昨日、人身売買法(刑法第226条の2)についてふれました。
もう一度、刑法の条文を確認します。
(参考。刑法)
<第226条の2。2005年に新設>
人を買い受けた者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
2 未成年者を買い受けた者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。
5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、2年以上の有期懲役に処する。
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条文を要約します。
下記の行為をおこなった場合に処罰される、とさだめられています。
<購入について>
●20歳以上の人間を買った。
●20歳未満の人間を買った。
●つぎのことをするために、人間を買った。
・営利
・わいせつ
・結婚
・殺傷
●国外に移送する目的で、人間を買った。
<販売について>
●つぎのことをたくらむ輩(やから)に、人間を売った。
・営利
・わいせつ
・結婚
・殺傷
●国外への移送をたくらむ輩(やから)に、人間を売った。
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ライトハウスの藤原志帆子代表は、この規定だけではふじゅうぶん、と指摘します。
先月末に発売された日経WOMANで、つぎのように語っています。
(2017年2月28日 日経WOMAN2月号「オリンピックイヤーに向け、法整備を!働く女性にこそ知ってほしい ヒューマン・トラフィッキング(人身取引)」より、引用。)
<一部分を引用>
日本では刑法で人身取引に該当する行為は犯罪とされているものの、
「被害者の保護は他の先進国と比べて非常に限定的です。性産業における搾取被害をなくするには、人身取引を根絶するための制度・法律が必要です。諸外国では既に立法化されています」
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(再掲)
「被害者の保護は他の先進国と比べて非常に限定的」
アメリカも、同様の認識です。
(アメリカ国務省人身取引監視対策部 「2014年人身売買報告書(日本に関する部分)」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
日本政府は人身取引対策の法律を執行する取り組みを続けた。
日本の刑法は、国際法上義務付けられているあらゆる形態の人身取引を禁止していない。
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(再掲)
「あらゆる形態の人身取引を禁止していない」
日本の場合は、どのようなところが欠けているのでしょうか。
(2015年7月31日 ウートピ「『中学生の弟も性被害に遭った』 被害者5万4,000人にも上る、日本の性的搾取の実態」より、引用。改行を施しています。)
<小川たまかさん>
アメリカの国務省から人身取引を激しく非難されたことなどをきっかけとして、2005年に人身売買罪が新設されています。
こちらでは法的な枠組みとして不充分なのでしょうか?
<藤原志帆子 ライトハウス代表>
人身売買罪は金銭を提示して人を売り買いすることを禁止する法律です。
(参考。刑法 第226条の2)
人を買い受けた者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
2 未成年者を買い受けた者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。
5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、2年以上の有期懲役に処する。
<藤原志帆子 ライトハウス代表>
売春やポルノ出演を強要するような「搾取」に関する罪ではありません。
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第226条の2のなかには、AV出演強要がふくまれていないようです。
この記事が配信されたのは、2015年7月31日です。
当時はまだ、出演強要被害が公然化していません。
香西咲さんのツイッター(2016年7月17日)より、引用。
何故今更告発?
皆様の1番の疑問はそこでしょう。
私は辞める時に弁護士会もセックスワーカー御用達の弁護士もその他5件以上の弁護士を当たっています。
が、当時は今の時代と違い『立証しにくい』と門前払いされました。
このタイミングで週刊文春様はいい意味で私を起用してくださりました。
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(伊藤和子HRN事務局長のツイートより、引用。改行を施しています。)
<2016年7月18日>
5年前、この問題を門前払いしていたことを、法曹界は深刻に受け止めるべきですね。
でも、1年前も事件に着手する弁護士は増えたものの、解決は難しい状況でした。
約1年前の弁護士の対策会議は暗い話ばかり。
大きく変わったのはこの1年です。
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弁護士同様、警察も頼りになりませんでした。
(ログミーに掲載されたKさんの手記より、引用。改行を施しています。)
ようやく支援団体(PAPS)に助けを求めた日に、警察にも助けを求めました。
警察の人の協力もすこしは得られました。
しかし、警察の人はプロダクションに事情を聴いたあとで、私に対して
「あと2本出演したらどうか」
と言ってきました。
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プロダクションは、女性に対して、2,460円の違約金を請求しました。
PAPS(パップス)世話人の宮本節子さんは、かつて、つぎのように慨嘆して(なげきいきどおって)いました。
(2016年1月25日 賃金と社会保障「まだ可視化されていないアダルトビデオ産業の性暴力被害と若者の貧相」より、引用。)
<31ページ>
これらの法(職業安定法第63条2号、労働者派遣法第58条)を適用して(AV出演強要被害の)女性救済に役立てようという発想が、取り締まり当局にないのだろうか。
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昨年の6月11日のことです。
警察は、労働者派遣法を適用しました。
プロダクションの社長ら3人を逮捕します。
つい最近も、労働者派遣法違反の容疑で、プロダクションの社長ら2人を書類送検しました。
(2017年2月27日 産経新聞「女性の取り分は15万円だった…20代女性をAVに派遣容疑 スカウト集団の男ら4人書類送検 大阪府警」より、引用。改行を施しています。)
路上でスカウトした20代女性をアダルトビデオ(AV)のプロダクションに紹介したとして、大阪府警保安課は27日、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで、スカウト集団「絆」メンバーの男(21)と上部組織「DIX(ディス)エンタープライズ」AV部門責任者の男(31)を書類送検した。
いずれも容疑を認めているという。
また、この女性をAV制作会社に派遣したとして、労働者派遣法違反容疑で、AVプロダクション「クローネ」(東京都目黒区)社長の男(32)ら2人も書類送検した。
2人は「女性は個人事業主で、当社が雇用していない」と容疑を一部否認している。
