡績へ出る娘がずいぶん多いですが、わしの娘は、五年の年期で、売り飛ばしてしまったです」
これには私は合槌も打てなかった。
僅か二三円の手附金で、一人の娘が売られて行くと、東京の新聞にはあったが、それは新聞のよた(でたらめ)であった。
いかに純朴な百姓といえども、それほど愚かではない。
しかし、百円から三百円ぐらいの金で、一人の娘が、或いは私娼に、或いは公娼に売られて行く例はザラにあるのであった。
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既出の「昭和ひとけたの時代」のなかに、つぎの記述があります。
(近藤康男著「昭和ひとけたの時代」農山漁村文化協会刊より、引用。)
「娘の身売りが増加した。たとえば、東北地方では、1年間に6万人の女子が身売りされた」
「村の夜道は真っ暗だった。村には街灯がなかった。それは1931年から廃止になったのだ。恐慌はいろんな意味で明るさを奪っていく。今度はまた、恐慌は、娘を村から奪い去ろうとしている」
ちなみに、このような惨状をみかねて、若手将校が決起します。
これが、五・一五事件(1932年5月15日)です。
(下村千秋著「飢餓地帯を歩く ――東北農村惨状報告書――」より引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
(青森県の蟹田村の近くの集落で)
その老婆は、蟹田村から更らに一里近く山手に入った小国(おぐに)村のものであった。
私はこの老婆と、その一夜を炉端で明したのだが、老婆は、私を相手にさまざまの身の上話をした末に、
「実は今日は、娘を、青森市のごけ屋(私娼の家)へ置いて来たのです」という意味を、方言で話し出たのであった。
何故娘をそんな所へ置いて来たか、それを今更ら尋ねる必要はない。
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老婆が最後に吐露します。
「さっきの話ではないが、人の肉を喰ったのは昔の人ばかりではない。わし達も、つまりは人間を喰い合っている。子供を生かそうとすれば、親の肉を喰わせねばならぬし、親を生かそうとすれば子供の肉を喰わねばならぬ。そして、わしは今、娘を喰って生きようとしている」
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(再掲)
「わしは今、娘を喰って生きようとしている」
●中村淳彦さん
<2017年2月8日>
誤解されがちだが、仮に大変厳しいAV規制がかかって、他の行き場所があるのはAV女優の女の子たちだけ。需要とAV関係者は行き場がなく、残る。最後の最後まで粘るはず。
— 中村淳彦(なかむらあつひこ) (@atu_nakamura) February 8, 2017
誤解されがちだが、仮に大変厳しいAV規制がかかって、他の行き場所があるのはAV女優の女の子たちだけ。
需要とAV関係者は行き場がなく、残る。
最後の最後まで粘るはず。
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●中村淳彦さん
<2017年4月18日>
女性以外はセーフティネット的な状況なので、人を切りきらない。やりすぎると20年前と同じく、またインディーズ、と同じことの繰り返しかも。AV業界健全化へ「第三者委」発足…業界団体IPPAなどhttps://t.co/IPqgqgoqok #bengo4topics
— 中村淳彦(なかむらあつひこ) (@atu_nakamura) April 18, 2017
女性以外はセーフティネット的な状況なので、人を切りきらない。
(後略。)
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「AV業界は、女性にとってのセーフティネット」
と、したり顔でうそぶいている輩(やから)がいます。
(再掲。中村淳彦さん)
「他の行き場所があるのはAV女優の女の子たちだけ」
「女性以外はセーフティネット的な状況」
AV業界は、プロダクションやメーカー関係者のセーフティネット、であるようです。
(再掲。「飢餓地帯を歩く」)
「わしは今、娘を喰って生きようとしている」
プロダクションやメーカーの関係者も同様です。
女性を喰って生きるしか術(すべ)がありません。
(再掲。IPPA)
貴法人(HRN)では
「全ての出演女優は性的搾取の対象であり被害者である」
という問題意識に立脚しておられるのではないかと思われます(略)。
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しかしながら、当業界においては、偏見に基づくものも含め多数の社会的非難もある中、女優を中心とする製作者全員の自己実現の一つの態様として映像作品が作られているものと真に考えており、当協会及び各メーカーは、それら社会的非難等から彼ら・彼女らを守っていくべき責務があるものと考えております。
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IPPAのこの言辞を信じるひとは、関係者をのぞいて、だれもいないでしょう。
(2017年1月13日 朝日新聞「(耕論)AVへの出演強要 伊藤和子さん、中里見博さん、青山薫さん」より、引用。)
<一部分を引用>
●伊藤和子HRN事務局長
違約金の脅しで出演強要される彼女たちは「債務奴隷」であり、状況は「人身売買」と言えます。
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(2016年7月7日 「週刊文春」2016年7月14日号より、引用。)
●香西咲さん
青木の支配下に置かれていた頃、私にとってAV撮影は自傷行為そのものでした。
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(再掲。「飢餓地帯を歩く」)
「わしは今、娘を喰って生きようとしている」
(再掲。中村淳彦さん)
「女性以外はセーフティネット的な状況」
このようなセーフティネットを残しておく必然性があるのでしょうか。
すくなくとも、女性にとっては不要の存在です。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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