荒井禎雄さんというライターがいらっしゃいます。
過去に当ブログでも、ツイートを引用させていただきました。
文章からは、業界の意向を忖度(そんたく)して、記事を書かれているような印象を受けます。
世論(社会内で一般的に合意されている意見)と乖離している内容のものもあるように思われます。
もちろん、すべてではありません。
建設的なご意見も記されます。
業界のプロパガンダ(宣伝)というわけでもないようです。
その点は評価されてもよいのではないでしょうか。
残念ながら、以下の記述については、事実と齟齬(そご)がありました。
いまとなっては、無稽(むけい。根拠のないこととの意味)な空言(そらごと)です。
記事自体は参考になりました。
当時の業界のひとたちの認識を垣間見ることができたのですから。
(2015年8月28日 東京ブレイキングニュース 「AVや風俗業界で人身売買はあるのか?告発系記事への反論【前編】」より、引用。改行を施しています。)
ここ何年か、日本の人身売買を問題視する告発系の記事が増えたように思うのだが、その中にはエロ業界(AVや風俗)の人間からすると事実からかけ離れた、非常に疑わしい内容も多い。
(中略。)
しかし、そうした発信者がもたらす情報は何かがおかしく、どう贔屓目に見ても 例えば、ごく最近ネットで話題になった記事にはこのような記述があった。
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この論説が公開されたのは、2015年8月28日です。
いまから1年以上も前のことです。
このころ、出演強要被害の報道は皆無でした。
筆者は、ネットでささやかれているという巷談(ちまたの噂)をあげています。
7つあります。
(引用。)
スカウトされ、軽い気持ちからプロダクションと契約書を交わしてしまった
→ 現場に行ったら当初の話には無かったはずのヌード撮影だった
→ ビデオが発売されたのにギャラも支払われなかった
→ 辞めたいと言ったら違約金を持ちだされ、断り切れずにAVの撮影を強行された
→ AVの撮影現場に行ったら多人数物だった
→ 再度辞めたいと申し出たら親にバラすと脅され、違約金も跳ね上がっており、おまけに9本契約を結ばれていた
→ 民間団体に相談し、契約解除の書類を送ったところ、自宅にプロダクションの人間が押しかけるなどの迷惑行為を受けた
→ 2,000万円を超える違約金の支払いを求めて訴訟を起こされた
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以上の7項目に対して、筆者は、つぎのように反論しています。
(引用)
これだけを”事実だ”として読むと、何とも許しがたい話なのだが、もし身近にAV業界人がいたら読後に感想を聞いて欲しい。
おそらく返ってくる言葉は「これいつの時代の話?」といったものではなかろうか。
(後略。)
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「これいつの時代の話?」
荒井さんは上述の7つの疑惑を全面否定されました。
それから約1か月後のことです。
各メディアが違約金訴訟の判決について報道しました。
(2015年9月30日 読売新聞「『AV出演拒否』 違約金請求棄却 東京地裁」より、引用。改行を施しています。)
アダルトビデオ(AV)への出演を拒否した20歳代女性が、所属する芸能事務所に違約金2460万円を請求された訴訟で、東京地裁(原克也裁判長)が請求を棄却する判決を今月(9月)9日付で言い渡し、確定した。
(中略。)
弁護団によると、女性は高校生の時にスカウトされて芸能事務所と契約。
説明のないまま意思に反して露出度の高い服装でグラビア撮影され、成人後、AVにも1回出演させられた。
その後は出演を拒否すると、「親にばらすぞ」などと言われたという。
(後略。)
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もう一度、問題のくだりを週刊朝日の記事と対照しながらみてみます。
(1)現場に行ったら当初の話には無かったはずのヌード撮影だった
(週刊朝日より、引用。)
「次の仕事はアダルトビデオ(AV)の撮影」。A子さんがその事実を知ったのは、撮影前日。事務所で台本を手渡されたときだった。
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A子さんの場合は前日に告知されました。
突然ではありません。
(2)ビデオが発売されたのにギャラも支払われなかった
(週刊朝日より、引用。)
撮影後のA子さんへの報酬は一切なかった。
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(3)辞めたいと言ったら違約金を持ちだされ、断り切れずにAVの撮影を強行された
(週刊朝日より、引用。)
「契約した以上、現場に行かなければならないことぐらい、わかってるよね」
「どうしても、指示に従えないなら、違約金を支払ってもらうよ。100万円、現金で用意できるの?」
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(4)AVの撮影現場に行ったら多人数物だった
このことについては不明です。
(5)再度辞めたいと申し出たら親にバラすと脅され、違約金も跳ね上がっており、おまけに9本契約を結ばれていた
(週刊朝日より、引用。)
断ると「親に連絡するぞ」「学校に知られてもいいのか」と脅された。
A子さんはその後も、プロダクション側に「AVの仕事は、どうしてもやめさせてほしい」と懇願。だが、そのたびに、マネジャーからこう言われた。
「あと9本撮影しないとやめられない」「違約金1千万円を払ってもらう」
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(6)民間団体に相談し、契約解除の書類を送ったところ、自宅にプロダクションの人間が押しかけるなどの迷惑行為を受けた
(7)2,000万円を超える違約金の支払いを求めて訴訟を起こされた
(週刊朝日より、引用。)
A子さんはPAPSの相談員と弁護士の支援でプロダクションとの契約解除の手続きを取った。
すると、プロダクションはA子さんに対し、「違約金2460万円を支払え」と提訴してきた。
1千万円から、さらに、倍以上に金額が跳ね上がっていた。
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先の7つには真実性のあるものがふくまれていました。
