いま、出演強要問題は、流れに棹(さお)さすものとなっています。
「流れに棹(さお)さす」とは、
「流れに棹(さお)をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進行する」
という意味です。
ちなみに広辞苑には、
「時流にさからう意に誤用することがある」
と書かれています。
よく逆の意味にとらえているひとがいます。
誤用といいますと、ほかにもあります。
「忸怩(じくじ)たる」がそうです。
くやしい、とか、はらだたしい、という意味でつかっているひとがみうけられます。
まちがいです。
おろらく忸怩(じくじ)から、「じくじく」ということばを連想するのでしょう。
忸怩(じくじ)のただしい意味は、「恥じ入るさま」です。
ネット上の落書きには、誤用や文法上の誤りが散見されます。
このひとたちは、忸怩(じくじ)たるおもいをいだいてほしいものです。
IPPAという業界団体も同様です。
恥ずかしくはないのでしょうか。
2016年6月22日に、
「プロダクションにも働きかけ業界全体の健全化に向け早急な改善を促していきたいと思っております」
との謝罪文を発表しました。
その後、蟄居(ちっきょ)の状態がつづいています。
愚かしいかぎりです。
前置きはこれぐらいにして、本論にはいります。
昨日、PAPSの世話人をされている宮本節子さんの論説をご紹介しました。
本日も同じ箇所から一部を引かせていただきます。
<1月25日発売の雑誌「賃金と社会保障」>
(「まだ可視化されていないアダルトビデオ産業の性暴力被害と若者の貧相」の31ページより、引用。)
これらの法(職業安定法第63条2号、労働者派遣法58条)を適用して(AV出演強要被害の)女性救済に役立てようという発想が、取り締まり当局にないのだろうか。
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(参考)
<職業安定法 第63条>
次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
2 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
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<労働者派遣法 第58条>
公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
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HRNの伊藤和子弁護士も、ご自身のブログで、つぎのようにおっしゃっています。
(2016年3月16日 伊藤和子弁護士のブログ「AV強要被害をなくし、救済するために」より、引用。)
<伊藤和子弁護士>
(略)、警察・検察には違法行為を積極的に捜査・起訴し、悪質な被害から女性たちを救済するよう求めます。
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宮本節子さんの物憂いから約半年後のことです。
この種の問題に関心をしめさなかった警察が、悪徳プロダクションの社長らに対して、労働者派遣法58条を適用しました。
頑(かたく)なであった警察を動かした誘因は何なのでしょうか。
昨年の9月からの流れを顧みてみます。
<2015年9月9日>
■悪徳プロダクションから、2,460万円の違約金を請求された女性が、勝訴しました。
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<2016年3月3日>
■HRN(ヒューマンライツ・ナウ)が、出演強要被害に関する報告書を発表しました。
タイトルは、
「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害」
です。
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<2016年3月11日>
■池内さおり議員が国会で、出演強要被害をとりあげました。
<河野太郎国家公安委員長>
「本人の意に反するアダルトビデオへの出演の強制は、これはあってはならない、女性の尊厳を踏みにじるようなものだと思いますし、そうした行為の中で違法行為があれば、法と証拠に基づいて、警察は厳正に取り締まってまいりたいと思っております」
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<2016年4月28日>
■梅村さえこ議員が国会で、出演強要被害をとりあげました。
<河野太郎国家公安委員長>
「アダルトビデオに強制的に出演させられるなんということはあってはならないことでございますので、消費者庁、国家公安委員会、手を携えてしっかりやってまいりたい。これは大きな問題だと思っておりますので、断固この問題については厳正に取り組んでいきたいと思っております」
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<2016年6月2日>
■政府が、
「AVへの出演強要は女性に対する暴力」
との答弁書を閣議決定しました。
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<2016年6月11日>
■悪徳プロダクションの社長らが逮捕されました。
<産経新聞>
「経営していた芸能事務所に所属していた女性を、実際の性行為を含むアダルトビデオ(AV)の撮影に派遣したとして、警視庁が11日、労働者派遣法違反容疑で、大手AVプロダクション「マークスジャパン」(東京都渋谷区)の40代の元社長ら同社の男3人を逮捕した(略。)」
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<2016年7月1日>
■悪徳プロダクションの社長らが有罪となりました。
<読売新聞>
「(東京簡裁)は同日(7月1日)、村山容疑者を罰金100万円、古指容疑者を同80万円、高橋容疑者を同60万円、同社を同100万円とする略式命令を出した」
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<2016年7月7日>
■香西咲さんが週刊文春(7月14日号)で、出演強要被害を告発されました。
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<2016年7月14日>
■香西咲さんが週刊文春(7月21日号)で、出演強要被害を告発されました。
