昨日のつづきです。
3月2日に、出演強要に関する院内シンポジウムが開催されました。
主催者側から参加を請(こ)われたIPPAは、ことわりの返事をしました。
(2017年3月2日 IPPA「20170302HRN院内シンポジウム欠席についてのご連絡」より、引用。)
<IPPAの欠席理由。一部分を引用>
「シンポジウムの趣旨・内容を理解し準備を行う時間的余裕がない、という事実上の事情もございますが」
「実質的な障害も存在すると考えております」
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本日は、「実質的な障害」の2つめからみていきます。
(2)
<IPPAの欠席理由。一部分を引用>
当該前提(AV出演強要被害)の取り扱いに関しては、貴方にても「内閣府では調査報告書が作成されています」と記載されているように、(中略)、各種合理的な事実照会を内閣府宛行わせていただいておりますが、どのような理由からか、ご返答をいただけていない、という状況が続いている(略。)
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(再掲)
「貴方にても『内閣府では調査報告書が作成されています』と記載されているように」
シンポジウムの案内文のなかに、報告書に関する記述があります。
検(あらた)めます。
(2017年2月17日 HRN「院内シンポジウム:AV出演強要被害の被害根絶を目指して」より、引用。)
<HRN>
(前略。)
(略)、内閣府では調査報告書が作成されていますが、被害者の救済に向けた実効的な対策は講じられておらず、多くの被害者はまだ苦しみの中にあります。
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(再掲。IPPAの欠席理由)
「各種合理的な事実照会を内閣府宛行わせていただいております」
2月3日のことでした。
IPPAは、報告書の執筆を鋭意おこなっている内閣府に宛てて、照会状を送付しました。
(2017年2月 IPPA「『女性に対する暴力に関する専門調査会』への照会文書送付について」より引用。)
<IPPA>
この度、いわゆる「AV出演強要問題」について話し合われております
「内閣府 男女共同参画会議 女性に対する暴力に関する専門調査会」宛に、
いくつか議論の前提について事実確認を行う必要があるものと考え、
事実照会文書を平成29年2月3日付けにて送付させていただきました(同月6日に到達を確認。)。
なお、現時点での具体的な照会内容の公表は差し控えさせて頂きますこと
ご了承いただきたく存じます。
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照会状を送ったとされる2月3日は、朝日新聞社によるイベントがあった日、でもあります。
IPPAの振る舞いを昨年末から顧(かえり)みてみます。
●2016年12月14日
朝日新聞社がIPPAに対して、案内状を送付する。
↓
(7日後)
●2016年12月21日
IPPAが、朝日新聞社に、
「お時間を頂戴することとなります」
と返信。
↓(※その後、IPPAは、いっさいの連絡をおこなわなかった。)
(44日後)
●2017年2月3日
出演強要問題に関するイベントが開催される。
・「メディアのタブーを超える~AV出演強要問題から見えたもの~」
(※IPPAは、欠席。)
・同日、IPPAが、内閣府に対して、照会状を発送する。
↓
(14日後)
●2017年2月17日
HRNが、院内シンポジウムの案内を告知する。
↓
(11日後)
●2017年2月28日
HRNがIPPAに対して、院内シンポジウムへの参加を請(こ)う。
↓
(2日後)
●2017年3月2日
IPPAが、HRNへ、
「欠席とさせていただきたく存じます」
とのメールを返す。
出演強要問題に関するイベントが開催される。
・「院内シンポジウム: AV出演強要被害の被害根絶を目指して」
↓
(1日後)
●2017年3月3日
HRNが、IPPAからの欠席理由を公開する。
↓
(11日後)
●2017年3月14日
内閣府が、出演強要問題に関する報告書を完成させる。
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くりかえします。
IPPAは、2月3日、内閣府に対して照会をおこないました。
内容は、業界に出演強要は存在しない、というもののようです。
その後、内閣府からの返答はありません。
まちこがれているなか、HRNから、シンポジウムの案内が届きました。
・「院内シンポジウム: AV出演強要被害の被害根絶を目指して」
(再掲。IPPAの欠席理由)
「照会を内閣府宛行わせていただいておりますが、どのような理由からか、ご返答をいただけていない、という状況が続いている」
上述の経緯をながめるとわかります。
IPPAの頭のなかにあったのは、照会状のことだけです。
いったいどのようなものができあがるのだろうか。
なんとかして出演強要をなかったことにしたい。
2017年3月14日のことです。
内閣府の報告書が完成しました。
IPPAに関しては、以下の言及があります。
(2017年3月14日 内閣府「若年層を対象とした性的な暴力の現状と課題 ~いわゆる『JKビジネス』及びアダルトビデオ出演強要の問題について~」より、引用。改行を施しています。)
<報告書の36ページ。一部分を引用>
今回のアダルトビデオの出演強要問題に関し、協会(IPPA)は、メーカーだけではなく、出演者の所属するプロダクションも含め「アダルトビデオ業界全体の問題」として取り組む必要があると認識しており、海外のサーバーから発信されるアダルトビデオなどには関与できないものの、協会では、審査団体に所属していないメーカーへの加盟の呼びかけを行っているほか、業界内の新たなルールとして、メーカーとプロダクション、メーカーと出演者の契約内容の精査を行い、契約書の内容を出演者に配慮したものとすることを始め、当事者間の問題を解決する第三者委員会の設置や相談ホットラインの開設を検討し、一般社団法人表現者ネットワーク AVAN((2)参照)との連携・協力なども進め、業界の更なる健全化と透明性の向上を目指しているとのことである。
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IPPAから、
「出演強要はない」
とのうったえがあったのにもかかわらず、内閣府は、以下のとおり記述しました。
(再掲。報告書)
「今回のアダルトビデオの出演強要問題に関し、協会(IPPA)は、メーカーだけではなく、出演者の所属するプロダクションも含め「アダルトビデオ業界全体の問題」として取り組む必要があると認識」
IPPAの愚挙に対する当て付けなのでしょうか。
内閣府は、業界全体に出演強要が存在する、と明言しました。
IPPAは、これからも、出演強要はない、と言いつづけるのでしょうか。
つぎは、「実質的な障害」の3つめです。
