昨日のつづきです。
書き忘れましたが、参考文献は、イタイイタイ病対策協議会が発刊しました訴訟の記録です。
その他、関係する資料等を参照させていただきました。
昨日のブログでは、被害者の住民たちが訴訟を決意するところまで記しました。
住民を支援する弁護士たちも、弁護団を結成します。
島林弁護士にとって忘れられないことばがあります。
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私はもう歳だからしょうがないが、この嫁にあの痛い思いをさせたくない。
裁判でもなんでもしてください。
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1986年のことです。
被害者である原告の28人は、三井金属神岡鉱業所を相手にして、訴訟を提起しました。
イタイイタイ病は、神通川の水を利用する地域のひとたちだけが発病する。
神通川は三井金属が流す廃水に含まれるカドミウムによって汚染されている。
弁護団は、これを論点にして、裁判を進めることとしました。
裁判の冒頭から、三井側は、カドミウム説を全面的に否認します。
その後も、証拠調べに入ることを拒みつづけます。
これに対して、原告側は、早期の現場検証を求めました。
裁判官に実情を知ってもらうためです。
しばらく経った日のことです。
婦中町から三井金属神岡鉱業所にかけて、現場検証がおこなわれました。
亜鉛を精錬したあとに出る残滓(ざんし。のこりかすの意味)がある堆積場に向かおうとしたときです。
正午をまわっていました。
被告の三井側から、要望がだされました。
「現場検証の時間は正午までです。これで打ち切ってほしい」
と。
裁判官は、打ち切りを決定しました。
当初の懸念どおり、裁判は先に進みませんでした。
悪いことばかりではありません。
地元の婦中町の議会が、全会一致で、イタイイタイ病訴訟の支援を決定したのです。
100万円が拠出されました。
このことを知った富山県が、疑念の意を表します。
「訴訟援助には法的に疑義がある」
県の方針は、工業の振興です。
企業に抗(あらが)うことはなどは許されない行為です。
世論は逆でした。
被害者を救え、という声が日増しに高まっていきます。
呼応するようにして、富山県内のほとんどの市町村が、イタイイタイ病訴訟の支援を決議します。
1969年、証人尋問が始まりまた。
被害者側の証人として出廷した金沢大学教授の石崎有信さんは、つぎのようなことをのべました。
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動物実験の結果、カドミウムによって、腎臓の異常と骨の疾患がみられました。
つまり、カドミウムが原因で、イタイイタイ病が発症しているのです。
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三井金属神岡鉱業所の病院長は、三井側の証人として、つぎのように陳述しました。
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我が社の従業員は、仕事上、カドミウムにさらされているが、異常はない。
低濃度のカドミウムを動物に投与する実験もしたが、こちらも異常がなかった。
したがって、イタイイタイ病の原因がカドミウムであるということは、まだ証明されていない。
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これに対して、被害者側が反論しました。
「三井側は、原因がカドミウムであることの証明はないと言うが、三年前に行われた神岡鉱業所の検診では、16人中6人もの従業員に、慢性カドミウム中毒の症状があらわれていたのではないか」
つづいて、患者の悲惨な実態があきらかとなりました。
証人として出廷した患者の小松みよさんは、イタイイタイ病のために、身長が30cmも縮んでいました。
裁判が膠着しているなか、21人の患者が亡くなりました。
出口はみえてきません。
この裁判の争点は、因果関係があるのかないのかです。
三井側の主張は、簡単にいいますと、こうです。
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「カドミウムを川に流したから(原因)、イタイイタイ病になった(結果)」
■カドミウムを川に流した(原因)→イタイイタイ病になった(結果)
原告側(被害者側)は、このような因果関係を主張していますが、このことを科学的に証明できますか。
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つまり、カドミウムによる人体への影響やその仕組みが解明されない限り、因果関係があるとはいえない、という主張です。
たとえば、タバコを吸うとガンになる、という説があります。
■タバコを吸った(原因)→ガンになった(結果)
両者に因果関係があるのか、といいますと、これはむずかしいです。
タバコの常習者が必ずしもガンになるとは限りません。
終生、健康なひともいることでしょう。
タバコを吸うとストレスがなくなるので、害があるどころか健康である、というひともいるかもしれません。
このように考えますと、カドミウムとイタイイタイ病の間の因果関係を医学的に立証することは大変困難です。
これに対して、島林弁護士は、つぎのように反論しました。
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三井側は、イタイイタイ病発病のメカニズムが明らかにならないと責任は認められない、と主張している。
しかし、カドミウムが体内にどれだけ吸収されて発病するかはこの際、意味が無い。
裁判の争点は、発病の原因がカドミウムであることがわかりさえすればよいのです。
早く結審するべきです。
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こうしたなか、最高裁判所にも動きがありました。
