フロムは「◯◯への自由」を重視しました。自分のやりたいことができる自由です。香西咲さんはいま、「◯◯への自由」をめざしているのではないでしょうか

中学生のころ、ワイマール憲法の制定年を暗記させられたことがあります。
教科書には、世界ではじめて社会権を明記した憲法、と書かれていました。
社会権は、20世紀的基本的人権とも言います。
人権といいますと、真っ先に、自由と平等が思いうかびます。
たとえば、1776年に発表されたアメリカ独立宣言も、この権利を強調しています。

(引用。アメリカ独立宣言)
すべての人間は神によって平等に造られ、一定の譲り渡すことのできない権利をあたえられており、その権利のなかには生命、自由、幸福の追求が含まれている

13年後の1789年のことです。
フランスの議会が、フランス人権宣言を制定しました。
ここでも、自由と平等が、声高くうたわれています。

(引用。フランス人権宣言)
1.人間は自由で権利において平等なものとして生まれ、かつ生きつづける

国民は、自由と平等の実現を渇望していました。
フランスでは、革命によって、念願の権利を手にいれることができました。
その後、自由と平等の理念は、ナポレオンによって、各国へ輸出されます。
ヨーロッパにおいて、自由と平等の社会が実現しました。
結果、人々は皆、しあわせになれたのでしょうか。
なれません。
自由と平等は、強者と弱者の2つの階層をうみだしました。
平等とは、結果の平等ではありません。
だれもが等しく、競争のスタートラインにつくことができる、という意味です。
アメリカ独立宣言やフランス人権宣言が言明しているのは、結果の平等でなく、機会の平等です。
競争ですから、当然、勝つひとと負けるひとにわかれます。
敗者は以後、社会的弱者として、悲惨な生活を余儀なくされました。
自由と平等だけでは、基本的な権利としてふじゅうぶんである。
こうした憤懣を背景にして、主張されていくのが、社会権です。
具体的には、国家に対して、人間らしい生活の実現をもとめる権利のことです。
ちなみに、1946年に公布(施行は1947年)された日本国憲法では、3つの事柄を保障しています。

(参考。日本の社会権)

<生存権>
第25条
①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

<教育を受ける権利>
第26条
①すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
②すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

労働基本権(勤労権+労働三権)
第27条
①すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。(勤労権
②賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③児童は、これを酷使してはならない。

第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。労働三権

以上の3つを総称して、社会権と言います。
社会的弱者(生活するお金がないひと、子女、労働者)が、ひとたるに値する生活の実現をもとめる権利です。
冒頭で、ふれました。
世界で最初に、社会権を確立したのが、ドイツです。
1919年のことでした。
ワイマール憲法の中身をみてみます。

<ワイマール憲法>
第1条
ドイツ共和国は共和国である。国家権力は国民に由来する。

共和国とは、王のいない国のことです。
ワイマール憲法は、君主政を廃止しました。

第20条
ドイツ議会はドイツ国民の選出する議員で構成される。
第21条
議員は、普通、平等、直接および秘密の選挙において、比例代表の諸原則に従い、満20歳以上の男女によって選出される。

この条文から、男女の普通選挙による議会政治が実現したということがわかります。

第48条
ドイツ国内において、公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、またはそのおそれがあるときは、ドイツ大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。
この目的のために、ドイツ大統領は一時的に第114条(人身の自由)、第115条(住居の不可侵)、第117条(信書・郵便・電信電話の秘密)、第118条(意見表明の自由)、第123条(集会の権利)、第124条(結社の権利)、および第153条(所有権の保障)に定められている基本権の全部または一部を停止することができる。

第151条
経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保障することを目ざす、正義の諸原則に適合するものでなければならない。

この規定によって、社会権のひとつである生存権がみとめられました

第153条
所有権は憲法により保障される。

第159条
労働条件と経済条件の維持と改善とを目ざす団結の自由は、あらゆる人々とあらゆる職業に対して保障される。

こちらも社会権です。
労働基本権の根幹をなす団結権が明記されました。
団結権とは、労働組合をつくることができる権利です。
ごらんのとおり、ワイマール憲法は、当時としてはもっとも民主的な憲法でした。
唯一、濫用の危険があったのが、上述の第48条です。
大統領の緊急命令権とよばれていました。
不測の事態があった場合は、公共の秩序を回復するために、基本的人権に関する諸規定を一時的に停止することがみとめられていました。
憲法の制定から13年後のことです。
1932年11月の選挙で、ヒトラーが率いるナチ党(ナチス)が、第1党となります。
翌年の1月、ヒトラーは首相に就任します。
なぜ、ヒトラーは、国民の支持をあつめることができたのでしょうか。
自著につぎの一節があります。

(アドルフ=ヒトラー著 平野 一郎訳「我が闘争」角川文庫刊より、引用。改行を施しています。)

<一部分を引用。ヒトラー>
大衆の心情は単純で幼稚である。
小さな嘘より大きな嘘に引っかかる。

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大衆の理解力は小さく、忘却力は大きい。
効果的な宣伝はスローガンのかたちでくりかえせ。

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人々はヒトラーを熱狂的に迎え入れました。
ヒトラーの演説を聞くと全身が痺れたようになる、と歓喜するひとが続出しました。
ヒトラーは、先にみたワイマール憲法の第48条を利用して、独裁政治をおこないます。
国民の選択によって、民主主義が滅亡したのです。

(ハフナー著 山田義顕訳「ドイツ帝国の興亡 ビスマルクからヒトラーへ」平凡社刊より、引用。改行を施しています。)

