過日のブログで、3回ほど、フロム(1900年 ~ 1980年)の考え方についてみてみました。
(参考)
・2017年3月8日
・2017年3月10日
・2017年3月14日
フロムは最初、母国のドイツで、社会心理学者として活躍していました。
のちに、ヒトラーを忌避して、アメリカへ亡命します。
異郷の地で書きあげたのが「自由からの逃走」です。
概略を記します。
1919年にドイツで、ワイマール憲法が制定されました。
国民は、かつてないほどの自由を保障されました
歓喜したのも束の間、人々は、負担を感じるようになります。
自由は、孤独感や無力感を招きよせます。
やがて、自由の重荷にたえきれなくなります。
このとき、登場するのが、ヒトラーです。
大衆は、カリスマの権威に服従します。
こぞって、画一的な考え方や、同種の行動へとはしります。
これが、「自由からの逃走」です。
フロムは、抑圧や、強制からの自由をうったえました。
この段階の自由を「消極的自由」といいます。
当然、これだけでは良しとしません。
より高次のものをもとめます。
主体的に自己の行為を選択する自由です。
フロムはこれを「積極的自由」(○○への自由)と名づけました。
一般的に、ドイツでは、中間層を中心にして、ナチズムへの信奉がきわだったといわれています。
権威への服従は、こうした階級に偏在した出来事であったのでしょうか。
フロムはつぎのようにのべています。
(フロム著 日高六郎訳「自由からの逃走」東京創元社刊より、引用。改行を施しています。)
権威主義的性格の人生にたいする態度やかれの全哲学は、かれが感情的に追求するものによって決定される。
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「権威主義的性格」とは何でしょうか。
ヒトラーの専横(わがままで横暴なふるまい)をささえた人々には、共通した特性がありました。
上位者の権威に対する盲従です。
いっぽう、下位の者に対しては、自身への服従をもとめました。
二律背反(相互に矛盾し対立する二つの命題が同じ権利をもって主張されること)です。
フロムは、こうした特性を「権威主義的性格」と名づけました。
(フロム著 日高六郎訳「自由からの逃走」東京創元社刊うより、引用。改行を施しています。)
権威主義的性格は、人間の自由を束縛するものを愛する。
かれは宿命に服従することを好む。
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「宿命」とは、生まれる前の世から定まっている人間の運命、のことです。
(フロム著 日高六郎訳「自由からの逃走」東京創元社刊より、引用。改行を施しています。)
宿命がなにを意昧するかは、かれの社会的位置によって左右される。
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「社会的位置」とは、職業のことです。
(フロム著 日高六郎訳「自由からの逃走」東京創元社刊より、引用。改行を施しています。)
兵士にとっては、それはかれが進んで服従する上官の意志や鞭(ムチ)を意味する。
小商人にとっては、経済的法則がかれの宿命である。
かれにとっては、危機や繁栄は、人間の行動によって変更できる社会現象ではなくて、人間が服従しなければならない、優越した力のあらわれである。
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「宿命」とは、自分の力で覆(くつがえ)すことができないものです。
兵士の宿命は、上官の意志や鞭(ムチ)です。
小商人の宿命は、経済的法則(市場原理)です。
おのおの、恭順(服従)をもとめられます。
社会的地位の高いひとはどうなのでしょうか。
(フロム著 日高六郎訳「自由からの逃走」東京創元社刊より、引用。改行を施しています。)
ピラミッドの頂上にいるものにとっても、それは根本的に同じことである。
ちがっているのは、ただ人間が服従する力の大きさや一般性であって、依存感情そのものではない。
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人間は皆、権威に服従する存在のようです。
(2017年2月10日 AbemaTIMES「AV出演強要問題 女性スカウトが使う巧妙な手口とは」より、引用。改行を施しています。)
<紗倉まなさん>
身近な人からは強要の話を聞いたことがないと話し、
「私は自ら志望して、契約したときにも”大丈夫か、契約内容を把握できているか、ちゃんと理解して仕事をしないと人生に影響するから”と念入りに聞かれた上で判を押したので…」
と、自身が事務所と契約した時のことを振り返った。
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このかたは、権威主義的性格の持ち主のようです。
業界の権威を盲信しているのかもしれません。
香西咲さんと同じく、業界の悪逆(悪事)をあきらかにしたくるみんアロマさんの場合はどうだったのでしょうか。
(2017年3月3日 ハフィントンポスト「『私は洗脳されていた』AV強要の実態、被害者のくるみんアロマさんが語る」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用。くるみんアロマさん>
「違う仕事はないんですか?」と言ったら、毎回AVの話を出されました。
毎回断っていたんですけど、説得の仕方がすごくて
「AV女優はこのレベルで、グラビアアイドルはこのレベルだよ。AV女優は芸能界で一番すごいんだよ」
とか
「あなたなぜやりたくないの? 職業差別してるでしょ。それじゃ、ゴミ収集の人は汚いの?それと一緒だよね」
「時代は変わったから、AV女優になって、その後に歌ったり踊ったりするのが主流だよ」
と言われました。
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冷静に考えると、AV女優として活動後に普通の女優になる人もいるかもしれないけど、普通はそんなうまくいかない。
ただ、「時代は変わったんだ」と毎回言われて洗脳されて、その時間だけは「本当にそうなのかな?」と思っちゃうことは何回もありました。
それでも私は断っていたんですけど、半年以上にわたって言われました。
毎回、それを言われて泣いていたんだけど、多いときは十何人くらいで説得に入って、みんなから「そんな泣かないでよ。大丈夫だよ、大丈夫だよ」と言われて、やるしかない状況になってしまいました。
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「AV女優は芸能界で一番すごいんだよ」