1970年、最高裁判所は、全国の裁判官を集めて、公害裁判の問題点を議論しました。
討論の結果、
「今後の公害裁判では、加害企業に立証責任を負わせるべきだ」
との意見集約をおこないました。
つまり、被害者保護の立場を明確にしたのです。
1971年6月30日、判決が出ました。
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因果関係の立証には、必ずしも科学的な証明が必要ない。
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画期的な判決でした。
裁判所は、被害者側の訴えを全面的に認めたのです。
日本の公害裁判史上はじめて、原告が企業に勝訴したのです。
三井金属側は即日、控訴しました。
翌年の控訴審でも、被害者側が勝ちました。
上告はされず、判決が確定しました。
このあとにつづく、新潟水俣病、四日市ぜんそく、熊本水俣病の裁判においても、被害者側が勝訴していきます。
イタイイタイ病の裁判は、これらの嚆矢(こうし。物事のはじまりとの意味)となった画期的なものでした。
めでたしめでたし、といったところでしょうか。
最後は勝ったのですから。
ただ、そこまでの道のりが辛苦でした。
簡単に振り返ってみます。
小松義久さんが対策協議会をつくろうと呼びかけても、誰も応じませんでした。
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「米がカドミウムに汚染されているというレッテルがはられると、誰も買ってくれなくなる」
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島林樹弁護士が、訴訟の提起を求めても、薄弱な意見ばかりでした。
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「大企業を相手にしての裁判で、勝ち目があるのか?」
「裁判が長期化して、患者は皆、死んでしまうのでは?」
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このペシミスティック(悲観的)な考え方を一変させたのが小松義久さんでした。
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訴訟をおこせば、米が売れなくなるとか、嫁がこなくなるとかいう、抵抗感は根強い。
仮に、三井との裁判に敗れることがあれば、わたしたちは地元にいることができなくなるでしょう。
先祖代々の戸籍を持って町を出なくてはならない。
でも、子供や孫の将来のためです。
そのために、いま、わたしたちが裁判をやるしかないでしょう。
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「でも、子供や孫の将来のためです。そのために、いま、わたしたちが裁判をやるしかないでしょう。」
いいまわしは違いますが、このことばは、香西咲さんの現在の行動と重なります。
香西咲さんのツイッター(2016年6月23日)より、引用。
私が独立してまで業界に戻ってきたのはそこ!
同じ被害者も出したくないし、メーカー制作女優…皆が納得して同じ方向を目指し良い物を作って行きたい。
後の私は女優、一般女性のサポートに徹したい。(後略。)
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裁判官といいますと、誰からの影響も受けることなく、蟄居(ちっきょ。家にこもってとの意味)して、判決文を考えているというイメージがあります。
そのとおりなのでしょうけれども、裁判官は意外と世論の動向を気にしているといわれます。
出演強要問題はいま、大きな社会問題となっています。
今後、国会で取り上げられることは必然でしょう。
通常国会は来年の1月からはじまります。
今年の秋に臨時国会が開かれれば、そこで取り上げられる可能性もあります。
香西咲さんのTwitter(2016年7月7日)より、引用。
私の様なしがない1人のAV女優が
大好きな業界の未来の為に出来る事として、
新たな判例を作る事だと思っています。
AV関連の裁判は判例が少なすぎます。
グレーゾーンなのも理解しています。
弁護士の先生でさえ面倒臭がる方も多数。
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(週刊文春WEB(2016.07.07)より引用。)
香西氏は2011年10月にAVデビューしているが、当初はイメージビデオの撮影だと説明されていた。だが、組織的な“脅迫”や“洗脳”、“囲い込み”など手の込んだやり方で追い詰められ、香西氏は出演せざるを得なくなってしまった。
ちなみに、この犯罪行為を中心となっておこなった輩(やから)が、
(引用)
かつての所属事務所「マークス(後にマークスインベストメントと社名変更)」の青木亮社長
です。
国民は、こういうやつらを絶対に許しません。
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■2016年7月07日 香西咲さんの特集記事(1)が週刊文春に掲載されました。
■2016年7月14日 香西咲さんの特集記事(2)が週刊文春に掲載されました。
■2016年7月17日 香西咲さんがAbemaTV(みのもんたの「よるバズ!」)に出演されました。
■2016月7月20日 香西咲さんのインタビュー記事が、しらべぇに掲載されました。
■2016月7月27日 香西咲さんのインタビュー動画が、毎日新聞のWebサイトにアップされました。
■香西咲さんのツイッター
(明日のブログへつづく)
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