(後略。)
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2015年7月31日に、藤原志帆子ライトハウス代表は、こうおっしゃっています。
「(人身売買法は)売春やポルノ出演を強要するような「搾取」に関する罪ではありません」
と。
現在は、状況がかわりました。
伊藤和子HRN事務局長がつぎのようにのべています。
(2017年2月27日 日刊スポーツ「AV出演強要問題は深刻な犯罪 人権団体HRN」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
伊藤氏は、AV出演の強要について
「刑法の人身売買罪も適用すべき深刻な犯罪」
と指摘する。
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今後は、虫けらたちが、人身売買罪で検挙されることも考えられます。
(2017年2月28日 日経WOMAN2月号「オリンピックイヤーに向け、法整備を!働く女性にこそ知ってほしい ヒューマン・トラフィッキング(人身取引)」より、引用。)
<一部分を引用>
人身取引とは、まるで歴史の教科書に出てくるような言葉だが、実はAV出演や売春の強要など、日本でもたくさんの被害者がいる現代の社会問題だという。
政府は20年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向け、
「人身取引対策行動計画2014」
に基づいて対策に取り組み、人身取引の根絶をめざすとしている。
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人身取引ということばがあります。
人身売買よりもひろい概念です。
人身取引とよばれるものには、労働搾取、性的搾取、臓器売買があります。
3年後のオリンピックにむけて、政府は、人身取引の根絶をめざしています。
(2016年年5月 「人身取引対策に関する取組について」より、引用。改行を施しています。)
<1ページ>
1 はじめに
人身取引は重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められている。
これは、人身取引が、その被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらし、その損害の回復は非常に困難だからである。
また、人身取引は国境を越えて行われる深刻な犯罪であり、人身取引対策に対する国際社会の関心は高い。
政府では、こうした関心を背景に、平成26年12月、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた「世界一安全な国、日本」を創り上げることの一環として、人身取引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となって総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため、「人身取引対策行動計画2014」(以下「行動計画2014」という。)を策定し、これに基づいて対策に取り組んでいる。
(後略。)
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具体的なことは、人身取引対策行動計画2014に書かれています。
みてみます。
(2014年12月16日 犯罪対策閣僚会議人身取引対策行動計画2014より、引用。改行を施しています。)
<2ページ>
また、我が国では外国人材の活用を進めていくこととしているほか、2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて外国人の往来の増加が期待される。
このような中で、我が国が人身取引被害者の受入国とならないよう、引き続き、人身取引対策に積極的に取り組んでいくことを示すことも重要となる。
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重要なのはつぎです。
<2ページ>
さらに、日本人女性が性的搾取の対象とされ、人身取引の被害者となる事例もあり、女性の活躍促進という観点からも、人身取引対策を適切に推進することが、社会において女性が安心して一層活躍できる環境整備の一助ともなる。
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政府は、女性の性的搾取についても言及しました。
<2ページ>
そこで、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた「世界一安全な国、日本」を創り上げることの一環として、人身取引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となってより強力に、総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため、「人身取引対策行動計画2014」を策定し、人身取引の根絶を目指すこととする。
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政府は、オリンピックまでに、人身取引の根絶を目指すと宣言しています。
性的搾取は、人身取引のなかにふくまれています。
AV業界が悪事をはたらけるものあとわずかです。
オリンピックまでには、根絶されているでしょう。
プロダクションの関係者も、恐々としているようです。
(2016年12月16日 トカナ「3年以内にAV女優に美人がいなくなる…! 東京五輪で風俗界に大激震、“ソープ斡旋逮」より、引用。改行を施しています。)
<AVプロダクションの関係者>
(前略。)
(略)、AV強要などで槍玉に上がったプロダクションは、“みせしめ”のために警視庁からマスコミにリークされている可能性が囁かれているのです。
これらは、東京五輪に向けて、東京をグローバルスタンダードに合わせようとする流れの一環で、風俗やAV業界全体のイメージ低下を悪くするのが目的だとみる者もいる。
ゆくゆくは、モザイク処理に関してやAVの販売ルート、AVプロダクションからAVメーカーまですべてを監視下に置くつもりだとか。
AV業界は摘発や逮捕がこの後も続くとみて、戦々恐々としていますよ。
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AV業界は、女性から搾取することによってなりたっています。
政府は、性的搾取の根絶を宣言しています。
今後、メーカーやプロダクションは存続できるのでしょうか。
業界の将来を想像するたびに、嗤(わら)いがとまりません。
(2017年2月6日 産経新聞「【東京五輪あと1264日】AV出演強要、根絶を」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
コンビニに入ると、成人雑誌が簡単に目に入る。
成人向けDVDが付属したものも多い。
「日本を視察した国際オリンピック委員がこの光景に顔をしかめた」
との報道もあり、多くの外国人の訪日が見込まれる東京五輪までに何らかの規制が必要だという声もある。
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こちらについても、政府の賢明な判断を期待しています。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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