■くるみんアロマさんがwithnewsで、出演強要被害を告発されました。
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<2016年7月25日>
■NHKの「クローズアップ現代+」で、出演強要被害がとりあげられました。
「私はAV出演を強要された~“普通の子”が狙われる~」(動画。Dailymotionより)
<2016年9月7日>
■読売新聞が、AV出演強要被害についての特集記事を掲載しました。(※ネット配信は、9月20日)
巷間、読売新聞を読めば政府の意向がわかるといわれています。
連載終了後の論考において、同紙は、
「連載では、『モデルにならないか』などと言葉巧みに勧誘された女性が、AV(アダルトビデオ)の出演を強制される被害が相次いでいる実態を報じた」
と記しました。
<2016年9月8日>
■来年度の予算概算要求において、AV出演強要に関するものが、「優先課題推進枠」のなかにはいりました。
「優先課題推進枠」とは、安倍政権が力を入れる政策に予算を重点配分するために設けられたものです。
<2016年9月>
■業界関係者が、売春防止法違反で逮捕されました。
<読売新聞>
「警視庁は(10月)14日、ソープランドの実質経営者でNPO法人理事の南雲豊作容疑者(57)(荒川区南千住)ら4人を売春防止法違反(場所提供)容疑で再逮捕したと発表した。(略。)今年9月、同区の系列店で売春場所を提供したとして、同法違反容疑で逮捕されていた」
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<2016年10月4日>
■悪徳プロダクションの社長ら12人が書類送検されました。
<産経新聞>
「所属女優を、性行為が含まれるアダルトビデオ(AV)の撮影に派遣したとして、警視庁保安課は4日、労働者派遣法違反容疑で、東京都渋谷区の芸能プロダクション『バンビ・プロモーション』の男性社長(49)=世田谷区=ら12人と、同社を含むプロダクション6社を書類送検した」
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<2016年11月15日>
■男女共同参画会議の専門調査会で、警察庁が、取り締まりの方針について言及しました。
<読売新聞>
「(警察庁の担当者は)被害者が相談しやすい態勢づくりに取り組むとともに、今後は弁護士やNGOなどと連携しながら、厳しく取り締まる姿勢を強調した」
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<2016年11月21日>
■星野明日香さんがご自身のブログで、出演強要被害を告発されました。
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<2016年11月24日>
■悪徳プロダクションの社長が3人、逮捕されました。
<産経新聞>
「所属するAV女優を吉原地区のソープランドに紹介したとして、警視庁は職業安定法違反(有害業務職業紹介)容疑で、いずれも都内のAVプロダクションの社長3人を逮捕した」
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以上、簡単にふりかえってみました。
かつて警察は、悪徳プロダクションから2,460万円の違約金を請求された女性に対して、つぎのような対応をしました。
「警察の人はプロダクションに事情を聴いたあとで、私に対して『あと2本出演したらどうか』と言ってきました」(被害者のKさんの証言より)
このときとくらべると隔世の感があります。
警察はいま、これまで野放しにしていたやつらに対して、労働者派遣法と職業安定法で取り締まりをおこなっています。
これ以上の前進はないのでしょうか。
弁護士ドットコムはつぎのようにつたえています。
(2016年11月15日 弁護士ドットコム「AV出演強要、警察に相談22件『違約金を理由に出演強要』『ネットの販売止めて』」より、引用。改行を施しています。)
(略)、警察庁は今年6月、全国の警察に対して通達を出して、強姦罪、暴行罪、傷害罪など刑法だけでなく、労働関係法令の適用を視野に入れた取り締まりなど、AV出演強要に関する相談への適切な対応を指示した。
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今後は、強姦罪、暴行罪、傷害罪などによる逮捕があるのかもしれません。
著名AV監督が(二村さんではない)強姦事件に関連し「男の性欲を憎まないで。男は性欲があるからこそ女に優しくできるのだ」という趣旨のツイートをしてた。心底軽蔑する。性欲を憎んではねえよ、性欲を言い訳に暴力をふるうやつを憎んでんだよ。性欲がないと優しくできないとか全男性に失礼だろ。
— 金田淳子@オトコのカラダはキモチいい (@kaneda_junko) August 27, 2016
犯罪者たちをひとり残らず、牢屋にいれてほしいです。
過日、精神科医の神谷美恵子さんの論説についてふれました。
・2016年11月11日
・2016年11月12日
神谷美恵子さんは、つぎのような詩を書かれています。
(神谷美恵子著「人間をみつめて」(みすず書房刊)より、引用。)
なぜ私たちでなくあなたが?
あなたは代わって下さったのだ、
代わって人としてあらゆるものを奪われ、
地獄の責め苦を悩みぬいて下さったのだ。
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詩のなかにでてくる「あなた」は、香西咲さんのような気がします。
なぜ私たちでなく香西咲さんが?
香西咲さんは代わって下さったのだ、
代わって人としてあらゆるものを奪われ、
地獄の責め苦を悩みぬいて下さったのだ。
犯罪者たちが逮捕されることをこころから願っております。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
問「出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?」
A氏「当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。」
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」【1】【2】【3】)に出演されました。
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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