業界は、依然として、出演強要の実態をみとめません。
頑(かたく)なです。
国民は皆、切歯扼腕(せっしやくわん)しています。
切歯(せっし)とは、歯ぎしりのことです。
扼腕(やくわん)は、自分の腕をにぎりしめることです。
誰もがいま、自分の感情をおさえきれずに、甚(はなは)だしく憤(いきどお)っています。
「なぜ事実をうけいれて謝罪しないのだ」
と。
業界はまったく、意に介しません。
静謐(せいひつ)をつらぬいています。
傍目には、威風堂々としているような感もあります。
業界人はなぜ、平然と白(しら)を切っているのでしょうか。
理由は簡単です。
いまのところは、出演強要で有罪となった事例がないからです。
業界は「無傷」です。
これが論証の根拠となっているのでしょう。
辻丸さんはつぎのようのおっしゃいます。
<2016年12月6日>
業界は出演強要が立件されない事を免罪符にしてるようだが、多くの相談が寄せられながら一件も犯罪として認定されない事こそ女性差別、性犯罪への偏見だとなぜ一部のフェミやSW擁護陣は問題視しないのか?
(後略。)
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業界のひとたちは、おそらくこう言いたいのでしょう。
「出演強要など存在しない。現におれたちは国家から御墨付(保証)をもらっているのだから」
と。
昨年の6月の案件が、業界を不遜にさせた(思いあがらせた)のかもしれません。
ふりかえってみます。
(6月12日 産経新聞「大手AVプロダクション元社長ら逮捕 女性『出演強要された』 労働者派遣法違反容疑」より、引用。改行を施しています。)
経営していた芸能事務所に所属していた女性を、実際の性行為を含むアダルトビデオ(AV)の撮影に派遣したとして、警視庁が(6月)11日、労働者派遣法違反容疑で、大手AVプロダクション「マークスジャパン」(東京都渋谷区)の40代の元社長ら同社の男3人を逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。
女性が「AV出演を強いられた」と警視庁に相談して発覚した。
(中略。)
複数の女性が類似の相談をしており、メーカー側も女性が嫌がっていることを知った上で撮影していたとみられる。
警視庁はマークス社やグループの「ファイブプロモーション」(同)を家宅捜索。
メーカーの「CA」(港区)、「ピエロ」(練馬区)も捜索した。
(後略。)
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産経新聞の別の記事をみてみます。
(2016年6月12日 産経新聞「違約金を払え」「親に言うぞ」とAV出演を強要… 横行する悪質な勧誘や契約 業者の常套句は「誰にもばれない」より、引用。改行を施しています。)
<※一部分を引用>
関係者によると、今回、警視庁に相談した女性はグラビアモデルとして平成21年に契約。
ところがその後「AVの撮影をする」と告げられて、撮影現場に連れられた。
女性は拒否したが契約を理由に「違約金を払え」「親に言うぞ」などと迫られ、数年間にわたり繰り返し出演せざるを得なかったという。
捜査関係者は「家宅捜索時、関係者らは捜索を受けた理由についてピンときていなかったようだ」と明かす。
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読売新聞も参照します。
(2016年6月12日 読売新聞「モデル女性 AV出演強制 派遣法違反容疑 芸能プロ社長ら逮捕」より、引用。改行を施しています。)
所属モデルを強引にアダルトビデオ(AV)の撮影現場に派遣したとして、警視庁が(6月)11日、東京都渋谷区の芸能プロダクションの社長ら男3人を労働者派遣法違反容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。
同庁は、男らが内容を知らせないまま交わした契約書を悪用して出演を強要したとみて調べている。
捜査関係者によると、社長らは2013年頃、所属していた当時20歳代の女性モデルを本人の意思に反して都内の撮影現場に派遣した疑い。
女性との所属契約にはAV出演をほのめかす内容があったが、本人には契約書のコピーを渡さず、内容を知らせていなかった。
女性が撮影を拒もうとすると、「違約金が発生する」などと迫り、出演させたという。
(後略。)
(※この記事はネットで配信されていません。)
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「メーカー側も女性が嫌がっていることを知った上で撮影していた」
記事を読むかぎり、プロダクションとメーカーが出演強要をおこなったのは明白です。
後日、両者に厳罰がくだったのでしょうか。
残念ながら、出演強要の罪で処罰されることはありませんでした。
結果は、つぎのとおりです。