風説ではなかったのです。
荒井さんの記事には、つぎのようなものもあります。
(2016年3月10日 東京ブレイキングニュース「人権団体の『AV女優強制出演』報告書が各方面から非難される理由【1】」より、引用。改行を施しています。)
(略)、業界のルールを無視した悪辣なメーカーが、あくまでもAV業界の自浄作用によってそれ相応の報いを受けさせられたのだと言える。
それなのに、HRNいわくAV業界には何ら自浄能力がなく、外部から手を入れないと健全化されないのだという。
冗談もほどほどにした方がいい。
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(略。)
AV業界には他の業界では通用しないような厳しい村ルールが存在している。
(後略。)
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業界には、「厳しい村ルール」があるようです。
他の業界関係者も、別の記事で、同旨のことをのべられています。
自分たちでやくざを追い出して規範をつくりあげたと。
荒井さんはその後、こうおっしゃっています。
(荒井禎雄さんのツイートより、引用。改行を施しています。)
<2016年6月12日>
思えば、去年の末から今年の1月辺りが山場だったんだよ。
その時点でAV業界が危機感を持って「これまでの村ルール」を変えられなかった点で負け確定。
ほんとどうしようもない。
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<2016年6月18日>
騒動が大きくなりだした去年末くらいに、大手メーカーがもっと危機感をもって、やるべき事をやってれば、こうはなっていなかっただろうね。
ほんと甘く考えすぎた、自分達にしか通用しない村ルールが永遠に続くと思い込んだ、その辺りが滅亡の直接の要因かもしれん。
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この分析は明晰である、と感じました。
鋭敏です。
昨日、当ブログで、パスカルの「パンセ」についてご紹介しました。
88章には、つぎのようなことが書かれています。
(パスカル著 塩川 徹也訳「パンセ」岩波書店刊より、引用。改行を施しています。)
<88章>
進歩によって完成したものは、すべて、進歩によって滅びるのだ。
弱かったものが絶対的に強くなるなどということは断じてありえない。
「彼は成長した。彼は変わったのだ」
と言うが、それは嘘だ。
彼は昔の彼なのである。
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「進歩によって完成されたものは、すべて進歩によって滅ぶ」
「進歩」とは、物事がしだいに望ましいほうへ進んでいくこと、という意味です。
「村ルール」は、業界のひとたちの労苦によってつくりあげられたものです。
おそらく何年もかかったのでしょう。
進歩(物事がしだいに望ましいほうへ進んでいくこと)によって完成されたものであるとご推察いたします。
「パンセ」の88章で論じられていることを業界にあてはめてみます。
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弱かったもの(ダークな業界)が絶対的に強くなる(ホワイトな業界になる)などということは断じてありえない。
「彼(業界)は成長した。彼(業界)は変わったのだ」
と言うが、それは嘘だ。
彼(業界)は昔の彼(業界)なのである。
「進歩によって完成されたもの(業界)は、すべて進歩によって滅ぶ」
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(再掲。荒井さん)
「自分達にしか通用しない村ルールが永遠に続くと思い込んだ」
「「これまでの村ルール」を変えられなかった点で負け確定」
荒井さんがおっしゃっていることは適切です。
パスカルもいっています。
「進歩によって完成されたものは、すべて進歩によって滅ぶ」
と。
おそらく、業界のかたたちは、自分たちの力でよいものをつくりあげた、と考えておられるのでしょう。
残念ながら、その進歩が誤りであったようです。
いま、業界は、その進歩によって滅びようとしているのかもしれません。
香西咲さんのツイッター(2016年7月17日)より、引用。
業界の皆様へ
一部のメーカーからは『ほとぼりが冷めるまで波風立てるな』と私を煙たがられている事も承知しております。
ですが、ほどぼりが覚めるまで沈黙を続けていたら、その間に色んな思惑にハマり兼ねないと危惧しています。
今声を上げ対策を立てる事の重要さを感じて頂きたいと思います。
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「進歩によって完成されたものは、すべて進歩によって滅ぶ」
そうなりたくないのでしたら、香西咲さんのこの声に耳を傾けるべきでしょう。
香西咲さんは、必死にうったえておられます。
「今声を上げ対策を立てる事の重要さを感じて頂きたい」
と。
香西咲さんのツイッター(2016年10月11日)より、引用。
業界良くなって欲しいですよ。
でも黙ってたって良くならないんです。
業界に対して愛情のあるうちは呟き続けます。
愛情のあるうちは
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業界が自分たちの「進歩」に拘泥しているのなら、滅びる運命にあるといえます。
「進歩によって完成されたものは、すべて進歩によって滅ぶ」
香西咲さんが何度も助け船をだしているのに、なぜそれに乗らないのでしょうか。
不思議なかたたちです。
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■2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
--出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?
A氏 当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました
■2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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