香西咲さんのツイートは哲学的です。自己責任論の愚かさと、アイデンティティ拡散症候群

昨日は人々の常識のもろさについてふれました。
記述において展開不足の箇所がありましたので、本日はまず、その部分を補足させていただきます。

朝日新聞経済部著「銀行―その実像と虚像」(講談社文庫)より、引用。
改行を施しています。

<城山三郎さん>
昭和初期の金融恐慌のころまで、庶民の間には「銀行は危ない、つぶれるもの」という感覚が強かった。
いまはその逆で「銀行は倒産しないもの」と、大方の庶民は安心し切っている。
昔といまの銀行で大きな違いはこの点にある。

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かつて人々の内には、銀行はつぶれない、との常識がありました。

香西咲さんのツイッター(2016年6月11日)より、引用。

一般の皆様にお伝えしたい事。
これを機に『騙される方が悪い』と言う風潮やめて頂きたいですね。
素人の常識なんて簡単に覆されます
『気を付けて』って言われて気を付けられるレベルではありません。
相手はプロ。
何枚も何枚も上手をいってきます

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(香西咲さんのツイートを再掲)
素人の常識なんて簡単に覆されます

これが現実のものとなったのが、1973年の12月におきた豊川信用金庫の取り付け騒ぎです。
出所は不明ですが、この出来事の前に、
「豊川信用金庫がつぶれる」
との風説が流布されました。
これを知った利用者が、
「早く預金をおろさなければ」
と狼狽して、銀行に殺到したのです。
本店や支店から預金を引き出した客は総勢5,000人です。
金額は約、23億円にのぼりました。
大半が主婦と高齢者であったといわれています。

(香西咲さんのツイートを再掲)
『気を付けて』って言われて気を付けられるレベルではありません。

騒動のあと、新聞に、つぎのような記事が掲載されました。
「豊川信用金庫の預金残高は約360億円で、全国471金庫中の90番前後。経営内容もAクラス。経営不安はまったくなかった」
と。

常識には2つの種類があります。
長い時間を経て培われてきた普遍的なものと、時代とともに変化する普遍性のないものが。
後者の場合は、香西咲さんがおっしゃるとおりです。

素人の常識なんて簡単に覆されます
『気を付けて』って言われて気を付けられるレベルではありません

豊川信用金庫での喧騒がそれを証明しています。
当時の人々の常識は、
「銀行はつぶれない」
です。
それが、根拠のない飛語(デマ)によって、事もなく覆(くつがえ)されたのです。

香西咲さんのツイッター(2016年6月11日)より、引用。

一般の皆様にお伝えしたい事。
これを機に『騙される方が悪い』と言う風潮やめて頂きたいですね。
素人の常識なんて簡単に覆されます
『気を付けて』って言われて気を付けられるレベルではありません。
相手はプロ。
何枚も何枚も上手をいってきます

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ぼくたちはこの香西咲さんが発せられた言辞を銘記する(深く心にきざみつけて忘れない)必要があります。

話題は変わります。

香西咲さんのツイッター(2016年8月16日)より、引用。

『過去の性教育の曖昧さのツケが、現代若者の“望まない妊娠、性病、AV強要…”等の被害を生んでいる一つの原因なのではないでしょうか。』
と、何かの取材に声を上げそうになって目が覚めた。
家だ。 あ、おはようございます

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(再掲)
現代若者の“望まない妊娠、性病、AV強要…”等の被害

この種の問題に対して、評論家はよく、アイデンティティ拡散症候群の論理をもちいて説明します。
アイデンティティの拡散とは、自分はいま何をすべきなのかの答えがみつからない状態、のことをいいます。
症候群とは、病的傾向、との意味です。
なぜ女性はこのような隘路(あいろ。狭い通路の意味)に入りこんだのでしょう。
訳知りを自認するひとたちはこういいます。
「現代社会は昔とちがって、価値観が多様化している。そのなかで女性たちはこれから自分がどう生きるのかがわからなくなっている。結果、望まない妊娠や性病等の被害が生じている。これは現代社会が生み出した病理である」
と。
AV強要もその範疇にはいるのかもしれません。

なかなか説得力のある論理です。
たしかに現在、ひとびとの価値観は、多岐にわたっています。
昔とは違うのかもしれません。
価値観がひとつの時代もありました。
おそらく上述した知者のひとたちは、戦争があった時代との比較で自説を展開されているのでしょう。
確かに1945年以前は、戦争に勝つというのが国是です。
そこから確固たる価値観が湧出していました。
女性が人生の選択において思い惑うことは、いまよりは少なかったようにも考えられます。
はたしてそうなのでしょうか。
戦争前後の流れを簡単にみてみます。

