「過去と現在は香西咲さんの手段であり、ただ未来だけが香西咲さんの目的である」~パスカルの「パンセ」より

「転がる石はどこまでも(rolling stones)」という故事があります。
わたしたちはよく、これくらいはいいだろう、といった安直な考え方をします。
この甘さが自身に対する制動力を弱めます。
徐々に、たががはずれていきます。
度が過ぎると、最後は、身を滅ぼすことにもなりかねません。
「転がる石はどこまでも」
です。
向田邦子さんのエッセー集に「男どき女どき」というのがあります。
どの章も軽妙で洒脱です。
そのなかでつぎの逸話が印象的でした。
向田さんは、作家として活躍するようになってからも、実家に身を寄せていました。
不満がなかったわけではありません。
かねてより、父親に対して、疎(うと)ましいものを感じていました。
父はいつも口うるさく、しつけに対して一家言(独特の考え方)をもっていました。
娘に対して、自分の考えを押し通そうとします。
辟易(へきえき)感をとおりこした向田さんは、自立をくわだてます。
マンションを借りて、一人で住むことにしました。
新居は開放感にあふれています。
小言をいうものは存在しません。
自分の意志で行動することができます。
毎日が快適でした。
ある日のことです。
内心からの声が聞こえました。
「本当にこれでいいの?」
と。
自分はいつの間にか、ナベにそのままハシを入れて、煮物を食べるようになっていました。
以前は小皿に移していたのに。
仕事で机にむかっているときも、暑いときには、下着姿になって原稿を書くようになりました。

(向田邦子著「男どき女どき」新潮社刊より、引用。改行を施しています。)

(略)、自由を満喫しながら、これは大変だぞ、と思いました。
「転がる石はどこまでも」ということわざがあるそうです。
ローリング・ストーンズというとカッコいいのですが、とても恐ろしい意味があります。
いったん、せきを切ったら水がドッと流れ出し一度転げ落ちたら、水は、石は、どこまでも落ちていくのです。
そして、それは、ある程度力をつけたら、もう人間の力では、とめようがなくなるのです。
お行儀も同じです。
(略)、これは行儀だけのことではないな、と思いました。
精神の問題だと思ったのです。

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「惰性」ということばもあります。
いったん環境に慣れ親しんでしまうと、そこから抜けだすことは容易でありません。

(2016年7月29日 毎日新聞「香西咲さんのインタビュー記事」より、引用。改行を施しています。)

 --なぜそこまで覚悟を決められた?

<香西咲さん>
AVが夢にはつながらないことに気付き、ダラダラやっているのはよくないと思ったんです。
「続けてもあと1年ぐらいかな」

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人間というのは変化をきらいます。
保守的です。
ある程度、成功してうまくいっているのならば、現在の状況を変えたくありません。
いまの自分が一番、です。
普通は現況が末永くつづくことを願います。
なぜひとは、転遷(てんせん。ものごとが移り変わることの意味)を厭(いと)うのでしょう。
おそらく、未知の世界に対する漠然とした不安感があるのでは、と考えます。
新しい世界には、試練や困難が横臥(おうが)しているかもしれません。
冒険をするのは得策でない。
そう結論づけるのが一般的です。
ジャン=ジャック・ルソー(1712年~1778年)というフランスの思想家がいます。
ルソーは自著のなかで、理想とする大人の姿をつぎのようにえがいています。

自分の身を守れること。
運命の打撃に耐えることができること。
富も貧困も意に介さないこと。
アイスランドの氷の島のなかでも、マルタ島の焼けつく岩の上でも生活することができること。

香西咲さんは、ルソーが理想とする大人の範疇に属します。
自分の身を守り、運命の打撃に耐えています。
これから未知の世界に挑もうとしています。
香西咲さんに対して、
「転がる石はどこまでも」
という警句は不要です。

かつてぼくは、パスカル(1623年~1662年)の「パンセ」についてふれたことがあります。

 ・2014年11月10日「香西咲さんの崇高さと、パスカルの『パンセ』」

ご関心のあるかたは、2014年11月10日のブログをご覧ください。
本日は、「パンセ」の172章をご紹介します。
(パスカル著 塩川 徹也訳「パンセ」岩波書店刊より、引用。改行を施しています。)