これが業界の権威です。
もちろん、いつわりですが。
(再掲。紗倉まなさん)
「身近な人からは強要の話を聞いたことがない」
このかたは、「自由からの逃走」をはかっているのではないでしょうか。
業界の権威にしたがっておられるようです。
香西咲さんの場合はちがいました。
(2016年7月29日 毎日新聞「AV出演強要 香西咲さん『私はこうして洗脳された』」より、引用。改行を施しています。)
(問)「名前も顔も出して告発すれば、業界内の反発も予想されます。もしかしたら、AV女優としての生命を絶たれるかもしれない」
<香西咲さん>
覚悟の上です。既に「SEXY-J」という(AV女優が歌う)ユニットのメンバーからは外されました。
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(問)「なぜそこまで覚悟を決められた?」
<香西咲さん>
AVが夢にはつながらないことに気付き、ダラダラやっているのはよくないと思ったんです。
「続けてもあと1年ぐらいかな」
「その間にAVで失った人間関係や健康状態を取り戻そう」
と思っていたタイミングで、出演強要が社会問題化しました。
フラッシュバックにもずっと悩まされてきたので、いつか決着をつけなければいけないと思っていた。
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(問)「今も同じような目に遭っている女優がいる?」
<香西咲さん>
いますね。(被害に)気付いていないと思います。「夢の真っ最中」の子もいます。
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既出のフロムのことばを再掲します。
「権威主義的性格は、人間の自由を束縛するものを愛する。かれは宿命に服従することを好む」
「かれにとっては、危機や繁栄は、人間の行動によって変更できる社会現象ではなくて、人間が服従しなければならない、優越した力のあらわれである」
「ピラミッドの頂上にいるものにとっても、それは根本的に同じことである」
簡単に言いますと、「長い物には巻かれよ」です。
目上のひとや、勢力のあるひとに対しては、争うよりもしたがっているほうが得です。
一般的な処世訓です。
香西咲さんは、伝統的権威に抗(あらが)いました。
みずからのちからで泥濘(でいねい)を脱しました。
香西咲さんは、いま、「○○への自由」(主体的に自己の行為を選択する自由)をつかもうとしています。
膂力(りょりょく。強いちからという意味)のあるかたです。
香西咲さんは、至高です。
あと、ここにきて、ネットを中心に記事や書き込みなどをチェックし始めている団体かなんかが出てきているって話もありますので。面倒に巻き込まれるのを嫌がってお先に失礼…ってパターンも(笑)。山を越えるといろんなことが見えてくる、起こってくるってことですね。 https://t.co/8IzYaVQfa7
— やまもと寅次郎 (@torachan55) March 23, 2017
(再掲。紗倉まなさん)
「身近な人からは強要の話を聞いたことがない」
このかたにかぎらず、業界の擁護をしているひとはだいじょうぶなのでしょうか。
(2017年3月15日 サンスポ「AV出演強要問題で対策検討 公明要請に菅官房長官」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
公明党は1月にプロジェクトチームを発足。
過激なポルノの流通規制や警察の介入強化を盛り込んだ提言をまとめ、菅氏に提出した。
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(2017年3月16日 公明新聞「『出演強要』問題 党プロジェクトチームが政府に提言」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
法律違反の事例には積極的な取り締まりを求めたほか、必要な対策を「女性に対する暴力に関する関係省庁課長会議」などで省庁横断的に検討するよう要請した。
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かつて、ドイツでおきた「水晶の夜」を想起しました。
1938年のことです。
ユダヤ人に対する迫害が頂点に達しました。
(大澤武男著「ヒトラーとユダヤ人」講談社現代新書より、引用。改行を施しています。)
1938年11月7日、ポーランド系ユダヤ人の17歳の若者H・グリュンシュパンは、両親がナチスによりドイツからポーランドへ強制輸送で追放されたことを知って、パリでドイツ大使館付書記官E.V.ラートを狙撃し、重傷を負わせた。
ヒトラーは11月8日のミュンヘン一揆記念日のためにミュンヘンに来ていた。
9日にはゲッベルスもミュンヘンに駆けつけた。
9日夜会食中のヒトラー等の席にラートの死が伝えられた。
ゲッベルスは当時チェコの女優リダ・バーロヴァとのスキャンダルでヒトラーの顰蹙をかっていたので、彼の機嫌を取り戻すよいチャンスと考え、ヒトラーと二人だけで討ちあわせをし、ただちにユダヤ人に対する報復行為開始を指示した。
その結果、11月9日夜から11日にかけ、全国で大迫害が起こり、7500に及ぶユダヤ人住居、商店、デパートなどが破壊掠奪され、数百におよぶシナゴーグ(会堂)が破壊放火され、また数百近いユダヤ人が殺され、有産者を中心とする3万人近くが逮捕され、強制収容所へ送られたのである。
ラートの出身地フランクフルトでは特にひどく、市内の5つのシナゴーグはすべて焼き払われた。
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ユダヤ人の商店がおそわれて、ガラスが散乱しました。
ここから「水晶の夜」とよばれるようになりました。
(再掲。やまもと寅次郎さん)
「ネットを中心に記事や書き込みなどをチェックし始めている団体かなんかが出てきているって話もあります」
国家権力とはおそろしいものです。
圧倒的なちからでおそいかかってきます。
絶対に勝てません。
上述の団体がどのようなものなのかは存じません。
現在、国民のなかで、関係者をのぞいて、業界の味方をするものは存在しません。
いま、業界擁護の発言をすると、命取りになります。
香西咲さんは別として、ほかの方々はくれぐれも、自身の発言に気を配っていただきたいものです。
逮捕されたくないのであれば。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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