昨日、最高裁がくだしたPTSDと傷害の関係についてご紹介しました。
画期的な判決でした。
本日はまず、この事件を第一審からふりかえってみます。
(2007年10月19日 中国新聞より、引用。改行を施しています)
<※注 以下の記事は、孫引きです。>
東京地裁は(2007年10月)19日
「若い女性を脱出困難な心理に陥れ、お仕置きと称した暴力や性的行為を繰り返した。絶望的な恐怖感と甚大な苦痛を与え、反省の姿勢も全くうかがえない」
として、懲役14年(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。
石島被告は
「女性はいつでも離れられる状態で監禁ではない」
と無罪を主張したが、高橋徹裁判長は
「理解し難く、信用性に乏しい」
と判断。
(略。)
その上で
「被告に仕える誓約書を被害女性に書かせたほか、暴行を望んでいるかのような発言を無理にさせて録音したり、電子メールや日記に被告に好意を抱く記載をさせるなど卑劣で巧妙な犯行」
と批判した。
(略。)
判決によると、石島被告は2003年12月~2004年12月、青森県や東京都の自宅などで、当時10代~20代の女性四人に
「逃げたら殺す」
「ご主人さまの言うことが聞けないのか」
と脅し、殴るなどして相次いで監禁。
包丁で手首を切らせたり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを負わせたりした。
(後略。)
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(再掲)
「被告に仕える誓約書を被害女性に書かせ」る。
「暴行を望んでいるかのような発言を無理にさせて録音」する。
「電子メールや日記に被告に好意を抱く記載をさせる」
出演強要をおこなっているプロダクションの手口を彷彿させます。
犯罪者の悪計(悪だくみ)には、類似性があります。
この事件につきましては、3日前の当ブログでもふれています。
(参考)
・2017年1月6日
そのさいに引用した新聞記事を再掲させていただきます。
(2016年3月29日 産経新聞「少女誘拐 監禁、逃げられぬ恐怖 洗脳状態、過去にも同種事」より、引用。改行を施しています。 )
<一部分を引用>
(略)、激しい暴力で少女らを支配下に置いたケースとしては、17年(平成17年。2005年)5月に監禁容疑で逮捕された男による女性4人に対する監禁事件がある。
男は都内のホテルや自宅などに少女=当時(18)=らを監禁し、部屋に鎖付きの首輪でつないだ上、「ご主人さま」「皇子(おうじ)」などと呼ばせていた。
さらに「ヤクザが見張っている」などと脅した上、熱湯をかけるなどして恐怖心を植え付け、逃走をあきらめさせていた。
女性は保護後、「ペットでも奴隷でもいいから一生置いてもらうしかないと思った」と証言するなど、“洗脳状態”にあったことを明かした。
(※この記事は、ネット配信されていません。)
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産経新聞は、第一審判決のあと、つぎの報道をおこないました。
(2007年10月19日 産経新聞より、引用。改行を施しています)
<一部分を引用。※注 以下の記事は、孫引きです。>
小林被告は、被害者を
「被害者と称する人」
と表現してうそつき呼ばわり。
各被害者に対して
「何を言っても許されると思っている」
「さも悲劇のヒロインになりたがっている」
「ちょっとオツムが弱いところがある」
などと、侮蔑の言葉を投げつけた。
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これも似ています。
(2016年6月16日 リテラ「AV業界に強要はあるのか」より、引用。改行を施しています。)
●「AV業界はこんなんぢゃないよ。無理やりとかもなぃ! 同意して、撮影する前にもちゃんと自分でサインするんだょ?ありえねー! 同じAV女優として悔しい」
●「300本以上出演してる女優さんが 強要されました なんて 何故 信用するの? てゆーか!無理やりAV出演とか、いつの時代の話ですかー? なりたくてもなれない女の子もいるってーのに アホくさ そもそも無理やりやる仕事ぢゃないし」
●「もし芸名言えば、知ってる皆さんは『強要?嘘でしょ?!あの娘なんて超楽しんで女優やってたのすごい有名じゃん!』」って全員思うはずです」
●「痴漢の冤罪と似てるよね。承諾して出演したのに、何かあったらそれを武器に訴える人は少なくない。もちろん、冤罪ばかりではないだろうけど、有名事務所で強要なんてまぁないだろうかと」
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人間というのは、綿々と(絶えることなく)同じような糊塗(ごまかし)をくりかえす種族のようです。
事件にもどります。
地裁判決のあと、被告は、控訴しました。
高裁は、これを棄却します。
PTSDは傷害に該当しない、との主張をゆずらない被告は、最高裁に上告しました。
逮捕からの流れを簡単に記します。
①2005年05月12日・・・・・・逮捕
↓
②2007年10月19日・・・・・・東京地方裁判所判決「懲役14年」
↓控訴
③2010年09月24日・・・・・・東京高等裁判所判決「棄却」
↓上告
④2012年07月24日・・・・・・最高裁判決
昨日のブログでも記しました。
2012年7月24日、最高裁判所は、はじめて、PTSDと傷害の関係について、判断をしめしました。
日本経済新聞の記事を再掲します。
(2012年7月26日 日本経済新聞「『PTSDも傷害』最高裁初判断 連続女性監禁、懲役刑確定へ」より、引用。改行を施しています。)
東京都と青森県で女性4人を相次いで監禁し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、監禁致傷などの罪に問われた無職、石島(旧姓小林)泰剛被告(31)の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は25日までに(判決日は2012年7月24日)、被告側の上告を棄却する決定をした。
懲役14年とした一、二審判決が確定する。
決定は24日付。
同小法廷は「監禁行為により、各被害者にはPTSDの特徴的な症状が継続して表れており、こうした精神的機能の障害を引き起こした場合も刑法の傷害に当たる」と指摘。
被害者に外形的な傷がなくても傷害に当たるとの判断を最高裁として初めて示した。
裁判官4人全員一致の結論。
(後略。)
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判決文は、裁判所のサイトでみることができます。
(最高裁判所判例集から、引用。)
<判示事項>