●プロダクション
<マークスジャパン>
●2016年7月1日
・マークスジャパン・・・・・・罰金100万円(労働者派遣法違反)
・元社長 村山典秀(49歳)・・・・・・罰金100万円(労働者派遣法違反)
・社長 古指隆士(50歳)・・・・・・罰金80万円(労働者派遣法違反)
・従業員 高橋慶将(34歳)・・・・・・罰金60万円(労働者派遣法違反)
●メーカー
<CA>
●2016年5月
・家宅捜索
●2016年7月9日
・社長ら7人を書類送検(公然わいせつの疑い)→不起訴
<ピエロ>
●2016年5月
・家宅捜索
●2017年1月11日
・社長ら6人を逮捕(わいせつ電磁的記録等送信頒布の疑い)
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ご覧のとおり、だれも、出演強要で処罰されていません。
昨年の10月のときもそうでした。
業界人の南雲豊作が、売春防止法違反で逮捕されました。
(2016年10月15日 読売新聞「売春場所提供の疑い=東京」より、引用。改行を施しています。)
警視庁は(10月)14日、ソープランドの実質経営者でNPO法人理事の南雲豊作容疑者(57)(荒川区南千住)ら4人を売春防止法違反(場所提供)容疑で再逮捕したと発表した。
同庁幹部によると、4人は9月11日、台東区千束のソープランド「ラテンクオーター」で、女性従業員が男性客相手に売春すると知りながら個室を提供した疑い。
同店は昨年1月以降、約3億円を売り上げていた。
南雲容疑者は東日本大震災被災者の支援団体への寄付活動を行うNPO法人「ふれあい会」の代表。
今年9月、同区の系列店で売春場所を提供したとして、同法違反容疑で逮捕されていた。
(※この記事は、ネット配信されていません。)
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記事を一読したかぎりでは、出演強要と関係のない事案です。
なぜマスコミは、大きくとりあつかったのでしょうか。
(2016年10月21日 FRIDAYデジタル「吉原ソープランドのドンが原宿署に逮捕された理由」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
「吉原の高級ソープが売春防止法違反で摘発されましたが、実は狙いは別にあるんです。現場の吉原は浅草警察署の管轄ですが、今回動いたのは原宿警察署。いま注目を集めているAV女優の出演強要問題とつながっているんです」(全国紙社会部記者)
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強要問題が関係していたようです。
<一部分を引用。FRIDAY>
吉原には、南雲容疑者の経営する店以外にもAV女優が所属している店はたくさんある。
その中で、彼の店が狙い撃ちされたのには理由があった。
前出の風俗ライターが解説する。
「今回の事件の発端は、南雲容疑者が経営する芸能プロでのAV出演強要問題なんです。所属していた女優が無理矢理ビデオに出演させられたということで、その彼氏が、弁護士に相談し、原宿署に被害届を提出したんです」
しかし、出演強要での立件が難しかったようで、ひとまず売春防止法で引っ張ることにしたという流れだ。
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(再掲)
「事件の発端は、(略)AV出演強要問題」
「出演強要での立件が難しかった」
「ひとまず売春防止法で引っ張ることにした」
業界人はさらに自信を深めたはずです。
出演強要の廉(かど)で逮捕されることはない、と。
ピエロのときもそうでした。
上述したとおり、今月の11日に、ピエロの社長ら6人が逮捕されました。
こちらについても、警察の主たる狙いは、出演強要であると推量します。
(2017年1月11日 朝日新聞「無修正わいせつ動画を公開の疑い 制作会社社長ら逮捕」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
今回の事件は、被害女性が
「撮影された動画を勝手に無修正で配信サイトにアップされた」
と同庁に相談し、捜査を進めていた。
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当該事件の逮捕容疑も、出演強要ではなく、わいせつ電磁的記録等送信頒布です。
昨年の11月に、あるメーカーの社長がこう語っています。
「現状では強要はないと思う」(withnews)
と。
このひとをふくめて業界人は、今後も自分たちの物言いをまげることはないでしょう。
出演強要で逮捕されないかぎりは。
かつて伊藤和子弁護士は、ご自身のブログのなかで、つぎのように語っていました。
