人間の可能性(その7) ~吉田絢子さんと前坂和子さん

香西咲さんを勝手に応援するサイトの管理人の「焼酎好き」です。よろしくお願いします。

昨日のつづきです。

島秋人は1967年11月2日に処刑されました。
翌月の12月に、島秋人の歌を集めた「遺愛集」が出版されます。
表紙の題字を書いたのは、毎日歌壇の選者であった窪田空穂(くぼたうつぼ)です。
遺愛集
桔梗(ききょう)の花の絵は、吉田好道さんが描きました。
吉田さんは、島秋人が中学生のときに美術を担当していた先生です。
「絵は下手だけどクラスで一番構図が良い」
第1回目の死刑判決を受けたあと、島秋人は、このことばを思い出します。
吉田先生は、これまでの人生の中で、唯一、自分をほめてくれたひとでした。
島秋人は手紙を書きます。
これが自身の生き方を変えるきっかけとなります。

手紙でのやりとりの中で、先生の奥さんである吉田絢子(あやこ)さんが、短歌づくり勧めてくれます。
やがて、この歌を通して、多くのひとたちとの邂逅(かいこう)が生まれます。
歌人の窪田空穂は短歌だけではなく、生き方にも示唆をあたえてくれました。
千葉てる子さんは、養母になってくれました。
前坂和子さんは毎週、面会にきてくれました。
鈴木和子さんは、自身に、慕情の念をいだかさせてくれました。

島秋人が歿(ぼっ)したあと、吉田絢子(あやこ)さんは、東京家庭裁判所の判事である森田宗一さんに、次のような手紙を書いています。
「真実の愛の極み -教育の根源にあるもの-」(フレーベル館刊「幼児の教育」1968年7月号)から、一部を引用します。

歌によって目ざめた覚さん(島秋人の本名)が、遂に私共の至り得ぬ境地に至り、生命愛惜の人間性豊かな歌をうたいあげてくれましたことは、私共のつきせぬよろこびでございました。
私どもにとりまして覚さんは肉親も同様、処刑を知らされました時は、数日食事ものどを通らぬ思いを致しましたが、「歌によって目ざめた自分は本当に幸せであった。この感謝の気持ちを必ず伝えてほしい」という遺言を聞き慰められました。
まことに人と人との出会いほど人生において不思議なものはございません。
覚さんとの深い縁によって、覚さんをめぐる多くの心あたたかい方々とお知り合いになることも出来ました。
覚さんのお陰という外ございません。
・・・・・・思えば多くの方々の愛をうけ、深い心の交わりをもった覚さんは本当に幸せでございました。
一生の半分以上、一八年という長い歳月を少年院獄中ですごし、人並の幸せとは遠くかわいそうな覚さんでしたが、最後に鈴木和子さんと結ばれたことも神の深いおぼめしと思われます。

吉田絢子さんが詠んだ歌です。

 歌により目ざめし感謝つきぬと
  吾れへの遺言聞きて泣きけり

島秋人は生前、吉田絢子さんに対して、次の歌を詠んでいます。

 握手さへはばむ金網(あみ)目に師が妻の
  手のひら添へばわれも押し添う

越後タイムス(新潟県柏崎市)のホームページに、次のような記事が載っていました。

2011年1月12日の記事を一部引用。)

柏崎で育った獄中歌人・島秋人の生涯を舞台化した、語り芝居「鬼灯」の柏崎公演が実現する。
島秋人は昭和34年、小千谷市で強盗殺人事件を起こし逮捕、死刑囚として七年を過ごす。
恩師・吉田好道先生夫人・絢子さんの世話で短歌を始め、歌集『遺愛集』を遺して、昭和42年に刑死した。
「鬼灯」は獄中の島と文通した、前坂和子さんの『空と祈り』を原作としている。

新潟県の柏崎で過ごした島秋人が、小千谷で事件を起こしたのは、1959年です。
それから52年が経った2011年に、柏崎で、島秋人にまつわる舞台公演がおこなわれました。
「鬼灯」は、「ほおずき」と読みます。

越後タイムスの2011年4月25日の記事を一部引用します。

昭和42年11月1日、処刑の前日、秋人の父、養母・千葉てる子、前坂和子らが参会し、拘置所内でお別れ会が開かれる。
養母は鬼灯を携えてやってくる。
秋人はもらった鬼灯を参会者に1本ずつ分け、
「これがボクの形見分けです。残ったのは今夜ボクの枕許において眺めながら眠ります。みなさん、どうかそれを播(ま)いてください。毎年の今頃に、この鬼灯が色づいたら、それはボクが話しかけていると思ってください」
と呼び掛ける。

語り芝居「鬼灯」の原作になっているのは、前坂和子さんが書かれた「書簡集 空と祈り―『遺愛集』島秋人との出会い」(東京美術刊)です。

生前、島秋人は、前坂和子さんのために次の歌を詠んでいます。

 教育大受かりましたと告ぐる君の
  家事に荒れたる指をも見たり(1963年)

2007年に前坂和子さんが、新潟の敬和学園大学で講演をされたことを知りました。
その様子が冊子にまとめられています。

 ・「敬和カレッジ・ブックレット」( No.13)『いのち輝く』

ぼくは本日この本を注文しました。
すぐに送っていただけるようです。

当初、島秋人に関する話題については2回ほどで終える予定でした。
それが長くなってしまいました。
明日、簡単にまとめをして、この件につきましてはとりあえず終わりにしたいと思います。



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