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者に外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させた場合について,監禁致傷罪の成立が認められた事例
<裁判要旨>
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者が,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認められる場合,同障害の惹起は刑法にいう傷害に当たり,監禁致傷罪が成立する。
<参照法条>
刑法221条(監禁),刑法204条(傷害)
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全文は、以下のとおりです。
(最高裁の判決文より、引用。改行を施しています。)
(前略。)
原判決及びその是認する第一審判決の認定によれば,被告人は,本件各被害者を不法に監禁し,その結果,各被害者について,監禁行為やその手段等として加えられた暴行,脅迫により,一時的な精神的苦痛やストレスを感じたという程度にとどまらず,いわゆる再体験症状,回避・精神麻痺症状及び過覚醒症状といった医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから精神疾患の一種である外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という。)の発症が認められたというのである。
所論は,PTSDのような精神的障害は,刑法上の傷害の概念に含まれず,したがって,原判決が,各被害者についてPTSDの傷害を負わせたとして監禁致傷罪の成立を認めた第一審判決を是認した点は誤っている旨主張する。
しかし,上記認定のような精神的機能の障害を惹起した場合も刑法にいう傷害に当たると解するのが相当である。
したがって,本件各被害者に対する監禁致傷罪の成立を認めた原判断は正当である。
(後略。)
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被告の主張はこうです。
PTSDは傷害に該当しない。
これに対して、最高裁は、
「精神的機能の障害を惹起した場合も刑法にいう傷害に当たると解するのが相当である」
と判断しました。
既出の日本経済新聞が書いているように、
「被害者に外形的な傷がなくても傷害に当たるとの判断を最高裁として初めて示した」
のです。
ちなみに、下級裁判所は、ほかの事件でもいくつか、PTSDと傷害の関係を認定しています。
ひとつ、ご紹介します。
地方裁判所の判決です。
(2001年4月6日 読売新聞より、引用。改行を施しています。)
<※注 以下の記事は、孫引きです。>
知人の主婦に半年間にわたり500回以上の無言電話をかけ、 心的外傷後ストレス傷害(PTSD)を負わせたとして傷害罪に問われた判決が 奈良地裁であり、裁判官は、
「被害者ばかりか家族にも多大な精神的苦痛を与えた」
として懲役2年6ヶ月の実刑を言い渡した。
無言電話などの見えない暴力によるPTSDを傷害と認定した判決は初めて。
判決によると、被告は昨年(2000年)1月ごろから8月上旬などの深夜から早朝にかけて 何度も嫌がらせの無言電話をかけ、被害者を重い不眠症にさせるなど、治療に約1年を 要する心的外傷後ストレス傷害(PTSD)を負わせるなどした。
(後略。)
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四国新聞もみてみます。
(2001年4月5日 四国新聞「無言電話でPTSD認める/嫌がらせの男に実刑判決」より、引用。改行を施しています。)
知人の主婦に無言電話を繰り返し心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたなどとして、傷害罪などに問われた奈良県菟田野町の測量士見習、円田豊被告(39)の判決が5日、奈良地裁であった。
宮本定雄裁判官は、無言電話とPTSDとの因果関係を認め
「被害者に多大な精神的苦痛を与え、悪質極まりない」
として、懲役2年6月(求刑懲役3年)を言い渡した。
奈良地検によると、電話による嫌がらせが原因のPTSDを、傷害と認定した判決は全国でも初めてという。
(後略。)
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(参考)
<刑法 第204条>
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
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香西咲さんさんのツイッター(2016年6月23日)より、引用。
さて、明日は恐怖のリハビリです。
傷を負ったときはもちろん、
リハビリ期間もめっちゃ辛い。
フラッシュバックだらけ。
でもこれを乗り越えないと治らない。
頑張ります! おやすみなさい
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香西咲さんさんのツイッター(2016年8月27日)より、引用。
嗚呼また衝動的なフラッシュバックをお許しくださいm(_ _)m
でも6年近く誰にも言えなかった事を、最近はメディアの皆様が代弁して下さるので、1人で抱えていたものをやっと吐き出せることが出来ました。
皆様に感謝致します。
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警察はいま、犯罪者たちを厳しくとりしまると明言しています。
(2016年11月21日 読売新聞【※ネット配信は11月28日】「[「AV出演強要の相談、2年半で22件…警察庁まとめ」より、引用。)
<一部分を引用>
(警察庁の担当者は)被害者が相談しやすい態勢づくりに取り組むとともに、今後は弁護士やNGOなどと連携しながら、厳しく取り締まる姿勢を強調した。
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香西咲さんをはじめ、出演強要の被害にあった方々は、PTSDで苦しんでいます。
「厳しく取り締まる」
このことばが巧言でないのならば、警察は、傷害罪で、犯罪者を逮捕すべきでしょう。
警察の分別(ふんべつ)ある行動を期待しております。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■2016年12月28日 香西咲さんのインタビュー記事が、週刊文春に掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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