(2015年10月1日「AV違約金訴訟・意に反して出演する義務ないとし請求棄却。被害から逃れる・被害をなくすため今必要なこと」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用。伊藤和子弁護士>
今回のケース(違約金2,460万円を請求)では、女性が警察に救いを求めたところ、警察が業者との間に入ったものの、「あと2本出演してはどうか」などと警察官自らが持ちかけてきた。
警察はあくまで力づくで強要しようとするプロダクションを強要罪で逮捕するなどの厳正な対処をすべきであった。
このような対応は今後到底許されない。
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(再掲)
「このような対応は今後到底許されない」
早期に、出演強要をとりしまる法律が制定されることを願っております。
ふと、青山さんの言説を思い出しました。
(2016年12月17日 弁護士ドットコム「AV規制強化『議論の場に業界関係者を』神戸大・青山教授に聞く」より、引用。改行を施しています。)
<一部分を引用>
HRN報告書の結論は、だから法を改正したり適用を改めることに先駆けて、AV業界に特化した新たな法をつくり、監督省庁を定めて業界を監督すべきという提言になっています。
その前提は「AVは若い女性等の無知、困窮に乗じて勧誘がおこなわれ、ひとたび契約書にサインしたが最後、違約金の威嚇や契約書上の義務を盾に、意に反する作品への出演にも従わざるをえない状況に陥れ、結果的に女性たちを搾取している」というものです。
「AV強要問題」が、いつの間にか「全AV問題」になっているのです。
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(再掲)
「『AV強要問題』が、いつの間にか『全AV問題』になっている」
青山さんが言いたいのはこうです。
「AV強要問題がおきたからといって、AV業界に特化した新たな法をつくり、監督省庁を定めて業界を監督するのはおかしいではないか」
と。
青山さんの思いとは別に、AV強要問題は全AVにかかわる問題である、ということが実証されてしまいました。
昨年から今年にかけて警察が適用した法律を列記します。
・労働者派遣法
・売春防止法
・職業安定法
・刑法175条(わいせつ電磁的記録等送信頒布)
業界人は、いたるところで法をおかしていました。
AV強要問題は、全AV問題である、ということがわかります。
昨年、NHKで放映された「クローズアップ現代+」のなかに、つぎのような場面がでてきます。
(2016年7月25日 クローズアップ現代+「私はAV出演を強要された~“普通の子”が狙われる~」より、引用。)
<明子さん(仮名)の場合>
裸のまま逃げ出したこともあった。
でもエレベーターの前で捕まえられて、(部屋に)戻された。
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この種の問題についても、今後、歴然と(まぎれもなくはっきりと)なっていくでしょう。
(2016年12月13日 弁護士ドットコム「『AV出演強要』『JKビジネス』内閣府が報告書作成へ…被害実態や課題など盛り込む」より、引用。改行を施しています。)
内閣府「女性に対する暴力に関する専門調査会」は12月13日、2016年度中をめどに、「AV出演強要」や「JKビジネス」の被害実態について、報告書をまとめることを決めた。
(中略。)
報告書の方針について、東京フェミニストセラピィセンター所長の平川和子委員は、
「AVは表現の問題で議論されているが、制作過程で性暴力被害が起きている実態を書き込む必要がある」
と強調。
(後略。)
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(再掲)
「制作過程で性暴力被害が起きている」
AV強要問題は、全AV問題、です。
出演強要をなくさないかぎり、業界は健全化されません。
業界人はこれからも、出演強要はない、と言い張るのでしょうか。
香西咲さんのツイッター(2017年1月1日)より、引用。
AV業界の自浄作用が試される時です。
どなたが矢面に立ち、業界を代表して被害者女性達に謝罪し、今後の改善を約束してくださるのか?
期待が高まります。
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香西咲さんは聡明なかたです。
ここに書かれていることがすべてです。
国民はいま、業界の自浄能力を注視しています。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
香西咲さんを勝手に応援するサイトへ
AVの強要は犯罪だからそれを現行法に基づき取り締まれば良いだけ、というのがAVANや青山氏の主張ですが、そもそもその主張の前提が成り立っていないことが良く分かりました。労働契約に関する法律を見直すことが急務だと思います。