<172章>
われわれは決して、現在の時に安住していない。
われわれは未来を、それがくるのがおそすぎるかのように、その流れを早めるかのように、前から待ちわびている。

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「未来を待ちわびている」
これは香西咲さんの現在の心境とかさなるかもしれません。

(2016年8月27日 弁護士ドットコム「<AV出演強要>香西咲さん引退後の夢『人生楽しみたい』『消せない過去として歩む』より、引用。改行を施しています。)

(問)「引退したら、どういうことをしたいですか?」
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本当に心身ともに疲弊しているので、3カ月くらいは休みたいですね。
あと、もともとバイタリティが強いので、そのあと海外のワーキングホリデーに行くとか…
人生を楽しもうと思ったら、そういうことにもトライしたいと思っています。

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「パンセ」にもどります。

<172章>
(略)、われわれは自分のものでない前後の時のなかをさまよい、われわれのものであるただ一つの時について少しも考えないのである。
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「前後の時」とは、過去未来のことです。
「ただ一つの時」は、現在のことを示しています。
パスカルは、
「人間は、過去と未来のことばかりを考えて、現在のことは顧みない」
といいます。

<172章>
これは実にむなしいことであって、われわれは何ものでもない前後の時のことを考え、存在するただ一つの時を考えないで逃がしているのである。
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同じ内容のことをくりかえしています。

<172章>
というわけは、現在というものは、普通、われわれを傷つけるからである。
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現在というものは、自分自身を傷つける。
これが現在のことを考えない理由です。

<172章>
それがわれわれを悲しませるので、われわれは、それをわれわれの目から隠すのである。
そして、もしそれが 楽しいものなら、われわれはそれが逃げるのを見て残念がる。

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「現在」は、わたしたちを悲しませる存在のようです。

<172章>
(略。)
おのおの自分の考えを検討してみるがいい。
そうすれば、自分の考えがすべて過去と未来によって占められているのを見いだすであろう。
われわれは、現在についてはほとんど考えない。
そして、もし考えたにしても、それは 未来を処理するための光をそこから得ようとするためだけである。

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人間の頭のなかにあるのは過去と未来のことだけである、とパスカルはいいます。
確かにそうなのかもしれません。
先のことに思いを馳せたり、過去を悔やんだり。
その繰り返しです。

<172章>
現在は決してわれわれの目的ではない。
過去と現在とは、われわれの手段であり、ただ未来だけがわれわれの目的である。

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ぼくはこのくだりが好きです。
わたしたちの目的は、未来である。
過去も現在も、そのための手段にすぎない。

<172章>
このようにしてわれわれは、決して現在生きているのではなく、将来生きることを希望しているのである。
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わたしたちは、未来のために生きているです。

<172章>
そして、われわれは幸福になる準備ばかりいつまでもしているので、現に幸福になることなどできなくなるのも、いたしかたがないわけである。
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現在の不幸をなげいてはいけません。
わたしたちはいま、将来が幸福になるための準備をしているのですから。

(再掲)
現在は決してわれわれの目的ではない。
過去と現在とは、われわれの手段であり、ただ未来だけがわれわれの目的である。

香西咲さんはこの5年余りの間、とてもつらい経験をされてきました。
痛惜の念をいだかれていることでしょう。
悔やんでも悔やみきれないと思います。
パスカルはこういっています。
「現在は決してわれわれの目的ではない」
「過去と現在とは、われわれの手段である」
と。
忌まわしい過去も、現在も、明るい未来をつくるための手段です。
道具です。
「ただ未来だけがわれわれの目的である」
香西咲さんが未来にむかってあゆまれることを切望します。
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2016年07月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年07月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年07月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年07月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年07月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
 --出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは
 A氏 当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年08月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
2016年09月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました
2016年09月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月01日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
2016年10月17日 香西咲さんのインタビュー記事(日本語訳)が、AFP通信のサイトに掲載されました。
香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
 私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
 だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)

(明日のブログへつづく)



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