1933年3月5日の国会選挙から同年夏までのドイツでは、当時の人々が「国民的高揚」または「国家社会主義(ナチス)革命」と呼んだ、完全な雰囲気の転換があった。
「国民的高揚」は、一つはここに至る数年間の政治的に不確実な状態に対する倦怠と民主主義からの救済と解放をもたらす、秩序と確固たる意志を有する指導者を望んだことと、一つはかつてのような君主政治や貴族政治は望まなかったことの二つの根を持っている。
そこにヒトラーが登場したことは、広汎な国民に次のような信念が形成された。

「今は、偉大な時代、国民が再び統一され、ついに国民の神の使い、民衆の中からよみがえった指導者を見つけた時代である。彼は、規律と秩序のために尽力し、全国民の力を統合し、ドイツ帝国を新しく、偉大な時代へと導くであろう、と」
と。

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ヒトラーは、その後、数百万人のユダヤ人を虐殺しました。

(大澤武男著「ヒトラーとユダヤ人」講談社現代新書より、引用。改行を施しています。)

<一部分を引用>
すでに開始されていたユダヤ人の絶滅作業を全ヨーロッパ規模で組織化、行政化するための会議は、1941年12月9日に開催される予定であったが、おそらくその前日に日本が真珠湾攻撃を行い、太平洋戦争に突入、ヒトラーも11日に対米宣戦を布告せざるをなったために延期され、翌年1月20日にベルリンのヴァンゼーで開催された。
(略。)
(そ)の議事録によると、ハイドリッヒは、ヒトラーの指示、認可によって強制輸送を西から東に始めたことを明言し、そのヨーロッパ・ユダヤ人の《最終解決》の対象は1千万人のユダヤ教徒ユダヤ人のみであり、ニュールンベルク法によりユダヤ人と規定される者は含まれないと述べている。
東方に送られたユダヤ人は男女別に労働可能な者は道路工事などで使役し、そこで生き残った者は生存能力が高いので、それに対応する処置がとられること、ヨーロッパ各地からのユダヤ人の輸送には外務省が保安部とともに組織化にあたること、ユダヤ人混血者が強制輸送を免れるためには、不妊手術が義務づけられること、などが述べられた。
会議参加者のアイヒマンの証言によれば、この会議で殺害の方法として毒ガス、チクロンBが使用されることとなった。

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(芝健介著「ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」中公新書より、引用。)

<一部分を引用>
ナチス・ドイツによるユダヤ人大量殺戮をホロコーストという。
この言葉は、もとはユダヤ教神殿に捧げられる羊などの供物のことで、1978年にアメリカで放映されたナチスのユダヤ人迫害を描いたTVドラマの題名とされて広まった。
ヒトラー・ナチスのユダヤ人政策は、1935年のニュルンベルク法制定から本格化し、はじめは公民権剥奪、国外追放という手段がとられたが、大戦開戦後はドイツの占領地域のユダヤ人に適用され、一時はヨーロッパのユダヤ人のマダガスカルへの強制移住が計画された。
そして42年の1月にヴァンゼーで開催されたナチス首脳会議において、「最終的解決」がはかられることとなり、アウシュヴィッツなどの強制収容所でのガス室などによる大量殺戮が決定された。
戦争が終わるまでに、ゲットーや各地の強制収容所で餓死、射殺、ガス殺その他の手段で殺されたユダヤ人の数は、560万から590万に上る。
ユダヤ人以外にも、ドイツ人も含む精神障害者7万人の安楽死や、ロマ(ジプシー)約50万人が殺されている。

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以上、歴史を簡単にふりかえってみました。
ぼくは、ヒトラーに関しては、こうした事実よりも、フロム(1900年 ~ 1980年)の考え方に強く惹(ひ)かれます
フロムは、ドイツの精神分析学者です。
ヒトラーが政権を掌握したあと、アメリカへ亡命します。
その後、分析学の視点から、ファシズムが支持を得た背景を研究しました。
なぜ、ドイツは、民主的な国から、自由と尊厳を否定する全体主義国家へ変貌したのでしょうか。
フロムの説をご紹介します。

「◯◯からの自由」

フロムによりますと、近代人は伝統的権威から解放されて自由を手に入れた、とされます。
伝統的権威というのは、人々を伝統や慣習というかたちでしたがわせるやり方です。
定義づけたのは、マックス=ウェーバー(1864年~1920年)です。
伝統的支配と称しました。
支配の別の形態として、カリスマ的支配(偉人にしたがう)、合理的支配(法にしたがう)があります。
3つをあわせて、支配の正当性、と言います。
これは、人々が自発的にしたがい、支配されることを承認する在り方のことです。
はなしをもどします。
フロムは、伝統的支配から逃れた自由のことを
「◯◯からの自由」
と表現しました。
これは、国家や権力者からの支配や干渉をうけずに生きる自由のことです。

「◯◯への自由」

人々は、「◯◯からの自由」を手に入れました。
いっぽうで、うしなったものがあります。
それは、他者との絆(きずな)です。
個々人は孤立します。
自由であることへの孤独と不安感に苛(さいな)まれます(苦しめられます)。
結果、大衆は、自由を捨てて、力のあるものに従属します。
安心感を得るためです。
ドイツでは、こうした自由からの逃走がひろがり、ヒトラーの登場を招来させたと主張します。
フロムは、歴史的経験をふまえて、こう力説します。
自由から逃走するのではなく、みずから進んで他者とむすびあい、「◯◯への自由」を実現していくべきである、と。
「◯◯への自由」とは、自分自身で主体的に行動する自由です。
自分のやりたいことができる、なりたいものになれるという自由です。
香西咲さんはいま、「◯◯への自由」をめざしているのだろうと、ぼくは勝手に考えています。
香西咲さんが、自分の意思で自由に行動することができる。
そのような日がくることを願っております。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
 私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
 だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)

(明日のブログへつづく)



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