(3)
<IPPAの欠席理由。一部分を引用>
当協会を構成する各メーカーは、演者としての女優と同一の方向を常に目指しており、いわば運命共同体という関係にあります。
したがいまして、各メーカーは女優の良き理解者であるように日々努めておりますが、上記「1」(「AV 出演強要被害が広く蔓延していること」)のような立て付けの中でなんらかの発言を行ったとしても、部分的に取り上げられたり、曲解されたりする可能性を否定できず、その場合には、守るべき女優自身を傷つけかねない(略。)
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悪寒(おかん)が走りました。
(再掲)
「各メーカーは、演者としての女優と同一の方向を常に目指しており」
メーカーと女優が、同一ではなく、おたがいに別の方向をめざしているから、強要がおこるのではないでしょうか。
星野明日香さんの場合
(2016年11月14日 日本経済新聞「夢につけ込まれ出演 奪われた尊厳(上) 意に沿わずAV 心に傷」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
グラビア撮影と聞かされて出向いた現場で、初めてアダルトビデオ(AV)と明かされた。
「できません」
拒否の言葉は通じなかった。
社長ら数人に囲まれた。
「宣伝で1億円かかった。違約金は家族に請求する」
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くるみんアロマさんの場合
(2016年7月14日 withnews「AV出演強要、ユーチューバーの過去 『音楽デビュー信じた自分』」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
慣れない性行為に「痛い痛い」と叫んだ。
「無理です」と叫んで撮影が中断しても、撮影側は「できるまで終わらないよ。こんなに時間がかかるのは、あなたぐらいだよ」と冷淡だった。
「ここにいる大人全員、子どももいるし生活もある。あなた1人でみんなの生活を台無しにするのか」とも言われた。
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香西咲さんの場合
(2016年8月27日 弁護士ドットコム「<AV出演強要>香西咲さん『今でもフラッシュバックに悩まされる』洗脳の過去を語る」より、引用。)
<一部分を引用>
不本意な撮影が何回かありました。デビュー作もそうですが、「イヤだ、イヤだ」と泣きながら撮影するときもありました。
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(2016年09月24日 withnews「AV強要 現役女優・香西咲が語る『洗脳』から出演までの8カ月」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
香西さんは、複数の男性が出演して行うある行為をNG項目に指定していたが、意向を無視された。
当日まで台本は送られず、撮影現場で監督らに泣いて「嫌だ。できない」と伝えても、強行された。
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(再掲。IPPA)
「各メーカーは、演者としての女優と同一の方向を常に目指しており」
正気なのでしょうか。
臆面もなく、
「女優と同一の方向を常に目指しており」
などと言えたものです。
(再掲。IPPA)
「各メーカーは、演者としての女優と同一の方向を常に目指しており、いわば運命共同体という関係にあります」
「運命共同体」とは、どのような意味なのでしょう。
大辞泉を参照します。
(引用)
「所属する人が、繁栄するときも衰亡するときも運命をともにする組織や団体。また、その関係にあること」
女優は、メーカーと運命をともにするしか、術(すべ)がないのでしょうか。
中村淳彦さんのことばが的を射(い)ています。
(中村淳彦さんのツイートより、引用。)
<2017年2月8日>
誤解されがちだが、仮に大変厳しいAV規制がかかって、他の行き場所があるのはAV女優の女の子たちだけ。
需要とAV関係者は行き場がなく、残る。
最後の最後まで粘るはず。
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業界人は、転職することが不可能であるようです。
あらためて言われるまでもなく、だれが考えても自明です。
業界人には行き場がありません。
もちろん、女優にはあります。
引退しても無限の可能性があります。
(再掲。IPPA)
「各メーカーは女優の良き理解者であるように日々努めておりますが、上記『1』(「AV 出演強要被害が広く蔓延していること」)のような立て付けの中でなんらかの発言を行ったとしても、部分的に取り上げられたり、曲解されたりする可能性を否定できず、その場合には、守るべき女優自身を傷つけかねない」
「守るべき女優自身を傷つけかねない」
これは、
「守るべき業界人を傷つけかねない」
と言い換えるべきでしょう。
IPPAは、こころの奥底から腐っています。
一番の問題は、女優に対する愛がない、というところにあります。
フロムのことばを思い出しました。
(フロム著 鈴木晶訳「愛するということ」紀伊國屋書店刊より、引用。改行を施しています。)
もしある女性が花を好きだといっても、彼女が花に水をやることを忘れるのを見てしまったら、私たちは花にたいする彼女の『愛』を信じることはできないだろう。
愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである。
この積極的な配慮のないところに愛はない。
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業界人は、女優の生命と成長を積極的に気にかけたことがあるのでしょうか。
(再掲)
「この積極的な配慮のないところに愛はない」
業界人に愛はありません。
あるのは金儲けだけです。
ちなみにぼくは、フロムのつぎのくだりにシンパシー(共感)をおぼえます。
(フロム著 鈴木晶訳「愛するということ」紀伊國屋書店刊より、引用。改行を施しています。)
尊敬とは、人間のありのままの姿をみて、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである。
尊敬とは、他人がその人らしく成長発展してゆくように気づかうことである。
したがって尊敬には、人を利用するという意味はまったくない。
私は、愛する人が、私のためにではなく、その人自身のために、その人なりのやり方で、成長していってほしいと願う。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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