 1931年 日本は満州事変を起こして、中国の東北地方(満州)を占領する。
  (6年後)
 1937年 日中戦争がはじまる。
  (4年後)
 1941年 太平洋戦争がはじまる。
  (4年後)
 1945年 終戦。
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久生十蘭(ひさおじゅうらん)(1902年~1957年)という作家がいます。
1952年に直木賞を受賞しました。
戦後も活躍しましたけれども、戦前に多くの秀作を発表しています。
現在は、著作権が消滅していますので、青空文庫のサイトでも読むことができます。
そのなかに、「キャラコさん」という作品があります。
11の短編から成っています。
キャラコさんの本名は、石井剛子(いしいつよこ)といいます。
19歳です。
ぼくはこの小説が好きで、これまでに何度か、読み返しました。
キャラコさんは香西咲さんと似ています。
純粋で聡明な人物です。
行動力もあります。
キャラコさんのなかに、「雪の山小屋」という章があります。
1939年に「新青年」という雑誌に掲載されました。
時代背景をさきほどの流れで確認してみます。
このような感じです。

 1937年 日中戦争がはじまる。
 1939年 「キャラコさん--雪の山小屋」が発表される。
 1941年 太平洋戦争がはじまる。
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日本が戦争を邁進しているこの時代に、久生十蘭は、どのような女性像を描いたのでしょうか。
以下に、引用させていただきます。

(久生十蘭著「キャラコさん--雪の山小屋」より、引用。改行を施しています。)

<芳衛さん>
要するに、あたしたちは観念だけで生きているんだということがよくわかったよ。
……ともかく、たいへんな教訓だったわ、あたしたちにとっては!

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<トクさん>
(トクさんが、悲しそうな眼つきで、うなずいた。)
……あんたのいう通りだわ。
……それにしても、すこし、情けなすぎるわね。
あたしたち、恋愛だけでしか生活を豊富にすることを知らないのだとすれば!

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<芳衛さん>
(芳衛さんは、頭を振って額ひたいへふりかかる髪の毛をはらいながら、)
「そうよ、そのほかに、いったい、何があるというの?
……生活の目標もなければ、生活する力もない。
……なんでも知っている。
そのくせ、具体的なことは何ひとつ知らない。
正直なところをぶちまけると、本の読み方さえろくに知っていないんだわ。
これではあまり希望がなさすぎるわね。
だから、こんなことになるんだわ。
……もちろん、梓さんの罪ではない。
……要するにあまりあたしたちをほったらかしすぎるからいけないんだ
あたしたちの時代にてんで眼を向けようともしないのがいけないんだわ
……学校を出さえすれば、あとは嫁にやってしまうだけなんだから、せいぜい勝手なことをさせて置くさ。
……こんなのを、自由というのかしら。
……むしろ、惨酷(みじめ)といったほうがいいわ。
……いい加減に扱われているんだよ。
たしかに、見捨てられているんだ。
……あたしたち、まだ独り歩きなどできないんだから、こんな意味で、個性なんか尊重してもらいたかないわ。

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<トクさん>
(トクさんは、感情の迫った声で、いった。)
その通りだわ。
……古い生活の形式が死んでまだ新しい生活の形式が生まれて来ない
あたしたちは、いま、そんなちぐはぐな時代にいるのね。
とりわけ、あたしたちのような、間もなく世間へ送り出されようとしている若い娘がいちばん苦しんでいるんだわ。
……どうしていいかわからない
どこを目あてに生きてゆけばいいのか見当がつかない
だから、恋愛なんかにばかり追従するようになるんだわ。情けないわね。

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いまから77年前の作品です。
いつの時代でも女性は、生き方を求めて、もがき苦しんで生きているというのがわかります。
あの戦時色の濃い時代にも、アイデンティティの拡散はあったのです。
それではあの当時と現代では何が違うのでしょうか。
ひとつだけ、確実にいえることがあります。
いまは、女性のこうした迷いを利用する悪徒(わるもの)がいるということです。
たとえばAV強要についていうのならば、女性の夢を利用して出演を強要する輩(やから)です。
現在は犯罪者が野放しの状態となっています。
国家としての対応が早急に求められます。
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2016年7月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
2016年7月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
2016年7月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
2016年7月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
2016年7月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
2016年7月29日 香西咲さんのインタビュー記事が、毎日新聞のWebサイトに掲載されました。
(引用。A氏による衝撃の回答)
 --出演強要が社会問題化している。事務所の運営や女優との契約について見直しは
 A氏 当然やっていく。今、弁護士と話して、きちんとしていこうとしている

 (A氏は、これまできちんとしていなかったことを認めました。)
2016年8月27日 香西咲さんのインタビュー記事が、弁護士ドットコム(前編)(後編)に掲載されました。
香西咲さんのツイッター
(香西咲さんの重要ツイート ~2016年7月18日)
 私だって綺麗にリセット出来るならAVデビュー前の私に戻りたい。
 だけど変えられない現状踏まえて立て直したのが今の形。(後略。)

(明日のブログへつづく)



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