いささか旧聞に属します。
AVANという団体が発足しました。
どの程度の注目を集めているのでしょうか。
各社の新聞データベースで調べてみました。
全国紙の4紙のうち、AVANをとりあげているのは、毎日新聞だけです。
読売、朝日、産経についてはまったくふれていません。
静謐(せいひつ)をたもっています。
ちなみに地方紙では、東京新聞が特集をくみました。
産経新聞は、毎日新聞に次いで、AV問題に熱心です。
AVANについては、関心がないようです。
ぼくも同様です。
さほど興味がありません。
時折、辻丸さんがリツイートされている当該団体の記事をながめるくらいです。
「ナチス」、「ユダヤ人狩り」、「魔女狩り」などのような古色蒼然としたことばがよくでてきます。
そのたびに、陰鬱な気分にさせられます。
(川奈まり子様のツイートより、引用。改行を施しています。)
<9月8日>
HRNがAV女優に対して行いたがっていることはユダヤ人狩りに等しい。
「〇国人に「●●●号」とナンバリングして、その個人情報を町のビデオ店やDMMの社員などに配ったうえで、特段の理由がなくても警察に引き渡せるようにせよ」と置き換えたら、この提言の危険性が誰でも理解できるのでは?
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(再掲)
「HRNがAV女優に対して行いたがっていることはユダヤ人狩りに等しい」
「等しい」とありますので、この文章はつぎのようになります。
「AV女優に対して行いたがっていること」 = 「ユダヤ人狩り」
この「ユダヤ人狩り」は、メタファーに該当します。
メタファーとは暗喩(あんゆ)のことです。
ぼくは違和感を覚えました。
この表現方法には瑕疵(かし)があるのではないでしょうか。
メタファーをつかうためには、それ自体が、事実に即していなければなりません。
「AV女優に対して行いたがっていること」 = 「ユダヤ人狩り」
とあります。
そうなのでしょうか。
メタファーの利点は、相手に対して、こと細かく説明をする必要がない、というところにあります。
短い言い回しで、自己の胸のうちをつたえることができます。
ツイッターに向いている技法かもしれません。
「HRNがAV女優に対して行いたがっていることはユダヤ人狩りに等しい」
これを読んだひとは、「ユダヤ人狩り」を連想します。
「ああ、そうなのか。HRNがやろうとしていることはユダヤ人狩りなのか」
となります。
この帰結は正しくありません。
メタファーの使いかたとしては失格です。
読者のなかには、「ユダヤ人狩り」自体がわからないかたもいらっしゃるでしょう。
その観点からも、このメタファーは好ましくありません。
どうしても「ユダヤ人狩り」という字句をつかいたいのでしたら、つぎのような表現にすべきです。
「HRNがAV女優に対して行いたがっていることはまるでユダヤ人狩りのようなものである」
メタファーが消えました。
ここでつかわれている「ユダヤ人狩り」は、直喩(ちょくゆ)となります。
先ほどの文章よりはましです。
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(解説)
・きみはバラだ。(暗喩)(メタファー)
・きみはまるでバラのようだ。(直喩)
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いずれにせよ、「ユダヤ人狩り」を比喩の題材に選ぶというのはどうなのでしょうか。
当時の状況をふりかえってみます。
ドイツ人のヒトラーは常日頃より、自分たちは世界でもっとも優秀な民族である、と自負していました。
反面、ユダヤ人は劣等民族であるので、この世から根絶すべきであると考えていました。
そこでおこなったのが、ユダヤ人の迫害です。
ヒトラーは、1933年に、ユダヤ人を公職から追放しました。
2年後の1935年には、ニュルンベルク法を制定して、ユダヤ人から公民権を剥奪します。
あわせて、ドイツ人とユダヤ人の結婚を禁止しました。
1938年には、ユダヤ人が経営する商店の打ちこわしをおこないます。
ユダヤ人への弾圧が激しさを増していきます。
1942年に、これが頂点に達しました。
この年、ヒトラーは、ユダヤ人絶滅政策を決定します。
ユダヤ人を収容するための強制収容所が各地に建設されます。
当該施設でユダヤ人を強制的に働かせたり、大量虐殺(ホロコースト)をおこなうためです。
国内で最大規模の施設が、アウシュビッツの強制収容所です。
ここで、400万人以上が虐殺されたといわれています。
ヒトラーはこれ以外にも、200万人のユダヤ人を惨殺しました。
1942年頃、ヨーロッパで生活をしていたユダヤ人は、約1100万人といわれています。
ヒトラーはこのうちの600万人を殺害しました。
(再掲)
「HRNがAV女優に対して行いたがっていることはユダヤ人狩りに等しい」
おそらく川奈まり子様は、1935年に制定されたニュルンベルク法のことをおっしゃっているのでしょう。
(芝健介著「ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」中公新書刊より、引用。)
ヒトラー・ナチスのユダヤ人政策は、1935年のニュルンベルク法制定から本格化し、はじめは公民権剥奪、国外追放という手段がとられたが、大戦開戦後はドイツの占領地域のユダヤ人に適用され、一時はヨーロッパのユダヤ人のマダガスカルへの強制移住が計画された。
そして42年の1月にヴァンゼーで開催されたナチス首脳会議において、「最終的解決」がはかられることとなり、アウシュヴィッツなどの強制収容所でのガス室などによる大量殺戮が決定された。
戦争が終わるまでに、ゲットーや各地の強制収容所で餓死、射殺、ガス殺その他の手段で殺されたユダヤ人の数は、560万から590万に上る。
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(クロード=ダヴィド著、長谷川 公昭訳「ヒトラーとナチズム」白水社刊より、引用。改行を施しています。)
迫害の第二波は1935年、いわゆるニュルンベルク法の制定とともに始まった。
ユダヤ人はすべて市民権を失い、ドイツ領内に居住を許されている外国人という身分に転落した。
それだけでなく、ユダヤ人は公共的な場所(庭園・劇場・プールなど)への出入りを禁止され、それまで公職に就くことだ許されていたユダヤ系旧軍人も追放となった。
1938年までは、実際に逮捕される数は少なく、2万人をこさなかった。
むしろ国外に退去することが奨励されていた。
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1938年に、政府は、ユダヤ人の身分証明書にJという印を押しました。
ドイツ人と区別するためです。
(以下の画像は、ヒトラーの反ユダヤ政策 -年表-より、引用。)
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(ホロコースト百科事典より、引用。)
また、証明書を手に入れるには他にも方法がありました。
何をするかというと、元の所有者(ドイツ人)の写真をはがし、新しい写真と指紋を貼り付け、変更の必要があるところをすべて変更します。
もちろんそれには「J」という文字はありませんでした。
その書類はユダヤ人を表す「J」のない身分証明書でした。
非常に信頼できる証明書に見えました。
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この「J」という印が押された身分証明書と、児童ポルノにおける年齢確認がどうつながるのでしょう。
ぼくには理解できません。
はなしをAVANにもどします。
いったいどのような団体なのでしょうか。
ネットの記事を参照します。
(2016年9月1日 弁護士ドットコム「AV出演者の支援団体「AVAN」のHP公開、川奈まり子さん「賛同の輪を広げたい」」より、引用。改行を施しています。)
この団体は7月中旬、AVに出演する女優や男優、クリエイター(フリーの監督など)を支援するために設立された。
女優らが正会員となり、プロダクション(マネジメント会社)が準会員、メーカー(販売・流通会社)が賛助会員として参加する。
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プロダクションやメーカーも参加するようです。
そうなると懸念が生じます。
(伊藤和子弁護士のツイートより、引用。改行を施しています。)
<10月8日>
(前略。)
私はメーカーとプロダクションと出演者の利益は相反する部分が当然あると考えてますので、AVANの性格についてもお会いした機会に伺えればと思います。
ではこちらで失礼いたします。
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(再掲)
「メーカーとプロダクションと出演者の利益は相反する」
AVANは、女優さんと男優さんだけが加入できる団体ではないようです。
プロダクションやメーカーも集っています。
親睦会や互助会といった感じなのでしょうか。
一般の会社にもこの種のものはあります。
忘年会の企画をしたり、葬儀のさいに花輪を贈るなどの活動が主ですが。
(川奈まり子様のツイートより、引用。改行を施しています。)
<10月8日>
(前略。)
メーカーとプロダクションと出演者の利益は相反する部分もありますが、業界存続の危機である今、働く権利を確保しようと思えば三者が団結して当たらなければならない面も。
またAVANは業界においては逆風の中出発したこともお察し下さい。
潰されては元も子もないので
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(伊藤和子弁護士のツイートより、引用。改行を施しています。)
<10月8日>
(前略。)
そうなんですね。ただ「守る」ためにもまず「変わる」ことに期待してます。
AVANは、業界の短期的利益と、出演者の権利や出演したくない人の権利が仮に対立する場合、どちらの立場に立たれるのでしょうか。
労組等は後者の立場かと。お会いした際にでも伺えると幸いです
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(川奈まり子様のツイートより、引用。改行を施しています。)
<10月8日>
(前略。)
返信ありがとうございます。
当然、後者です。
そのためにプロダクションと出演者の間の契約を一変させる試みをしようとしていますが、プロダクションやメーカー側に協力を促さないことにはどうしようもありません。
幸い良心的な企業もあり、業界トップは変化の気運です。
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AVANの健闘を期待しています。
両者のやりとりをみているかぎりでは、かなり厳しいような気もいたしますが。
こちらの認識不足かもしれません。
歴史上、このような大政翼賛会型の団体が、改革をなしえたという例は、寡聞にして存じあげません。
長くなりましたので、つづきは明日のブログで書きたいと思います。
それにしても、AVANは、香西咲さんを支援するおつもりはないのでしょうか。
真っ先に取り組むべき課題はこの問題であると思うのですが。
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■2016年7月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年7月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年7月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016年7月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016年7月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■2016年7月29日 香西咲さんのインタビュー記事と動画が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
--出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは?
A氏 当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている。
(※A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
■2016年8月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)・(後編)に掲載されました。
■2016年9月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました
■2016年9月24日 香西咲さんのインタビュー記事(1)が、withnewsに掲載されました。
■2016年10月1日 香西咲さんのインタビュー記事(2)が、withnewsに掲載されました。
■香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)
(明日のブログへつづく)
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